書籍カテゴリー:分子医学

生命科学から創薬へのイノベーション
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The Frontiers in Life Sciencesシリーズ
生命科学から創薬へのイノベーション

1版

  • 独立行政法人医薬基盤研究所 理事長/大阪大学名誉教授 米田悦啓 編
  • 大阪大学大学院薬学研究科長/教授 堤 康央 編
  • 独立行政法人医薬基盤研究所 プロジェクトリーダー 石井 健 編

定価:5,616円(本体5,200円+税8%)

  • B5判 202頁
  • 2014年10月 発行
  • ISBN978-4-525-13451-8

概要

アルツハイマー病,糖尿病,循環器疾患,がんなどで新規の創薬標的が同定されたほか,計算生物学やドラッグデリバリー,iPS細胞,MD臨床試験などによる迅速で確実な創薬のための革新的技術の開発が進んでいる.本書では,標的分子の探索から前臨床試験までの最先端の知見を第一線の研究者がわかりやすく解説.国内の医薬品開発成功例も紹介!

序文

 最近,世界に冠たる優れた日本の生命科学の基礎研究の成果が,社会に十分に還元されていないという議論が強くなされるようになってきた.また,生命科学の研究分野に進もうとする若者の数が以前と比べて減ってきているという指摘もある.このような状況下で,基礎生命科学研究の優れた成果を取り入れて,社会的に大きな変革をもたらすイノベーションにつなげるには,どのようにすべきかを考えるとともに,将来のイノベーションを支える,自由な発想に基づく基礎研究の重要性を再認識し,それを継続的に発展させるためには,何をなすべきかを真剣に考える必要がある.
 イノベーションのひとつに「創薬」があり,多くの場所で「創薬」に関する議論がなされている.2013年より,国家プロジェクトとして,大学などのアカデミアの優れた研究成果を創薬にまでつなげようとする,「創薬支援ネットワーク」というオールジャパンの創薬支援体制が本格的に始動した.このような状況を踏まえ,本書は,The Frontiers in Life Sciences シリーズの1冊として,生命科学の基礎研究者から専門医を含む臨床研究者までを広く対象に,「創薬」を多角的に捉えるための本格的専門書として企画された.
 創薬は,越えるべき多くのハードルが存在する,きわめて複雑な作業であり,個人の研究者の努力だけでは成功に至ることは難しく,さまざまな分野の研究者の叡智を結集する必要がある.そこで,本書では,医歯薬学の基礎研究ならびに臨床研究の優れた成果から,創薬に向けて,現在,意欲的な取り組みをしている研究者,新たな創薬に向けた技術革新を目指している研究者,さらには,これまでに自身の研究成果を創薬へつなげることを成し遂げた研究者に,それぞれの立場からの情報を発信していただいた.創薬が成功するためには,これからのわが国を支える若者をはじめ,第一線の研究者が,生命科学の基礎研究から創薬研究への流れの全体像をきちんと理解することが重要であり,本書がその手助けになることを期待している.さらに,本書がわが国における,「創薬科学」という新しい学問体系構築につながることを強く願っている.
 今後,わが国の創薬研究が活性化すれば,生命科学の基礎研究から応用研究,臨床研究まで,幅広い分野の研究が継続的に発展することにつながると強く信じており,本書がその一助になれば幸いである.

2014年9月
編者を代表して          
独立行政法人 医薬基盤研究所 理事長
米田 悦啓

目次

第Ⅰ部 はじめに

第1章 創薬への長い道のり 米田悦啓
  1 創薬への第一歩
  2 薬剤候補物質のスクリーニング
  3 ヒット物質の最適化
  4 前臨床試験


第2章 創薬支援戦略について 榑林陽一
  2-1 創薬研究の「死の谷」
  2-2 バイオベンチャーの役割
  2-3 アカデミア発創薬の支援
  2-4 創薬支援ネットワーク


第Ⅱ部 医学・生命科学研究から新たな創薬開拓へのアプローチ

第3章 認知症撲滅に向けたアルツハイマー病に対する先制医療法の開発 富田泰輔
  3-1 アミロイドβタンパク質とアルツハイマー病
  3-2 βセクレターゼ
  3-3 γセクレターゼ
  3-4 Aβ分解メカニズムと創薬
  3-5 アルツハイマー病発症のリスク因子


第4章 生理活性ペプチド グレリンの循環器疾患治療への応用の可能性 宮里幹也 徳留 健 岸本一郎 寒川賢治
  4-1 グレリン
  4-2 グレリン受容体
  4-3 グレリンの心血管作用
  4-4 グレリンの循環器疾患に対する治療的効果
   1.心不全に対するグレリンの効果
   2.心筋梗塞に対するグレリンの効果
   3.肺高血圧症に対するグレリンの効果


第5章 代謝内分泌関連疾患からのアプローチ─アディポネクチン受容体を標的とした健康長寿薬開発への挑戦─ 山内敏正 岩部美紀 岩部真人 門脇 孝
  5-1 肥満によるインスリン抵抗性におけるアディポカインの病態生理的意義
  5-2 肥満・高脂肪食負荷による血中アディポネクチンレベルの低下
  5-3 アディポネクチンの作用
   1.動脈硬化に対するアディポネクチンの作用
   2.骨格筋におけるアディポネクチンの抗糖尿病作用メカニズム
   3.アディポネクチンの脂肪酸燃焼促進メカニズム
  5-4 アディポネクチン受容体AdipoR1およびAdipoR2の同定
  5-5 アディポネクチン受容体の病態生理的意義
   1.肝臓におけるアディポネクチン受容体の病態生理的意義
   2.骨格筋におけるアディポネクチン受容体の病態生理的意義
  5-6 アディポネクチン受容体アゴニストの開発


第6章 がんゲノム解析がもたらす創薬 間野博行
  6-1 直接的な発がん原因の探索
  6-2 EML4-ALKの発見からクリゾチニブの実用化へ
  6-3 さらなる展開
  6-4 患者検体のクリニカルシークエンス


第7章 抗「眠り病」薬アスコフラノン─自然からの贈り物─ 北 潔 志波智生 稲岡ダニエル健 原田繁春
  7-1 抗寄生虫薬の特徴
  7-2 眠り病について
  7-3 シアン耐性酸化酵素(TAO)とアスコフラノン
   1.シアン耐性キノール酸化酵素(AOX)
   2.自然からの贈り物アスコフラノン
  7-4 TAOの立体構造とアスコフラノンの阻害作用機構
   1.TAOの結晶化とX線解析
   2.TAOとアフリカトリパノソーマ症の薬剤候補化合物との複合体構造
  7-5 地球レベルの創薬


第8章 自然免疫研究からのアジュバント開発へ 小檜山康司 石井 健
  8-1 自然免疫受容体
  8-2 核酸による自然免疫応答
  8-3 TLR9リガンドを用いた新規アジュバントの開発


第9章 粘膜免疫システムの多面的機能を応用したワクチン開発の現状と未来 鈴木英彦 國澤 純
  9-1 国内外における感染症に対する粘膜ワクチンの開発
  9-2 粘膜ワクチンを介した免疫誘導のメカニズム
  9-3 粘膜ワクチンのためのワクチンデリバリーシステムの開発
  9-4 抑制型免疫システムを用いた新しい粘膜ワクチン


第10章 酸化ストレス認識分子基盤と創薬応用 辻田忠志  山本雅之
  10-1 ストレス応答とKeap1-Nrf2系
  10-2 Keap1-Nrf2系によるストレス応答機構
  10-3 Keap1-Nrf2系の個体レベルでの解析
  10-4 Keap1-Nrf2系を利用した疾患の化学予防
  10-5 Keap1-Nrf2系を標的とした疾患治療法の概念実証
  10-6 Nrf2活性化剤
   1.サルフォラフェン
   2.CDDO-Me
   3.ジメチルフマル酸
  10-7 がんとNrf2活性阻害薬
  10-8 これからのKeap1-Nrf2系創薬について


第Ⅲ部 新たな創薬のための革新的技術開発

第11章 低分子化合物スクリーニング技術開発─アカデミアでの大規模スクリーニングを可能にするアッセイシステムの開発─ 熊谷和夫 長野哲雄
  11-1 アカデミアで大規模スクリーニングを行うための取り組み
  11-2 アカデミアのスクリーニング研究が直面する現実的な課題
  11-3 糖転移酵素とキナーゼに対する高感度で高精度かつ低コストのアッセイ法の開発
  11-4 蛍光プローブを用いたアッセイ


第12章 計算生物学によるシステムの理解から創薬へ 水口賢司
  12-1 データ駆動型モデリング
  12-2 創薬初期における統合データベースの活用
  12-3 タンパク質の構造や相互作用のモデリング
  12-4 個々のモデルからシステムへ


第13章 アカデミアからの抗体医薬開発に向けて 向 洋平
  13-1 抗体医薬開発におけるわが国の現状
  13-2 アカデミアからの抗体医薬開発を加速する基盤技術
   1.アカデミア創薬における抗体医薬開発の流れ
   2.ファージ抗体ライブラリー
   3.抗体プロテオミクス
  13-3 将来展望─アカデミアからの抗体医薬開発を加速するには─


第14章 核酸医薬開発 森廣邦彦 小比賀聡
  14-1 核酸医薬とは
   1.アンチセンス核酸
   2.核酸アプタマー
  14-2 核酸医薬開発の問題点
  14-3 核酸医薬開発に向けた取り組み
   1.核酸医薬素材の開発
   2.核酸創薬スクリーニング技術の開発
   3.機能性を制御可能な核酸医薬の開発


第15章 ヒト多能性幹細胞の利用技術開発 古江-楠田美保
  15-1 ヒト多能性幹細胞への期待
   1.ヒト多能性幹細胞とは
   2.創薬研究における利用への期待
  15-2 標準化
   1.ヒト多能性幹細胞の標準化
   2.幹細胞バンクの標準化
   3.ヒト多能性幹細胞の品質変動
  15-3 発生毒性への応用
  15-4 ヒト多能性幹細胞由来分化細胞を用いた毒性評価系の構築
  15-5 評価系構築のための培養環境整備


第16章 構造生命科学の応用 中村春木
  16-1 タンパク質受容体の構造情報─創薬もビッグデータ時代に─
  16-2 柔らかいタンパク質─相手によってかたちを変える─
  16-3 ドッキング計算手法の進展─スクリーニングから結合能の推定へ─


第17章 マイクロドーシング 杉山雄一
  17-1 マイクロドース臨床試験が生まれてきた背景
  17-2 マイクロドース臨床試験の実施条件
  17-3 どういうときにマイクロドース臨床試験が必要なのか?
  17-4 マイクロドース臨床試験の問題点およびNEDOプロジェクト


第18章 ドラッグデリバリー 三浦 裕 片岡一則
  18-1 ドラッグデリバリーシステムとナノキャリア
  18-2 EPR効果
  18-3 標的指向性デリバリーシステム
  18-4 ドラッグデリバリーシステムによる耐性回避機構


第19章 先端医薬の安全性評価の現状と将来展望 吉岡靖雄
  19-1 安全性評価の現状
   1.核酸医薬の安全性評価
   2.タンパク質医薬の安全性評価
   3.ワクチンの安全性評価
   4.ナノ医薬の安全性評価
  19-2 新たな安全性解析手法
   1.副作用の解析・予測に資する安全性バイオマーカー
   2.動物実験代替法
   3.体内動態解析


第Ⅳ部 前臨床研究から臨床応用へ

第20章 疾患モデルマウスと遺伝子改変技術 磯谷綾子 伊川正人
  20-1 実験動物としてのマウス
  20-2 疾患モデルマウスの種類
   1.病態誘導モデルマウス
   2.近交系マウス
   3.自然発症突然変異マウス
   4.突然変異誘発マウス
   5.遺伝子組換えマウス
  20-3 遺伝子改変技術
   1.トランスジェニックマウス
   2.ノックアウトマウス
   3.次世代遺伝子改変マウス(ゲノム編集)
  20-4 疾患モデルマウスの活用


第21章 疾患モデル動物の開発と活用─サル疾患モデル─ 柴田宏昭 保富康宏
  21-1 エイズモデル
  21-2 結核モデル
  21-3 マラリアモデル


第22章 レギュラトリーサイエンス 川西 徹
  22-1 日本の科学技術政策と革新的医薬品などの開発環境整備に向けたレギュラトリーサイエンスの重要性の指摘
  22-2 革新的医薬品の開発環境整備のためのレギュラトリーサイエンス
   1.欧米の医薬品開発における規制指針の役割
   2.日本の医薬品開発環境整備に必要な規制指針
  22-3 革新的医薬品の開発環境整備のためのレギュラトリーサイエンスの課題
   1.既存の規制指針に関する考察
   2.各医薬品に関する評価の課題
   3.ヒト初回投与試験に先立ち考慮すべきポイント
  22-4 レギュラトリーサイエンスを担う人材の育成に向けた取り組み


第Ⅴ部 成功への歩み

第23章 トシリズマブ─日本初の抗体医薬─ 西岡紘治 田中敏郎
  23-1 IL-6の機能の多様性
  23-2 IL-6のシグナル伝達経路
  23-3 IL-6と疾患
  23-4 IL-6阻害療法確立までの道
  23-5 今後の展開と課題


第24章 水痘生ワクチン 山西弘一
  24-1 水痘ワクチン開発のきっかけ
  24-2 水痘の原因ウイルスの特徴
  24-3 水痘と帯状疱疹の臨床
   1.水痘の臨床
   2.帯状疱疹の臨床
  24-4 水痘ワクチンの開発手法とワクチンウイルスの性状
  24-5 水痘予防ワクチンによる初期臨床テスト
  24-6 ワクチン開発の困難と認可されるまでの困難の克服
  24-7 ワクチン認可後から現在まで
  24-8 帯状疱疹の予防


第25章 モガムリズマブ 鈴木 進 石田高司 吉川和宏 上田龍三
  25-1 モガムリズマブの標的抗原
  25-2 モガムリズマブ開発の経緯
   1.マウス抗ヒトCCR4モノクローナル抗体KM2160の開発
   2.ポテリジェント技術の開発
   3.NOGマウスを用いたATLモデルマウスの確立と治療実験
   4.治験,上市
  25-3 固形がんに対する治療への応用
  25-4 わが国におけるトランスレーショナル・リサーチのありかた
   1.トランスレーショナル・リサーチのベンチャーモデルは可能か?
   2.アカデミアと製薬企業との連携
   3.国からの創薬支援,トランスレーショナル・リサーチ支援

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