書籍カテゴリー:医学教育学

実践PBLテュートリアルガイド

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実践PBLテュートリアルガイド

1版

  • 久留米大学教授 吉田 一郎 編
  • マレーシア国際医学大学 大西 弘高 編

定価:4,212円(本体3,900円+税8%)

  • B5判 294頁
  • 2004年8月 発行
  • ISBN978-4-525-04111-3
  • ISBN4-525-04111-0

概要

PBLテュートリアルはわが国で現在進行中の医学教育カリキュラム改革の大きな柱となっている.本書は内外のPBLテュートリアルの具体例を紹介し,PBLテュートリアルを実際に担当するチューターを主な読者として企画されたが,今からPBLチュートリアルをスタートさせようとする場合や,現在のPBLチュートリアルをさらに改善させる場合の手引書としても他に類をみない格好の一冊である.

序文

PBLテュートリアルは臓器系統別統合カリキュラム,OSCE,MCQとならび過去50年間に開発された医学教育における4大技法のひとつといわれている.カナダのマックマスター大学でスタートし,30年以上を経た現在,PBLテュートリアルは欧米のみならず,世界各地に広まっている.例えば東南アジア諸国では毎年のように活発なPBLテュートリアルワークショップが開催されている.隣の韓国ではPBLテュートリアルをカリキュラムの中核とする新しいメディカルスクール構想がスタートしている.韓国における医学教育改革で中心的役割を演じておられる嘉泉医科大学(Gachon Medical School)の金 勇一 学長に本書の序文を書いていただいた.韓国は我が国の文化の源であり,医学教育においても今後,学ばせていただく点が多い.
北米における近代医学教育改革に大きな足跡を残し,クリニカルクラークシップの元祖とも考えられるウイリアム・オスラーの「学生への自然な教育法とは,患者とともにはじまり,患者とともに続き,患者とともに終わる」という名言はクリニカルクラークシップだけでなく,PBLテュートリアルのフィロソフィーをもうまく,いいあてている.このことは逆にいえば,PBLテュートリアルでは,患者について生物医学的モデルのみで学習するのではなく,社会,経済,心理,疫学など多方面からの問題にも取り組むことが可能であることを示唆している.医学生がともすれば,生物医学的な問題にのみ取り組みがちなことは,我が国だけの問題ではない.PBLテュートリアルをカリキュラムに取り入れることにより,学生の皆さんには,深い学習のみならず,多面的な患者の問題への取り組みを期待したい.
我が国において最初にPBLテュートリアルを全学的に導入したのは,東京女子医科大学であり,すでに同大学のテュートリアル委員会により,「テュートリアル教育」という素晴らしいモノグラフが出版されている.また,東京女子医大に引き続き,現在では我が国の多くの医学部でPBLテュートリアルが実施されている.
本書はそのような我が国における各大学のPBLテュートリアルの実際を紹介し,さまざまな具体例を示すことにより,学生の皆さんやPBLテュートリアルを実際に担当しておられるテューターの方々の参考になることを願って企画された.今から,PBLテュートリアルをスタートさせようとする場合や,現在のPBLテュートリアルをさらに改善させる場合の格好の手引きになると信じている.
我が国の卒前教育の発展を目的とする本書を日本医学教育学会前会長 鈴木淳一先生と同名誉会員 山下文雄先生に捧げたい.鈴木先生は卒前教育の方が,卒後教育よりもはるかに重要であることに目を開かせてくださった.山下先生はバロウズ(Barrows)先生とタンブリン(Tamblym)女史を30年近く前に久留米大学に招かれ,少人数グループ学習の意義を強調された.南山堂の秋山孝子氏には,本書の企画の段階から非常にお世話になった.秋山さんのおかげで,PBLテュートリアル実践のためのよいガイドブックが出来上がったことに感謝したい.

2004年 若葉の美しい5月に 吉田一郎 大西弘高


目次

総論−PBLテュートリアルの理論と実践

1.PBLテュートリアルとは何か
 1.PBLテュートリアルとは
 2.従来のわが国の医学教育の問題点
 3.PBLテュートリアルの歴史
 4.PBLテュートリアルの仕組み
 5.PBLテュートリアルの導入とカリキュラム
 6.PBLテュートリアルの問題点と今後の課題

2.なぜPBLテュートリアル学習が必要か
 1.「関連づけ」と学習効率
 2.少人数グループ学習の素晴らしさ−個別指導,対人間関係教育も
 3.医学生が将来働く,医療現場に直結している
 4.能動学習−生涯学習への道が開ける
 5.自分で学習内容を決める−成人学習理論にかなっている
 6.PBLテュートリアルの必要性への反論もある
 7.学んだ知識が生きている

3.学習,教育と教育理論,心理学的基盤との接点:PBLの意義や活用法
 1.教育と学習
 2.学習理論
 3.Self-directed learningとは
 4.自己評価
 5.ポートフォリオを用いた学習と評価

4.診断推論,臨床問題解決とは
 1.“問題”に関する理解
 2.問題解決とは
 3.臨床問題解決研究の歴史
 4.臨床問題解決と臨床決断
 5.臨床問題解決のプロセス
 6.疾患概念と記憶構造
 7.知識と記憶
 8.臨床問題解決型PBLへの示唆

5.どのような事例がよいのか,また事例はどのように仕組まれているか
 1.何よりも重要な事例
 2.事例における「自然さ」「本物」の重要性
 3.事例の内容,組み立てをどうするか
 4.医学生の将来に関連した事例を
 5.学習への動機付けを与える事例を
 6.事例の長さや複雑さをどうするか

6.PBLを取り入れた新しい医学教育カリキュラム
 1.カリキュラム改革を上手く進めるには
 2.カリキュラム改革とは何か
 3.複雑な問題に対する対処法
 4.カリキュラム改革の執行委員会の原則
 5.カリキュラム改革を成功へ導く原則
 6.改革の4ステージ
 7.改革の成功の鍵
 8.筑波大学の医学教育改革
 9.医師国家試験合格率の呪縛
  10.中途半端な改革ではプラス効果がない
  11.経験が確信と信念を生む

7.学生の行動変容をきたす因子
 1.学生の行動の場
 2.行動変容を起こす過程
 3.学習行動を引き起こす内的因子
 4.学習行動を引き起こす外的因子
 5.PBLテュートリアルの効果

8.医学生はPBLテュートリアル学習のための情報をどのように集めるか
 1.図書の活用
 2.医学情報システムによる検索
 3.On-line Journalの活用
 4.リソースパーソン
 5.PBLテュートリアル学習に有益なウェブサイト

9.テュートリアルにおける自己学習,グループ学習とテューターの役割
 1.成人教育の理論
 2.学習への動機づけとしてのPBLテュートリアル
 3.領域全体のオリエンテーションと学び方を学ぶ
 4.PBLテュートリアル全体を通じてのゴール
 5.PBLテュートリアルにおけるコアタイムの位置づけと自己学習,グループ学習
 6.PBLテュートリアルがうまくいかない理由
 7.グループでの自主性を促すテュ−ターの役割
 8.集団の中での役割:グループダイナミクス
 9.ブレインストーミングの考え方

10.PBLを阻む因子:具体例と対応
 1.学部としての要因
 2.テュ−ター(教員)側の要因
 3.学生側の要因

11.PBLと評価,学生評価,テューター評価,その他
 1.学生評価
 2.教員評価
 3.テュートリアル課題(事例)評価
 4.テュートリアル・プログラム評価

Appendix:PBLに関するカリキュラム開発の方法論
 1.カリキュラム開発の考え方について
 2.カリキュラム開発の骨格
 3.ニーズ評価や実施の問題
 4.教育目標と教育方略
 5.評 価

各論1−日本でのPBLテュートリアルの実例

1.東京女子医科大学
 課題例−人の一生:一度だけなら
 Tutor note
2.東京慈恵会医科大学
 1.課題について
 2.課題に使用する時間
 3.課題の配布について
 課題例−消化管疾患
 Tutor note
3.千葉大学
 1.千葉大学臨床テュートリアルの概要
 2.テュートリアルの実際
 3.テュートリアルの評価
 課題例−成長・発達ユニット
 Tutor note
4.金沢医科大学
 課題例−神経ユニット
 Tutor note
5.岐阜大学
 1.遺伝・発生・発達コースの一般目標と学習計画
 2.担当教官
 3.評価方法
 4.時間割
 課題例−統合科目(遺伝・発生・発達)
 Tutor note
6.三重大学
 1.三重大学のカリキュラム
 2.三重大学のPBLテュートリアル
 3.三重大学におけるPBLテュートリアルの進め方
 4.テュ−ターの役割とテュ−ターガイド
 5.評価法
 課題例−循環系疾患
 Tutor note
7.近畿大学
 1.コアタイム
 課題例−臓器別コース:心臓
 Tutor note
8.久留米大学
 課題例 神経科学コース
 Tutor note
9.佐賀大学
 1.はじめに〜外来実習を通したPBL〜
 2.佐賀大学のカリキュラム
 3.総合外来実習の概要
 課題例1−外来カンファレンス 患者の臨床問題解決を目的としたPBL
 課題例2−テュートリアル 医学生の診断能力向上を目的としたPBL
 まとめと問題点

各論1のまとめ

各論2−海外におけるPBLテュートリアルの取り組み

1.マックマスター大学
 テュートリアルの進み方
 実際のテュートリアルの方法
2.ニューメキシコ大学
3.ハーバード大学
 ハーバード大学医学部の教育カリキュラムの概要
 テュートリアルのフォーマット
 テュートリアル課題
 テューター
4.マーストリヒト大学
5.南イリノイ大学
 学習課題発見型と診療問題解決型
 南イリノイ大学の診療問題解決型PBLテュートリアル
 南イリノイ大学のPBLテュートリアルの特徴
 テュートリアルタイムの回数
 講義時間数の設定
 テュ−ターの役割
 白板の使い方
 PBLテュートリアル教育における評価法
6.ハワイ大学
 ハワイ大学におけるPBL教育導入の経緯
 PBL教育カリキュラム
 テュートリアル教育,テーマの作成に関する留意点
 学生の評価
7.国際医学大学(マレーシア)
 IMUカリキュラムの概要
 PBLの進め方
 トリガーの例

付録:PBL,医学教育関連ウェブサイト