ポリファーマシー見直しのための医師・薬剤師連携ガイド
1版
一般社団法人日本老年薬学会 編
高齢者の多剤処方見直しのための医師・薬剤師
連携ガイド作成に関する研究研究班 編
定価
2,640円(本体 2,400円 +税10%)
- B5判 209頁
- 2018年6月 発行
- ISBN 978-4-525-20601-7
医師・薬剤師の連携はポリファーマシー対策のセンターライン!
高齢者の増加に伴い,高齢者に対する薬物療法の需要はますます高まっている.本書は,ポリファーマシーによる薬物有害事象の回避,服薬アドヒアランス改善などの薬物療法の適正化を,医師と薬剤師がどう連携して進めるか,見直しのポイントとその連携・対応についてまとめた.臨床現場ごとの使えるアクションチャート付き!
- 序文
- 書評3
- 目次
- 書評1
- 書評2
序文
加齢に伴い服用薬剤数が増加し,特に75歳以上ではその傾向が顕著である.多病ゆえの多剤服用であるが,薬物有害事象の増加,服薬アドヒアランスの低下などに寄与することから,この多剤服用現象はポリファーマシーと呼ばれ,その対策が求められている.
まず,処方する医師がポリファーマシーに関連する問題への意識をもって取り組むべきであるが,複数科受診が多く処方の一元管理が困難なこと,具体的な手順が指針化されていないことが障壁になっている.また,多職種協働も重要で,特に薬の専門家である薬剤師の果たす役割が期待され,海外では薬剤師による処方内容の見直しや処方提案などの成果が報告されているが,日本ではいまだ介入成果の報告はまれである.その背景として医師・薬剤師(特に保険薬局)間の連携が十分に機能していないことが指摘されている.
そこで,医師と薬剤師が連携してポリファーマシーに対処するための具体的手順を指針として示すことをゴールに設定し,日本医療研究開発機構・長寿科学研究開発事業「高齢者の多剤処方見直しのための医師・薬剤師連携ガイド作成に関する研究」研究班(平成28-29年度)で本ガイドの作成を行った.
本ガイドは,医師・薬剤師連携のアクションチャートと解説,対応・連携に関するクエスチョン(Q)と解説,Qに対応する形で提示された症例と見直しのポイント,連携ツールの紹介という構成で,どこからでも読み始められるようになっている.このうち4つの現場用に作成されたアクションチャートが本ガイドの目玉であり,ぜひ,アクションチャートを中心に本ガイドを現場で活用いただきたい.
最後に,本ガイドの作成に協力いただいた皆様,特に編集に多大なる尽力をいただき,事務局機能も果たしていただいた南山堂の大城梨絵子,鎌田真実,根本英一の3氏に深謝申し上げる.
2018年5月
東京大学医学部附属病院老年病科
秋下雅弘
まず,処方する医師がポリファーマシーに関連する問題への意識をもって取り組むべきであるが,複数科受診が多く処方の一元管理が困難なこと,具体的な手順が指針化されていないことが障壁になっている.また,多職種協働も重要で,特に薬の専門家である薬剤師の果たす役割が期待され,海外では薬剤師による処方内容の見直しや処方提案などの成果が報告されているが,日本ではいまだ介入成果の報告はまれである.その背景として医師・薬剤師(特に保険薬局)間の連携が十分に機能していないことが指摘されている.
そこで,医師と薬剤師が連携してポリファーマシーに対処するための具体的手順を指針として示すことをゴールに設定し,日本医療研究開発機構・長寿科学研究開発事業「高齢者の多剤処方見直しのための医師・薬剤師連携ガイド作成に関する研究」研究班(平成28-29年度)で本ガイドの作成を行った.
本ガイドは,医師・薬剤師連携のアクションチャートと解説,対応・連携に関するクエスチョン(Q)と解説,Qに対応する形で提示された症例と見直しのポイント,連携ツールの紹介という構成で,どこからでも読み始められるようになっている.このうち4つの現場用に作成されたアクションチャートが本ガイドの目玉であり,ぜひ,アクションチャートを中心に本ガイドを現場で活用いただきたい.
最後に,本ガイドの作成に協力いただいた皆様,特に編集に多大なる尽力をいただき,事務局機能も果たしていただいた南山堂の大城梨絵子,鎌田真実,根本英一の3氏に深謝申し上げる.
2018年5月
東京大学医学部附属病院老年病科
秋下雅弘
書評3
『医師と薬剤師の連携とは,考えていることを伝えること』
島田光明(株式会社ファーコス 代表取締役社長)
“処方された薬が在宅で山のように発見された”“たくさん処方されていた薬を減らしたら元気になった”,そんな話を聞くたびにこれまで何をしていたのだと多くの薬剤師は残念な気分になる.このような問題,いわゆるポリファーマシーを解決するために,これまでも多くの成書が出版され,私たちの考え方や行動の支えになっていた.薬剤師の視点で処方された薬の適否を判断するもの,診察する医師の立場から見た問題点を論じるもの,それぞれの視点で学ぶものがあった.
さて,先ごろ医師,薬剤師,看護師を対象とした「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」が厚生労働省より発出された.本書はまさにこの指針作りに中心的役割を果たした著者と日本老年薬学会の編集によるものである.最大の特徴は「医師・薬剤師連携のアクションチャート」を提示し,医師と薬剤師が連携してポリファーマシーに対処する視点である.豊富なQ&Aや医師と薬剤師の会話例が実践的で実に嬉しい.
島田光明(株式会社ファーコス 代表取締役社長)
“処方された薬が在宅で山のように発見された”“たくさん処方されていた薬を減らしたら元気になった”,そんな話を聞くたびにこれまで何をしていたのだと多くの薬剤師は残念な気分になる.このような問題,いわゆるポリファーマシーを解決するために,これまでも多くの成書が出版され,私たちの考え方や行動の支えになっていた.薬剤師の視点で処方された薬の適否を判断するもの,診察する医師の立場から見た問題点を論じるもの,それぞれの視点で学ぶものがあった.
さて,先ごろ医師,薬剤師,看護師を対象とした「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」が厚生労働省より発出された.本書はまさにこの指針作りに中心的役割を果たした著者と日本老年薬学会の編集によるものである.最大の特徴は「医師・薬剤師連携のアクションチャート」を提示し,医師と薬剤師が連携してポリファーマシーに対処する視点である.豊富なQ&Aや医師と薬剤師の会話例が実践的で実に嬉しい.
目次
本書を利用するにあたって
第1章 総 論
■ポリファーマシーの定義と見直しの基本的な考え方
第2章 医師・薬剤師連携のアクションチャート
■入院編
■外来編
■在宅編
■介護施設編
第3章 医師・薬剤師の対応・連携に関するクエスチョン(Q)と解説
【薬学的問題】
・Q1-1 「特に慎重な投与を要する薬物」に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q1-2 特に慎重な投与を要する薬物」に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q2-1 意図不明の継続処方に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q2-2 意図不明の継続処方に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q3-1 重複処方に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q3-2 重複処方に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q4-1 多施設/多科受診によりポリファーマシーとなった患者に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q4-2 多施設/多科受診によりポリファーマシーとなった患者に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q5-1 ポリファーマシー患者の(潜在的)薬物有害事象に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q5-2 ポリファーマシー患者の(潜在的)薬物有害事象に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q6 どのような生活機能の評価がポリファーマシー患者の薬物有害事象減少に有効か?
・Q7 ポリファーマシー患者の薬物相互作用に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q8 薬剤管理能力/服薬アドヒアランスが低下した患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q9 一包化は服薬アドヒアランスの改善に有効か?
・Q10 服薬アドヒアランスの評価にはどのような方法が推奨されるか?
・Q11 服薬アドヒアランスが低下する要因にはどのようなものがあるか?
・Q12 ポリファーマシーの見直しはどのようなタイミングで行うことが推奨されるか?
・Q13 減薬を希望する入院患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q14 患者情報を効率よく共有するためにどのような連携が推奨されるか?
・Q15 患者情報の共有にお薬手帳は有用か?
・Q16 ポリファーマシーに対する患者の意識・行動変容のためにどのような連携が推奨されるか?
・Q17 ポリファーマシーの見直しに際してどのような非薬物療法が推奨されるか?
【環 境】
・Q18 服薬アドヒアランス不良の患者が退院する際にどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q19-1 在宅患者の服薬管理において在宅医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q19-2 在宅患者の服薬管理において保険薬局薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q20 在宅患者の介護者の負担についてどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q21 独居高齢者の服薬アドヒアランス維持にはどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q22 介護施設入所者の処方適正化においてどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q23 介護施設入所者の退所時にはどのような対応・連携が推奨されるか?
【病 態】
・Q24 転倒しやすいポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q25 腎機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q26 認知機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q27 嚥下機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q28 手指機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q29 低栄養・体重減少があるポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q30 難治性の訴えが多いポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
【特定の薬物】
・Q31 高齢者に睡眠薬を使用する場合の注意点は?
・Q32 抗認知症薬の継続に対して医師・薬剤師はどのように対応するべきか?
・Q33 高齢者に抗コリン系薬物を使用する場合の注意点は?
・Q34 高齢者で抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬)を複数併用する場合の注意点は?
・Q35 高齢者がNSAIDsを使用する場合の注意点は?
・Q36 高齢者がヒスタミンH2受容体拮抗薬を使用する場合の注意点は?
・Q37 高齢者がプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使用する場合の注意点は?
・Q38 自己注射の処方に対する注意点は?
・Q39 高齢者が貼付剤を使用する場合の注意点と対処法は?
・Q40 高齢者に漢方薬を併用する場合の注意点は?
・Q41 サプリメントなどの「いわゆる健康食品」の使用に対する注意点は?
第4章 症例でみる実際の連携と見直しのポイント
症例 1 複数診療科からの重複処方と処方の適正化
症例 2 多剤服用となった消化器疾患治療薬の見直し
症例 3 介護環境不良による退院困難事例
症例 4 嚥下機能低下による服用困難事例
症例 5 サプリメントの多量摂取に伴う薬物有害事象
症例 6 介護者の薬識不足が原因の薬物有害事象
症例 7 ポリファーマシーによる薬物有害事象
症例 8 老年症候群に対する投薬でポリファーマシーとなった事例
症例 9 腎機能低下と多剤服用のために減薬介入を必要とした事例
症例10 もの忘れを主訴に来院された高齢者の事例
症例11 認知症患者による服薬困難事例
症例12 注射剤がQOLを高めた高齢者の事例
症例13 軟便がQOLを大きく低下させていた高齢者の事例
症例14 認知機能低下に伴う服薬管理困難事例
症例15 複数診療科受診に伴い併用禁忌が見過ごされていた事例
症例16 難治性の訴えに対する複数診療科受診で多剤服用となった事例
症例17 認知機能低下による服薬アドヒアランス低下の可能性
症例18 薬物有害事象に対する処方カスケードの可能性
症例19 意図不明の継続処方による薬物有害事象の可能性
症例20 転倒リスクと抗血小板薬および抗凝固薬
症例21 入所をきっかけとした薬の見直し
症例22 通所リハビリテーションを利用中に転倒を繰り返していたパーキンソン病の事例
第5章 現場で使える連携ツール
・持参薬情報:薬剤総合評価(病院薬剤師→病院医師)
・診療情報提供書(病院医師→かかりつけ医)
・診療情報提供書(病院医師→保険薬局薬剤師)
・薬剤適正使用のための施設間情報連絡書(病院薬剤師→保険薬局薬剤師)
・薬剤管理サマリー(病院薬剤師→保険薬局薬剤師)
・トレーシングレポート:薬剤情報提供書(保険薬局薬剤師→病院医師;薬剤部)
・トレーシングレポート:薬剤情報提供書(保険薬局薬剤師→病院医師)
・トレーシングレポート:薬剤情報提供書(保険薬局薬剤師→病院医師)
・診療情報提供書(介護施設医師→かかりつけ医)
・居宅療養管理指導(介護予防居宅療養管理指導)情報提供書
(保険薬局薬剤師→処方医・居宅介護支援事業所)
索 引
第1章 総 論
■ポリファーマシーの定義と見直しの基本的な考え方
第2章 医師・薬剤師連携のアクションチャート
■入院編
■外来編
■在宅編
■介護施設編
第3章 医師・薬剤師の対応・連携に関するクエスチョン(Q)と解説
【薬学的問題】
・Q1-1 「特に慎重な投与を要する薬物」に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q1-2 特に慎重な投与を要する薬物」に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q2-1 意図不明の継続処方に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q2-2 意図不明の継続処方に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q3-1 重複処方に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q3-2 重複処方に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q4-1 多施設/多科受診によりポリファーマシーとなった患者に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q4-2 多施設/多科受診によりポリファーマシーとなった患者に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q5-1 ポリファーマシー患者の(潜在的)薬物有害事象に対して医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q5-2 ポリファーマシー患者の(潜在的)薬物有害事象に対して薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q6 どのような生活機能の評価がポリファーマシー患者の薬物有害事象減少に有効か?
・Q7 ポリファーマシー患者の薬物相互作用に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q8 薬剤管理能力/服薬アドヒアランスが低下した患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q9 一包化は服薬アドヒアランスの改善に有効か?
・Q10 服薬アドヒアランスの評価にはどのような方法が推奨されるか?
・Q11 服薬アドヒアランスが低下する要因にはどのようなものがあるか?
・Q12 ポリファーマシーの見直しはどのようなタイミングで行うことが推奨されるか?
・Q13 減薬を希望する入院患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q14 患者情報を効率よく共有するためにどのような連携が推奨されるか?
・Q15 患者情報の共有にお薬手帳は有用か?
・Q16 ポリファーマシーに対する患者の意識・行動変容のためにどのような連携が推奨されるか?
・Q17 ポリファーマシーの見直しに際してどのような非薬物療法が推奨されるか?
【環 境】
・Q18 服薬アドヒアランス不良の患者が退院する際にどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q19-1 在宅患者の服薬管理において在宅医師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q19-2 在宅患者の服薬管理において保険薬局薬剤師のどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q20 在宅患者の介護者の負担についてどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q21 独居高齢者の服薬アドヒアランス維持にはどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q22 介護施設入所者の処方適正化においてどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q23 介護施設入所者の退所時にはどのような対応・連携が推奨されるか?
【病 態】
・Q24 転倒しやすいポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q25 腎機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q26 認知機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q27 嚥下機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q28 手指機能の低下したポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q29 低栄養・体重減少があるポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
・Q30 難治性の訴えが多いポリファーマシー患者に対してどのような対応・連携が推奨されるか?
【特定の薬物】
・Q31 高齢者に睡眠薬を使用する場合の注意点は?
・Q32 抗認知症薬の継続に対して医師・薬剤師はどのように対応するべきか?
・Q33 高齢者に抗コリン系薬物を使用する場合の注意点は?
・Q34 高齢者で抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬)を複数併用する場合の注意点は?
・Q35 高齢者がNSAIDsを使用する場合の注意点は?
・Q36 高齢者がヒスタミンH2受容体拮抗薬を使用する場合の注意点は?
・Q37 高齢者がプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使用する場合の注意点は?
・Q38 自己注射の処方に対する注意点は?
・Q39 高齢者が貼付剤を使用する場合の注意点と対処法は?
・Q40 高齢者に漢方薬を併用する場合の注意点は?
・Q41 サプリメントなどの「いわゆる健康食品」の使用に対する注意点は?
第4章 症例でみる実際の連携と見直しのポイント
症例 1 複数診療科からの重複処方と処方の適正化
症例 2 多剤服用となった消化器疾患治療薬の見直し
症例 3 介護環境不良による退院困難事例
症例 4 嚥下機能低下による服用困難事例
症例 5 サプリメントの多量摂取に伴う薬物有害事象
症例 6 介護者の薬識不足が原因の薬物有害事象
症例 7 ポリファーマシーによる薬物有害事象
症例 8 老年症候群に対する投薬でポリファーマシーとなった事例
症例 9 腎機能低下と多剤服用のために減薬介入を必要とした事例
症例10 もの忘れを主訴に来院された高齢者の事例
症例11 認知症患者による服薬困難事例
症例12 注射剤がQOLを高めた高齢者の事例
症例13 軟便がQOLを大きく低下させていた高齢者の事例
症例14 認知機能低下に伴う服薬管理困難事例
症例15 複数診療科受診に伴い併用禁忌が見過ごされていた事例
症例16 難治性の訴えに対する複数診療科受診で多剤服用となった事例
症例17 認知機能低下による服薬アドヒアランス低下の可能性
症例18 薬物有害事象に対する処方カスケードの可能性
症例19 意図不明の継続処方による薬物有害事象の可能性
症例20 転倒リスクと抗血小板薬および抗凝固薬
症例21 入所をきっかけとした薬の見直し
症例22 通所リハビリテーションを利用中に転倒を繰り返していたパーキンソン病の事例
第5章 現場で使える連携ツール
・持参薬情報:薬剤総合評価(病院薬剤師→病院医師)
・診療情報提供書(病院医師→かかりつけ医)
・診療情報提供書(病院医師→保険薬局薬剤師)
・薬剤適正使用のための施設間情報連絡書(病院薬剤師→保険薬局薬剤師)
・薬剤管理サマリー(病院薬剤師→保険薬局薬剤師)
・トレーシングレポート:薬剤情報提供書(保険薬局薬剤師→病院医師;薬剤部)
・トレーシングレポート:薬剤情報提供書(保険薬局薬剤師→病院医師)
・トレーシングレポート:薬剤情報提供書(保険薬局薬剤師→病院医師)
・診療情報提供書(介護施設医師→かかりつけ医)
・居宅療養管理指導(介護予防居宅療養管理指導)情報提供書
(保険薬局薬剤師→処方医・居宅介護支援事業所)
索 引
書評1
葛谷雅文 先生〔名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学講座(老年内科)教授〕
この『ポリファーマシー見直しのための 医師・薬剤師連携ガイド』は医師と薬剤師が連携してポリファーマシーに対処するための実践的な手順書である.ポリファーマシーの概念を5,6種類以上の単なる多剤服用(処方)と捉えがちである.実際international journalで現在もpolypharmacyの多くの定義は5種類以上の処方数としているケースが多い.しかし多病を抱える高齢者では一人で複数の病気を抱えているケースが多い.できる限り不適切な処方を削減し薬剤数を減らす努力はするものの処方数が増え罪悪感を持ちつつ処方をしている先生方もおられるのではないだろうか.この問題は裏腹で薬剤を減らすことにより患者にとってデメリット(過小医療)にもつながるケースがある.無駄(患者にとって不利益)な薬剤は積極的に削減すべきではあるが「単純に数だけの問題ではないよな」と私も心の中で思っていた.
今回この本ではポリファーマシーを多剤処方とは分けて「有害事象につながるなどあらゆる不適切な薬剤使用」と定義された.私もこの考え方に賛成である.
本書では各診療の場での医師・薬剤師連携のアクションチャートが示され現場でも参考になる.また多くのクエスチョン(Q)が立てられシステマティックレビューは実施していないとはいえ,報告に基づくポリファーマシーへの対応・連携方法,日常的に頻繁に使用する薬剤の基本的な情報や注意点がしっかり書き込まれており医師にとって日常診療の手引書としても大変有用である.さらに22の症例では主に医師と薬剤師とのやり取りの事例が記載されており現場での連携のあり方の参考となるに違いない.
まずは医師は薬剤師の方々と連携することによるメリットを十分認識することが重要であると思う.本書によりポリファーマシーの理解が深まり医師・薬剤師連携が進展し何よりも患者さんたちが適切な薬物療法を受けることにつながることを祈願する.
この『ポリファーマシー見直しのための 医師・薬剤師連携ガイド』は医師と薬剤師が連携してポリファーマシーに対処するための実践的な手順書である.ポリファーマシーの概念を5,6種類以上の単なる多剤服用(処方)と捉えがちである.実際international journalで現在もpolypharmacyの多くの定義は5種類以上の処方数としているケースが多い.しかし多病を抱える高齢者では一人で複数の病気を抱えているケースが多い.できる限り不適切な処方を削減し薬剤数を減らす努力はするものの処方数が増え罪悪感を持ちつつ処方をしている先生方もおられるのではないだろうか.この問題は裏腹で薬剤を減らすことにより患者にとってデメリット(過小医療)にもつながるケースがある.無駄(患者にとって不利益)な薬剤は積極的に削減すべきではあるが「単純に数だけの問題ではないよな」と私も心の中で思っていた.
今回この本ではポリファーマシーを多剤処方とは分けて「有害事象につながるなどあらゆる不適切な薬剤使用」と定義された.私もこの考え方に賛成である.
本書では各診療の場での医師・薬剤師連携のアクションチャートが示され現場でも参考になる.また多くのクエスチョン(Q)が立てられシステマティックレビューは実施していないとはいえ,報告に基づくポリファーマシーへの対応・連携方法,日常的に頻繁に使用する薬剤の基本的な情報や注意点がしっかり書き込まれており医師にとって日常診療の手引書としても大変有用である.さらに22の症例では主に医師と薬剤師とのやり取りの事例が記載されており現場での連携のあり方の参考となるに違いない.
まずは医師は薬剤師の方々と連携することによるメリットを十分認識することが重要であると思う.本書によりポリファーマシーの理解が深まり医師・薬剤師連携が進展し何よりも患者さんたちが適切な薬物療法を受けることにつながることを祈願する.
書評2
林 昌洋 先生(虎の門病院 薬剤部長)
世界に類をみない速度で超高齢社会を迎えたわが国では,健康長寿を謳歌していただく意味でも,医療提供体制を健全に維持する観点でも,高齢者の薬物療法の最適化は喫緊の課題となっている.
日々の業務の中で,持参薬確認や薬歴管理に際して,高齢者のポリファーマシー問題を意識する機会が増えているのではないだろうか.しかし,高齢者は複数の疾病を患っていることも多く,それに対して複数の医療機関を受診しており,各疾患にはそれぞれ主治医がいて処方が出されているため,ポリファーマシーの見直しは難しいと感じている薬剤師が多いのも事実である.
こうした問題への道標となり解決策を提示してくれる書籍として本書が出版された.
本書は,総論,医師・薬剤師連携のアクションチャート,医師と薬剤師の対応・連携に関するQ&A,症例でみる実際の連携と見直しのポイント,現場で使える連携ツールの5章から構成されている.初心者にもわかりやすい構成であると同時に,実務経験豊富な薬剤師にとっても新たなヒントが満載の知恵袋的な内容となっている.
中でも,41 項目のQ&Aは,30 文字程度のQuestion,数行の回答Summary,1頁程度の解説から構成されており読みやすい.この領域に初めて関心をもった方が通読するのもよいし,日常業務において遭遇した問題点について参照するにも便利である.このQ&Aと合わせて特筆すべき点が,医師と薬剤師がポリファーマシーの見直しを連携・協議している場面が描かれた22項目の症例である.
本書の記載から少し紹介してみよう.Q36では「高齢者がヒスタミンH2受容体拮抗薬を使用する場合の注意点は?」のQuestionに対し,Summaryでは「特に高齢者では認知機能低下やせん妄のリスクとなること」「腎機能低下患者では排泄が遅延して血中濃度が高くなり有害事象が生じやすいこと」を認識する必要があると回答されている.本書では,このQ&Aが症例とリンクしている.リンク先の“症例2”では,薬剤師が「シメチジンは薬物相互作用もあるので,ほかの薬剤へ変更してはどうでしょうか?」と医師に処方提案すると,医師は「胃潰瘍を起こされても困るので,中止してランソプラゾールへの変更をしましょう」と処方を再考する場面が用意されている.書籍の中で,擬似的にポリファーマシーチームのラウンドに立ち会う経験ができる仕組みとなっている.経験豊かな薬剤師の着眼点やコミュニケーションスキルのお手本が学べる工夫も,ぜひ本書をお勧めしたいと感じた根拠である.
ポリファーマシー対策は,多職種連携のもと進める必要があるが,本書の利用の手引きには「医師・薬剤師の連携・協働はポリファーマシー対策のセンターライン」と書かれている.薬剤師であれば誰もが薬の専門職としての責任を再認識するとともに,ポリファーマシー対策に取り組む“勇気”と“知恵”をもらえる一冊となっている.
世界に類をみない速度で超高齢社会を迎えたわが国では,健康長寿を謳歌していただく意味でも,医療提供体制を健全に維持する観点でも,高齢者の薬物療法の最適化は喫緊の課題となっている.
日々の業務の中で,持参薬確認や薬歴管理に際して,高齢者のポリファーマシー問題を意識する機会が増えているのではないだろうか.しかし,高齢者は複数の疾病を患っていることも多く,それに対して複数の医療機関を受診しており,各疾患にはそれぞれ主治医がいて処方が出されているため,ポリファーマシーの見直しは難しいと感じている薬剤師が多いのも事実である.
こうした問題への道標となり解決策を提示してくれる書籍として本書が出版された.
本書は,総論,医師・薬剤師連携のアクションチャート,医師と薬剤師の対応・連携に関するQ&A,症例でみる実際の連携と見直しのポイント,現場で使える連携ツールの5章から構成されている.初心者にもわかりやすい構成であると同時に,実務経験豊富な薬剤師にとっても新たなヒントが満載の知恵袋的な内容となっている.
中でも,41 項目のQ&Aは,30 文字程度のQuestion,数行の回答Summary,1頁程度の解説から構成されており読みやすい.この領域に初めて関心をもった方が通読するのもよいし,日常業務において遭遇した問題点について参照するにも便利である.このQ&Aと合わせて特筆すべき点が,医師と薬剤師がポリファーマシーの見直しを連携・協議している場面が描かれた22項目の症例である.
本書の記載から少し紹介してみよう.Q36では「高齢者がヒスタミンH2受容体拮抗薬を使用する場合の注意点は?」のQuestionに対し,Summaryでは「特に高齢者では認知機能低下やせん妄のリスクとなること」「腎機能低下患者では排泄が遅延して血中濃度が高くなり有害事象が生じやすいこと」を認識する必要があると回答されている.本書では,このQ&Aが症例とリンクしている.リンク先の“症例2”では,薬剤師が「シメチジンは薬物相互作用もあるので,ほかの薬剤へ変更してはどうでしょうか?」と医師に処方提案すると,医師は「胃潰瘍を起こされても困るので,中止してランソプラゾールへの変更をしましょう」と処方を再考する場面が用意されている.書籍の中で,擬似的にポリファーマシーチームのラウンドに立ち会う経験ができる仕組みとなっている.経験豊かな薬剤師の着眼点やコミュニケーションスキルのお手本が学べる工夫も,ぜひ本書をお勧めしたいと感じた根拠である.
ポリファーマシー対策は,多職種連携のもと進める必要があるが,本書の利用の手引きには「医師・薬剤師の連携・協働はポリファーマシー対策のセンターライン」と書かれている.薬剤師であれば誰もが薬の専門職としての責任を再認識するとともに,ポリファーマシー対策に取り組む“勇気”と“知恵”をもらえる一冊となっている.