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カテゴリー: 感染症学  |  内科学一般

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飯塚シリーズ

飯塚イズムで学ぶ

流れがわかる!感染症診療の歩きかた

1版

飯塚病院感染症科 的野多加志 編集

定価

3,960(本体 3,600円 +税10%)


  • B6変型判  380頁
  • 2022年3月 発行
  • ISBN 978-4-525-16361-7

感染症診療の横断的なスキルを身につけるための一冊!

「1冊持っていればローテートの際に即戦力となる書籍」をコンセプトとした1冊。感染症診療の基本を学べるよう、総論では、感染症診療の原則ならびに感染症の予防戦略に関して系統的に解説。さらに、各論では、研修医が各科をローテーションすることを意識して部門や診療科ごとに分けた紙面構成とし、臓器をまたいだ横断的な診療スキルを身につけるべく、各疾患のポイントをまとめている。

  • 序文
  • 目次
  • 書評1
  • 書評2
序文
はじめに
 残念ながら日本では感染症診療の原則を系統的に学べる機会は多くはない.感染症は学問的に微生物学,臨床感染症学,疫学に大きく分けられるが,独立した臨床感染症学講座をもたない医学部もあるため,感染症に関する卒前教育には差がある.さらに,感染症専門医が在籍している病院も限られているため,卒後臨床研修でも系統的に学ぶ機会が少ない.たとえば,日本感染症学会は,300床以上の医療機関に最低1人の感染症専門医を配置する場合,3,000~4,000人の専門医が必要であるという試算を出している.しかし,2021年4月時点での専門医数は1,622人に留まっており,その多くは大都市圏に偏在している.そのため,臨床感染症学を学ぶ環境は全国で均一化されていないのだ.そうなると,感染症診療における臨床推論や診療の筋道を系統的に独学する必要が出てくる.
 また,世界に目を向けると,開発途上国の死因トップ 10 のなかに感染症が 5 疾患入っており,HIV,結核,マラリアを含めて感染症は世界の政策面においても重要な疾患であると位置づけられている.さらに,エボラウイルス病や新型コロナウイルス感染症をはじめとする動物由来の新興感染症の流行や,グローバル化に伴ったデング熱や麻疹の国内流行も起きている.今後も,人畜共通感染症,新興・再興感染症,薬剤耐性などヒトを取り巻く感染症の問題は途絶えることがないと考えられる.
 このように感染症診療の独学の必要性や感染症への関心が高まりつつある時代のなかで,本書では,感染症診療の基本を学べるように,まず総論では,系統的に感染症診療の原則ならびに感染症の予防戦略(予防策やワクチン)に関する解説を行う.さらに,各論では,初期研修医や専攻医が各科をローテーションする際に使用できるよう部門や診療科ごとに分けた紙面構成としており,臓器をまたいだ横断的な診療スキルを身につけるべく,各疾患のポイントをまとめている.本書が少しでも感染症診療のボトムアップならびに抗微生物薬の適正使用推進の一助になることを心より願っている.

2022 年冬 的野多加志
目次
第 1 部  総 論
Ⅰ.感染症とは
  1 感染症診療とは
Ⅱ.感染症診療の原則
  1 患者背景の把握
  2 感染臓器の特定
  3 原因微生物の推定
  4 抗菌薬の選択
  5 治療期間の決定
Ⅲ.感染症の予防
  1 感染対策~病原微生物の水際対策~
  2 ワクチン~備えあれば患いなし~

第 2 部  各論(状況別)
Ⅰ.救急科編
  1 ER での発熱の見方
  2 咽頭炎・扁桃炎
  3 インフルエンザ
  4 感染性腸炎
  5 HIV 感染症
  6 麻 疹
  7 風 疹
Ⅱ.内科編
  1 入院中の発熱の見方
  2 カテーテル関連血流感染症
  3 偽膜性腸炎
Ⅲ.外科編
  1 術後の発熱の見方
  2 急性虫垂炎
  3 胆嚢炎・胆管炎
  4 真菌感染症を疑うポイント~侵襲性カンジダ症~
Ⅳ.小児科編
  1 小児の発熱の見方
  2 水 痘
  3 流行性耳下腺炎
  4 手足口病
  5 パルボウイルスB19感染症

第 3 部  各論(臓器別)
Ⅰ.呼吸器内科・呼吸器外科編
  1 肺 炎
  2 肺膿瘍・膿胸
  3 結 核
Ⅱ.循環器内科・心臓血管外科編
  1 感染性心内膜炎
Ⅲ.消化器内科編
  1 大腸憩室炎
  2 肝膿瘍
Ⅳ.腎臓内科・泌尿器科編
  1 腎盂腎炎
  2 前立腺炎
  3 腹膜透析関連腹膜炎
  4 尿道炎:淋菌,クラミジア
  5 梅 毒
Ⅴ.産婦人科編
  1 骨盤内炎症性疾患
Ⅵ.脳神経内科・脳神経外科編
  1 細菌性髄膜炎:市中
  2 細菌性髄膜炎:院内
  3 脳膿瘍
Ⅶ.皮膚科編
  1 蜂窩織炎
  2 帯状疱疹
Ⅷ.整形外科・形成外科編
  1 壊死性軟部組織感染症
  2 化膿性筋炎
  3 骨髄炎
  4 化膿性脊椎炎
  5 化膿性関節炎
  6 人工関節感染症
Ⅸ.耳鼻咽喉科編
  1 急性副鼻腔炎
  2 急性中耳炎
  3 深頸部感染症
Ⅹ.眼科編
  1 細菌性眼内炎
Ⅺ.膠原病内科・血液内科編
  1 免疫不全と感染症
  2 好中球減少性発熱

column
  外科的ドレナージの勧め
  予防内服の効果は懐疑的
  インフルエンザワクチンのQ&A
  出勤停止期間の真実
  見過ごし厳禁! 菌血症とマラリア
  外科医の悩み
  心臓血管外科術後に出現する発熱を伴う非感染性の心嚢水・胸水貯留の正体とは !?
  無症候性細菌尿の治療適応
  血液透析患者とMRSA感染症
  認知症と思ったら……神経梅毒
  非淋菌性,非クラミジア性尿道炎
  精神疾患や急性薬物中毒と間違えるヘルペス脳炎
  海外帰りの慢性皮疹
  血液内科医からみた発熱時の悩みとその対応
書評1
感染症がこんなにも身近に勉強できる時代が来るなんて

武藤義和(公立陶生病院 感染症内科 主任部長)

 今から約15年前,私が研修医になった頃の感染症診療は,製薬会社の甘言に従うままの抗菌薬選択や,「とりあえず“強い”抗菌薬使っておけばいいよ」という周囲のもっともらしい言葉であり,自分もやがてその大河の一滴として流されていた.しかし,国立国際医療研究センター病院で的野多加志医師と出会い,“感染症診療”がいかに論理的で,根拠がきちんとしていて,あいまいさがないものかを学んだ.その的野医師ら飯塚病院の感染症科のメンバーによって書き下ろされた本書を読んで感じるのは“感染症診療を実際に行っている人間にしかわからない考え方”であった.総論では感染症に対する姿勢,思考方法をわかりやすくまとめてあり,その後の各論では状況別・臓器別に総論に沿った形で,実際に起こる病態の流れを汲みながら立ち止まることなく読み進めることができ,さながら砂漠で飢えた喉に岩清水が通るようにスーっと入ってくる.そしてどのチャプターでもスコアリングシステムや微生物の頻度,治療の種類や期間に至るまで過不足なく説明され,まるで自分がその病態を経験しているかのように頭の中にインプットされる.
 “流れを理解すること”
 これは多数の文献を読み込んでも,画像をたくさんみても到達できないものであり,何度も病態を経験しなければなし得ない領域である.流れがわかればすべきこと,起こり得ることを先読みすることができる.この本はまさに感染症診療の“流れ”を思う存分みせてくれる.
 感染症診療はおそらくどのような医師を目指すとしても避けては通れないものであり,研修医のときにきちんとした指導を受けておくことは生涯にわたる医師としての財産となる.自身が研修医のときにこのような本があったらどれだけよかったか.感染症の症例に出会ったとき,まずこの本を読むことで病態の流れを理解してから診療できること.こんな経験ができる今の研修医が心底羨ましい.そう感じさせてくれる一冊であった.
書評2
谷崎隆太郎(市立伊勢総合病院 内科・総合診療科)

 本書を通じてまず驚かされたのは,そのカバー範囲の広さと実用性である.通読してみると非常に読みごたえがあり,本書の内容を理解できれば「感染症専門医と共通の理解基盤でディスカッションできるレベル」には十分に達するものと考えられる.一方で,さっと内容を確認するあんちょことしても実用性が高く,旅のお供,いや,診療のお供としてそばに置いておきたい,まさにガイドブック的な本でもある.これら両者のよさを兼ね備えている書籍にお目にかかれる機会はそう多くないのではないだろうか.
 実際にページを捲ると,まずは総論である.冒頭から感染症診療の原則が展開されるが,ここには良質なエビデンスの紹介は元より,日本の感染症診療の質を底上げしたいという著者たちの熱い想いが散りばめられているではないか……! 個人的には,心から共感する内容ばかりで嬉しくなり,ページを捲るたびに「そう,それだよそれ!」と心のなかで膝を打ちながら読み進めていった.真面目な内容の感染症本をアラフォーのおじさんが医局内でニヤニヤしながら読んでいる姿は,若手医師たちにいくつになっても学び続ける姿勢と本書の素晴らしさを伝えられたに違いない.
 さて,続いて各論である.巷でよくある各科臓器別の感染症だけではなく,「ERでの発熱」,「入院中の発熱」,「術後の発熱」,「小児の発熱」といったシチュエーション別の項目があるのが心強い.臨床経験豊富な著者らが現場の空気感を大切にしている気持ちが,ここでもひしひしと伝わってくる.
 最後に,本書のなかでも,p.138の「外科医の悩み」とp.372の「血液内科医からみた発熱時の悩みとその対応」は感染症医を目指す読者にとっては必見である.本書の次回作があれば,ぜひ各科医師の感染症診療に対する悩みについても書かれることを期待したい.
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