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カテゴリー: 地域医療

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在宅医療×感染症

1版

そら内科クリニック 院長 遠藤光洋 編集
国立国際医療研究センター 国際感染症センター センター長
大曲貴夫 編集

定価

3,300(本体 3,000円 +税10%)


  • B5判  179頁
  • 2016年12月 発行
  • ISBN 978-4-525-23371-6

病原菌は移動する 病院から個人宅・施設までワンヘルスの視座を手に入れよう!

終末期がん患者の肺炎にどこまで積極的治療をする?介護者がインフルエンザになった時の対応は?在宅患者は独自の感染リスクをもつ集団だが,エビデンスは,ほぼない状況である.本書では,感染症と在宅医療それぞれの専門家が,臨床上の疑問について対話し,お互いの診療ロジックへの理解を踏まえ,患者を中心に両者をつなぐ道を探る.

  • 目次
  • 序文
  • 書評 1
  • 書評 2
目次
患者背景
 1 在宅医療の対象となる方の感染症にはどのような特徴があるのか

肺 炎
 2 末期がんの在宅患者の肺炎
 3 虚弱高齢者の肺炎
 4 気道感染を繰り返す人工呼吸器装着の神経難病患者
 5 気道感染を繰り返す人工呼吸器装着の小児
 6 抗菌薬のみで発熱を制御できない場合

尿路感染
 7 発熱と尿路感染を繰り返す末期がん患者
   Column 在宅でのカテーテル関連尿路感染の実態調査

皮膚軟部組織感染
 8 褥瘡の創部感染
 9 施設入所者と疥癬

その他デバイス関連感染
 10 中心静脈カテーテル(CVポート)関連感染

抗菌薬適正使用と耐性菌
 11 手段も限られる中,ハイリスク者にどこまでどんな方法で治療すべきか
 12 発熱と感染の見極めと心配している家族への対応
 13 在宅での抗菌薬使用の現状と実際の耐性菌の発生・感染リスク

感染対策
 14 インフルエンザ(個人宅)
 15 ノロウイルス(個人宅)
 16 施設入所者とインフルエンザ
 17 施設入所者とノロウイルス
 18 病院の対策を自宅にどこまで持ち込むか

感染症と医療連携
 19 末期がん患者
 20 虚弱高齢者
 21 神経難病患者
 22 超重症児
 23 HIV患者と在宅医療

索 引
序文
在宅医より 序

 私が,在宅医療に従事するようになったのは,前職場であるあおぞら診療所新松戸に入職した2007 年4 月でした.以後,様々な患者さんやご家族に関わらせていただくことになったのですが,患者さんの疾患,年齢は非常に多岐にわたるものでした.例えば,末期がんの患者さん.20 代,30 代と若年で発症し自宅で亡くなった患者さんもいました.また,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんや,人工呼吸器や胃瘻などの経管栄養を,生まれて間もないころから行っている超重症児と呼ばれる小児の患者さんもたくさんいました.
 これまでかかわらせてもらった数多くの患者さんは,それぞれが,いろいろな原因によって,在宅療養を続けるにあたり不安をもっていることも肌で感じてきました.
 その不安の中で,おそらくかなり大きな部分を占めるのが,感染症に対する対応でした. 在宅医療を安心して続けていく上で,避けて通れないのが,感染症との闘いです.肺炎や尿路感染はもちろん,褥瘡への対応や,中心静脈栄養などの管理.冬場にはインフルエンザやノロウイルスに感染しないように,患者さんの家族とともに関わるスタッフは非常に神経を使います.
 一方で,在宅療養を患者さんが選択するのは,病院ではなく,あえて住み慣れた自宅で過ごしたい,という思いがあることもあります.とくに,末期がんの患者さんは,予後が厳しいといわれ,残された時間を有意義に過ごしたいと考えている場合などはその傾向が強いと思います.その場合,感染症の対応を,病院の治療と同様に行うことが,患者さんの生活の質を損なわないとも限りません.
 在宅医療には,一口に感染症の対応といっても,疾患のバリエーションがあり,病院と同様にすべきではない(あるいはできない)ような事例も多く,日々頭を悩ませることとなります.
 私は,感染症の対応に悩んだ場合,20 数年来の友人である感染症医の大曲貴夫先生に電話でよく相談させてもらっていました.感染症の専門の医師は,なかなか周囲にはいないこともあり,いろいろな場面で助けてもらいました.そのやり取りをする中で,南山堂の佃様から今回の企画のご提案をいただき,「面白いかもしれない」と思いご一緒させていただくこととなりました.
 本書籍の出版にあたっては,様々な方のご協力,ご指導をいただきました.南山堂の佃さん,伊藤さんには,遅筆の私をリード・アドバイスして下さり,心から感謝申し上げます.大曲先生をはじめ,執筆にご協力いただいた各先生方にはあらためて感謝申し上げます.
 
2016 年9 月30 日
遠藤光洋

感染症医より 序

 私の仕事は感染症医です.感染症の診療と医療に関連して起こる感染症(医療関連感染症)の防止対策を専門としています.これまで感染症医として,主に病院の中で感染症と関わってきました.しかし医療の場が病院の中から外へと広がっていくなかで,私自身も徐々に病院の外との関わりが増えてきました.
 以前私は静岡がんセンターで勤務していた際に,静岡県と静岡県病院協会が行っている医療機関や高齢者施設の感染対策支援事業に関わっていました.これが,私が「病院の外」の感染症の問題に関わることになった最初のきっかけです.この活動を通じて,病院内の感染防止対策の理屈の単純な当てはめでは解ききれない問題があることを知ることになりました.そしてもう一つのきっかけは,在宅医療に関わる先輩医師・友人医師から在宅医療の中で起こる様々な感染症の問題について相談を受けるようになったことです.在宅医療の場は私にとって未知のものでした.先輩や友人から場の文脈を教えてもらって解決法を考えるのですが,やはり急性期医療の対策の単純な転用などできません.なんとももやもやとした気持ちを持ち続けていました.
 そのような矢先に,「在宅医療の場での感染症対策をまとめてみよう」という話が持ち上がりました.正直私はかなり腰が引けていました.何故なら自分自身が実践の経験がありませんし,この分野にはいわゆる科学的知見が少ないことを知ってもいたからです.しかし在宅医療の豊富な経験を有する遠藤先生とならなんとかできるのではないかと考えました.これは,実際に遠藤先生と在宅医療の場での感染症対策を相談する機会が何度もあったからです.この経験を通じて,在宅医療の豊富な経験を有する医師のその経験と,感染症医なりに提示できるものを組み合わせれば,たとえいわゆる”Evidence Based” でなくとも現場に役立つものができるのではないかと考えました.そしてでき上がったのがこの本です.
 偶然ですが,この本の作成中の2016 年に日本の微生物薬耐性(AMR)対策のアクションプランが発表されました.このアクションプランでは病院だけでなく地域もその重要な対象としてあげられています.本書が今後の在宅医療を含めた地域での感染症対策の参考になればと願っています.このような書籍の前例があまりありませんので,内容に関するご批判や疑問も必ずやあるでしょう.しかし私はそこから研究も進んでいき,その結果が対策をよりよくしていくと考えています.
 最後に,本書に関わられた皆様に心よりお礼を申し上げます.特に,企画段階から私達を引っ張ってくださった佃さんはじめ南山堂の方々,お忙しい中執筆を引き受けてくださった先生方には特段の感謝を申し上げます.

2016 年9 月30 日
大曲貴夫

書評 1
「彼岸と此岸をむすぶ架け橋」

亀井三博 先生(亀井内科呼吸器科)

 私が開業した20年ほど前から,医療という名の大河は病院から在宅へとその流れを変えてきた.在宅医療を巡るシステムの整備のおかげで長期人工呼吸など,病院で過ごさざるを得なかった多くの患者さん達はご家庭で過ごすことができるようになった.その流れに身を置きかつて病院医師として,そして今診療所医師として患者さんのお宅に向かう日々を過ごす身として感じるのは,病院と在宅の間に横たわる河は存外深くて広いものであると言うことである.患者さんとともに望む向こう岸は遥か霧に霞んでいる.それは彼岸の医師にとっても同様であろう.どこにあっても日々直面する感染症という普遍的な問題の解決の切り口から在宅医療に迫った,あるいは在宅医療という視点から感染症に迫ったこの書籍は彼岸と此岸をむすぶ架け橋ともいうべき力作である.在宅医,病院専門医,そして看護師が胸襟を開き語り合う中から私たち読者は多くの学びを得ることができる.知らぬ間に付箋だらけになったこの本は在宅で患者さんを診る医師にとって有用な情報,専門医からの温かいメッセージが満載である.しかし個人的にはこの本は一生在宅には縁がないかもしれない研修医・医師達に読んで頂きたい.病院では可能な感染症治療・予防のためのベストな選択は家で暮らす患者さんとそのご家族の生活を守るためにベターな選択にならざるを得ないことを知って欲しいと思う.この本を読んで頂くことで霧に霞む河の向こう岸に患者さんとたたずむ私たちの顔が,そしてお互いの顔が見通せるようになり,より多くの在宅で暮らす患者さん達の生活が豊かなものとなることを信じている.
書評 2
安中正和 先生(安中外科・脳神経外科医院) 

 小生が勤務医から突然開業医になり右往左往しているときに,在宅医療に出会いました.在宅医療を始めて徐々に悩ましくなることは感染症についてでした.悩んだ時に,勤務医時代の先輩後輩の関係にあった大曲貴夫先生に,コンサルテーションという名目で無理難題な質問をしておりました.適正な答えが返ってくることもあったり,「うーん在宅ではそれは無理だなぁ」ということもありました.大曲先生ご自身も在宅医療の経験がないのに安易にお答えはできないという,元来真面目な性格なので思い悩んでいたことでしょう.
 在宅医療にも当然,末期がんの感染症治療,誤嚥性肺炎,尿路感染症など様々な感染症があります.そこを制すれば在宅医療がストレスなく行えるといっても過言ではありません.入院させれば簡単ですが,それにともなうADLの低下,せん妄などの出現,治療と称しての拘束などデメリットも大きいのが現状です.その中で,家で過ごさせてあげたいと思いながらも,在宅医療を続けることがかえって患者家族に迷惑をかけるのではといつも自問自答しています.このように在宅医療にどっぷりつかればつかるほど感染症との闘いのような気がしておりました.
 そこで,この本です.おそらく在宅医療にどっぷりつかっていた遠藤先生と感染症の専門家がタッグを組んだのが本書です.座談会方式で在宅医療での悩みを遠藤先生が症例提示をして,それに対して大曲先生はじめ感染症の専門家が真摯に答えています.専門家らの意見をうまく在宅医療に取入れるヒントがちりばめられています.もちろん答えが出ない状況もあります.しかし,答えが出ないことこそ勤務医の先生方にも勉強になる内容となっています.病院での医療では普通なことでも在宅医療では限界があります.そこをどう患者家族に納得してもらい,我慢が必要な時があること,諦めなければならない時があることを説明できるかです.我々には決断力が求められます.その時にこの本は悩みを解決してくれる一助になることは間違いありません.在宅医療初心者,医療従事者などにもわかりやすく解説しておりお勧めの本です.立ち読みではだめな内容です.購入してじっくり読み込むことが大切です.
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