書籍カテゴリー:生理学|基礎看護学

運動の生理学

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運動の生理学
骨から神経まで

1版

  • 東京医科歯科大学名誉教授 神野 耕太郎 著

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

  • B5判 169頁
  • 2003年6月 発行
  • ISBN978-4-525-12331-4
  • ISBN4-525-12331-1

概要

理学・作業療法士をめざす方をはじめ,コ・メディカルの学生にとって,生理学的な思考から運動学を理解できる教科書.運動生理学とは何か,その基本的な「しくみ」「なりたち」を図を多用しながら講義形式で読みやすく解説.専門知識を理解するためのベースとなる一冊.医学部・歯学部,薬学部,体育学部などの参考書としても最適.

序文

本書は,著者が東京医科歯科大学をはじめ,いくつかの大学の医学部学生と,リハビリテーション医療系の学生に対して行った講義をベースに,加筆,補足をほどこしてまとめあげた.生理学や運動学(キネジオロジー)に関してはすでに多数の教科書があるが,それにもかかわらず,コメディカルの学生だけでなく医学生にとっても,運動学やそれに関係する生理学の概念をつかもうとするとき,しばしば困難を感じることが少なくないとおもわれる.
そのような状況を察して,筆者は,講義をするにあたっては形式的な生理学を紹介するよりも,人体機能にかかわる生理学的現象がどのように認識され,その“からくり”がどのようにして解き明かされてきたか,を示そうと心がけている.本書でもその講義の雰囲気と臨場感をできるだけ保つようにつとめた.したがって,本書の“ことばづかい”や“解説のしかた”をふくめて,通常の教科書とはやや趣きのちがったものになっている.読者にそのニュアンスを味わってもらえたらまことに幸いである.
内容的には,上に述べたことを考慮したうえで,人体運動学の生理学的基礎の解説を目的とした入門書である.まず,運動の一般的定義との比較から“身体の全身的ふるまい”としての人体運動の特性を考えたうえで,骨格系→骨格筋→筋の収縮機構→興奮収縮連関→筋収縮運動の神経性調節という流れにそって,「運動の生理学」を体系づける方法をとった.すなわち,本書では語句の単なるカタログをつくったり,要点を書き出したりすることでなく,身体運動の生理学的枠組みをとらえることに意を注ぎ,日常的に経験し,直接的に観察できる現象にも注意を向けながら,古典的な概念をふまえて,身体運動という現象のなりたちの生理学的描像がどのようにして浮き彫りにされてきたかについて実験事実をできるだけあげながら解説し,それに対する考え方の流れを示した.いくつかの事項については,いろいろな見方から説明をくり返したのはそのためである.したがって一般的な読みものとしてもじゅうぶんこたえられる内容になっているとおもう.本書を執筆することを計画したときは,運動にともなう呼吸,循環動態もふくめるつもりであったが,時間的に果たせなかった.次の機会にゆずることにしたい.
また,STEP UP欄を設けて関連事項について補足的な説明を加えた.これは,主に講義の途中で聴講している学生からの質問に応じたものからテーマを選び,より理解をふかめるために記述したものである.その中には物理学の初歩的なことがらについてのおさらいもふくまれているが,これは,運動学を学ぶ学生のなかで,高校時代に物理を履修していない人達を考慮したものである.もうひとつ気をつけたことは,各節のタイトルにはそれぞれの節のkey wordsを用い,かつ,それらの節を通し番号にしたことである.これによって,各節のタイトルをながめるだけでもkey wordsと本書の流れがつかめると思う.文献として挙げなかったが,講義のために用意したノートや本稿をつくる(というよりは筆者の勉強の過程というほうがよいだろう)に当たっては,数多くの書物や論文,さらには学生時代以来講義やセミナーなどで聴いたことなどを引用し,参考にしている.
本書をまとめ,出版にするにあたっては,原稿の推敲に当って貴重な意見を寄せてもらった琉球大学医学部の酒井哲郎教授に感謝する.また,南山堂編集部の岩井一夫氏に負うところが大である.さらに,同編集部の齋藤代助氏にご協力をいただいた.あわせて深い謝意を表したい.

2003年 春 伊豆にて 神野 耕太郎


目次

講義1 運動とはどういうことか?

§1 物体はどのように動くか
  運動学と力学
  質点
  速度
  ・STEP UP 1 運動状態の物理的表現

§2 “生きもの”の運動

§3 ヒトの運動の性状
  ヒト運動の要求性
  4足歩行から2足歩行へ
  歩行と走行
  ヒトの“からだ”の重心
  ・STEP UP 2 質量と重さ
  運動学からもうひとつの運動学へ

講義2 骨格系の機能的なりたち

§4 『骨格系』の「骨組み」
  脊柱
  下肢骨
  上肢骨
  ・STEP UP 4 力の合成と分解

§5 関節
  基本的構造
  関節の種類
  2〜3の例

§6 骨の内部構造
  骨膜
  骨質
  骨髄
  軟骨組織

§7 骨の力学的適応構築
  緻密骨
  海綿質骨

§8 骨のダイナミックス
  骨の再構築
  骨質の力学的構築のなぞ
  破骨細胞と骨芽細胞

講義3 骨格筋の運動

§9 『骨格』と『筋』
  筋の骨への張りつき
  筋の起始と停止

§10 伸筋と屈筋

§11 拮抗筋と協調筋

§12 in vivo での筋収縮パターン
  求心性収縮・遠心性収縮・静止性収縮
  相動性収縮と緊張性収縮

§13 白筋と赤筋

§14 歩行と立位姿勢
  歩行
  立位姿勢

§15 骨格と筋のてこ作用
  ・STEP UP 5 力のモーメントと“てこ”の原理

§16 ひとつの例:前腕のてこ作用

講義4 筋収縮

§17 摘出した筋収縮のパターン
  神経-筋標本
  筋の短縮と加重
  電気刺激によらない持続性の収縮

§18 筋のメカニカルな性質
  等張性収縮
  等尺性収縮
  単一刺激での等張性収縮と等尺性収縮
  筋の粘弾性モデル

§19 筋収縮にともなう熱の発生
  静止熱・初期熱・回復熱
  Fennの実験
  Hillの実験
  荷重−速度関係と熱発生のつながり

§20 エネルギー源としてのATP
  ATP
  ローマン反応
  筋収縮にともなうATP消費の実証
  ・STEP UP 6 ATPの生合成とエネルギー代謝

§21 筋の構造と収縮のメカニズム
  まえおき
  横紋
  筋収縮にともなう横紋の変化
  滑りモデル
  筋の構造についてのまとめ

§22 生化学的アプローチ
  ことの起こり
  セント・ジョルジーの実験
  『アクチンとミオシン』と『太いフィラメントと細いフィラメント』の対応性

§23 収縮タンパク質
  ミオシン
  アクチン
  ・STEP UP 7 矢尻構造
  トロポミオシン

§24 滑りモデルの分子メカニズム

§25 収縮の制御
  ことのはじまり
  トロポニン
  収縮・弛緩の制御のすじがき

講義5 興奮と収縮の連関

§26 骨格筋細胞の構成

§27 筋細胞膜の電気生理学的特性
  静止電位
  活動電位
  ・STEP UP 8 等価回路

§28 膜の脱分極と収縮の関係
  ことのはじまり
  HodgkinとHorowiczの実験

§29 興奮にともなう細胞内カルシウムの動き

§30 筋の弛緩と小胞体のかかわりあい
  弛緩因子
  ミクロソーム小胞によるカルシウムイオンの取り込み

§31 細胞内カルシウムイオンの制御
  筋小胞体
  筋小胞体からのカルシウムイオンの遊離
  細胞膜からの筋小胞体へのつながり
  三つ組構造
  荷電移動説charge movement 説
  微細構造的・分子生物学的うらづけ
  “まとめ”と“おさらい”

講義6 筋収縮運動の神経性調節

§32 筋の運動神経支配
  運動神経
  神経-筋接合
  ・STEP UP 9 アセチルコリンの放出
  神経支配比と神経筋単位
  筋電図

§33 脊髄反射
  反射と反射弓
  脊髄神経
  筋紡錘と腱器官
  屈曲反射と交叉性伸展反射
  伸張反射
  ・STEP UP 10 ネガティブフィードバックシステム
  相動性伸張反射と持続性伸張反射
  膝蓋腱反射
  伸張反射における“てこ”の効果
  相反性抑制と反回性抑制
  腱器官による反射
  〔付〕II群線維からの反射
  ・STEP UP 11 サイズの原理

§34 γ運動ニューロン

§35 脊髄反射の制御
  上位中枢から脊髄ニューロンへの接続様式
  a−g連関

§36 脳幹レベルでの反射
  姿勢反射
  歩行運動

§37 高位中枢と下行路
  運動中枢
  一次運動野
  錐体路と錐体外路
  大脳皮質・大脳基底核−錐体外路

§38 小脳と運動制御
  区分と機能構成のあらまし
  小脳の破壊症状

§39 随意運動のメカニズムへ向けての終講の弁

 参考文献
 索  引