書籍カテゴリー:医学教育学|医学・医療一般

人間学入門
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人間学入門
医療のプロをめざすあなたに

1版

  • 日本医学教育学会基本能力委員会 倫理・行動小委員会,準備教育小委員会 編
  • 後藤英司(横浜市立大学),中村千賀子(東京医科歯科大学),大生定義(立教大学) 編集委員

定価:2,592円(本体2,400円+税8%)

  • B5判 134頁
  • 2009年8月 発行
  • ISBN978-4-525-00051-6

概要

本書には「人間学」という耳慣れないタイトルがついていて,少し戸惑われるかもしれません.けれど,医療のプロをめざす皆さんが実際に医療現場に出たとき,目の前にいるのは患者さんです.また周りのスタッフとのチームワークも欠かせません.患者さんもスタッフも皆,「人間」です.医療のプロをめざす人は,人間について,自然科学からだけではなく,もっと広い視野から理解を深めておくべきではないでしょうか.
日本医学教育学会が医療系学生に贈る人間学の入門テキスト.

序文

本書を手に取ったあなたは,将来,医療分野でのプロになることをめざして大学に入学した人,あるいは,入学しようと考えている人だろうと思います.
「人間学」という耳慣れないタイトルがついていて,少し戸惑っているかもしれません.最近は先端的な医科学研究や医療技術が重視され,学部教育でも,人間について自然科学的な視点から学ぶ傾向が強くなっています.逆に,人文学など別の視点から人間について考える機会は少なくなりつつあります.しかし,皆さんが医療現場に出たとき,目の前にいるのは患者さんです.また,周りのスタッフとのチームワークも欠かせません.患者さんもスタッフも皆,「人間」です.医療のプロをめざす人は,人間について,自然科学からだけではなく,もっと広い視野から理解を深めておくべきではないでしょうか.
本書の編集を担当した日本医学教育学会の「倫理・行動科学小委員会」と「準備教育小委員会」のメンバーの多くは,最近の医療教育が自然科学に偏り過ぎていることに懸念を抱いています.医療の世界では科学のみでは解決できないことがたくさんあります.ですから,将来,医療のプロとして活躍する皆さんには,自然科学とは少し異なる視点からも人間について考えてほしい,そのような願いを込めて「人間学入門」というタイトルをつけました.
本書の第I部には,事例を中心に「医療のプロ」への道で出会う様々な課題を物語風にまとめてみました.今後,皆さんの周囲で実際に起きうる出来事が時間軸に沿ってつづられています.事前に問題が分かっていれば自分なりに対策を講じることもできるでしょう.また,友達とお互いに助け合って解決することも可能です.II部には,最近,医療現場で問題となることが多い,コミュニケーション,倫理,安全,法律に関係する問題をまとめてみました.また,「医療のプロ」は患者さんの死に立ち会うことも少なくありません.そこで,先生方に死生観についてそれぞれの考え方を紹介していただきました.III部では,皆さんの大先輩に,プロをめざす途中での出会いについて,そして生涯,どのように研鑽を積んでいくべきかについて書いていただきました.
さて,皆さんは,今まさに「青春まっただ中にいる」と思います.人生も短いといわれますが,「青春は短い.宝石の如くにしてそれを惜しめ」という言葉もあります.一方,「わが青春に悔いなし」とか「悔いあり」などという言葉もよく聞かれます.一生の中で特に大切な,夢や希望が一杯に詰まった時期だからでしょう.しかし,医療のプロをめざす皆さんは,この短い大切な青春の多くの部分を勉強に捧げなくてはなりません.辛いことも悩ましいことも多いと思います.しかし,青春の「悔い」であっても,それを通して人間について学ぶことはたくさんあります.実際,プロをめざした先輩達の多くが,大変だったけれどもかけがいのない青春だったと語っています.ぜひ,この時期に人間について理解を深め,将来,良き医療者として活躍できるよう成長してください.
最後に,白浜雅司先生(佐賀市立国民健康保険三瀬診療所所長)が,本書の原稿を書いてしばらく後に急逝されたことをお伝えしなければなりません.私たちにとって,本当に残念な出来事でした.あらためてご冥福をお祈り申し上げます.白浜先生が心底から願っていたこと,それは医療者が親身になって患者さんのことを考えて,臨床現場でのジレンマをチームで解決していくことでした.そして,皆さんが素晴らしい医療のプロに育つことを夢見ていました.ぜひ,白浜先生の遺志を尊重して医療現場での課題を解決できるようなプロに育ってください.その意味でも,この書が皆さんの成長を手助けすることにつながるよう願っています.
なお,本書の編集では南山堂の秋山孝子さんと佃 和雅子さんに大変お世話になりました.厚く御礼申し上げます.


2009年初夏
編集者を代表して
後藤英司



目次

I.医療を担う人になるということ 〜事例編〜
この章では
事例1 通学風景から
事例2 アルバイトに行って
事例3 甥っ子の孝の様子から
事例4 いよいよ解剖実習
コラム 非日常的な体験をした後は
事例5 倫理の講義でふと考える
事例6 あなたにだけ…と言われたら
事例7 頻回のナースコール
事例8 外来研修が始まった
事例9 電車の中で
事例10 研修医になって その1
事例11 研修医になって その2

II.人間として医療に関わるということ 〜解説編〜
1.人間について −生物としての人間
 A.健康の定義から
 B.二足歩行と言葉
   コラム 二足歩行とことば
 C.言葉とイメージ
 D.人間関係と成長
E.人間理解と人間観
F.平均値と個体差:サイエンスとアート
G.個体の死と種の存続
2.病と医療とコミュニケーション
A.心と人間関係の主観化(客観視)
B.臨床現場でのコミュニケーション
コラム 文書によるコミュニケーション
C.誰かが病気になるということ
D.患者の心〜小児から高齢者まで〜
コラム メディカルインタビュー
E.死と向き合う患者の心理(死の主観化)
3.医療における倫理
A.歴史的背景
B.職業倫理,プロフェッショナリズム
C.社会の変化,医学・医療の進歩と倫理
D.人間の自然史と倫理
E.臨床における倫理
F.看護実践における倫理
4.医療における安全
 A.医療の不確実性,安全総論,ヒューマンファクター
 B.医療安全の組織戦略
 C.事例から 〜他人事ではない医療安全〜
5.医療事故と紛争化
 A.対話する力
 B.法を知る
6.医療と死生観・宗教
A.死生観の共存 〜人生の物語の様々な完結〜
 B.さまざまな死生観 〜生きる意味と死〜
 C.弱さ・無力さのもつ確かな力
 D.三元的人間観とスピリチュアル・ケア

III.医療人としてどのように学び続けるか
1.医療人としてどのように学び続けるか
 A.「医療人」への入り口
 B.医療人の生涯学習
 C.専門職としての学習スタイル
 D.医療人の義務
2.私が影響を受けた人,ロールモデル
 A.私のロールモデル
 B.反面教師と自戒
 C.若きロールモデル
 D.私が影響を受けた人
 E.出発点は「患者の求める良医」でした

用語集
文献リスト
索 引