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治療 特別編集

先生,漢方を鍼灸を試してみたいんですけど……

患者さんにいわれて困ったときに読む本

1版

日本医療福祉生協連合会 家庭医療学開発センター(CFMD)/和田堀診療所 樫尾明彦 監修
日本医療福祉生協連合会 家庭医療学開発センター(CFMD)根津診療所 今藤誠俊 監修
慶應義塾大学医学部漢方医学センター 堀場裕子 編集
石野医院/昭和大学病院東洋医学科 石野尚吾 編集

定価

3,520(本体 3,200円 +税10%)


  • A5判  233頁
  • 2015年4月 発行
  • ISBN 978-4-525-20361-0

常に患者さんの「困った」に対処しなければならない総合診療医にとって,漢方・鍼灸は診療の幅を広げることができる,とっても使えるツールです.本書は読者のニーズにあわせて「西洋医学的にはじめてみる」「次の一手を話し合ってみる」「もう一歩踏み出してみる」の3つのパートで構成.東洋医学を始めたい医師には最適の入門書です!

  • 序文
  • 目次
序文
 医師が西洋医学に加えて東洋医学(以下,漢方・鍼灸とほぼ同義)の治療も行えるのは,世界中で日本を含め非常に数少ない国だけであるということは,一般的にあまり知られていません.中国・韓国では,西洋医学と東洋医学はそれぞれ別に6年制大学で学ぶ必要があり,国家資格も別となっています.また,西洋医学と東洋医学の間でしばしば対立もみられます.そのようななか,体系的な東洋医学教育の機会がないという欠点はありますが,日本で医師が西洋医学・東洋医学の双方を行えるのは,「よいものは何でも受け入れる」日本文化の利点からであると考えています.
 現在は診療所所長として家庭医療を行うかたわら,日本医科大学東洋医学科にて週1単位の専門外来を行っています.最近は総合診療医を中心にレクチャーを行う機会も増えていますが,日常的に西洋医学を行う医師にとって「東洋医学は理解しづらく,ときにうさん臭い」と感じられるのも無理はないと筆者自身が感じています(笑).しかし,東洋医学によってたしかに症状が改善することもまた事実です.ときに西洋医学で奏効しない場合においても同様の場合がみられます.患者にとって最大の利益となるのは「疾患が治癒すること,それが不可能であれば苦痛となる症状を最大限軽減する」ことであり,そのためには津田篤太郎医師が著書『未来の漢方 ユニバースとコスモスの医学』で述べているように,「西洋医学・東洋医学のどちらが有用か,ときに併用する治療を選択するプラグマティズムが望ましい」と考えられます.
 2015年3月4〜8日に台北で行われたWONCA(世界家庭医療学会)で,Robert E. Rakel教授(アメリカ,ベイラー医科大学)は,東洋医学について“Most people combine Chinese and Western medicine believing the two provide more optimal healing than either one alone.”としたうえで,“Herbal research needed”と,漢方薬の効果について検証の必要があることを述べました.鍼灸についてはWHOから有効性を認められた疾患が数多くありますが(本書「肩関節痛・腰痛・膝関節痛には円皮鍼治療を!─トリガーポイントよりも手頃な疼痛改善法─」参照),漢方薬についてはまだまだ,というところでしょう.この点については,西洋医学のある疾患の患者群について漢方薬を用いても,西洋医学と東洋医学の診断方法が異なるために,うまくエビデンスを発見できないのではないか,と個人的には考えています.その点において,本書が東洋医学を理論的・体系的に習得するきっかけとなれば幸いです.
 筆者は中医学と西洋医学を統合した“中西医結合”を理想としています.本書を手にとられた皆様が,西洋医学と東洋医学の二刀流によって病気と戦うことができる世界で数少ない国の1つである日本で,西洋医学だけでは治癒が望めない,または症状が改善しない患者にとっての光明を見出されることを願ってやみません.
 最後に,東洋医学との出会いを与えてくれた両親と番田知子先生,大学時代に東洋医学をお教えくださった三宅和久先生,今回編集の機会をくれた樫尾明彦先生や,編集に当たりさまざまなご指導をいただきました沖山明彦先生,長瀬眞彦先生,平馬直樹先生,高橋秀実先生に深謝いたします.また,ご執筆を快くお引き受け下さった加島雅之先生をはじめとする「若手医師のための漢方医学セミナー」関係者の皆様,日本医科大学東洋医学科の関係者,すべての皆様に感謝いたします.そして,編集に当たり筆者を日々支えてくれる妻と,人生の喜びをくれる息子に本書を捧げます.

2015年3月
監修者を代表して
今藤誠俊
目次
Ⅰ まず,西洋医学的にはじめてみる

各生薬ごとの注意すべき副作用

1 主訴からスタートする
■漢方薬が第一選択薬になり得る症状
冷 え
易疲労感
食欲不振
便 秘
下 痢
風 邪
めまい
月経痛(月経困難症)

■漢方薬と西洋薬との併用が有用な症状
くしゃみ,鼻づまり
抑うつ・不安
BPSD
排尿困難
慢性湿疹

■西洋薬を減量できる可能性がある症状
頭 痛
胃 痛
膝 痛
不 眠

■ずばり,この症状にはこの漢方を!
咽頭閉塞感

こむら返り
浮 腫
打 撲
凍 瘡
妊娠悪阻

2 診断がついた後にスタートする

■循環器
高血圧症

■消化器
機能性ディスペプシア,過敏性腸症候群

■呼吸器
アレルギー性鼻炎,気管支喘息

■神 経
認知症,パーキンソン病,片頭痛

■内分泌代謝
肥満,痩せ

■腎
腎下垂

■膠原病
関節リウマチ

■婦人科
更年期障害,不妊症

■小 児
インフルエンザ

Ⅱ次の一手を話し合ってみる

1 座談会
プライマリ・ケアで東洋医学(漢方・鍼灸)をどのように活用するか

2 症例カンファレンス
東洋医学ではこう考える! 症例カンファレンスで学ぶ漢方診療

Ⅲ慣れたら,もう一歩踏み出してみる

問診から進める漢方の診察法
病棟で悩んだときの“漢方”
在宅の漢方
高齢者に漢方を処方するときの注意
妊婦・小児への漢方・鍼灸
漢方でのぞむ不妊症治療
鍼灸治療の適応
運動器痛に対する理解と鍼灸利用法
明日から使える鍼灸マッサージ
日常診療で活かせる鍼灸
肩関節痛・腰痛・膝関節痛には円皮鍼治療を! ─トリガーポイントよりも手頃な疼痛改善法─
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