書籍カテゴリー:内分泌・代謝学|内科学一般

糖尿病におけるmultimorbidity
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糖尿病におけるmultimorbidity

1版

  • 東京都済生会中央病院顧問 松岡健平 編

定価:4,104円(本体3,800円+税8%)

  • B5判 293頁
  • 2017年3月 発行
  • ISBN978-4-525-23431-7

概要

多疾患罹患状態のガイドラインはない・・・
解決するのは医療スタッフのチームワークだ!

糖尿病におけるmultimorbidityとは何か.
それを回避するためにはどうすればよいか.multimorbidityとなった糖尿病患者にどう介入していけばよいか.糖尿病に併存する疾患や身体条件ごとに対処方法が解説されているため,これからの高齢社会で糖尿病患者に関わる医療従事者には,ぜひ一読することをお勧めする.

書評

猿田享男(慶應義塾大学名誉教授/日本臨床内科医会会長)
日本では急速に高齢化が進み,平成26年には65歳以上の人口が総人口の26%に達し,その後も高齢者が増加し続けている.... [ 続きを読む ]

「海図なき」真摯な糖尿病診療への勇気ある挑戦

伊藤 裕(慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 教授)
「糖尿病は血管の病気だから,いろいろな病気を“併発”しやすい.だから,糖尿病の診療には,血糖の管理だけではなく... [ 続きを読む ]

序文

─Multimorbidity:これから注目されるテーマ─

 Multimorbidityつまり「多疾患罹患」と呼ばれる状態は,同時に2つ以上の病名を持っていること,と定義されていますが,糖尿病は基礎的身体条件で特有な合併症がある上,いつでも他の疾患(併存疾患,偶発症)に罹る可能性があります.さらに高齢化とともに,動脈硬化や呼吸器疾患,整形外科領域の障害が出るでしょう.身体的制約が加わって,自己管理が負担となって,うつ傾向となり,それらの処方がポリファーマシー(polypharmacy)に結びつき,複雑なcomorbidityと化している感があるのです.
 東京都済生会中央病院に入職して50年近く,このテーマに関心を持ったのは,私の長年の患者さんで,日系二世の技術者が「ニューヨークタイムス(2009年3月30日号)にこんな記事がある」と見せてくれたのがきっかけです.「脂質異常症,高血圧,心筋虚血などで治療中の84歳の老婦人が,転倒し骨盤骨折となり,うつ状態もあって,都合13種の薬が処方されていた.高価な上に複雑怪奇なカクテル効果が我慢できない.さらに不幸なことに,ご主人は彼女より虚弱で老老介護に耐えられない」と.記者は「アメリカで80歳以上の68%が多疾患罹患状態となっており,医師は機能低下した部品の修理に終始し,薬の副作用にさらに薬を処方する.高齢患者にとって,多疾患罹患状態に苦しむ患者の擁護者はいないのか」と結んでいました.
 さて,糖尿病患者のmultimorbidへの対策はどうするか.基本的なケアの枠組に入らない患者さんは,海図(エビデンス)のない海を漂流しています.多疾患別のガイドラインを撚り合わせて用いることはできません.このテーマに関する多様なエビデンスはこれから蓄積し,検証しなければなりません.当分の間,医師を含む医療スタッフ各専門家間のTranslational Medicineの実践が大事だと思います.つまり,病因論からmultimorbidを追求する基礎研究者,臨床現場における鋭い観察眼から情報を研究室へ翻訳転送する者,そして情報を患者に向け翻訳・応用するシステムを作る医師と医療スタッフの共同作業です.“高度な学術研究の成果を臨床へ”という前に,患者さんの中には,モダンで高価な方法にストレスが大きく,reverse innovationを要とする場面も少なくないことも忘れてはなりません.
 折しも,雑誌『薬局』2015年6月号に「2型糖尿病におけるmultimorbidity」を特集することになり,まとめ役を引き受けました.薬剤師を対象とした雑誌ですが,お読みいただいた医師・医療スタッフから「これはケアチームとしてシェアすべき問題だ」という意見をいただいたことから,本書を企画・編集することになりました.読者の皆様がこの問題に関心を持ち,医療現場における解決の糸口を見出すきっかけとなれば誠に幸いです.また,お忙しいなか執筆いただいた先生方に深甚なる感謝の意を捧げます.

2017年 冬
東京都済生会中央病院  顧問
東京都済生会渋谷診療所 管理者・内科医師
松岡 健平

目次

序 章
糖尿病におけるmultimorbidityとは
─多疾患罹患状態になりやすい糖尿病,エビデンスのない領域へ─
 ①広くて深い臨床的考察を
 ②多疾患罹患状態を整理する
 ③Evidence-based MedicineからTranslational Medicineへ
 ④チームワークが多疾患罹患状態を解決する

第1章 糖尿病の治療・ケアから生じるmultimorbidity対策
 1 Multimorbidityに対処するために必要な教育・支援とは
 2 Multimorbidityに対する看護師の役割
 3 Multimorbidityを防ぐ薬剤師の役割
 4 糖尿病患者の健診 ─いつ,何を目的に─
 5 Multimorbidityの管理システム

第2章 糖尿病の基本的治療
 1 食事療法
  ①糖尿病食のエネルギー指示をどのように決めるか
  ②Multimorbidityを防ぐ糖質制限食
  ③経口摂取できない糖尿病患者への対応
  ④栄養相談の進め方

 2 運動療法
  ①糖尿病の病態解明と運動療法のあり方に貢献するスポートロジー
  ②運動器に問題を抱える糖尿病患者と運動療法
  ③Multimorbidityを予防・改善するPhysical Therapyの進め方
   ─糖尿病におけるmultimorbidityとしての運動器疾患に対する介入例より─

 3 薬物療法
  ①経口血糖降下薬の選択とアルゴリズム ─その使い方と落とし穴─
  ②インスリン療法
  ③糖尿病患者の緊急事態
  ④インスリンポンプ療法と人工膵臓
  ⑤インスリン注射療法がマニュアルどおりにいかないときの解決策

 4 血糖測定・副作用
  ①血糖自己測定(SMBG),持続血糖測定(CGM)の利用と将来
  ②糖尿病治療薬による副作用
  ③薬剤師からみた要注意処方

第3章 併存疾患や身体条件におけるmultimorbidityへの対処法
 1 糖尿病と認知症
 2 糖尿病患者のうつ病,不眠症,アルコール依存
 3 メタボリックシンドロームがmultimorbidityに及ぼす影響
 4 心疾患を有する糖尿病患者
 5 糖尿病と脳血管障害,リハビリテーション
 6 糖尿病と下肢閉塞性動脈硬化症
 7 視力障害を持つ糖尿病患者
  ─糖尿病による視機能障害を持つ糖尿病患者のmultimorbidity─
 8 糖尿病と慢性腎疾患  ─糖尿病腎症の進展抑制策─
 9 末梢神経障害(体性)を有する糖尿病症例
 10 自律神経障害を有する糖尿病症例
 11 糖尿病の足潰瘍
 12 糖尿病と肝疾患・慢性消化器疾患
 13 糖尿病と呼吸器疾患
 14 糖尿病と自己免疫疾患,結合織疾患
 15 糖尿病と甲状腺疾患
 16 糖尿病と歯周病
 17 糖尿病と妊娠

索 引