第9版
定価:4,950円(本体4,500円+税10%)
概要
改訂9版では,近年の健康環境の変化をうけて改正した「定期健康診断」をはじめ,「医療的ケア」「こころのケア」「学校保健活動における連携」などよりいっそう内容の充実を図った.また,統計調査結果など情報のアップグレードも行った.養護教諭が知っておきたい情報を網羅し,学校保健のテキストとしても活用できる一冊である.
本書は1989年,すなわち平成元年に初版が刊行され,以来28年以上,平成の世とともに教育界,学校保健の世界のさまざまな動きとともに加筆,修正がなされ,改訂を重ねて来た.学校保健に関する情報のほとんどを網羅し,表形式にまとめられて効率のよい学習ができるためか,養護教諭養成教育をはじめさまざまな教育の場面でテキストとしての役割を果たしてきた.
今回,9版をお届けする次第であるが,編者が初版から7版までの髙石昌弘先生と出井美智子先生から衞藤隆と岡田加奈子に変更となって2回目の改訂作業となった.8版の発行から7年を経過する中で時代とともに変化した内容,新たに問題として浮上した課題を取り入れ,読者の皆様にとって親しみやすい内容となるよう配慮したつもりである.
8版刊行後に生じた社会の大きな出来事としては,2011年の東日本大震災,さらには2016年の熊本地震など自然災害による子どもやその家族,また教職員の命や健康が損なわれる事態が相次いだことがあげられる.
保健教育の領域においても2008年の中央教育審議会答申に基づく学習指導要領・教育要領の改訂がなされ,幼稚園(2009年度から),小学校(2011年度から),中学校(2012年度から),高等学校(2013年度入学生から)と順次教育課程の内容が更新されてきた.2014年11月には次の時代を念頭においた諮問「初等中等教育における教育課程の基準等についての在り方について」が文部科学大臣より中央教育審議会に対しなされ,これを受けて審議が開始され,2016年12月に答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」がまとめられ,文部科学大臣に手交された.新しい学習指導要領はおおむね2020年から10年程度を見通した時期に子供たちに身につけさせるべき学習内容をその方法や活用方法も念頭に入れ構成されている.
保健管理の面では,学校における健康診断の内容が文部科学省に設置された「今後の健康診断の在り方に関する検討会」(2012,2013年度)において検討され,その結果を受けて2014年4月に学校保健安全法施行規則の一部改正が行われた.新たな健康診断は2016年度から実施されている.
このように前版から7年足らずの間に学校保健を巡る状況は少なからず変化してきた.これらを十分に踏まえ知識を整理していただきたいと願っている.
そして,学校保健について学び,理解を深めるために本書を大いに活用していただきたい.読者の皆様から寄せられるさまざまなご意見は大変有り難く,今後の本書の充実に役立てさせていただきたいと願っている.
2017年3月
衞 藤 隆
岡 田 加奈子
1章 学校保健とは ―教育と健康の絆―
1-1 学校保健の考え方
1-2 学校保健のしくみ
1-3 ヘルスプロモーション
2章 健康の評価 ―健康状態のチェック―
2-1 健康状態に関する情報の収集および処理と活用
2-2 保健調査の主な内容
2-3 健康診断制度の変遷
2-4 健康診断に関する現行方式の内容
2-4-1 健康診断実施の流れ
2-4-2 健康診断時に必要な機器・用具などの一覧表
2-5 定期健康診断の検査項目および実施学年
2-6 健康観察
2-7 健康相談
2-8 健康診断実施に係わる留意事項
3章 疾病および健康障害 ―病気予防のために―
3-1 学校における心臓検診と心臓疾患
3-1-1 心臓検診の概要
3-1-2 学校保健における心臓疾患
3-1-3 主な心臓疾患
3-2 学校検尿と腎臓疾患
3-2-1 学校検尿の概要
3-2-2 学校生活管理指導表
3-3 アレルギー疾患
3-3-1 アレルギー疾患の概要
3-3-2 主なアレルギー疾患
3-3-3 学校生活管理指導表 (アレルギー疾患用)
3-4 メタボリックシンドローム
3-5 学校における視力・眼科検診と眼科疾患
3-5-1 視力・眼科検診の概要
3-5-2 主な眼科疾患
3-6 耳鼻咽喉科疾患
3-7 学校における歯科検診と歯科・口腔疾患
3-8 学校における運動器検診
4章 感染症とその対応 ―感染しないため,させないために―
4-1 学校の感染症にかかわる職種など
4-2 学校での感染症に関する法令
4-3 感染症への対応
4-3-1 感染症が発症する前の対応
4-3-2 標準予防策
4-3-3 感染症が発症してからの対応
4-4 結核対策
4-4-1 対策の概要
4-4-2 結核検診
4-5 予防接種
4-5-1 予防接種の概略
4-5-2 小学校入学までに済ませておくべき予防接種
4-5-3 小学校入学以降に予定される予防接種
4-5-4 海外のワクチン
4-6 学校教育で重要な感染症
4-6-1 主な疾患
4-6-2 学校での対応
5章 心の健康問題とその対応策 ―豊かな心を保つために―
5-1 児童生徒の心理社会的発達
5-2 児童生徒の自尊感情
5-3 児童生徒の心理社会的特徴
5-4 心の危険信号と精神身体徴候
5-5 心の健康問題のあらわれ方と特徴
5-6 児童生徒の心身症状
5-7 不登校の理解と対応
5-8 心の健康に問題をもつ児童生徒への対応
6章 発達や行動上の課題と特別支援教育
6-1 発達(LD,ADHDなども含む)や行動上の課題のある子どもたち
6-1-1 発達障害の定義
6-1-2 学習障害,注意欠陥/多動性障害,自閉症などの定義
6-1-3 学校保健安全法の施行規則(第四章職務執行の準則)で定められた校医の業務
6-2 特別支援教育の概念
6-3 学校(学級)数および児童生徒数
6-3-1 特別支援学校数と児童生徒数
6-3-2 特別支援学級数および児童生徒数
6-3-3 通級指導教室数および児童生徒数
6-4 教育措置基準
6-4-1 特別支援学校への就学基準
6-4-2 特別支援学級への就学基準
6-4-3 通級による指導の基準
6-5 二次障害の特徴
6-5-1 心身症の好発時期と特徴
6-5-2 問題行動の好発時期と特徴
6-6 医療的ケア
6-6-1 特別支援学校等における医療的ケアへの今後の対応
6-6-2 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則
7章 保健室の役割 ―学校保健センターとして―
7-1 保健室
7-1-1 法的根拠
7-1-2 保健室に望まれる環境
7-1-3 保健室の備品
7-1-4 保健室の機能
7-1-5 AED
7-2 来室状況など
7-3 養護教諭
7-3-1 法的根拠
7-3-2 役 割
7-4 保健室の機能
7-4-1 健康診断
7-4-2 健康相談・健康相談活動
7-4-3 保健指導
7-4-4 救急処置・救急処置活動
7-4-5 ヘルス・プロモーティング・スクールの拠点
7-4-6 保健室経営
8章 セーフティ・プロモーションと学校安全
8-1 安全の考え方
8-2 安全に関する基礎理論
8-3 学校安全の構造と活動内容
8-4 安全教育
8-5 安全管理
8-6 学校の管理下の災害の実態と対策
8-7 危機管理
8-8 学校安全において留意すべき課題
9章 現代的な健康課題 ―喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育,性行動,生活習慣,情報リテラシー―
9-1 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育
9-1-1 喫煙,飲酒,薬物乱用の健康影響,社会的影響など
9-1-2 青少年の喫煙,飲酒,薬物乱用行動
9-1-3 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育の内容
9-2 性行動,性感染症
9-2-1 性感染症の動向と変化
9-2-2 性感染症などの教育
9-3 生活習慣
9-3-1 生活習慣の実態
9-3-2 生活習慣にかかわる健康問題
9-4 情報リテラシー
10章 学校環境衛生 ―快適な学校づくり―
10-1 学校環境衛生の考え方と関係法令
10-1-1 学校環境衛生の目的
10-1-2 学校環境衛生の法的根拠
10-1-3 学校環境衛生活動
10-2 教室などの環境にかかわる学校環境衛生基準
10-3 飲料水などの水質および施設・設備の学校環境衛生基準
10-4 学校の清潔,ネズミ,衛生害虫等および教室などの備品の管理にかかわる学校環境衛生基準
10-5 水泳プールにかかわる学校環境衛生基準
10-6 日常における環境衛生にかかわる学校環境衛生基準
10-7 雑 則
11章 健康教育 ―新たな授業のデザインと学びの創造へ―
11-1 健康教育の意義(保健教育の位置づけ)
11-2 保健教育の構成
11-2-1 教科指導 (保健学習)
11-2-2 保健指導
11-3 教科における保健の内容
11-3-1 小学校
11-3-2 中学校
11-3-3 高等学校
11-4 教科外における保健指導の位置と特質
11-5 教科外における保健指導の内容
11-5-1 小学校
11-5-2 中学校
11-5-3 高等学校
11-6 保健教育における重要課題
11-6-1 内的事項
11-6-2 外的事項
11-7 保健教育における今後の発展的方向性
11-7-1 目標論の論争的課題について
11-7-2 授業の創造
11-7-3 教科再編議論の行方
12章 学校給食と食育
12-1 学校給食の概要と実施状況
12-2 食育と学校給食
12-2-1 食育基本法
12-2-2 食育推進基本計画
12-3 学校給食実施基準
12-4 学校給食摂取基準と日本人の食事摂取基準の関係
12-5 日常点検も含む学校給食の衛生管理
12-5-1 学校給食施設および設備の整備および管理にかかわる衛生管理基準
12-5-2 調理の過程などにおける衛生管理にかかわる衛生管理基準
12-5-3 衛生管理体制にかかわる衛生管理基準
12-5-4 日常および臨時の衛生検査
12-5-5 雑 則
12-5-6 学校給食施設の区分
12-6 学校給食における食中毒の防止
12-7 学校における食育の推進をはかるための方策
12-8 食に関する指導の全体計画,年間指導計画
12-9 学校給食を生きた教材として活用した食育の推進
13章 教職員の健康 ―円滑な学校教育をめざして―
13-1 教職員の健康診断と事後措置
13-1-1 健康診断
13-1-2 事後措置
13-2 教職員のメンタルヘルス
13-2-1 教職員のメンタルヘルスとは
13-2-2 教職員の休職状況
13-2-3 教職員の復職支援
13-2-4 教職員のメンタルヘルスへの取り組み
13-2-5 教職員のストレスチェック
13-3 心と体の健康づくり
13-3-1 労働安全衛生法に定める安全衛生管理体制の概要
13-3-2 労働安全衛生法に定める健康の保持増進のための措置
13-3-3 トータル・ヘルスプロモーション・プラン
14章 連携 ―学校保健を推進するために―
14-1 学校保健活動に不可欠な連携
14-1-1 連携の意義と重要性
14-1-2 連携の基本的背景となる児童生徒等を取り巻く社会・環境と子どもの健康
14-2 わが国の保健医療福祉制度の現状とコミュニティにおける連携の強化
14-2-1 保健医療福祉の法・制度と学校保健・地域保健・職域保健
14-2-2 保健行政の現状とコミュニティにおける連携の強化・システム化
14-2-3 インフルエンザ対策に見られる連携(具体例)
14-3 連携・協働を基盤とするコミュニティにおける学校保健活動の展開
14-3-1 コミュニティにおける人々の健康管理の基本的理解
14-3-2 「連携・協働」の実際(実際例)
14-3-3 連携・協働に関する近年の動向
14-3-4 地域保健対策の推進に関する基本的な指針と学校保健
14-3-5 コミュニティにおける健康課題と学校保健活動の展開,連携強化
14-3-6 地域・職域、医療・福祉等と連携・協働し,健康で文化的なコミュニティの実現をめざす
14-4 学校保健システム・学校保健組織活動を支える人々・機関の役割と機能
14-4-1 学 校
14-4-2 学校保健委員会構成グループまたはつなぎグループ
14-4-3 地域関係者・関係機関
14-5 学校保健システムの学校内組織の活性化と連携の強化
14-6 学校保健委員会の機能,役割,実際
14-7 学校保健計画の機能,役割,実際
14-8 学校保健年間計画の様式 (中学校例)
15章 学校保健の行政・法律・沿革
15-1 学校保健に関する法律,規則,条約
15-1-1 日本国憲法
15-1-2 世界人権宣言
15-1-3 世界保健機関憲章
15-1-4 児童の権利に関する条約
15-1-5 教育基本法
15-1-6 学校教育法
15-1-7 学校保健安全法
15-1-8 学校給食法
15-1-9 健康増進法
15-1-10 食育基本法
15-1-11 母子保健法
15-2 学校保健の沿革
15-3 生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育およびスポーツの振興の在り方について
15-4 スポーツ基本法
15-5 スポーツ基本計画
15-6 子どもの心身の健康を守り,安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進めるための方策について
15-7 チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)【骨子】
15-8 世界のヘルスプロモーション・健康教育の動向