書籍カテゴリー:医学・医療一般|衛生・公衆衛生学

保健統計・疫学
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保健統計・疫学

第6版

  • 元国立公衆衛生院 部長 福富和夫 著
  • 藤田保健衛生大学 教授 橋本修二 著

定価:2,592円(本体2,400円+税8%)

  • A5判 224頁
  • 2018年8月 発行
  • ISBN978-4-525-05336-9

概要

本書は「保健統計」と「疫学」の基礎を効果的に学習できる教科書である.「保健統計とその見方」「データ収集と記述的解析」「統計的推論」「疫学的方法」のⅣ部から構成されている.改訂6版では“パネル調査とレコードリンケージ”“箱ひげ図”“多群の比較”と近年広く利用されつつある調査法、図表現、検定方法の項目を新たに加えた.

序文

 人にはいろいろな個人差がある.ある地区に居住する集団を考えてみよう.そこには様々な年齢の男女が生活し,体格,体力も一人ひとり違う.世帯の生活様式,生活水準も異なる.保健統計学と疫学はこのような集団を対象に健康の課題を取り上げ,絡み合った要因を解きほぐして健康水準を高める対策を探ることを目的としている.ヘルスサイエンスに係わる者にとって,その方法と課題を学ぶことはとくに大切といえる.
 本書は,保健統計学と疫学の基礎を解説した教科書である.4 部から構成され,第Ⅰ部の「保健統計とその見方」では各種の保健統計の概要,統計を読む際の諸注意,保健指標の性格と意味,既存統計資料の簡単な解析法(とくに図表現)を説明している.第Ⅱ部の「データ収集と記述的解析」では,統計調査法と調査票作成,質的データのクロス集計ならびに数量データの記述的解析のねらいと技法についての習得を目指している.第Ⅲ部の「統計的推論」では確率や理論分布の基礎,区間推定ならびに仮説検定の概念の理解に重点を置くとともに,保健統計学と疫学の分野で適用頻度の高いSMR の検定,生存時間分析などの実際的技法を取り上げている.第Ⅳ部の「疫学的方法」では疫学の基本概念や用語の解説,疫学独特のデータ収集法や解析法を解説している.本書では感染症,生活習慣病,環境汚染による疾患などの各論には触れないが,重要な実例はできるだけ取り上げるよう考慮している.
 保健統計学と疫学は実際問題を解決する応用科学で,意味のある解釈を試みることが基本的である.本書もできる限り実際のデータを素材に,方法と一体化させて解釈するように心掛けている.以下の点を考慮されると一層効果的に学習できよう.
 1.本書は4 部で構成されているが,各部独立して学習できるように工夫しており,必要に応じて参照すべき頁を(→○○頁)で示している.
 2.指標の計算や図表作成のために練習用データを巻末に載せてあるが,さらに,「国民衛生の動向」(厚生労働統計協会発行)などの最新の統計資料を利用することを薦めたい.
 3.文中,主要な技術用語を太字で示し,定義,意味について簡潔に説明してある.索引を引き保健統計学と疫学の用語集として活用することができる.欧文索引には略語のフルスペリングも示している.
 4.計算練習,図表作成は,技術の習得のみならず,指標や特性値の性格を理解する上で大切であり,できるだけ演習を行うことを薦める.
 改訂にあたっては,学問の進歩,社会の動向,教育の課題への対応に心がけ,ヘルスサイエンスに係わる教育課程モデルコアカリキュラムや国家試験の出題基準に配慮している.今回の主な改訂として,第Ⅰ部に「パネル調査とレコードリンケージ」の節を設け,統計データと利用法の最近の展開を取り上げた.第Ⅱ部に「箱ひげ図」と第Ⅲ部に「多群の比較」の節を追加し,また,重回帰,ロジスティック回帰とCox 回帰の適用法と適用結果の解釈を説明した.第Ⅳ部には「反事実モデル」と「社会疫学と政策疫学」のコラムを追加し,「臨床疫学」の節でEBM の基本を解説した.
 本書の刊行にあたって終始お世話頂いた南山堂関係者の皆様に厚く御礼申し上げる.
 本書は1990 年に「保健統計」として刊行し,1995 年には疫学方法論の内容を加え,「保健統計・疫学」と書名を改めた.構想から細部に至るまで,福富和夫先生と私が議論しながら作り上げてきた.4 版企画後まもなく福富先生が逝去された.その後の改訂より,私が編集を担当したが,福富先生の意思を受け継ぎ,保健統計学と疫学の基礎を実例で学べる教科書として育てていきたい.
 最後に,福富先生のご冥福を心よりお祈り申し上げる.

2018年6月26日
橋本修二

目次

第Ⅰ部保健統計とその見方1
 1.統計資料の見方(1)—乳児死亡率の年次推移
 2.統計資料の見方(2)—乳児死亡率の地域分布
 3.統計資料の見方(3)—関連要因別にみた乳児死亡率の比較
  コラム 統計資料の利用
 4.人口動態統計—代表的な業務統計
 5.感染症発生動向調査—サーベイランスとモニタリング
 6.国勢調査—代表的な全数調査
 7.患者調査—大規模な標本調査
 8.国民生活基礎調査—大規模な世帯面調査
 9.傷病量の概念—ニーズとデマンド
 10.統計分類—ICD分類
 11.統計の誤差と偏り—非標本誤差
 12.学校保健統計調査—発育統計
 13.国民健康・栄養調査—栄養と健康の関連性
 14.レセプトと医療統計—医療費の地域差
 15.介護関連統計—要介護度の統計
 16.保健指標(1)—死亡率
 17.保健指標(2)—割合と比
 18.保健指標(3)—人口当たり病床数,周産期死亡率
 19.傷病量の表現—罹患率と有病率
 20.指標の標準化(1)—標準化の必要性
 21.指標の標準化(2)—直接法
 22.指標の標準化(3)—間接法
 23.生命表—寿命と健康寿命
 24.年次推移の観察(1)—悪性新生物死亡率の傾向
 25.年次推移の観察(2)—死産率の傾向の異常現象
 26.季節変動の観察—インフルエンザによる超過死亡
 27.平滑化—移動平均の方法
 28.コホート観察—自殺死亡のコホート現象
 29.パネル調査とレコードリンケージ—出生児縦断調査
 30.将来予測(1)—わが国の人口問題
 31.出生力指標—様々な再生産率
 32.将来予測(2)—二酸化炭素濃度の推移
 33.統計的法則—Gompertzの法則
 34.評価指標—指標系とは
  コラム Grauntによるロンドンの人口推計

第Ⅱ部 データ収集と記述的解析
 35.データとは—統計学の基本事項
 36.データの種類と尺度—質的・量的な特性
 37.統計調査の計画と実施—目的の明確化
 38.調査票の作成—回答の形式
 39.実査の方法—面接法と郵送法
 40.統計調査と事例調査—確証と探索
  コラム 標本設計
 41.単純集計とクロス集計—パーセントの取り方
 42.度数分布表—データの階級分け
 43.ヒストグラム—データの分布
 44.代表値—平均値と中央値
 45.散布度—ばらつきの尺度
 46.パーセント点—分布の表現法
 47.箱ひげ図—要約的な図表現
 48.平均と標準偏差の計算—乱数による抽出
 49.散布図と相関係数—2変量データの分布
 50.関連性の解析—出生時体重のデータ
  コラム データの系統変動と偶然変動

第Ⅲ部 統計的推論
 51.事象—血圧の分類
 52.確率分布(1)—2項分布
 53.確率分布(2)—ポアソン分布
 54.確率分布(3)—正規分布
 55.乱数による実験—中心極限定理
 56.期待値—平均との関係
 57.正規分布表—確率の計算
 58.正規確率紙—理論分布との適合
  コラム 回帰の由来
 59.推定—信頼区間とは
 60.仮説検定—割合の検定
 61.分割表の検定—χ2検定
 62.数量データの解析—t検定
 63.順序データの解析—Wilcoxon検定
 64.多群の比較—分散分析と多重比較
 65.生存時間データの解析—Kaplan−Meier法
 66.ポアソン分布に従うデータの解析—SMRの検定
 67.回帰分析—因果性の探求
  コラム 調査研究のまとめ方

第Ⅳ部 疫学的方法
 68.疫学とは—Snowのコレラ研究
 69.疾病罹患の要素—疫学の三角形
 70.疫学研究とデータの変動因—大気汚染と健康影響
 71.記述疫学—集積性と仮説設定
 72.分析疫学—コホート研究と症例対照研究
 73.介入研究—疫学的実験
 74.リスクとその比較—相対危険度とオッズ比
 75.偏り(バイアス),交絡,誤分類—疫学研究の障害
 76.交絡の調整—Mantel−Haenszel法
  コラム 反事実モデル
 77.スクリーニング—感度と適中度
  コラム 社会疫学と政策疫学
 78.臨床疫学—RCTとメタ分析
  コラム ITT解析
 79.量反応関係—整合性のある関連
 80.因果関係—関連性からの道筋
 81.疾病対策と評価—疫学の目標
  コラム 環境問題と疫学

付表1.保健統計一覧
付表2.国際疾病分類(ICD)
付表3.感染症の分類
付表4.職業・産業大分類,世帯の種類の分類
付表5.保健指標一覧
付表6.統計図表のまとめ
付表7.正規分布表(上側確率)
付表8.t分布のパーセント点
付表9.乱数表
付表10.計算練習用データ(1)—出生時体重
付表11.計算練習用データ(2)—健康診断データ
付図1.県境白地図
付図2.片対数方眼紙
付図3.正規確率紙