書籍カテゴリー:内分泌・代謝学|内科学一般

いまさら聞けない糖尿病診療 一問複答!臨床医のギモンをディベートで導く
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いまさら聞けない糖尿病診療 一問複答!臨床医のギモンをディベートで導く

1版

  • 東京都済生会渋谷診療所 所長 松岡健平 編

定価:3,780円(本体3,500円+税8%)

  • B5判 241頁
  • 2014年3月 発行
  • ISBN978-4-525-23651-9

概要

教科書に掲載されていない症例や,方法論が確定していない治療に関する疑問をどう解決するのか,専門外のことをいまさら誰に尋ねるのか,それらの疑問にディベート形式で複数回答をあげ,応用あるいは『適応』可能な結論を導き出す!
種々雑多な症例に忙殺されている臨床医がかかえる悩みを本書で一挙に解決!!

序文

 過去四半世紀の間に,糖尿病ケアに対する考え方が変わった理由として次の4項目があげられます.
 ①すべてのタイプの糖尿病に厳格な代謝管理が要求されるようになった,②糖尿病はプライマリ・ケア・ベースで管理すべきであることが理解されるようになった,③ 患者から常に診療水準の向上が求められている,④ 医療資源の効果的利用がすすめられている.
 1980年代半ばに始まったDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)やUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study),わが国の熊本スタディなど,大規模調査の成績は糖尿病の病型にかかわらず,厳格な血糖コントロールが予後の改善につながることを明らかにしました.糖尿病は基礎的身体条件であり,患者さんはいかなる疾患も併発しうることから,かかりつけ医(以下,家庭医)による総合診療科的管理が有利で,しかも患者さん個々に都合がよいといえます.
 わが国では,日本糖尿病学会認定の専門医とは別に,日本糖尿病協会が一定水準をクリアした登録医を糖尿病患者さんのケアプロバイダーに位置づけています.今後,罹病期間が長く,糖尿病の合併症が進展した症例が増加するにつれ,家庭医と糖尿病に特化されたコメディカルへの依存度が大きくなるのは確実です.わが国でも大多数の糖尿病患者さんは「ご近所の先生」にかかっていて,糖尿病治療の一般化,すなわち「いつでもどこでも質のよい糖尿病ケア」が求められています.そこでわれわれは,種々雑多な症例に忙殺される家庭医が短時間で治療方針の糸口をつかむことができるマニュアルを作成しました.さらに,いまさら母校の教授や医師会の友人にも聞きにくい日常診療の問題を気楽に質問できるウェブサイト(メーリングリスト;会員資格は医師のみ)をアメリカのSDM(Staged Diabetes Management)の開発を後援したBeckton Dickinson社の日本法人の厚意で1999 年にスタートさせました.
 メーリングリストに寄せられた質問を読むと,権威者や専門医がわかりきったことと思っていることをどう解釈すればよいか,個々の実症例への適応方法などの悩みが多いことがわかりました.これらは,講義にはなかった,学会や医師会の講演会で聴くこともできない,ましてや製薬会社主催の研究会では聞くことのできない「ベンチにも届けたいベッドサイドのつぶやき」でした.
 本書に取り上げた質疑応答は,2007 年12 月〜 2011 年2 月まで3 年あまりに至ってメディカル朝日に連載されたものに加筆し,HbA1c 値は特別な表記がない限り,国際基準(NGSP)値に書き改めています.これらの内容は,実際に実地医家からいただいた例であり,会員が回答したものですが,多少問題がある場合は,担当した日本SDM研究会の回答者メンバーが,カタカナ用語や略号を診察室向けに翻訳・脚色し,われわれの見解として回答しました.
 最後に,執筆いただいた先生方,SDMメーリングリストの回答者の先生方,SDM日本版の監修者・顧問の先生方に深謝いたします.また,このユニークな企画の編集を快く引き受けていただいた南山堂編集部の大城梨絵子氏,その基板になった『いまさら聞けない糖尿病治療』を3年間にわたって連載してくれたメディカル朝日の編集スタッフに心から御礼申し上げます.本書が,日常診療のお役に立てば望外の幸せです.

2014年 冬
執筆者を代表して  松岡健平

目次

序 章
ガイドラインを医療現場へ運ぶSDMとは何か ─臨床病期に応じた糖尿病治療マニュアル,Staged Diabeted Management
 1 家庭医の底力に頼るしかない 
 2 カスタマイズされた日本版─ポケット版は日本のオリジナル 
 3 プラクティスガイドラインのデザイン 
 4 プラクティスガイドラインに最終版はない 

第1章 検査・診断
A. HbA1cに関するギモン
 1 糖尿病診断の手順 
 2 診断上のHbA1cの用い方 
 3 HbA1c値と血糖値の乖離があるとき 
 4 健康診断のHbA1c値の見方 
 5 HbA1cの目標値 
 6 HbA1cの解釈と翻訳 
 コラム HbA1c値の全国調査 
 7 血糖コントロールのHbA1c目標値 
 8 腎症例におけるHbA1cの翻訳 

B. その他の診断に関するギモン
 1 1型糖尿病と膵島関連自己抗体 
 2 妊娠糖尿病の新しい診断基準 

第2章 治 療
A. 食事療法・運動療法に関するギモン
 1 低糖質食は本当に有効か
 2 低糖質食は長期間続けてもよいのか.患者にとって長続きするものか
 3 1型をDouble Diabetesにするな,2型をメタボにするな 

B. 経口血糖降下薬に関するギモン
 1 経口血糖降下薬の併用療法
 2 ピオグリタゾンは糖尿病の第一選択薬か 
 3 メトホルミンとピオグリタゾンの併用療法
 4 BNP検査とピオグリタゾン投与の適応 
 5 チアゾリジン薬と骨密度,および膀胱癌のリスク
 6 eGFR<60でメトホルミンは投与不可か
 7 メトホルミンとインスリン製剤の併用 
 8 妊婦にメトホルミンを使用してよいのか
 9 GLP-1(リラグルチド)の使い方─インスリン療法中の肥満患者への適応 
 コラム SGLT2 阻害薬─この薬の選択への理解のために 

C. インスリン療法に関するギモン
 1 BOT療法は有効か 
 2 BOTの導入方法と使用するインスリンの違い 
 3 BOTの適応 
 4 BOTの副作用(低血糖)とインスリンの種類 
 5 インスリン混合製剤の用量調整 
 6 大腸内視鏡検査時のインスリン量の調整 
 7 インスリン療法の受け入れを忌避する介護施設 
 8 高齢者のインスリン療法─ 認知症例のコントロール目標 
 9 インスリン注射の現場の工夫と現実
 10 インスリン療法から経口薬への変更を考えるとき 
 11 インスリン注射にアルコール消毒は不要か 
 12 カーボカウントについて 

D. その他の治療・ケアに関するギモン
 1 経管栄養例の血糖コントロール 
 2 血糖自己測定の回数とタイミング
 3 出血傾向がある患者の血糖自己測定
 4 血糖自己測定と測定機器の貸与 
 5 インスリン抗体による不安定(ブリットル)糖尿病例 
 6 不安定な血糖コントロールへの対処法
 7 超高齢者で副腎皮質ホルモン薬(ステロイド)を服用している場合の血糖コントロール

第3章 副作用・緊急時対応・合併症
A. 副作用・緊急時対応に関するギモン
 1 インスリン療法による低血糖対策 
 2 原因不明の低血糖 
 3 DPP-4 阻害薬による低血糖症をめぐって 
 4 糖尿病ケトアシドーシス患者を病院へ送るまで 
   症例1 急性腹症で紹介された劇症1型糖尿病の小児(12 歳男児) 
   症例2 気管支喘息重責発作で来院した1型糖尿病のDKA 例(16 歳女性) 
 5 異常に高い血糖値の患者に遭遇したとき 
 6 経口摂取できない糖尿病患者の輸液へのインスリン混合 

B. 合併症・併発疾患に関するギモン
 1 糖尿病とインフルエンザ 
 2 糖尿病患者が発熱したとき 
 3 妊娠糖尿病の治療法 
 4 網膜静脈閉塞症,糖尿病網膜症と血糖コントロール
 5 眼科受診促進のための工夫 
 コラム 眼科受診を促進するには(経験談) 
 6 重度の白内障患者の術前血糖はゆっくり下げるべきか 
 7 腎症合併患者への流動食の使い方 
 8 肝硬変症を合併した糖尿病腎症の治療 
 9 肝硬変症例のインスリン療法
 10 肝癌合併例にインスリンは禁忌か 
 11 糖尿病の足病変─看護師を含むケアチームで対応を 
 12 糖尿病患者の神経障害 
 13 有痛性神経障害─急性疼痛か慢性疼痛か 
 コラム 有痛性神経障害に欠かせない心理的支持 
 14 神経障害性潰瘍か,血管閉塞による壊疽か 
 15 糖尿病患者の便通異常(糖尿病下痢の疑い?) 
 16 無力性膀胱例の自己導尿 
 
第4章 日常指導・療養指導・診療連携
A. 患者教育に関するギモン
 1 治療意欲の乏しい糖尿病患者の治療 
 2 メタボリックシンドロームの意味,保健指導 
 コラム 糖尿病教室の始まり 

B. 診療連携・社会環境に関するギモン
 1 診療連携における循環型パス逆紹介を円滑に行うには 
 2 診療連携が途切れるとき 
 3 連携におけるバリアンスの適切な設定 ─SDMに示された腎機能に関する設定は適切か 
 4 医療費が払えない患者─保険制度内での減額は可能か
 コラム 自動車運転中の低血糖症の責任,回避方法 

終 章 これからどうなる「糖尿病診療」
A. 薬物療法
 1 R&D(研究・開発段階)にある糖尿病治療薬 
 2 2型糖尿病の発症因子と薬剤の選択 

B. 糖尿病の臨床家の仕事はtranslational missionだ
 1 EBMからTranslational Medicineへ 
 2 Translational Researchから派生─EBMの基本は変わらず
 3 実践から生まれる知恵
 4 糖尿病におけるTranslational Medicine

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