書籍カテゴリー:高齢者医学

ベッドサイドの高齢者の診かた
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ベッドサイドシリーズ
ベッドサイドの高齢者の診かた

1版

  • 名古屋大学大学院医学系研究科准教授 葛谷 雅文 編
  • 東京大学大学院医学系研究科准教授 秋下 雅弘 編

定価:6,264円(本体5,800円+税8%)

  • B5変型判 326頁
  • 2008年3月 発行
  • ISBN978-4-525-20871-4

概要

高齢受診者の日常診療に占める割合は日々増大しているが,専門的な高齢者医療教育を受けた医師は非常に少ないのが現状である.本書では診療所,療養病床,老人保健施設などで高齢者医療を診るに当たり,座右に置いてこまめに紐解くことのできるテキストを目指している.生活の質を重視した高齢者に相応しい医療の実践に必須の書である.

序文

わが国における高齢化率は既に平成17年度には20%を越し,今後さらに進み,2050年には国民の1/3が65歳以上という驚くべき世の中になることが予想されている.臨床の現場においても,入院,外来を問わず,各診療科は高齢者で溢れ,人口の高齢化のみならず「医療の高齢化」を実感する昨今である.
高齢者医療は多くの点で一般成人に対する医療と異なる点がある.疾患に関しては,多臓器にわたる疾患が認められ,症状が非定型的であり,機能障害につながる場合が多いなど,高齢者特有の特徴があり,診療に際しては横断的かつ包括的な医療が求められる.既に回復不能な身体機能障害,認知機能障害を持ち,それらの高齢者は明らかに人生の終末に近く,成人と同様な医療を行うことは困難で,また本人,家族も多くはそれを望まない.さらに,高齢者特有の医療環境,生活の場の問題があり,障害の程度と生活環境により医療を受ける場(急性期,回復期,療養型病床,老人保健施設)のみならず,療養する場(家庭,特別養護老人ホーム,グループホームなど)が異なる.また,特定病因論に基づく,原因が判れば病気は治癒できる,という「医療モデル」は,もはや無数の慢性疾患,加齢,生活面や社会的な面,心理的な要素が合わさって構築される疾病,障害を抱える高齢者に対しては適応できないのは明らかである.その意味で高齢者医療および老年医学は独自の領域といえる.
日本の老年医学は教育と言う意味では1962年の東京大学における老年病学教室の開設に始まる.それ以降徐々に大学病院に老年科(老人科,老年病科,高齢医学科など)の創設は増加したが,旧国立大学の独立行政法人化後,人口の高齢化が叫ばれ,高齢者医療の重要性が叫ばれている最中,老年医学を担当する講座,診療科の創設はピタリと止まった.専門の医師が居ない大学ではどのように高齢者医療,老年医学の教育がなされているのか危惧するところである.一方,診療所をはじめ地域医療に従事している医療施設では多くの患者が高齢者であり,また療養型病床,老人保健施設には要介護状態の高齢者が入院,入所しており,担当医師は日々高齢者を対象とした医療を実践しておられる.しかし,僭越ながら高齢者医療の現場では特別な高齢者医療教育を受けたことがない多くの医師により診療行為が行われているのが現実である.確かに一般的な知識があれば一通りの医療は行えるであろう.しかし上記のように高齢者には高齢者特有の病態があり,症候があり,評価法があり,治療法があり,予防法があるはずである.
平成20年度から開始される,後期高齢者医療制度の創設を前に,日本の高齢者医療の重要性は益々増しており,今後医療の現場では高齢者,特に後期高齢者を包括的に診療する医師の必要性が強調されている.すなわち,今後地域で望まれているのは高齢者を包括的に診療できる老年医学の教育を受けた医師である.
「ベッドサイドの高齢者の診かた」は,診療所,療養型病床,老人保健施設などで高齢者医療を実践している医師がまさに,ベッドサイド,診察室でこまめに紐解くことができる,紐解く意味があるようなテキストを目標とした.高齢者医療の中で係わる疾患は無数であり,本書では,頻度が多く,重要と思われる事項だけをピックアップして執筆をお願いした.従って高齢者医療の現場で遭遇する疾患の中には欠落しているものもあると思われるが,ご了承いただきたい.本書が高齢者医療の現場で働く医師たちのお役に立てることを切に願うものである.


2008年1月
葛谷雅文
秋下雅弘





目次

I.状況・状態に応じた高齢者の診かた
 1.急性期の診かた
  a.かかりつけ医の場合 b.介護施設の場合
 2.慢性期の診かた
  a.かかりつけ医の場合 b.療養病床・老人保健施設
 3.訪問診療における在宅高齢者の診かた
  a.在宅医療導入時 b.急変時 c.終末期
II.おさえておきたい重要項目−老年症候群
 1.認知症
 2.転倒・骨折
3.嚥下困難,誤嚥性肺炎
4.褥瘡
 5.食欲低下・低栄養
 6.尿失禁
7.うつ
8.口腔の問題−咀嚼障害
 9.歩行障害
III.慢性臓器不全の管理の方策
 1.慢性心不全
 2.慢性腎不全
 3.COPD
 4.肝硬変
IV.生活習慣病への介入の仕方
 1.高血圧
 2.糖尿病
 3.脂質異常症
 4.肥満症・メタボリックシンドローム
V.急性期状態の高齢者の特徴・鑑別・介入
 1.意識障害
 2.めまい
 3.発熱
 4.窒息
 5.虐待
 6.脱水
 7.せん妄
 8.胸痛
 9.呼吸困難
 10.吐・下血
VI.高齢者の評価法−CGA
 1.CGA
 2.基本的ADL
 3.手段的ADL
 4.認知機能障害
 5.抑うつ
 6.QOL
VII.高齢者の薬剤使用の基本
VIII.終末期の対応と倫理
IX.介護予防
X.介護保険サービスの使用法