書籍カテゴリー:内科学一般|保健/福祉/介護

メタボリックシンドロームリスク管理のための健診・保健指導ガイドライン
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メタボリックシンドロームリスク管理のための健診・保健指導ガイドライン

1版

  • 東京大学大学院教授 門脇 孝 編
  • 札幌医科大学教授 島本 和明 編
  • あいち健康の森健康科学総合センター 副センター長 津下 一代 編
  • 住友病院院長・大阪大学名誉教授 松澤 佑次 編

定価:4,860円(本体4,500円+税8%)

  • B5判 319頁
  • 2008年4月 発行
  • ISBN978-4-525-20181-4

概要

2008年4月から施行される特定健診・保健指導ではメタボリックシンドロームや生活習慣病の予備群を情報提供,動機づけ支援,積極的支援と3つに階層化された保健指導の対象として生活習慣病予防に努める.健診にかかわる医師,健診後患者指導・治療を行うかかりつけ医や医療スタッフに向けて必要な考え方や情報をわかりやすく解説する.本制度策定にかかわった専門医の編集による特定健診・保健指導のガイドラインの決定版.

序文

近年,世界各国で肥満者の増加,糖尿病,心血管疾患などの増加と若年化が健康課題としてクローズアップされている.わが国においても身体活動量の低下と食環境の変化が著しく,生活習慣病患者の増加,国民医療費の増大が問題となっている.このような中,平成20年(2008年)度よりメタボリックシンドロームの概念を活用した特定健診・特定保健指導制度を導入し,これらの疾患発症の抑制をめざすこととなった.
メタボリックシンドロームの概念は,心血管疾患の予防に関して個々の疾患に注目するだけではなく,リスクの重複に着目して管理すべきであるということを強調するものであるが,もうひとつ重要な点として,糖尿病,脂質異常症,高血圧などの発症前の段階で,結果としての検査値(血糖,脂質,血圧)異常に対して個別的に治療するのではなく,その原因となる内臓脂肪の蓄積の有無により対策を立てる必要性があるという考え方を示している.つまり,食事や運動を見直し,内臓脂肪を減らすことによって改善効果が期待できる対象者に対して,生活習慣介入を主体とする保健サービスを重点的に投入するという戦略を立てたのである.
一般的にいって,自覚症状のない段階では行動変容が困難だといわれているが,メタボリックシンドロームの概念は一般の人々にかなり浸透してきている.腹囲に注意して健康管理をするという考え方は明快であり,対象者自身が腹囲の増加を糸口にして自らの健康課題に気づく機会となりうるであろう.指導者の役割は“価値観の押しつけ”的な保健指導ではなく,対象者の生活背景を考慮し,対象者自身の意欲と自信を高めるような支援をしていくことにある.理論的根拠,疫学研究による知見,行動科学的支援法,コミュニケーション能力,保健事業のマネジメント力など,多彩かつ広範な能力を要求されることになろう.
本書は健診をはじめ生活習慣病にかかわる医師,保健指導などの生活習慣改善指導にあたる医療職が共通の認識や知識をもてるよう,新制度の概要と,新しい検査基準値とリスク因子のとらえ方,リスク管理としての保健指導の実際について理解を深め,積極的に取り組んでいただくことを目的として作成したものである.新制度の概要については厚生労働省健康局担当官に,メタボリックシンドロームに関する最新の知見とリスク管理についてはそれぞれ各分野の第一人者に執筆を依頼した.保健指導については,実践事例をふまえ,読者にイメージをもっていただけるように配慮した.健診・保健指導というツールをどのように活用すれば,生活習慣病の有病者,予備群の減少などの期待するアウトカムを得ることができるのか,本書を片手に試行錯誤しつつ,保健事業の改善に努め生活習慣病に取り組んでいただくことを願っている.
編者らは厚生労働省「標準的な健診・保健指導に関する検討会」のメンバーとして本制度について,何度となく議論をかわしながら生活習慣病のよりよい予防・治療につながるように意見を述べてきたわけであるが,今回の改革でメタボリックシンドローム対策が完了したとは考えていない.健診・保健指導と医療の役割分担と連続性,アウトカム評価のあり方,各学会の基準値に対する考え方の整理など,まだまだ解決しなければならない課題が多い.とくに受診勧奨判定値以上の人に対する対応,医療管理下に置くべきメタボリックシンドロームの考え方など,今回は制度化が見送られてきた事案もある.本書ではそのあたりについても専門的立場から言及し,これからの方向性についての指針を示したつもりであるので,ぜひ参考にしていただきたいと思う.
いよいよこの4月から,特定健診・特定保健指導が開始されることになる.この取り組みが生活習慣病の効果的な予防や治療につながるように運用されることが非常に重要である.このために,健診・保健指導にかかわる多くの方々に本書が活用されれば幸甚である.


2008年2月
編 者





目次

第I部 概 論

第1章 医療制度改革の背景

第2章 標準的な健診・保健指導プログラムの意義と展望 5
2-1 国民皆保険制度を維持するために
2-2 理念の転換
2-3 メタボリックシンドロームの概念を導入し対策のターゲットを明確化
2-4 25 %削減目標を明確化し,健診・保健指導を標準化
2-5 平成20 年4 月から健診・保健指導を医療保険者に義務化

第3章 特定健康診査
3-1 健診項目と判定値
3-2 健診項目の測定値などの標準化
3-3 内部精度管理と外部精度管理の実施
3-4 保健指導対象者の選定と階層化

第4章 特定保健指導
4-1 特定保健指導とは
4-2 保健指導の内容

第5章 実施体制・基盤整備,実施計画
5-1 健診・保健指導の実施と集合契約
5-2 健診・保健指導のデータ管理
5-3 特定健康診査等基本指針・特定健康診査等実施計画
5-4 後期高齢者医療制度支援金の加算・減算
5-5 人材確保,研修の実施
5-6 これからの生活習慣病管理


第II部 リスク因子
─メタボリックシンドロームならびに各種生活習慣病予防のためにどのようにとらえるか─

第6章 総論:メタボリックシンドロームとは
 ─ その概念と意義─
6-1 メタボリックシンドロームの歴史
6-2 わが国のメタボリックシンドローム診断基準
6-3 メタボリックシンドロームの発症メカニズム
6-4 メタボリックシンドロームを診断する意義

第7章 メタボリックシンドロームの疫学
7-1 はじめに
7-2 MetS の疫学
7-3 おわりに

第8章 メタボリックシンドロームの成因とメカニズム
8-1 インスリン抵抗性はメタボリックシンドロームの基盤病態である
8-2 インスリン抵抗性の上流としての内臓脂肪蓄積の意義
8-3 内臓脂肪蓄積によるインスリン抵抗性惹起物質アディポカインの異常とインスリン抵抗性
8-4 内臓脂肪蓄積によるアディポネクチン分泌・作用の低下とインスリン抵抗性
8-5 アディポカインネットワークとメタボリックシンドローム
8-6 メタボリックシンドローム発症のイニシエーションとプロモーション

第9章 メタボリックシンドロームの診断
 ─健診・保健指導への活用─
9-1 メタボリックシンドロームの生いたち
9-2 メタボリックシンドローム診断の意義
9-3 メタボリックシンドロームと診断のための検査
9-4 肥満,メタボリックシンドローム,死の四重奏
9-5 保健指導対象者の選定と階層化
9-6 おわりに

第10章 心血管病におけるメタボリックシンドロームの意義
10-1 MetS の頻度
10-2 冠動脈疾患におけるMetS のリスク
10-3 虚血性心疾患のリスク因子としてのMetS の病態
10-4 MetS の循環器疾患への関与
10-5 MetS の治療
10-6 まとめ

第11章 糖尿病予防のためのリスク因子のとらえ方
11-1 なぜ糖尿病予防か
11-2 検査値の判定基準
11-3 具体的な対応のあり方

第12章 高血圧予防のためのリスク因子とその改善方法
12-1 血圧は終生低いほどよい
12-2 至適血圧を保つ
12-3 生活習慣の修正項目
12-4 高血圧と関連する生活環境要因とその現状
12-5 生活習慣修正方法
12-6 おわりに

第13章 脂質異常症予防のためのリスク因子のとらえ方
13-1 はじめに
13-2 心血管疾患からみた脂質異常症
13-3 脂質異常の基準値
13-4 LDL-C というリスク因子
13-5 耐糖能異常における脂質異常
13-6 MetS の脂質異常を中心とした管理
13-7 表現型に対する薬物治療
13-8 おわりに

第14章 腎機能障害(蛋白尿)
 ─「標準的な健診・保健指導プログラム」で尿蛋白をどう位置づけるか─
14-1 健診での尿蛋白の扱い
14-2 腎機能障害の予防と社会背景
14-3 尿蛋白,微量アルブミン尿の重要性
14-4 尿蛋白陽性者の対策
14-5 尿蛋白異常者の指導と紹介

第15章 肝機能障害
15-1 はじめに
15-2 一般成人における肝機能検査値の異常
15-3 一般成人におけるALT 値異常と関連要因
15-4 一般成人のALT 値異常へのNAFLD の関与
15-5 健診における肝機能異常者のリスク管理と保健指導
15-6 おわりに

第16章 心血管障害のスクリーニング (詳細な健診項目:心電図,眼底検査)
16-1 はじめに
16-2 健診項目の科学的根拠とは
16-3 特定健診で精密健診を行う対象とは
16-4 心電図判定のポイント
16-5 眼底検査

第III部 リスク管理
─メタボリックシンドロームならびに各種生活習慣病発症の抑制をめざして─

第17章 リスク管理の総合的戦略の考え方
17-1 メタボリックシンドロームの病態を考えた対策の必要性
17-2 MetS の広がりを考えた対策の必要性
17-3 公的な財源を活用した健診の考え方
17-4 特定健診実施上の戦略
17-5 健診から保健指導への流れを円滑にするために
17-6 特定保健指導と保険診療の違い
17-7 個別の検査結果の判定
17-8 非肥満者で高血糖,脂質異常症,高血圧症を伴う者への対応
17-9 健康課題の分析と保健事業評価に基づく改善(PDCA サイクル)
17-10 従来の健診と同じこと,異なること

第18章 内臓脂肪を減らす生活習慣改善とは
18-1 生活習慣介入研究についての文献的考察
18-2 生活習慣改善の方法
18-3 受診勧奨判定値の人に対する生活習慣改善支援
18-4 薬物治療をしている場合の保健指導

第19章 内臓脂肪を減らす運動指導
19-1 身体活動量の現状と運動施策
19-2 運動処方の考え方
19-3 エクササイズガイドに基づく生活習慣病を予防・改善するための身体活動量の目標量
19-4 エクササイズガイドを活用した運動指導の流れ
19-5 運動・身体活動を指導する際のリスクマネジメント
19-6 運動指導と評価
19-7 運動指導体制の整備と医師の役割

第20章 内臓脂肪を減らす食生活指導
20-1 内臓脂肪を減らす食生活支援の流れ
20-2 食事バランスガイド活用の基本
20-3 エネルギーコントロールを目的とした食事バランスガイド活用の例
20-4 各種栄養素のコントロールを目的とした活用の例
20-5 食環境も考慮した支援を

第21章 虚血性心疾患の二次予防としてのメタボリックシンドローム対策
21-1 DES の登場により長期予後は改善したか?
21-2 なぜPCI 後再狭窄が減少しても,死亡,心筋梗塞は減らないのか
21-3 PCI は長期予後においてCABG と同等の成績が得られている
21-4 PCI 患者長期予後改善のためにどのような治療を行うべきか
21-5 どのような患者にプラーク破裂が生じているのか
21-6 インスリン抵抗性を臨床現場でどのように評価するか
21-7 インスリン抵抗性に臨床現場でどのように介入していくか
21-8 おわりに

第22章 糖尿病予備群ならびにメタボリックシンドロームを呈する糖尿病患者に対する対応・方策
22-1 糖尿病予備群に対する対応・対策
22-2 糖尿病予備群患者に対する保健指導のあり方
22-3 糖尿病予備群に対する生活習慣を中心とする指導体制のあり方
22-4 肥満を伴わない糖尿病あるいは糖尿病予備群に対する教育・指導

第23章 高血圧発症を防ぐ対策ならびにメタボリックシンドロームを呈する高血圧患者への対応
23-1 はじめに
23-2 正常高値血圧の疫学
23-3 高血圧発症のリスク要因
23-4 正常高値血圧の治療
23-5 MetS を呈する高血圧患者の治療
23-6 おわりに

第24章 脂質異常症発症を防ぐ対策ならびにメタボリックシンドロームを呈する脂質異常症患者に対する対応
24-1 はじめに
24-2 内臓脂肪蓄積と脂質異常症
24-3 遺伝的背景因子と脂質異常症
24-4 食生活と脂質異常症
24-5 身体活動と脂質異常症
24-6 体重管理
24-7 おわりに

第25章 リスク管理としての禁煙勧奨・支援
25-1 動脈硬化性疾患のリスクとしての喫煙
25-2 特定保健指導における喫煙の位置づけ
25-3 禁煙に取り組むことの意義と医療経済効果
25-4 禁煙支援の基本的な流れと支援のポイント

第26章 高齢者におけるリスク管理
 ─生活機能の重要性について─
26-1 はじめに
26-2 高齢期の健康
26-3 “老年症候群”とは
26-4 死亡率からみた特徴
26-5 死亡者数からみた特徴
26-6 改正介護保険法における「介護予防」の意義
26-7 高齢期の生活習慣の変容の意義

第IV部 保健指導の実際
─対象者・患者へのアプローチ─

第27章 保健指導 総論
27-1 生活習慣病健診と行動変容
27-2 生活習慣病予防がうまくいかない理由
27-3 行動変容を促す保健指導の考え方
27-4 MetS に着目した保健指導の流れ
27-5 初回面接のポイント
27-6 継続支援のポイント
27-7 保健指導の技術向上のために

第28章 保健指導事業の企画,運営,評価
28-1 保健指導事業の進め方
28-2 現状分析
28-3 目標の明確化と設定
28-4 保健指導プログラムの作成
28-5 実施のための体制づくり
28-6 評価

第29章 厚生労働省による保健指導のための各種学習教材
29-1 はじめに
29-2 アセスメントシート
29-3 プランニングシート
29-4 基本ツール
29-5 展開ツール(必要に応じて活用)
29-6 モニタリング
29-7 おわりに

第30章 研修ガイドラインの概要
30-1 「健診・保健指導の研修ガイドライン(確定版)」について

第31章 事例研究1 あいち健康の森健康科学総合センター
31-1 はじめに
31-2 教室型
31-3 運動施設利用型4
31-4 IT 活用型
31-5 結果
31-6 考察

第32章 事例研究2 尼崎市での取り組み
32-1 はじめに
32-2 これまでの保健指導
32-3 まず,対象集団の健康課題の明確化から
32-4 健診結果分析からメタボリックシンドローム対策へ
32-5 メタボリックシンドロームの概念を導入した保健指導
32-6 おわりに

第33章 事例研究3 日立製作所・日立健康管理センタ“はらすまダイエット”
33-1 内臓脂肪CT 検診の導入
33-2 内臓脂肪CT 検診から“はらすまダイエット”へ
33-3 “はらすまダイエット”介入研究
33-4 はらすまコーチングスキル
33-5 おわりに

第34章 事例研究4 山形県鶴岡市
 ─行政における健康づくり支援─
34-1 鶴岡市の概況
34-2 鶴岡市ヘルスアップセミナー(地域型コース)の概要
34-3 プログラムの結果
34-4 プログラム終了後の組織育成支援
34-5 健康づくりにおける行政の役割
34-6 おわりに

第35章 事例研究5 東京都東久留米市
 ─医療機関がかかわったプログラム─
35-1 東久留米市における国保ヘルスアップモデル事業の概要
35-2 モデル事業の実際
35-3 生活習慣改善指導の実際
35-4 モデル事業の結果
35-5 事業評価と今後の課題

第36章参考事例 北海道での取り組み
 ─保健師との連携─
36-1 はじめに
36-2 発症予防について
36-3 重症化予防について

第37章 健診データとレセプト分析
37-1 健診データの標準化
37-2 特定健診データの流通に用いられる電子的標準仕様
37-3 健診データ管理の重要性と個人情報保護・セキュリティ
37-4 健診データの活用
37-5 今後の健診データ管理の方向性(医療との融合)
37-6 まとめ

第38章 ディジーズマネジメントサービスの今後の可能性
38-1 わが国の特定健診・保健指導のあり方
38-2 ディジーズマネジメントの歴史と定義
38-3 わが国のディジーズマネジメントの2 つの方向性
38-4 ディジーズマネジメントサービスの基本?行動変容
38-5 ディジーズマネジメントサービスの今後の可能性1.ビジネスモデル
38-6 ディジーズマネジメントサービスの今後の可能性2.コミュニティケア
38-7 ディジーズマネジメントサービスの今後の可能性3.医療の質のさらなる向上

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