1版
定価:3,850円(本体3,500円+税10%)
概要
妊婦・授乳婦さん,敬遠していませんか? 「妊娠・授乳中だから薬はダメ」「葉酸摂取は妊娠がわかってからでいい」なんて思っていませんか? 総合診療医だからこそできるサポートがあります.疾患だけでなく,健康増進,予防,メンタルヘルス,乳幼児のヘルスケアや社会的サポートまで,「お母さん」を支えるための知識をお伝えします.
20〜40代の女性は妊娠・出産などを控えて,自分自身の健康問題に興味をもちますが,産後は子どもに手がかかって,医療から遠ざかる傾向にあります.また,この時期は女性の健康にとって重要ですが,健康診断などの予防医療も含めて,何が大切なのかがevidence basedには語られにくいのが現実です.
医療者は,風邪などの急性疾患や妊婦健診,子どもの乳児健診・予防接種などで,頻繁にこの年代の女性に会うにもかかわらず,女性(とくに妊婦)に苦手意識をもっていることがしばしばで,女性の生涯を見通した介入を行える医療者が日本にはまだまだ多くない印象です.「妊婦は診られない」と敬遠している方も多いのではないでしょうか.
私は,医学生や看護学生,研修医やベテラン医師などを対象に,さまざまなウィメンズヘルス・ワークショップを行いながら,女性患者に苦手意識をもたない医療者の育成に努めてきました.産婦人科医や助産師でなくても,医療者として女性にできることはたくさんあります.私自身,現在は内診台のないクリニックに勤務していますが,女性に対してできることがあると日々実感しています.本書は,内診台などがないセッティングで,プライマリ・ケア医がどう女性を支えていくかという視点で書かれています.
女性の健康問題だけではなく,不妊,妊娠・出産に当たっての準備,事故予防,性教育,セックスの問題,メンタルヘルス,育児サポートなど,多岐にわたる内容を盛り込みました.どの項も,執筆者の想いが詰まった内容になっています.本書を読んでいただき,まずご自身や自分の身の回りのご家族に当てはめてみて,癌検診や予防接種など,できることからやってみることをお勧めします.執筆者からのメッセージが読者の皆様に伝われば幸いです.そして,ご自身が普段診療している女性への診かたも変わってくるのではないかと信じています.
人知れず悩んでいる女性たちが,できる限り正しい知識で守られるよう,心から願っています.
2015年3月
編者を代表して 中山明子
prologue プライマリ・ケア医が妊婦を診るということ
Ⅰ 診
これからお母さんになる人を診る
1 月経異常
2 性感染症
column ヘルス・メンテナンス —USPSTFを知る—
3 子宮頸癌検診とHPVワクチン
4 風疹ワクチン,葉酸
5 タバコ・アルコール
6 妊娠したい人へのケア
7 基礎疾患をもつ女性
column 遺伝カウンセリング
8 社会的支援が必要な場合
妊婦さんを診る
病 気
9 妊婦の血圧・血糖コントロール
10 妊婦によくある疾患・症状
11 妊婦の怖い腹痛
12 妊娠中のX線
13 妊婦のメンタルヘルス
14 出生前診断
ヘルスメンテナンス
15 妊婦の食事・アルコール
column 妊娠前・妊娠中の体重管理の正しい知識
16 出産に当たって伝えておくべきこと・注意点
column 妊婦の旅行
授乳婦さんを診る
病 気
17 おっぱいの相談(授乳中の乳房のしこり,痛み)
18 産後うつ病
19 妊娠中の疾患の産後のフォローアップ
ヘルスメンテナンス
20 母乳育児と離乳食
21 聞かれるとちょっと迷う赤ちゃんのよもやま相談
column ワクチンスケジュールの参考例
お母さんを支える
22 乳癌検診
23 家族計画,避妊
24 セックスの問題
25 事故予防
26 家庭内暴力(パートナーからの暴力,母から子への暴力)を疑うとき
27 子どもへの性教育
28 小中学生の相談
Ⅱ 薬
29 妊娠中の薬
30 授乳中の薬
31 外来での妊婦への処方 —症例集① 風邪—
32 外来での妊婦への処方 —症例集② 嘔吐・下痢—
33 外来での妊婦への処方 —症例集③ 尿路感染症—
34 外来での妊婦への処方 —症例集④ 頭痛—
索 引