書籍カテゴリー:循環器学|感染症学

循環器感染症 −難治性症例へのアプローチ−
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循環器感染症 −難治性症例へのアプローチ−

1版

  • 国立循環器病研究センター 病院長 小林順二郎 監修
  • 国立循環器病研究センター 感染症対策室 室長 佐田 誠 編集

定価:3,780円(本体3,500円+税8%)

  • B5判 97頁
  • 2019年3月 発行
  • ISBN978-4-525-23391-4

概要

循環器病感染症に携わる第一線の専門家が難治症例へのアプローチを解説!!

循環器領域の治療では人工物留置が多く,感染症は難治性になる傾向が強い.さらに,患者の高齢化,重症化,難治化および併存症の増加に伴い,診療のアプローチに有用な情報は重要である.本書では,循環器領域の難治性感染症に関するこれまでのエビデンスを網羅するとともに,現段階での最適の予防および治療方法を症例とともに解説.

序文

─ 監修のことば ─


 循環器感染症は人工物や,血流が乏しい部位への感染が多くを占める.また他の部位の感染症と違い,顕在化することが遅れ,郭清切除することも困難である.筆者は心臓外科医であり,感染症としてもっとも難渋したのが縦隔洞炎と感染性心内膜炎であった.わが国では,心臓手術後に手術部位感染(SSI)を起こすと,入院期間が3.7倍となり,医療費も276万円多くかかることが明らかになっている.さらに,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染では入院期間は4.1倍,医療費410万円増,縦隔炎では入院期間は4.6倍,医療費489万円増であった.そしてMRSA縦隔洞炎に罹患した患者の死亡率は20〜40%と極めて高い.また,感染性心内膜炎に対する外科治療の手術死亡率は現在でも約20%であり,人工弁感染ではさらに高い.循環器疾患の治療はここ10年で飛躍的に進歩したが,循環器感染症は上述したように重篤な結果を招くとともに,医療費を増大させている.
 循環器疾患は多数のガイドラインが発表されており,診断・治療に関する最新の知見を得ることが容易である.また,冠動脈インターベンションや心房細動に対するカテーテルアブレーションの解説書,さらには心臓血管外科の手術書などは数多く発刊されている.しかしながら,本書のように,循環器感染症に特化して書かれた成書はこれまでほとんどなく,循環器を志す若手医師やレジデントが簡単に学習できるような教科書はまったくなかった.本書は,主として国立循環器病研究センターを支えている世代の執筆者が貢献して出来たものである.第1章の総論では,循環器感染症のコンセプトや予防法,画像診断や薬物動態といった基本的なことが詳述され,第2章ではエキスパートの治療法がわかりやすく解説されており,感染性心内膜炎,縦隔洞炎に加えて感染性大動脈瘤,人工血管や補助人工心臓感染,心移植後感染が症例として提示されている.今後も版を重ねて,循環器感染症のバイブルとなることを願っている.最後に,本書の刊行にご支援頂いた南山堂編集部の方々に厚くお礼を申し上げたい.

2019年3月

国立循環器病研究センター病院長 小林順二郎


─ 序 ─


 感染対策の仕事をしている関係で,抗菌薬の適正使用に関する種々の学会セッション,研究会,講演会,勉強会等に参加させていただいているが,こうした場では“多領域に共通した抗菌薬適正使用”の話になることが多く,特殊病態下における抗菌薬療法に関する話は避けられる傾向にあることを感じていた.特に循環器領域では,感染症の頻度自体が少ないこともあり,抗菌薬治療や感染対策の話題に触れることができる機会が極めて少ない.感染性心内膜炎以外ガイドラインらしいものはない中で,経験と技術のみで目の前の感染症と日々格闘しているのが循環器感染症診療の現状であり,こうした厳しい環境の中,24時間体制で患者と向き合っている心臓血管外科医および循環器内科医のために本書は誕生した.
 言うまでもなく,感染症診療で最も大切なことは,薬剤耐性菌を出さないことではなく,感染症を治癒させ,患者の命を守ることである.耐性菌抑制の観点では適切な抗菌薬の選択であっても,感染症が制御できず患者が亡くなってしまったのなら,それは不適正な抗菌薬使用と言わざるを得ない.重篤な心血管疾患患者における感染症治療では,ちょっとした抗菌薬の選択ミスが死に直結することもある.こうした循環器感染症の特徴は,主治医だけでなく,感染制御チーム(Infection Control Team:ICT),抗菌薬適正使用支援チーム (Antimicrobial Stewardship Team: AST) も肝に銘じておくべきである.
 本書では,循環器感染症診療の第一線で活躍されている一流の先生方に執筆をお願いした.執筆にあたっては,もともとエビデンスが少ない領域なので,文献を集めた総説的な内容ではなく,日々の格闘記録を,臨場感をもってお伝えできるような構成とした.日々循環器感染症診療に従事されている心臓血管外科および循環器内科の先生方のみならず,看護師,薬剤師,検査技師,ICT・AST のメンバーの方々にも是非ご一読願いたい.本書が少しでも皆様の日常診療の一助となれば,編者として大いなる喜びである.
 最後に,遅々として進まぬ編者の作業を,最後まで忍耐強く,かつ暖かい眼差しで見守ってくださった南山堂編集部のスタッフの皆様に心から感謝申し上げたい.

2019年3月

国立循環器病研究センター感染対策室 室長 佐田 誠

目次

第1章 ゼロから学ぶ「循環器感染症」総論

1“循環器感染症”の特徴と循環器領域における抗菌薬に対する基本的な考え方
・循環器感染症の特徴
・循環器感染症に対する抗菌薬治療における考え方
  1.抗菌薬の選択と投与量・投与方法
  2.カテーテル関連血流感染(CRBSI)

2 循環器感染症の画像診断
・感染性心内膜炎
・術後縦郭洞炎
・感染性大動脈瘤
・人工血管感染
・心移植関連感染症

3 循環器領域で留意する抗菌薬の薬物動態
・抗菌薬の薬物動態
  1. Pharmacokinetics 薬物動態学
  2. Pharmacodynamics 薬力学
・抗菌薬のTDM
・抗菌薬の薬物動態における疾患の影響
  1.腎機能障害
  2.透析(HD,CHDF)
  3.心不全
  4.炎症

4 循環器領域における周術期感染予防
・循環器領域における周術期感染予防の重要性
・術前感染予防
・術後感染予防

第2章 エキスパートの診療アプローチ
1 感染性心内膜炎(内科的治療・外科的治療)
・診療シミュレーション
・症例から学ぶ

2 術後縦隔洞炎
・診療シミュレーション
・症例から学ぶ

3 感染性大動脈瘤
・診療シミュレーション
・症例から学ぶ

4 人工血管(グラフト)感染
・診療シミュレーション
・症例から学ぶ

5 左心補助人工(LVAD)と感染症
・診療シミュレーション
・症例から学ぶ

6 心蔵移植後感染症
・診療シミュレーション
・症例から学ぶ