1版
定価:2,530円(本体2,300円+税10%)
概要
病気と薬の関係が分かる!国試過去問演習でしっかり身につく!
薬理学を学ぶには,まず薬を使う実務の場面をイメージするのが近道である.本書は疾患と薬を結び付けて解説し,必要に応じて生理学の知識を補っている.また,医療事故の事例なども紹介し,薬理学の重要性を実感できるように工夫している.看護学生をはじめ,コメディカルの学生にも十分に楽しめるテキストである.
21 世紀になってわが国の医療をめぐる環境変化が加速しています.たとえば,チーム医療という考え方にそって治療方針をチーム(医師や看護師を含む多職種から成る混成チーム)で共有することが必要になりました.これからは看護師がチームリーダーとして能動的な役割を果たすシーンが増えるでしょう.
さて,今後医療の世界に入ってくる若者を育てるための高校教育制度も激変しました.具体的には新しい学習指導要領にそった高校理科の再編成.平成 24 年度スタートなので,平成 27 年春には新課程修了者が誕生したはずです.履修課程全般ではなく生物基礎(旧課程の生物Ⅰ相当)と化学基礎(同じく化学Ⅰに相当)のみの履修で高校理科を卒業した人もいるのではないでしょうか.
しかし,高校理科(物理・化学・生物)の履修不足は少々やっかいな問題を引き起こします.癌と抗癌薬を例にして問題点を説明しましょう.癌は DNA が異常になり細胞の正常な構造と機能が破綻しかかった(あるいはすでに破綻した)状態ですが,DNA の複製と密接に関係した化学物質が抗癌薬として使われます.高校生物で DNA の複製はしっかり教えられていますが,ここを身につけていなければ,薬理学でいきなり DNA と抗癌薬の話が登場して冷や汗をかくことになります.
そこで,高校理科からの繋がり&橋渡しを最重要課題とした薬理の入門書をつくることにしました.「はじめる!つかえる!看護のための薬理学」というタイトルは薬の勉強を「はじめる」のに最適,臨地実習にも「つかえる」という意味です.
本書の内容を簡単に紹介します.第 1 章が本書全体のイントロダクション.薬理学を学ぶ理由と重要性を確認するのはもちろんですが,大学入学までに学んだ理科,大学入学後に学ぶ生理学,そして 2 章以降に共通した薬に関する重要事項が確認できます.第 2 章から第 6 章までが薬理の各論で,理科の学習範囲を確認してから薬の話に進める,必要に応じて関連する生理学や病理学を確認できるようにしました.紹介する薬の数はできるだけ抑えています.看護計算(看護師による薬用量計算)と法令については独立した 2 章(第 7 章と第 8 章)を設けました.正しい計算と法令遵守は医療事故防止の第一歩.国家試験では非常に重要視されています.すべての章に過去 10 年分から厳選した看護師国家試験の過去問題を例題や練習問題として取り上げました.国家試験対策の虎の巻にできると確信しています.
なお,本書は高校生の理科の知識があれば読めるようにまとめましたが,それでも理解が難しいときは,南山堂「基礎教養シリーズ」の「まるわかり!基礎物理・化学・生物」を併せ読んでいただければ大丈夫ということを強調しておきたいと思います.
2016年 晩秋
時政孝行
第1章 薬理ことはじめ
A 薬理学とは
B 薬とは
C 薬の名前
D 生理から薬理へ
F 薬理学の基礎
第2章 神経伝達物質に関連する薬
A アセチルコリン関連薬
B アドレナリン関連薬
C γアミノ酪酸関連薬
D ドパミン関連薬
E セロトニン関連薬
F モルヒネ関連薬
G 麻酔薬
H プリン受容体関連薬
I ヒスタミン受容体関連薬
J その他の薬
第3章 代謝に関連する薬
A 甲状腺ホルモン関連薬
B 性ホルモン関連薬
C インスリン関連薬
D 骨代謝関連薬
E ミネラルとビタミン
F 抗悪性腫瘍薬
G 脂質代謝関連薬
H 尿酸代謝関連薬
第4章 抗炎症薬,化学療法薬,消毒薬
A 薬としてのステロイドホルモン
B 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
C 抗リウマチ薬
D 抗菌薬
E 抗ウイルス薬
F 抗真菌薬
G 消毒薬
第5章 器官系にはたらく薬
A 心臓にはたらく薬
B 血管にはたらく薬
C 血液にはたらく薬
D 気道と肺にはたらく薬
E 胃腸にはたらく薬
F 腎臓にはたらく薬(利尿薬)
G 泌尿器系にはたらく薬
第6章 その他の薬
A 輸液(補液)
B お腹を整える薬
C 医療用ガス
第7章 看護計算
A 例題にチャレンジ
B さらに活用したい理科の知識
第8章 薬に関する法令
A 薬事法による医薬品の分類
B 医療ガスに関する法令
C 一般用医薬品と医薬部外品
D 薬 局
E 医薬品の表示と保管方法
F 麻薬と覚せい剤
G 向精神薬一覧
H 処方箋と服薬指導
I 薬にまつわる医療事故
付録 1 高齢者の身体的特徴
付録 2 小児・妊婦への与薬と注意
付録 3 救命救急