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「はたらく」を支える!シリーズ

「はたらく」を支える!

職場×依存症・アディクション

1版

国立病院機構 久里浜医療センター 院長 樋口 進 編
産業医科大学産業生態科学研究所 精神保健学研究室 教授
廣 尚典 編

定価

2,420(本体 2,200円 +税10%)


  • B5判  160頁
  • 2019年1月 発行
  • ISBN 978-4-525-18191-8

「やめたくてもやめられない…」そんな苦しみを持つ人のために,私たちにできること

アルコール依存症をはじめとする依存症・アディクションの問題は,個人の問題にとどまらず,ときに職場において勤怠不良などのかたちで集団組織に悪影響を及ぼすこともあり,産業保健現場では職場全体で取り組むべき課題である.本書は,産業医や産業保健スタッフ,人事労務スタッフ向けに,現場に即した知見がまとめられている.

  • 序文
  • 目次
序文
 アディクションは,対応が容易でない精神保健上の大きな問題である.当該者本人のみならず,親族や近隣,職場の同僚などに,多方面にわたる悪影響をもたらしもする.本書の制作中にも,アディクションに関連した数多くの社会的問題がマスメディアで報道された.また,他の精神面あるいは身体面の健康障害と併存し,それらの回復に悪影響を及ぼしたり,社会的機能の低下を一層増悪させたりする点も軽視できない.
 職場においても,アディクションは,さまざまな形で,労働者の健康や業務遂行能力を損ねている.労働者の健康,行動上の問題をアディクションという切り口で精査すると,これまでとは違った対策の方向性と具体案がみえてくることも少なくないはずである.
 しかし,これまで産業保健職,衛生管理者,人事労務担当者といった職場関係者を主な読者に想定したアディクションの解説書は,ほとんど発刊されてこなかった.産業保健あるいは産業精神保健関係の学術誌や啓発誌が小特集を組むことはあっても,部分的,単発的なものであり,そのまとまった情報については得ることが困難であったように思われる.
 本書には,アルコールをはじめとしたアディクションの問題に関わる様々な領域の専門家に寄稿いただいた.研究者と実践家のバランスにも配慮した.この領域の全体像を知ることができるとともに,そうした領域からの職場・産業保健に対する期待を込めたメッセージも読み取れるものになったのではないかと考えている.
 なお,アディクションを広義にとれば,ワーカホリックや人間関係における依存なども包含できる.それらもまた,産業保健においては重要な事項である.しかし今回は,紙面のスペースなどの関係で,それらを独立した形で取り扱うのは控えた.
 本書が,産業保健職などの職場関係者にとってはアディクションの問題の重要性・多様性を再認識し今後の取り組みを推進する契機に,また,臨床領域や地域保健,社会福祉などの分野の従事者には産業保健における本主題の関わり方の特徴などに対する理解の一助となり,アディクションへの適切な対応に不可欠な,多方面にわたる連携の進展に寄与できれば幸いである.
 最後になったが,本書の編集にあたって多大なご苦労をおかけした南山堂の本山麻美子さんに深謝したい.

2018年12月
樋口 進
廣 尚典
目次
第1章 依存症・アディクションを理解する
1 依存症・アディクションの概念(廣中直人)
  A.アディクションとはどんなものか?
  B.なぜアディクションになるのか?
  C.はまっていくプロセスを深読みする
  D.アディクション問題にどう向き合うか?

2 産業保健から見たアディクションの問題(廣 尚典)
  A.産業保健の枠組みとアディクション
  B.職場におけるアディクションの対応
  C.アディクションをめぐる労働者の家族との関係
  D.職場におけるアディクション問題への関わりの実際
  E.労働形態の多様性とアディクション

3 アディクションの臨床現場から見た産業保健の役割(瀧村 剛・樋口 進)
  A.解雇すればよいのだろうか?
  B.依存症に関するいくつかの誤解
  C.早期発見・早期介入のために〜健康経営の観点からも〜
  D.治療と回復
    事例紹介① 復職後の職場の適切な配慮が回復を後押しした男性
  E.会社としてのリスクヘッジ

4 アディクションとジェンダー(後藤 恵)
  A.物質使用行動の性別による比較
  B.働く人々とアディクション
  C.過剰なストレスと脳神経系
  D.女性ホルモンの影響〜物質使用障害・気分障害・不安障害の発症を促進する因子〜
  E.女性たちの自己治療的なアルコール・薬物使用
    事例紹介② 眠れなくてつい飲んでしまう女性
  F.娯楽的使用から始まる男性たちの薬物摂取
    事例紹介③ 物忘れを指摘された男性
  G.少女たちの変身〜摂食障害と買い物嗜癖〜
    事例紹介④ 高額な買い物でイライラを鎮めた女性
  H.アディクションの予防

5 アディクションのある人の家族に対する支援(森田展彰)
  A.アディクションと家族関係
  B.家族への支援のポイント
  C.産業精神保健での依存症家族への具体的な支援

第2章 職場におけるアルコールの問題
1 労災,職業性ストレス,ストレスチェック制度との関連(井上彰臣・廣 尚典)
  A.わが国におけるアルコール問題と職場との関連
  B.労災とアルコール問題
  C.職業性ストレスとアルコール問題
  D.ストレスチェック制度とアルコール問題

2 アルコール健康障害対策基本法について知る(猪野亜朗・落合正浩)
  A.アルコール健康障害対策基本法の戦略と職場
  B.「不適切な飲酒」をなくすために,アルコールについての「正しい知識」の普及を
  C.「不適切な飲酒」は,従業員,その家族,企業に多くの問題を生じさせる
  D.「不適切な飲酒」を減らす職場の安全衛生改善計画
  E.認定産業医研修には,「アルコール健康障害」を必須科目に!

3 アルコール問題の疫学〜労働者を中心に〜(尾崎米厚)
  A.労働者のアルコール問題についての既報
  B.就業状況別に見た飲酒行動
  C.職業別に見た飲酒行動
  D.成人の飲酒行動に関する全国調査結果から見た課題
  E.産業現場における健康問題,経済損失との関連

4 他の精神障害との併存(松下幸生)
  A.アルコール依存症に合併する精神疾患
  B.気分障害の併存
  C.不安障害の併存
  D.アルコール依存とパーソナリティ障害
  E.注意欠如多動性障害(ADHD)とアルコール使用障害

5 連携〜一般診療科,職場,アルコール専門医療機関,自助グループ〜(真栄里仁)
  A.アルコール依存症における連携とは
  B.地域連携
  C.救急医療機関との連携(アルコール救急多機関連携マニュアル)
  D.職場との連携
  E.アルコール医療連携における今後の課題

6 アルコール医療の動向(真栄里仁)
  A.疾患としてのアルコール依存症の歴史
  B.治療目標
  C.心理社会的治療
  D.薬物療法
  E.自助グループ

7 教育(ブリーフインターベンション)〜職場でもできることは?〜(遠藤光一・杠 岳文)
  A.ブリーフインターベンションとは
  B.ブリーフインターベンションの概要
  C.HAPPYを用いた介入
  D.職場での集団節酒指導プログラムについて
  E.集団節酒指導プログラムの効果

8 自助グループの現在(岡崎直人)
  A.自助グループとは
  B.自助グループの役割
  C.自助グループの歴史と断酒会・AAの相違
  D.自助グループの長所
  E.自助グループの課題と取り組み

9 アルコール関連問題と自殺(松本俊彦)
  A.病的なアルコール摂取(乱用・依存)と自殺との関係
  B.正常範囲内(乱用・依存未満)のアルコール摂取と自殺との関係

10 自殺のリスクアセスメントとマネジメント(松本俊彦)
  A.自殺のリスクアセスメント
  B.自殺のリスクマネジメント

第3章 職場における喫煙の問題
1 ニコチン依存症の診断と治療(中村正和)
  A.ニコチン依存症とは
  B.ニコチン依存症の診断
  C.ニコチン依存症の治療
  D.禁煙率向上につながる治療方法と指導者トレーニング
  E.加熱式たばこ使用者への対応
  F.今後の取り組みに向けて

2 喫煙の疫学(片野田耕太)
  A.喫煙者本人への影響
  B.喫煙の「効用」?
  C.受動喫煙の健康影響
  D.屋内を禁煙にすると疾患が減る
  E.たばこ対策の効果についての科学的証拠
  F.「加熱式たばこ」について

3 職場における喫煙対策と禁煙サポート(大和 浩)
  A.WHOが主導する喫煙対策
  B.職場で喫煙対策を推進するための方針づくり
  C.職場における喫煙対策の方針づくり
  D.不適切な受動喫煙防止対策〜喫煙室の実態〜
  E.屋内を全面禁煙とする根拠
  F.勤務時間中の喫煙の制限
  G.歓送迎会などの禁煙化
  H.安全上のリスク,事業運営上の障害
  I.禁煙治療への誘導と費用負担
  J.健康経営と喫煙対策
  K.ニコチン依存としての認識

第4章 さまざまな依存症〜もし職場で出会ったら〜
1 インターネット(スマホ)依存(中山秀紀)
  A.インターネット・スマートフォンの普及
  B.インターネット依存の概念・基準
  C.インターネット依存の疫学
  D.インターネット依存の悪影響・合併精神疾患
  E.インターネット依存の鑑別・診断
  F.久里浜医療センターでの取り組み
  G.インターネット依存の治療目標・治療の実際

2 ギャンブル依存(樋口 進)
  A.ギャンブル依存の位置づけ
  B.ギャンブル依存の診断
  C.ギャンブル依存の広がり
  D.ギャンブル依存患者の臨床像
  E.ギャンブル依存の治療

3 薬物依存(成瀬暢也)
  A.わが国の薬物問題の現状〜捕まらない薬物へのシフト〜
  B.職場の薬物依存症
    事例紹介⑤ 市販薬依存になってしまった男性
    事例紹介⑥ 処方薬依存になってしまった女性
    事例紹介⑦ 危険ドラッグ依存から覚醒剤乱用に至った男性
  C.薬物依存症の治療
  D.薬物依存症患者への基本的対応
  E.職場での望ましい対応

参考資料
1 よりよく働けるようになるための社会資源(湯本洋介)
2 その他の参考資料(猪野亜朗)


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