書籍カテゴリー:組織学/発生学|分子生物学

人体発生学

在庫状況:絶版

人体発生学

1版

  • 大阪大学大学院教授 遠山 正彌 編著
  • 大阪医科大学教授 大槻 勝紀 編著
  • 大阪市立大学大学院教授 中島 裕司 編著

定価:5,940円(本体5,500円+税8%)

  • B5判 423頁
  • 2003年7月 発行
  • ISBN978-4-525-11061-1
  • ISBN4-525-11061-9

概要

ヒトの発生と分化のしくみを知る事は人体の構造を理解する上で重要である.また臨床的に発生異常によりおきる疾患の成り立ちを知る事ができる.本書は生殖子形成,受精,着床から固有の形態や機能を備えた器官へと変わっていくメカニズムを分かり易く解説すると共に最新の分子レベルの知見に基づき発生異常についても解説.

序文

我々の学生時代は,昭和40年代であるが,人体発生学は,1)人体を構成する組織,臓器,器官の構造を理解するために,2)臨床的な発生異常やそれに伴う病態を理解するうえで必須の重要な分野とされてきた.その意義は30年近く過ぎた現在でもいささかの揺るぎもない.例えば,神経解剖学の講義においても脳幹の基本構造の理解や脳神経系の構成の理解には神経管の発生と構造・機能分化より,また感覚神経や自律神経あるいは神経節,副腎などの講義には神経堤の発生・分化より講義を始めるようにしている.その方が学生諸君の理解を深めるのにより良いと考えているからである.
医学部を卒業後脳科学の基礎的研究の道を選択し,当時,ラットやマウスを用いて神経伝達(修飾)物質の研究を行い始めた私は直ぐに発生学の重要性を再認識させられる.即ち,成熟動物の脳で異なる神経回路連絡に使用される神経伝達物質やその受け皿である受容体の一部は脳の特定の部位において神経回路が完成されるよりも遙か前に一過性に発現し,成熟動物では認められない.即ち神経伝達物質と受容体の一部は成熟動物脳で神経伝達に関わると共に,特定の部位では神経栄養因子として脳の発生に関与していた事となる.
昭和50年代後半に入り生命科学研究は大きな転換期を迎える.即ち,分子生物学が飛躍的に発展し,分子生物学的手法が様々な研究領域に取り入れられ始め,「遺伝子・分子」をキーワードとする研究が種々の領域より輩出し始める.発生学研究も例外ではない.と言うよりもむしろ分子・遺伝子レベルでの発生の解析が生命科学をリードしたといっても過言ではない.接着因子,ホメオボックスの発見など分子発生学の生命科学への貢献例は枚挙にいとまがないほどである.その潮流は減ずることなく,なお一層の激しさを見せており,分子発生学を志す若手研究者も後を絶たない.
このような背景を現在の発生学を学ぶ学生諸君に重ね合わせると,現在の学生諸君には古典的な人体発生学(正常の発生過程と組織・臓器構築と発生異常などの病態)の理解に加えて,発生・分化の仕組みを遺伝子・分子レベルより解き明かす三位一体となった新しいテキストが必須であることは容易に理解できる.本書はこのような新しい意図で編集され,しかも,国際的に第一線の研究者によって書き下ろされている.しかも本書は,人体の発生のみならず発生学のミクロからマクロまでを系統的に理解しやすいように工夫されており,学生及び大学院生の座右の書となることを確信している.
最後に本書の編集に多忙な時間を割いて頂いた執筆者の先生方および本書の発刊に多大なご助力を頂いた石井氏を初めとする南山堂の諸氏に感謝いたします.

平成15年4月 編集者を代表して 遠山正彌

目次

目次(下位の見出し語は割愛)

1.発生学 序論
 1)生命の進化
 2)染色体
 3)核小体(仁)
 4)核酸
 5)DNAからRNAへ(転写)
 6)転写の調節因子(DNA結合タンパク)
 7)細胞分裂
 8)形態形成に関与する因子群

2.発生第1週〜生殖子形成,受精,卵割,胚盤胞,着床〜
 1)生殖子形成
 2)受精(カーネギー発生段階1)
 3)2細胞期から桑実胚期まで(カーネギー発生段階2)
 4)胚盤胞の形成(カーネギー発生段階3)
 5)胚盤胞の子宮内膜への接触:着床の開始(カーネギー発生段階4)

3.発生第2週〜着床の完成と二層性胚盤〜
 1)着床の完成,発生第7〜12日(カーネギー発生段階5)
 2)臨床関連事項

4.発生第3週〜三層性胚盤〜
 1)原始線条の発生:胚葉の形成と体軸の決定,発生第17日(カーネギー発生段階6b)
 2)脊索突起と脊索の形成,発生第19日(カーネギー発生段階7)
 3)胚葉形成とオーガナイザーの分子機構

5.発生第4週から第8週〜胚子期〜
 1)発生の調整機構
 2)外胚葉の分化
 3)中胚葉の分化
 4)内胚葉の分化
 5)胚子期の各週における重要な事項

6.発生第9週から出生まで〜胎児期〜
 1)胎児期の外形的特徴
 2)出生時
 3)周産期学
 4)出生体重に影響する因子
 5)母体側の要因
 6)遺伝的要因

7.先天異常
 1)先天異常の定義
 2)先天異常の発生頻度
 3)先天異常の成因
 4)先天異常の遺伝子解析

8.胎盤,胎膜
 1)胎盤,胎膜の発生と構成
 2)胎盤の発生
 3)胎膜の発生
 4)双胎妊娠
 5)結合双胎

9.体腔,横隔膜,間膜
 1)体腔の発生
 2)横隔膜の発生
 3)腸間膜の発生

10.頭頚部
 1)頭部神経堤細胞の移動
 2)咽頭器官の発生
 3)鼻腔・口腔組織の発生

11.呼吸器系
 1)呼吸器系の発生の概要
 2)喉頭の発生
 3)気管の発生
 4)気管支および肺内の気管支樹の形成
 5)肺の発生
 6)呼吸器系の先天奇形
 7)呼吸器系の発生に関わる因子群

12.消化器系
 1)消化器系の発生の概要
 2)前腸の発生
 3)中腸の発生
 4)後腸の発生
 5)消化器系の先天奇形
 6)消化器系の発生に関わる因子群

13.泌尿器系,生殖器系
 1)泌尿器系
 2)生殖器系

14.心臓血管系
 1)心臓血管系発生の概要
 2)心臓血管系の発生
 3)心臓発生に関わる因子群
 4)心臓血管系の奇形
 5)胎児循環と生後変化

15.骨格と関節
 1)骨と軟骨の発生
 2)体幹の骨格の発生と異常
 3)頭蓋の発生と異常
 4)体肢骨格の発生と異常
 5)関節の発生と異常

16.筋 肉
 1)筋芽細胞から骨格筋線維へ
 2)骨格筋細胞の出身地と遊走,筋原基の分割
 3)筋に付属する結合組織成分の出身地と骨
 4)骨格筋の生後変化
 5)筋の先天異常
 6)心筋
 7)平滑筋

17.四肢(体肢)
 1)四肢の発生
 2)四肢の再生

18.神経系
A.中枢神経系の発生
 1)中枢神経系の初期形成と領域化
 2)脊髄の発生
 3)脳の発生
 4)神経細胞移動の分子メカニズム
 5)神経回路形成の分子メカニズム
B.末梢神経系神経節ニューロンの発生
 1)知覚(感覚)神経節
 2)自立神経節
 3)自律神経系の発生・分化の分子メカニズム

19.感覚器
 1)鼻
 2)視覚器
 3)聴覚・平衡覚器

20.外皮系
 1)外皮(皮膚)
 2)皮膚の付属器
 3)歯