書籍カテゴリー:寄生虫学/医動物学

図説人体寄生虫学
立ち読み

在庫状況:在庫あり

図説人体寄生虫学

第9版

  • 京都府立医科大学名誉教授  吉田幸雄 著
  • 京都府立医科大学名誉教授  有薗直樹 著

定価:9,720円(本体9,000円+税8%)

  • 四六倍判 314頁
  • 2016年2月 発行
  • ISBN978-4-525-17029-5

概要

40年の長ロングセラー.人体寄生虫学の名著!!

改訂9版では,わが国の寄生虫疾患の特徴である日和見寄生虫症,人畜共通感染症,衛生動物性疾患などの増加も念頭に置き,各項とも免疫学や分子生物学領域の知見ならびに最新の治療に関する知見を充実し,1疾患の追加を行った.また,分子生物学の進歩に伴う生物分類の再編を慎重に吟味し,学名和名の変更されたものなどをかなり改訂した.

序文

 本書は1977年に初版が発行されてから38年が経過した.その間ほぼ毎年刷りを改め,新しい知見を加えながら大凡5年に一度,全面改訂を行ってきた.今回,再び第9版への改訂の時期となった.この38年の間,沢山の協力者と多数の読者を得て今日に至ったことは筆者の大きな喜びである.しかし今回,本書が今後も充実して刊行を続けるため,2015年1月1日を以て著作権を日本寄生虫学会に譲渡することにした.従って今回が筆者による最後の改訂となった.以下に本書の理念と改訂の要点について述べてみたい.
 1.本書はわが国において,少なくなったとはいえ,なお存在し,遭遇する可能性のある寄生虫性疾患と衛生動物媒介疾患を,医学生のみならず臨床医家,臨床検査技師の方々に最新の情報を網羅しつつ判りやすく解説することを目標とした.そのため文章は見開きの左頁に記載し,右頁には多数の写真や図,表を用意して文章と対比して示した.
 2.生物の分類はLinne 以来,その形態や生活史を根拠に決められてきた.ところが近年,分子生物学の進歩に伴い,遺伝子解析によって分類されるようになった.その結果,今まで原虫とされてきた種が真菌に編入されたり,別種とされていたものが同種となったり,1種と考えられていたものが数種に分かれたり,かなりの混乱と変革の過程にある.本書では慎重に,なるべく新しい意見を取り入れるよう努力した.また古くから用いられてきた学名や和名が変更されたものがあり今回かなり改訂した.
 3.近年の我が国の寄生虫事情を見ると,1945年太平洋戦争の敗戦前後から国民の大半は寄生虫に感染し,結核と共に国民病と云われた.ところが1960年代後半以降の目覚ましい経済発展により食生活や医療環境の改善から,寄生虫感染も著しく減少し世間の関心も薄れていた.ところが最近新しい寄生虫性疾患や衛生動物媒介疾患(新興感染症)が報告され,一方,古い寄生虫症の復活(再興感染症)なども加わって問題となってきた.
 そのいくつかを挙げてみると,まず国際交流の進展に伴い,マラリアなど海外での感染,寄生虫感染外国人の入国,輸入食品からの感染などが挙げられるが,国内においても,エイズをはじめとする免疫不全に併発する日和見寄生虫症(ニューモシスチス症,トキソプラズマ症),性感染症(赤痢アメーバ症),ペット由来(トキソカラ症),魚肉由来(アニサキス症,裂頭条虫症),獣肉由来(肉胞子虫症,肺吸虫症,旋毛虫症),飲料水由来(クリプトスポリジウム症),コンタクトレンズ由来(アメーバ性角膜炎)などの他に,北海道における包虫症,南西諸島の糞線虫症など土着寄生虫症の蔓延などが挙げられる.
 一方,ダニ媒介による恙虫病,紅斑病,ライム病,重症熱性血小板減少症候群(SFTS),69年ぶりの蚊によるデング熱の東京都内発生,ハチ刺傷,毒蛇咬傷,ケジラミや小児のアタマジラミの蔓延,ホテルにおけるトコジラミの発生,老人ホームや障害者収容施設内や路上生活者の疥癬やシラミの蔓延など,最近,衛生動物関係疾患の増加が注目されている.
 4.以上のごとくわが国における寄生虫症は未だ多くの問題を抱えているが,医学教育における評価は次第に低下し,医学部の寄生虫学あるいは医動物学教室の閉鎖,縮小が相次いでいる.従って将来この領域の人材と業績の枯渇が懸念されている.
 最後に永らく本書にご協力頂いた先輩,同僚諸賢,並びに南山堂編集部に感謝する.

2016年1月
吉田幸雄

目次

総 論
Ⅰ 寄生虫学の定義と重要性
Ⅱ 人体寄生虫学(医動物学)の研究領域
Ⅲ 生物の分類法および命名法
Ⅳ 自由生活,相利共生,片利共生および寄生
Ⅴ 宿主・寄生虫相互関係
Ⅵ 寄生虫の棲息場所
Ⅶ 寄生虫の体制機構,生殖および発育
Ⅷ 寄生虫の進化と適応
Ⅸ 寄生虫感染に対する宿主の反応と免疫
Ⅹ 寄生虫の病原性と病態
XⅠ 寄生虫症の治療
XⅡ 寄生虫感染の疫学
XⅢ 感染症新法の制定と寄生虫性疾患および新興・再興感染症
XⅣ 寄生虫学の歴史


各 論
第1部 人体寄生原虫学
 第1項 人体寄生原虫学 総論
 第2項 人体寄生原虫の分類
 第3項 赤痢アメーバ[A]歴史,疫学,形態と生活史
 第4項 赤痢アメーバ[B]病理と症状
 第5項 赤痢アメーバ[C]診断と治療
 第6項 消化管内寄生の非病原性アメーバおよびヒトブラストシスチス
 第7項 病原性自由生活アメーバ[A]髄膜脳炎を起こすアメーバ
 第8項 病原性自由生活アメーバ[B]角膜炎を起こすアメーバ
 第9項 トリパノソーマ科原虫 総論
 第10項 ガンビアトリパノソーマおよびローデシアトリパノソーマ
 第11項 クルーズトリパノソーマ 付.その他のトリパノソーマ
 第12項 リーシュマニア
 第13項 ランブル鞭毛虫[A]基礎
 第14項 ランブル鞭毛虫[B]臨床
 第15項 腟トリコモナスおよび消化管内寄生鞭毛虫類
 第16項 クリプトスポリジウム
 第17項 イソスポーラおよびサイクロスポーラ
 第18項 トキソプラズマ[A]基礎
 第19項 トキソプラズマ[B]臨床
 第20項 肉胞子虫
 第21項 マラリア[A]歴史と生活史
 第22項 マラリア[B]形態と発育
 第23項 マラリア[C]感染,症状および免疫
 第24項 マラリア[D]診断
 第25項 マラリア[E]治療と予防
 第26項 マラリア[F]疫学 付.サルマラリア
 第27項 バベシアおよび大腸バランチジウム
 第28項 ナナホシクドア
 第29項 ニューモシスチス[A]分類と疫学
 第30項 ニューモシスチス[B]形態と生活史
 第31項 ニューモシスチス[C]病理
 第32項 ニューモシスチス[D]症状と診断
 第33項 ニューモシスチス[E]治療と予防
 第34項 後天性免疫不全症候群(AIDS)


第2部 人体寄生蠕虫学
Ⅰ 線形動物
 第35項 人体寄生蠕虫学 総論
 第36項 線形動物 総論
 第37項 人体寄生線虫の分類
 第38項 回虫[A]疫学と形態
 第39項 回虫[B]生活史と臨床
 第40項 ブタ回虫,イヌ回虫,ネコ回虫およびアライグマ回虫
 第41項 幼虫移行症
 第42項 アニサキス[A]歴史,分類,疫学および形態
 第43項 アニサキス[B]生活史と病理
 第44項 アニサキス[C]臨床
 第45項 蟯虫
 第46項 鉤虫[A]歴史およびズビニ鉤虫成虫の形態
 第47項 鉤虫[B]アメリカ鉤虫成虫の形態
 第48項 鉤虫[C]発育と生活史
 第49項 鉤虫[D]症状,診断および治療
 第50項 鉤虫[E]検査法
 第51項 鉤虫[F]その他の人体寄生鉤虫
 第52項 東洋毛様線虫
 第53項 広東住血線虫[A]形態と生活史
 第54項 広東住血線虫[B]臨床と疫学 付.コスタリカ住血線虫
 第55項 糞線虫
 第56項 有棘顎口虫および剛棘顎口虫
 第57項 ドロレス顎口虫および日本顎口虫
 第58項 東洋眼虫および旋尾線虫
 第59項 バンクロフト糸状虫[A]形態と生活史
 第60項 バンクロフト糸状虫[B]臨床と疫学
 第61項 マレー糸状虫および常在糸状虫などMansonella属線虫
 第62項 イヌ糸状虫
 第63項 回旋糸状虫,ロア糸状虫およびメジナ虫
 第64項 鞭虫,肝毛細虫およびフィリピン毛細虫
 第65項 旋毛虫


Ⅱ 扁形動物
A.吸虫類
 第66項 扁形動物および吸虫綱 総論
 第67項 人体寄生吸虫の分類
 第68項 虫[A]形態と生活史
 第69項 肝吸虫[B]臨床と疫学 付.タイ肝吸虫
 第70項 横川吸虫
 第71項 有害異形吸虫,槍形吸虫,肥大吸虫および膵蛭
 第72項 ウェステルマン肺吸虫[A]分類と形態
 第73項 ウェステルマン肺吸虫[B]生活史と感染
 第74項 ウェステルマン肺吸虫[C]臨床
 第75項 宮崎肺吸虫
 第76項 大平肺吸虫およびその他の肺吸虫
 第77項 棘口吸虫
 第78項 肝蛭[A]形態と生活史
 第79項 肝蛭[B]臨床
 第80項 日本住血吸虫[A]歴史,形態および生活史
 第81項 日本住血吸虫[B]臨床と疫学
 第82項 マンソン住血吸虫およびビルハルツ住血吸虫
 第83項 鳥類住血吸虫のセルカリアによる皮膚炎
 第84項 咽頭吸虫


B.条虫類(付.鉤頭虫類および鉄線虫類)
 第85項 条虫綱 総論
 第86項 人体寄生条虫の分類
 第87項 広節裂頭条虫および日本海裂頭条虫[A]歴史,分類および形態
 第88項 広節裂頭条虫および日本海裂頭条虫[B]生活史および臨床
 第89項 クジラ複殖門条虫(大複殖門条虫)およびマンソン裂頭条虫
 第90項 孤虫症(幼裂頭条虫症)
 第91項 無鉤条虫 付.アジア条虫
 第92項 有鉤条虫
 第93項 単包条虫および多包条虫[A]形態と生活史
 第94項 単包条虫および多包条虫[B]臨床と疫学
 第95項 小形条虫,縮小条虫および多頭条虫
 第96項 瓜実条虫,有線条虫,サル条虫およびニベリン条虫
 第97項 条虫症の治療法
 第98項 鉤頭虫類および鉄線虫類


第3部 衛生動物学
 第99項 衛生動物学 総論
 第100項 医学上重要な貝類[A]貝の分類
 第101項 医学上重要な貝類[B]貝の形態
 第102項 医学上重要な貝類[C]各論
 第103項 節足動物 総論および甲殻類
 第104項 蛛形綱およびダニ 総論と分類
 第105項 マダニ 総論
 第106項 マダニが媒介する疾患[A]日本紅斑熱および野兎病
 第107項 マダニが媒介する疾患[B]ライム病および重症熱性血小板減少症候 群
 第108項 恙虫[A]歴史,形態および生活史
 第109項 恙虫[B]臨床と疫学
 第110項 ヒゼンダニおよびイエダニ
 第111項 ニキビダニ,屋内塵ダニおよびダニアレルギー
 第112項 昆虫 総論および蚊 総論
 第113項 蚊 各論
 第114項 ブユ,アブおよびドクガ
 第115項 ハエ
 第116項 ノミ
 第117項 アタマジラミおよびコロモジラミ[A]分類,形態および生活史
 第118項 アタマジラミおよびコロモジラミ[B]臨床と疫学
 第119項 ケジラミおよびトコジラミ
 第120項 ハチ
 第121項 シバンムシアリガタバチ,ゴキブリおよびムカデ
 第122項 毒蛇
 第123項 ネズミ
 第124項 ネズミと腎症候性出血熱
 第125項 殺虫剤とその中毒


第4部 総まとめ事項および検査法
 第126項 人体寄生虫の感染経路のまとめ
 第127項 人体寄生虫の主な寄生部位のまとめ
 第128項 輸入感染症とくに輸入寄生虫症のまとめ
 第129項 人畜共通感染症のまとめ
 第130項 寄生虫症の主要症状のまとめ
 第131項 最新の駆虫薬および駆虫法のまとめ
 第132項 稀用薬として輸入される駆虫薬の種類とその保管機関
 第133項 わが国の主な寄生虫症の流行要因別分類
 第134項 消化管寄生原虫の検査法
 第135項 マラリアの検査法
 第136項 主な寄生虫症における診断検査材料
 第137項 ニューモシスチスの検査法
 第138項 免疫学的診断法およびDNA診断法
 第139項 蠕虫卵検査法
 第140項 主要人体寄生虫卵図譜
 第141項 寄生蠕虫標本作成法[A]吸虫類および条虫類
 第142項 寄生蠕虫標本作成法[B]線虫類

外国語索引
日本語索引
人 名 索 引