書籍カテゴリー:医学・医療一般

医療事故ケースファイル
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医師の視点で読み解く
医療事故ケースファイル

1版

  • ふくやまクリニック 院長 福山 正紀 著

定価:2,484円(本体2,300円+税8%)

  • B6判 234頁
  • 2011年4月 発行
  • ISBN978-4-525-00231-2

概要

月刊誌「治療」の好評連載を待望の書籍化!連載時にも大好評だった臨場感あふれる事例紹介と,医師の視点による考察を解説します.コラム「ひとくちMEMO」では,普段は聞き慣れない関連用語や,世間で話題となった有名判例などを幅広く紹介.普段の診療では気付きにくい,医療過誤に陥らないための教訓を得られる一冊です.

序文

本書の成り立ちと最近の医療事故の趨勢
 複雑な現代事情を反映しているかのような「医療に対する風当たりの強さ」を肌身に実感するようになってから相当の時間が経過した.医療側に反省すべき問題点の多々あることを認めつつ,その一方でわれわれ医療機関がいわれなき批判に対してあまりに無防備であったことも事実である.実際,過去においては医学教育のなかで医療事故・訴訟問題が重要視されておらず,この点における啓発活動も十分とはいえなかった.その結果,医療行為のみに専念するあまり,社会的背景の理解や患者側に立った配慮が不足していたことは否定し得ないところである.
 筆者は,ある医療団体において医療事故の問題解決にあたる非営利機関の構成員を務めたことから,司法の場に至らないケースが多数存在していることを知る一方,医療機関側の事故対応の意外な稚拙さを実感することとなった.さらに,実際の事故事例を検討してみると,高度の医学的あるいは法理論上の判断を要するケースは比較的少数であることや,類似のパターンあるいは全く同じ内容の事故の繰り返しが少なくないことにも驚かされるに至った.
 そこで筆者は,2006年より南山堂の月刊誌「治療」に事例報告の連載を始めた.各号ごとにテーマを決め,これに沿った内容の実際例を提示し参考に供するとともに,関連事項の解説やトピックスを取り上げて,これまで法律的な面に必ずしも明るくなかった臨床医にも理解しやすい内容を心がけてきた.全21 回の連載を通しての事例総数は100 を超え,この度,内容などを再構成のうえ,単行本として上梓されることとなった.当初の企画意図であった「医療事故に対する一般臨床医への啓発」という点からみて,一冊の単行本としてまとめられることになったのはまさに当を得たものと考えたい.すなわち,本書はすべての事例を通読して理解をしておくことが最もその目的に合致していると考えられるからである.さらには,索引的な使用法として興味ある事例や疑問点を調べるという点からも連載で得られる情報を大きく凌ぐものと考えられる.
 さて,先に述べたように医療上のトラブルとして訴訟に至りその結果公になるものは一部に過ぎず,大半が水面下で処理されていることは周知の事実である.訴訟事件として公になっているものの実態について「2009年,医事関係民事訴訟事件統計」によれば,医療関係訴訟事件としての地裁の新受数は,1970年に年間102件であったものが,その後増加を示し,1994年に500件を超え,2003年には1,000件を超えるに至るも,2004年の1,139件をピークに減少傾向に転じ,2009年には733件まで低下している.また,原告側の訴えに対する認容率も2000年に46.9% であったものが,その後序々に低下し,2009年には25.3%と約半分となっていることに注目したい.このような変化は訴訟事件のみならず,一般の医療事故の報告数においても同様であることが非公式ながら報告されており,小生が関与している某機関においても医療事故の報告件数は数年来減少傾向が続いている.日医総研より2010年6月に発表された「医療刑事裁判について」と題するワーキングペーパーによれば,2008年8月の福島県立大野病院の無罪判決以降,医療刑事事件数は激減しており,ほとんどの事例が不起訴処分となっていることから,「検察庁の取り扱いが変化している」のではと分析している.その一方,全国の主要223医療機関において医療事故につながりかねない「ヒヤリハット事例」すなわち「インシデント事例」は2009年に24万件以上と,統計を取り始めた2005年以来過去最高を更新し続けていることが,(財)日本医療機能評価機構により発表されており,医療事故の芽が減少しているとは到底考えられないことも銘記しておくべきであろう.
 前置きが長くなってしまい恐縮だが,この序文で述べたことを念頭において,可能であれば本書を最初から通読されることを是非お勧めしたい.最後に,種々のアドバイスをいただいた医師,弁護士の諸先輩方,医療団体事務局の皆さん,南山堂の編集部諸氏に心から感謝いたします.

2011年2月
福山正紀

目次

File. 1 循環器疾患事故
 Case 1 2度の救急受診にもかかわらず,自宅で突然死をきたしたケース
 Case 2 致死的となり得る心電図所見に対処が必要なケース

File. 2 内視鏡事故
 Case 3 大腸ファイバー中,疼痛を訴えるにもかかわらず再度敢行したことが問題となったケース
 Case 4 検査のリスクを含めた説明も同意なく,説明義務違反が問われたケース
 Case 5 ポリペクトミー後に腹痛発作をきたしたことより,損害賠償を請求してきたケース
 Case 6 検査のリスクに関しての説明が口頭のみで,カルテへの記載がなかったケース
 Case 7 検査に伴う穿孔などの危険性に関して言及されておらず,無責主張は困難となったケース
 Case 8 大腸ファイバー検査の事前説明が皆無に等しかったケース
 Case 9 担当医のマーキングの誤りから,数度にわたる内視鏡検査を余儀なくされたケース
 Case 10 事前説明は同意書を含め記録として残っておらず,患者側の勝訴判決となったケース
 Case 11 医療機関側の有責とは考えにくいが,手技上の若干の過誤を認める形で解決したケース

File. 3 健康診断での事故
 Case 12 乳児健診での聴診中「泣いていた」ため心雑音を聞き逃したケース
 Case 13 乳がん検診において,見落としが判明したケース
 Case 14 胃がん発見後フィルムをさかのぼって検証した結果,見落としと認定されたケース

File. 4 外傷救急での事故
 Case 15 約5 年間の経過後にガラスの残存を指摘されたケース
 Case 16 救急処置後に破傷風を発症し,身体障害の後遺症が残存したケース

File. 5 施設事故
 Case 17 CT室に入室の際,ドアの戻りが早く指を挟まれたケース
 Case 18 調理師が操作していた電動式配膳車に接触し,骨折し入院するに至ったケース
 Case 19 リハビリ室でパイプ椅子から転倒し,大腿骨頸部骨折を生じたケース
 Case 20 入院患者が入浴中に,心肺停止状態にて発見されたケース
 Case 21 通所リハビリ中に靴を履き替える際,転倒し骨折したケース
 Case 22 夜間せん妄状態の患者が,車椅子より転倒し大腿骨骨折を生じたケース
 Case 23 精神科デイケアの一環として花見に出かけた際,行方不明となったケース

File. 6 異状死事故
 Case 24 ハートモニターのアラームに気付くのが遅れたため,意識障害を生じたケース
 Case 25 術後夜間に喀痰の喀出困難となり,窒息状態で死亡したケース
 Case 26 手術操作ミスと直接の死因に因果関係が否定的ななかで訴訟に至ったケース

File. 7 感染対策事故
 Case 27 縫合不全からMRSA感染が明らかとなったケース
 Case 28 顎関節ワイヤー固定術後に断裂をきたし,呼吸不全を呈して死亡したケース
 Case 29 MRSAに感染し入院期間が延長したと主張してきたケース
 Case 30 知的障害の患者が術後の回復過程で,術部位を掻爬したため感染が生じたケース
 Case 31 術者自身がMRSA保因者である可能性を否定できなかったケー

File. 8 内服薬処方事故
 Case 32 「 プレドニンR」が「プルセニドR」と誤記載されたケース
 Case 33 薬局において「アルマールR」が「アマリールR」と取り違えられたケース
 Case 34 患者からのクレームを受けるまで誤投薬に気付いた後も放置していたケース
 Case 35 「 禁忌」とのカルテ記載にもかかわらず同一禁忌薬剤が処方されたケース
 Case 36 呼吸器症状で受診したにもかかわらず降圧薬が処方されていたケース

File. 9 注射薬事故
 Case 37 看護師が微量注入キットを取り外したため点滴が急速に注入されたケース
 Case 38 注射器の間違いにより10倍量のインスリンが投与されたケース
 Case 39 点滴調剤の間違いにより副作用が出現したケース
 Case 40 経皮的酢酸注入療法に使用した薬剤の間違いにより死亡したケース
 Case 41 薬剤の取り違えという単純なミスが招いた結果,医師・看護師ともに実刑処分となったケース
 Case 42 看護師の思い込みにより異なる患者に点滴したケース

File. 10 針・注射事故
 Case 43 手技上の問題はないものの,採取時に神経損傷をきたしたと考えられるケース
 Case 44 会社健診の採血3 日後に手指の痺れを訴えたケース
 Case 45 採血針の刺入時に痛みを訴えるも直ぐに抜針しなかったケース
 Case 46 採血を実施した担当看護師が不明であったケース
 Case 47 穿刺部位での疼痛を強く訴えるものの客観的所見は不明であったケース
 Case 48 看護師個人の技術的問題点に起因したと考えられるケース
 Case 49 化学療法剤の血管外への漏れによる組織障害が認められたケース
 Case 50 記録が不十分で,報告の信憑性に問題が認められたケース

File. 11 看護業務にまつわる事故
 Case 51 気切部位からの酸素投与の変更の際,気切孔を塞いだため窒息したケース
 Case 52 薬剤確認の不備から,患者が精神的に不安定となったケース
 Case 53 医師の指示を受けないまま看護師の判断で頭痛薬が投与されたケース
 Case 54 浣腸処置において直腸損傷をきたしたケース
 Case 55 薬剤が調剤・受け取り・処置のため使用の各段階で確認されなかったケース
 Case 56 注入食を胃瘻チューブより入れる際,誤ってIVHラインに接続したケース

File. 12 インフォームド・コンセントに伴うケース
 Case 57 外来主治医と入院担当医の意思疎通の欠如などから,トラブルとなったケース
 Case 58 悪性である確率を文献的事実とは異なる数字で説明のうえ手術されたケース

File. 13 鑑定書・意見書を伴うケース
 Case 59 MRSAに対する医療機関側の対応が問題であるとして,訴訟が申し立てられたケース
 Case 60 家族側よりがんの見落としであるとして,訴訟が申し立てられたケース
 Case 61 下垂体腺腫摘出術の手術ミスを指摘し,訴訟が申し立てられたケース

File. 14 高額賠償金に至ったケース
 Case 62 診断の遅れを主張され,裁判所の調停により高額の賠償金を支払ったケース
 Case 63 診断の遅れと共に高次病院への転院が遅れたとして,訴訟を申し立てたケース
 Case 64 術後合併症の認識が不十分であったうえ,急変時の対応が遅れたケース
 Case 65 検査後合併症に対する説明の不足と,その後の対処に過誤が認められたケース
 Case 66 静脈路確保の際,血管を切断したため下肢の懐死に陥ったと訴えられたケース
 Case 67 ガイドラインに沿った処置が実施されなかったことから管理不十分とされたケース
 Case 68 交通事故の際,頭部CT の所見が軽微であったため処置が遅れたケース
 Case 69 帝王切開に至る時間に遅れがあったと主張されたケース
 Case 70 転倒後,頭部CT が直ちに実施されず対応が遅れたケース
 Case 71 担当耳鼻科医師が局所所見のみに注目し,全身管理を怠り医療過誤となったケース

File. 15 説明・説得が奏効し解決に至ったケース
 Case 72 患者の急死を気管切開部の閉塞による窒息ではないかと主張されたケース
 Case 73 冠動脈インターベンション中,冠動脈解離からショックに陥ったケース
 Case 74 十二指腸潰瘍の穿孔後,ショック状態となったケース
 Case 75 入院中,進行がんが発見され治療中に死亡するも過誤を問われたケース
 Case 76 医学的には過誤となる問題点はなく,むしろ院内体制に改善すべき点が認められたケース
 Case 77 手術の適応やインフォームド・コンセントに,過誤があったと賠償金を要求してきたケース
 Case 78 死亡したことに納得できないとして,患者の妻が毎年命日に説明を求めてきたケース

File. 16 救急受診後の勝訴ケース
 Case 79 悪性腫瘍の診断の遅れに過失ありと主張してきたケース
 Case 80 患者家族から医師・看護師への脅迫行為が認められたケース
 Case 81 セカンドオピニオンをもとめられた後医の言動により過誤が疑われたケース
 Case 82 小脳梗塞の診断治療に遅れがあったと主張されたケース
 Case 83 宗教上の理由で輸血を拒否され,高次病院へ転院するも死亡したケース

File. 17 司法判断との乖離(1)
─医療機関側敗訴のケース─
 Case 84 急性虫垂炎の診断に遅れがあったと認定されたケース
 Case 85 点滴の際の神経損傷により損害賠償をもとめられたケース
 Case 86 多量の向精神薬服用中,転落事故による救急受診後に急変したケース
 Case 87 交通事故による脳挫傷の患者の言動を予見可能と判断されたケース
 Case 88 盲腸がんの診断が遅れたとして賠償を要求されたケース
 Case 89 アルコール・薬物依存症患者の救急での処置が不十分であったと認定されたケース

File. 18 司法判断との乖離(2)
─調停による解決のケース─
 Case 90 乳腺細胞診のclassVの結果に基づき手術したが良性腫瘍であったため訴訟となったケース
 Case 91 MRSA感染が院内経路によることが「明らか」であると主張してきたケース
 Case 92 褥瘡から敗血症に陥ったため訴訟が申し立てられたケース
 Case 93 骨髄移植のドナーが白血病を発症したことが説明義務違反にあたると訴えられたケース
 Case 94 中手骨骨折への対処が不十分であったため職業上の支障を訴えられたケース
 Case 95 転倒により「植物」状態になったのは,医療機関側の全面的管理ミスと主張してきたケース
 Case 96 点滴処置後の上肢神経損傷に対して事実とは異なる患者の訴えを裁判所が認定したケース
 Case 97 ブロック注射後の神経損傷を訴えられ十分な検討なしに謝罪したケース

File. 19 医療に精通した弁護士の必要性を実感したケース
 Case 98 食道がん術後合併症の対処に問題ありと訴えられ和解に至ったケース
 Case 99 白内障の術後感染合併症が不可避であったと認定されたケース
 Case 100 腰椎横突起骨折に対して標準的治療が施されたことから訴えが棄却されたケース
 Case 101 肺動脈血栓塞栓症に対する疾患の理解ができず訴訟に至ったケース
 Case 102 低酸素状態であったにもかかわらず酸素投与が中断され死亡に至ったケース
 Case 103 ショートステイ入所中の転倒事故への対応に問題を認めたケース
 Case 104 人口透析中経口不良となるも血糖降下剤を減量されなかったケース
 Case 105 患者側の事実誤認に基づく部分が多いため,医療機関側の抗弁が認められたケース