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カテゴリー: 分子生物学  |  分子医学

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The Frontiers in Life Sciencesシリーズ

オートファジー 分子メカニズムの理解から病態の解明まで

1版

東京工業大学科学技術創成研究院 栄誉教授 大隅良典 監修
大阪大学大学院生命機能研究科/医学系研究科
栄誉教授 吉森 保 編
東京大学大学院医学系研究科 分子生物学 教授 水島 昇 編
東京工業大学生命理工学院 准教授 中戸川 仁 編

定価

6,160(本体 5,600円 +税10%)


  • B5判  241頁
  • 2018年1月 発行
  • ISBN 978-4-525-13481-5

その分子機構の解明から疾患との関連の最前線へ

オートファジーの分解/リサイクルの分子機序,神経変性疾患・がん・2型糖尿病・心不全・感染症などとの関わりが明らかにされ,2016年ノーベル賞受賞を契機に着実な基礎研究の重要性が注目されている.オートファジー研究の最新知見について第一線で活躍する研究者がわかりやすく解説した待望のレビュー集.

  • 序文
  • 目次
序文
 2016年12月10日,ストックホルムのコンサートホールにおいて,大隅良典 東京工業大学栄誉教授はメダルと賞状を受け取ると,カール16世グスタフ スウェーデン国王と固く握手を交わした.大隅博士がノーベル生理学・医学賞を受賞した瞬間である.受賞理由は,「オートファジーのメカニズムの発見」であった.
 大隅博士から授賞式に招待された私たちは,この光景を万感の想いとともに見つめていた.この20年余りの分野の激動の歴史が思い起こされた.1996年に大隅博士は,現 自然科学研究機構 基礎生物学研究所に教授として着任.同年に大隅先生に呼ばれた吉森が助教授になり,翌年には水島が博士研究員として研究室に加わった.ノーベル賞受賞理由の主要部分をなす酵母のオートファジー関連遺伝子ATG群の同定から間もないころである.40年近く解明が進まず,暗黒時代が続いていたこの分野はこの後大きく変容していくことになる.その当時,オートファジー(日本語では自食作用)は細胞生物学においてもほとんど忘れかけられた存在で,「辞めたくなる作用ですか?」,「いえ辞職ではなく自食作用です」と冗談のような会話を専門外の研究者と交わしていた.しかし,私たちには,マイナーな分野であることの引け目より,前人未踏のフロンティアに乗り出していく昂揚のほうが勝っていた.役に立つかどうかも気にしておらず,純粋に謎を解き明かしたいという一念であった.
 その後,大隅研を中心に活発なオートファジー研究が国内外で行われるようになった.その結果,ATG遺伝子群がヒトを含む哺乳類にも保存されていることが明らかになり,それを契機に本分野は哺乳類を対象とした研究にも拡大していった.そして,細胞内の分解/リサイクルシステムであるオートファジーが細胞の恒常性を維持し,ひいてはさまざまな疾患の抑制に重要であることが判明してきたことで,この10年間に本分野は加速度的に発展を遂げ,いまなお成長期にある.大隅博士をはじめとするわが国の研究陣は,それに大きく貢献してきた.
 現在,オートファジーに対する注目度は飛躍的な高まりをみせている.基礎研究から明らかになってきたことをふまえた,臨床応用を見据えた研究も多方面で進められており,オートファジーを標的とする治療法の開発などに期待が寄せられている.そういった状況に鑑みて,本書では,監修者である大隅博士が提唱されている「基礎研究の重要性」を再認識すべく,改めてオートファジー研究のこれまでの歩みを振り返り,そのうえでオートファジーの分子メカニズム,生理機能,疾患とのかかわりの最新知見について,オートファジー研究の最前線で意欲的に取り組まれている先生がたに解説いただくこととした.本書が,世界を牽引しているわが国のオートファジー研究のさらなる発展に資することを願っている.
 本書は,オートファジー分野の最新知見をほぼ網羅しているとはいえ,日進月歩の生命科学のなかでも本分野の展開は急速であり,本書もすぐにも古びる運命にあるやに思われるかもしれない.しかし,膨大な数の論文を一から読まずとも,まずは本書を読み,それ以降の文献にあたることがスタンダードとなるなら編者として望外の喜びである.

2017年11月吉日
編 者
目次
総 論   (吉森 保)
 1 オートファジーとは何か
 2 オートファジー関連因子と基本メカニズム
  1.オートファジーを駆動・制御するタンパク質
  2.オートファゴソーム膜の起源
 3 オートファジーが関連する疾患


第Ⅰ部 オートファジー研究のこれまでの歩み
第1章 オートファジー研究の歴史(ATG以前)   (上野 隆)
 1-1 リソソームの発見からオートファジーの概念の確立まで
 1-2 プレATG時代のオートファジー研究の成果
  1.オートファジーの飢餓誘導と非選択性
  2.グルカゴンとインスリンによるオートファジーの調節
  3.アミノ酸によるオートファジーの調節
  4.培養細胞によるオートファジー研究
  5.オートファゴソーム膜の起源を巡って

第2章 酵母が切り開いたオートファジー研究の曙   (野田健司)
 2-1 酵母のオートファジー研究の源流
 2-2 酵母におけるオートファジーの発見
 2-3 apg変異株の単離
 2-4 APG遺伝子の同定
 2-5 ATGへの統合
 2-6 Atg間の関係性の氷解


第Ⅱ部 オートファジーの分子機構
第3章 オートファジーの誘導と抑制をつかさどる2つのキナーゼAtg1/Ulk1とTORC1 (荒木保弘・野田健司)
 3-1 富栄養下でオートファジーが抑制される仕組み
  1.哺乳類TORC1のアミノ酸感知機構
  2.出芽酵母のTORC1活性化経路
  3.Rag-Ragulatorに依存しないTORC1活性化経路
  4.TORC1の基質
 3-2 飢餓でオートファジーが誘導される仕組み
  1.ATG遺伝子の発現誘導
  2.Atg1/Ulk1キナーゼの活性化
  3.Atg1/Ulk1キナーゼの基質

第4章 オートファゴソームの形成における膜動態のメカニズム   (中戸川 仁)
 4-1 Atgタンパク質の分子機能
 4-2 Atgタンパク質のオートファゴソーム形成部位への集積
 4-3 オートファゴソームの膜の源:小胞体のオートファゴソーム形成への関与

第5章 哺乳類細胞におけるオートファゴソーム成熟の分子機構   (小山-本田郁子・水島 昇)
 5-1 幕開け:オートファゴソーム成熟の分子機構解明へ
 5-2 オートファゴソームの閉鎖
 5-3 オートファゴソームの輸送
 5-4 リソソームとの融合
 5-5 リソソーム酵素による分解
  Column オートファゴソーム内膜の分解をとらえた!
  5-6 オートファゴソームの成熟機構に残された課題

第6章 オートファゴソームの内膜分解と分解産物の再利用に機能する分子装置   (関藤孝之)
 6-1 オートファゴソーム内膜小胞の分解
 6-2 液胞/リソソームからの分解産物の排出・再利用
  1.リソソームにおけるアミノ酸トランスポーターの発見
  2.AAAPトランスポータ
  3.Atg22
  4.PQループタンパク質
  5 オートファジー分解産物の再利用に関する研究の展望
  Column 液胞を巡る研究

第7章ATG分子群の構造と機能   (野田展生)
 7-1 Atg1/ULK複合体
 7-2 オートファジー特異的PI3K複合体
 7-3 Atg結合系

第8章 ミクロオートファジー   (奥 公秀・阪井康能)
 8-1 ミクロオートファジー研究の流れ
 8-2 ミクロオートファジーの分子機構
 8-3 ミクロオートファジー研究の課題と展望

第9章 出芽酵母の選択的オートファジー   (鈴木邦律)
 9-1 選択的オートファジーの足場タンパク質:Atg11
 9-2 Atg11依存的選択的オートファジー
 9-3 Atg11非依存的な選択的オートファジー

第10章 哺乳類選択的オートファジー概論   (一村義信・小松雅明)
 10-1 選択的オートファジー発見の歴史
 10-2 選択的オートファジーとは
 10-3 ユビキチンシグナルとコアATGタンパク質
 10-4 レセプタータンパク質
 10-5 選択的オートファジー各論
 10-6 選択的オートファジーと連動したシグナル伝達

第11章 ミトコンドリア分別・除去システムの基本原理   (岡本浩二)
 11-1 歴史的背景と意義
 11-2 マイトファジーをどうとらえるか
 11-3 分別標識タンパク質:レセプター
 11-4 分別標識タンパク質:ユビキチン
 11-5 多細胞生物の初期発生とミトコンドリア分解
 11-6 今後の展望:未解決の根本問題と新たな可能性
  Column 酵母が導く現象から分子理解への冒険

第12章 ゼノファジー:病原体の排除システム   (阿部章夫)
 12-1 病原細菌とゼノファジー
 12-2 ゼノファジーによる病原細菌の選択的排除
 12-3 病原細菌におけるゼノファジーの対抗戦略
  Column 細菌学者から見たゼノファジー


第Ⅲ部 オートファジーの生理機能
第13章 マウスでのATG の意義   (吉井紗織・水島 昇)
 13-1 マウスにおけるオートファジーの生理的意義
  1.胚発生
  2.全身でオートファジー関連因子を欠損するマウスの表現型
  3.組織特異的オートファジー不全マウスの表現型
 13-2 マウスにおけるATGのオートファジー以外のはたらき
  1.感染・炎症制御
  2.網膜色素上皮細胞でのレチノイドのリサイクル
  3.破骨細胞の波状縁形成と骨吸収

第14章 植物のさまざまな局面におけるオートファジーの生理機能   (吉本光希)
 14-1 非生物的ストレス適応
  1.栄養素のリサイクル
  2.高塩・乾燥・高温・低酸素ストレス適応
 14-2 植物免疫
 14-3 オルガネラ品質管理
  1.クロロファジー
  2.ペキソファジー
  3.レティキュロファジー
  4.マイトファジー

第15章 オートファジーと核酸代謝   (川俣朋子)
 15-1 非選択的オートファジーによるRNA分解と選択的なリボソーム分解(リボファジー)
 15-2 細胞内凝集体,RNA顆粒の分解(グラニュロファジー,アグリファジー)
 15-3 核および核小体の分解(ヌクレオファジー,PMN)
 15-4 病原体の分解(ゼノファジー),ウイルス分解とミトコンドリア分解
 15-5 RNautophagy/DNautophagy
 15-6 RNaseとDNase
 15-7 RNA/DNAの分解後の運命:細胞内輸送と細胞内の核酸代謝系との接点

第16章 栄養飢餓とオートファジー   (久万亜紀子)
 16-1 飢餓応答
 16-2 オートファジーと栄養供給
  1.タンパク質分解
  2.脂質分解
  3.グリコーゲン分解
 16-3 栄養によるオートファジーの制御
  1.ホルモン
  2.アミノ酸
  3.栄養応答性転写因子
  Column 新生仔マウスのオートファジー


第Ⅳ部 オートファジーと疾患・臨床応用
第17章 パーキンソン病の分子病態とオートファジー-リソソーム系の破綻   (佐藤栄人・服部信孝)
 17-1 孤発性パーキンソン病とミトコンドリア研究
 17-2 遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子とタンパク質分解異常
 17-3 遺伝性パーキンソン病とミトコンドリア品質管理の破綻
 17-4 パーキンソン病とLewy小体
 17-5 オートファジー-リソソーム系と封入体形成
 17-6 遺伝性パーキンソン病とリソソームの破綻

第18章 オートファジーと癌   (川端 剛・吉森 保)
 18-1 癌抑制遺伝子としてのオートファジー遺伝子
 18-2 癌の進行とオートファジー
 18-3 抗癌剤としてのオートファジー阻害剤
 18-4 オートファジー阻害剤の応用と問題点

第19章 オートファジーと代謝性疾患   (藤谷与士夫・福中彩子)
 19-1 膵β細胞におけるオートファジー
 19-2 脂肪細胞とオートファジー
 19-3 脂肪細胞のベージュ化とオートファジー
 19-4 肝細胞とオートファジー

第20章 オートファジーと老化   (中村修平・吉森 保)
 20-1 寿命制御経路で共通して必要なオートファジーの活性化
 20-2 インスリン/IGF-1シグナル
 20-3 TORシグナル
 20-4 カロリー制限
 20-5 生殖腺からのシグナル:生殖細胞除去
 20-6 ミトコンドリア機能抑制
 20-7 オートファジーの誘導による抗老化と寿命延長
 20-8 寿命制御におけるオートファジー制御因子
 20-9 オートファジー活性化による抗老化と寿命延長のメカニズム

第21章 オートファジーと心疾患   (種池 学・大津欣也)
 21-1 非ストレス下の心臓におけるオートファジー
 21-2 ストレス下の心臓におけるオートファジー
 21-3 炎症とオートファジー
 21-4 老化とオートファジー
 21-5 マイトファジー
  Column 筆者らの研究とオートファジー

第22章 オートファジーと腎疾患   (高橋篤史・猪阪善隆)
 22-1 定常状態でのオートファジー
  Column1 腎臓におけるオートファジーの歴史は古い!
 22-2 腎疾患におけるオートファジー
  Column2 リソソームの主要制御因子TFEB
 22-3 腎臓におけるオートファジー研究の展望
 22-4 腎臓におけるシャペロン介在性オートファジー(CMA)

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