書籍カテゴリー:薬理学

エース薬理学
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エース薬理学

1版

  • 大阪大学大学院医学系研究科生体システム薬理学 教授 金井好克 監修
  • 千葉大学大学院医学研究院薬理学 教授 安西尚彦 編集
  • 金沢大学医薬保健研究域 医学系細胞分子機能学 教授 安藤 仁 編集
  • 日本大学医学部薬理学 教授 浅井 聰 編集

定価:5,500円(本体5,000円+税10%)

  • 四六倍判 303頁
  • 2020年7月 発行
  • ISBN978-4-525-14071-7

概要

医学生のための視覚的に理解できる薬理学テキスト!

短時間で基礎医学を習得することが求められている医学生にむけて,重要なエッセンスを短時間で学べる薬理学テキスト.本書は医学教育モデル・コア・カリキュラムで求めるレベルに合わせ,CBT対策にもなるよう構成した.カラーの図を多用して視覚的に理解でき,コンパクトでわかりやすい.

序文

監修の序

 薬理学は,薬物などの化合物の生体への作用に基づいて生命現象や病態を捉えていくという,医学の他の分野にはない独特の物の見方を持っています.これによって,医学の歴史のなかで,多くの病態の解明とその治療に貢献してきました.薬が生体に作用してその効果を現すためには,作用標的に結合し,その標的の機能を変化させ,それによって生体に変化をもたらして病態を改善させることになります.薬理学では,このような薬が作用する過程を学習し,臨床での薬物治療を理解して実践していくための基礎知識を習得することが求められます.また,このように薬はなぜ効くか,なぜ限られた臓器だけに作用するのかという問題だけではなく,体内に投与された薬物はどのように体内を巡り,どのように処理されて行くのか,さらには2つ以上の薬物を併用した場合には作用や副作用はどうなるのかといった様々な問題を理解してないと薬物治療は実践できません.薬には,疾患を起こしている原因に直接作用して病態を改善するタイプのものもありますが,疾患の原因とは別の部分に作用し,疾患に伴って異常となった生体恒常性を回復させることで疾患の治癒を促すタイプのものもあります.このような多様な薬物について,それぞれがどこに作用して,生体機能をどのように変化させ,それがどのように病態の改善をもたらすのかを整理して理解していく必要があります.
 以上のように,薬理学は「薬と生体の相互作用」の総合的な理解を目的としていますが,薬の作用を理解するには,さらにその薬を適用する病態の理解と他の基礎医学の広い知識が必要になってきます.薬理学は,薬の作用を理解する学習のなかで基礎医学の知識を整理し直し,臨床医学への橋渡しをする役割も果たしています.そのような重要な科目である反面,短期間で膨大な医学知識を習得することが求められる現在の医学教育のなかで,広範な知識を効率よく身につけ,単なる暗記ではなく,実践的な知識として薬理学を定着させるための学習は容易ではありません.
 本書は,それを実践するにはどうしたら良いか,編著者の先生方の熱意と長い時間をかけた議論のもとに工夫を重ねて作られました.カラーの図を多用して視覚的に構成されており,学生は解説とわかりやすい図や表を参照して,効率良く薬理学のエッセンスを習得することができます.本書が,薬理学の学習の一助となることを期待してやみません.

2020年7月
大阪大学大学院医学系研究科生体システム薬理学 教授
金井 好克





 企画から4年の月日を経て,この度,「エース薬理学」を全国の医学部学生にお届けすることができる.2010年,ECFMG(Educational Commission for Foreign Graduates)が,全世界に向け「2023年から,世界医学教育連盟(World Federation for Medical Education:WFME)が示す国際基準による認証を受けていない医学部の卒業生には,米国の医師国家試験受験を認めない」と通告した.これに端を発する「2023年問題」は,まさにわが国の医学教育における“黒船"の来航となり,「国際基準に対応した医学教育認証制度の確立」をもって日本の医学教育の認証・評価を行う第三者機関「日本医学教育評価機構(Japan Accreditation Council for Medical Education:JACME)」が2016年に発足.わが国における従来の知識偏重型の医学教育から,グローバルな医学教育認証に対応した診療参加型臨床実習の充実を目指す動きが全国的に広がり,世界標準である「72週」の実習時間確保のため,多くの医学部でカリキュラムの見直しが行われた.その結果,薬理学を含む基礎医学の所謂「座学」と呼ばれる講義時間の大幅な短縮につながった.
 2004年,臨床研修必修化を骨子とする新医師臨床研修制度の導入時から既に叫ばれていた「臨床重視・基礎軽視」の傾向が「2023年問題」によりさらに拍車がかかるなか,われわれはどのように「薬理学」を教えて行くべきなのか? われわれのアイデンティティとも関わる薬理学教育を今後どうすればよいのか,その思いを語り合う場が必要という高知大学医学部 齊藤源顕教授の提案が契機となり,「医学部薬理学教育を語る会」が開催され,日本薬理学会のなかでも薬理学教育の見直しの機運が高まった.そのようななか,福岡大学医学部 岩本隆宏教授から南山堂を紹介されたところから,新たな薬理学教科書の編集をお引き受けした.
 学生主体のアクティブラーニング(能動的学修)が謳われる現行の医学教育モデル・コア・カリキュラムに完全に準拠し,短期間で膨大な基礎医学を効率よく習得することが求められる今の医学生のニーズを鑑みるところから企画が始まった.ボリュームが多く,基礎研究指向で難易度も高くなりがちな既刊の教科書とは異なり,本書で取り上げる薬物は,臨床で実際に使用されていることを重視し,選択してきた.また編集にあたり,解剖学,生理学,生化学,免疫学という基礎医学の知識を総動員した,臨床での投薬の根拠となる薬理作用のメカニズムの解説に念頭においた.カレントトピックや重要事項のコラムを散りばめ,重要なエッセンスを短時間で学べるようカラーの図を多用して視覚的に理解でき,コンパクトでわかりやすい書籍とし,薬理学の事前学習に資する,CBT対策にもなる,臨床実習に行った時にもくり返し振り返って眺めてもらえる,教科書を目指した.
 本書の作成にあたり,「医学部薬理学教育を語る会」のメンバーを中心に執筆をご担当頂いた.著者の先生方,そして根気よく何度も原稿や図表の校正をして頂いた南山堂の方々に深く感謝致します.

2020年7月
安西 尚彦
安藤 仁
浅井 聰

目次

Ⅰ.総論

 1 薬とは,薬理学とは

 2 生体内の情報伝達の基礎
  ▼受容体の種類とシグナル伝達
  01 イオンチャネル型受容体
  02 Gタンパク質共役型受容体
  03 cAMP産生系
  04 イノシトールリン脂質シグナル伝達系
  05 酵素型受容体
  06 核内受容体
  ▼物質輸送にかかわる分子
  07 イオンチャネル
  08 非選択性陽イオンチャネル
  09 トランスポーター

 3 薬物・毒物の用量反応曲線とその決定因子
  01 薬物の量・濃度と生体応答
  02 薬物・毒物の濃度反応曲線
  03 濃度・用量反応曲線を左右する諸因子

 4 薬物の受容体結合と薬理作用との定量的関連性および活性薬・拮抗薬
  01 薬物の受容体
  02 リガンド・受容体結合・効果器の応答
  03 受容体の平衡状態と細胞内情報伝達

 5 薬物の急性作用と依存形成
  01 オピオイド
  02 アルコール
  03 コカインおよびアンフェタミン

 6 ドーピングと薬
  01 禁止される物質
  02 競技力向上に繋がる作用
  03 代表的な禁止薬
  04 禁止表国際基準の構成と主な薬の例
(鈴木秀典)

 7 高分子医薬品・バイオ医薬品・抗体医薬品
  01 バイオ医薬品  35
  02 抗体医薬品と分子標的薬と生物学的製剤
  03 抗体医薬品の作用機序

 8 薬物アレルギー反応(アレルギー様反応)
  01 アレルギーの分類
  02 薬物アレルギーの主な症状
  03 薬物アレルギーを起こしやすい薬

 9 主な副作用
  01 臨床医学に基づく分類
  02 薬理学的作用に基づく分類
(浅井 聰)

 10 臨床試験
  01 創薬と製薬
  02 臨床試験と治験

 11 薬物の動態
  01 薬物の吸収,代謝,分布,排泄
  02 薬物動態に影響する因子
  03 薬物投与法とそれぞれの薬物動態
  04 薬物動態パラメーター
  05 薬物相互作用
  06 年齢による薬物治療の注意点
  07 臓器障害時の薬物治療の注意点

 12 薬理ゲノミックス
  01 薬物動態(PK)関連遺伝子
  02 薬力学的要因(PD)関連遺伝子


Ⅱ.各論

A 神経系の生理活性物質と受容体
 1 神経系の主な化学伝達物質

B 末梢神経作用薬の薬理作用
 2 コリン作動薬・抗コリン薬
  01 アセチルコリン(ACh)放出阻害薬
  02 アセチルコリン(ACh)分解阻害薬
  03 ムスカリン受容体(mAChR)作動薬
  04 ムスカリン受容体(mAChR)拮抗薬
  05 ニコチン受容体(nAChR)作動薬
  06 ニコチン受容体(nAChR)拮抗薬

 3 アドレナリン作動薬・拮抗薬
  01 カテコールアミン合成阻害薬
  02 カテコールアミン分解阻害薬
  03 カテコールアミン再取り込み阻害薬
  04 カテコールアミン
  05 αアドレナリン受容体作動薬
  06 αアドレナリン受容体拮抗薬(α遮断薬)
  07 βアドレナリン受容体作動薬
  08 βアドレナリン受容体拮抗薬(β遮断薬)

C 中枢神経作用薬の薬理作用
 4 抗精神病薬
  01 定型抗精神病薬(従来型,第1世代抗精神病薬)
  02 非定型抗精神病薬(新規,第2世代抗精神病薬)
  03 ドパミン受容体部分作動薬

 5 抗うつ薬,抗不安薬
  01 抗うつ薬
  02 気分安定薬
  03 抗不安薬

 6 パーキンソン病治療薬
  01 L-DOPA(レボドパ)
  02 ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体作動薬)

 7 認知症治療薬
  01 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
  02 NMDA受容体アンタゴニスト

 8 抗てんかん薬
  01 バルビツール酸系薬
  02 ヒダントイン系薬
  03 サクシミド系薬
  04 新世代薬

 9 鎮痛薬
  01 強オピオイド製剤(医療用麻薬)
  02 弱オピオイド製剤と拮抗薬(医療用麻薬と副作用対策)
  03 神経障害性疼痛薬

 10 全身麻酔薬
  01 吸入麻酔薬
  02 静脈麻酔薬
  03 ベンゾジアゼピン系全身麻酔薬
  04 オピオイド系鎮痛薬

 11 局所麻酔薬

 12 心不全治療薬
  01 ジギタリス製剤
  02 カテコールアミン系薬剤
  03 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)製剤
  04 その他の心不全治療薬

 13 虚血性心疾患治療薬
  ▼血管拡張薬
  01 硝酸薬
  02 ニコランジル
  ▼抗血小板薬
  03 COX阻害薬
  04 ADP受容体遮断薬
  05 PDE阻害薬
  06 その他の薬剤
  ▼抗凝固薬
  07 ヘパリン類
  08 ワルファリン
  09 直接経口抗凝固薬(DOAC):活性化第Ⅹ因子阻害薬
  10 直接経口抗凝固薬(DOAC):トロンビン阻害薬
  ▼血栓溶解薬
  11 t-PA
  12 u-PA

 14 抗不整脈薬
  01 Naチャネル遮断薬(Ⅰ群抗不整脈薬)
  02 β遮断薬(Ⅱ群抗不整脈薬)
  03 Ca拮抗薬(Ⅳ群抗不整脈薬)
  04 アデノシン
  05 Kチャネル遮断薬(Ⅲ群抗不整脈薬)

 15 降圧薬
  01 Ca拮抗薬
  02 アンジオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗薬(ARB)
  03 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
  04 β遮断薬(αβ遮断薬を含む)
  05 α遮断薬

 16 気管支拡張薬
  01 キサンチン誘導体

 17 潰瘍治療薬
  01 H2受容体拮抗薬
  02 プロトンポンプ阻害薬
  03 カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬(アシッドブロッカー)

 18 消化管運動作用薬
  01 クロライドイオンチャネル(ClC-2)活性化薬
  02 5-HT3受容体拮抗薬

 19 利尿薬
  01 ループ利尿薬
  02 チアジド系利尿薬
  03 アルドステロン拮抗薬
  04 バソプレシン受容体拮抗薬

 20 排尿障害治療薬
  ▼過活動膀胱治療薬
  01 抗コリン薬
  02 選択的アドレナリンβ3刺激薬
  ▼前立腺肥大症治療薬
  03 アドレナリンα1遮断薬
  04 5α還元酵素阻害薬
  05 ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬
  ▼勃起不全(ED)治療薬
  06 ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬

 21 骨疾患治療薬
  01 ビスホスホネート(BP)製剤
  02 ビタミンD製剤

 22 糖尿病治療薬
  01 インスリン製剤
  02 スルホニル尿素(SU)薬・速効型インスリン分泌促進薬
  03 インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬)
  04 αグルコシダーゼ阻害薬
  05 ビグアナイド薬
  06 SGLT2阻害薬

 23 脂質異常症治療薬
  01 スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
  02 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
  03 フィブラート系薬

 24 高尿酸血症治療薬
  01 コルヒチン
  02 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  03 尿酸合成阻害薬
  04 尿酸排泄促進薬

 25 抗炎症・解熱鎮痛薬
  01 非選択的COX阻害薬(NSAIDs)
  02 選択的COX-2阻害薬
  03 アセトアミノフェン

 26 免疫抑制薬
  ▼特異的免疫抑制薬
  01 カルシニューリン阻害薬
  02 mTOR阻害薬
  03 JAK阻害薬
  ▼生物学的製剤
  04 抗IL-2受容体抗体
  05 抗TNF-α抗体
  06 可溶性TNF-α受容体
  07 抗IL-6受容体抗体
  08 CD80/CD86結合タンパク質

 27 抗アレルギー薬
  01 抗ヒスタミン薬
  02 ロイコトリエン受容体拮抗薬

 28 副腎皮質ステロイド
  01 糖質コルチコイド薬

 29 抗菌薬
  01 β-ラクタム系抗菌薬
  02 グリコペプチド系抗菌薬
  03 マクロライド系抗菌薬,リンコマイシン系抗菌薬
  04 テトラサイクリン系抗菌薬
  05 アミノグリコシド系抗菌薬
  06 キノロン系抗菌薬

 30 抗ウイルス薬
  ▼抗ヘルペスウイルス薬
  01 抗ヘルペスウイルス薬
  ▼抗インフルエンザ薬
  02 抗インフルエンザ薬
  ▼抗HIV薬
  03 逆転転写酵素(RT)阻害薬
  04 インテグラーゼ阻害薬
  05 プロテアーゼ阻害薬
  06 その他の阻害薬
  ▼抗肝炎ウイルス
  07 抗HBV薬
  08 抗HCV薬

 31 抗腫瘍薬
  ▼化学療法薬
  01 アルキル化薬
   a マスタード類
   b ニトロソウレア類
   c その他
  02 代謝拮抗薬
   a 葉酸代謝拮抗薬
   b ピリミジン代謝拮抗薬
   c プリン代謝拮抗薬
  03 微小管阻害薬
   a ビンカアルカロイド系
   b タキサン系
  04 白金製剤
   a 第一世代:シスプラチン
   b 第二世代:カルボプラチン,ネダプラチン
   c 第三世代:オキサリプラチン
  05 トポイソメラーゼ阻害薬
   a トポイソメラーゼⅠ阻害薬
   b トポイソメラーゼⅡ阻害薬
  06 抗腫瘍性抗生物質
   a アントラサイクリン系
   b ブレオマイシン
   c マイトマイシンC
   d アクチノマイシンD
  ▼ホルモン療法薬
  07 抗エストロゲン薬
  08 アロマターゼ阻害薬
  09 プロゲステロン薬
  10 LH-RHアゴニスト
  11 LH-RHアンタゴニスト
  12 抗アンドロゲン薬
  13 CYP17阻害薬
  ▼分子標的薬
  14 抗EGFR抗体・EGFR阻害薬
   a 抗EGFR抗体
   b EGFR阻害薬
  15 抗HER2抗体・HER2阻害薬
   a 抗HER2抗体
   b HER2阻害薬
  16 抗VEGF抗体・抗VEGFR-2抗体・VEGFR阻害薬
   a 抗VEGF抗体
   b 抗VEGFR-2抗体
   c VEGFR阻害薬
   d マルチキナーゼ阻害薬
  17 mTOR阻害薬
  18 BCR-ABL阻害薬
  ▼免疫チェックポイント阻害薬
  19 抗PD-1抗体
  20 抗CTLA-4抗体