書籍カテゴリー:内分泌・代謝学|腎・泌尿器科学

糖尿病×CKD 診療ガイド Q&A
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糖尿病×CKD 診療ガイド Q&A

1版

  • 岡山大学大学院医歯薬総合研究科
    腎・免疫・内分泌代謝内科学 教授 槇野博史 編

定価:4,104円(本体3,800円+税8%)

  • B5判 179頁
  • 2012年11月 発行
  • ISBN978-4-525-23691-5

概要

糖尿病から糖尿病性腎症・腎不全に至る患者を減らしていくのには,どのように腎障害をモニタリングし,どのタイミングで腎臓専門医・透析専門医に紹介するべきだろうか.
かかりつけ医の日常の診療にかかわる疑問に対し,糖尿病専門医・腎臓病専門医が具体的な症例を提示し,エビデンスや実際の処方例などの紹介も交えながら,Q&A形式でわかりやすく解説した一冊.

序文

 私が「糖尿病性腎症」に興味をもつきっかけになったのは,1970年代はじめ,学生時代の腎臓(臓器・系統別)の講義で二次性ネフローゼ症候群の原疾患として全身性エリテマトーデスsystemic lupus erythematosus(SLE)と糖尿病があげられたことである.SLEでは免疫複合体の沈着により糸球体係締壁が傷害されるため蛋白尿を生じ,ネフローゼ症候群になるのは想像できたが,糖尿病でなぜネフローゼ症候群になるのか全くわからず,そのことに興味をもって岡山大学第三内科に入局した.
 その当時J. Bergerにより,IgA腎症は,臨床的には血尿を主体として,蛍光抗体法でIgAのメサンギウムへの沈着がみられ,巣状増殖性腎炎を呈する,比較的予後良好な疾患として提唱されていた.当科の腎生検でも最も多い疾患であった.しかし,当初は予後良好と思われていたが,その後の検討により10年で約15%,20年で約40%が腎死に陥ることが判明し,予後不良の疾患と認識されるようになった.その後,IgA腎症は幸いにも,学校検尿・職場健診の普及により早期に発見されるようになり,予後は改善してきた.
 一方,増えてきたのは糖尿病性腎症である.食生活の欧米化と車社会による運動不足によって爆発的に増加してきた糖尿病において,血糖コントロールが不良の状態が持続すると,糖尿病から糖尿病性腎症を合併し,さらに進行して透析に陥る.私が医学部を卒業した1975年は,ちょうど血液透析が開始された頃であった.当時は人工透析とよばれ,腎炎・ネフローゼ症候群で腎不全に陥った患者さんの命が助かり,その技術の進歩に大いに感激したものである.
 透析技術の進展はあったものの透析患者は,その後も毎年約1万人ずつ増加しつづけた.その最大の原因は先にふれたように糖尿病性腎症の増加による.糖尿病性腎症は1998年以降,透析導入原疾患の第1位となった.糖尿病性腎症を原疾患とする透析導入者数は,日本透析医学会が統計調査を始めて以来,毎年増加傾向にあった.しかし,ついに2010年に初めて減少する傾向がみられ,導入患者の37,411人の43.5%の16,271人となった.これは2007年からわが国においては,日本腎臓学会と慢性腎臓病対策協議会が中心となって,対策を講じてきたため,CKDの概念が知られるようになり,早期から蛋白尿や腎機能をモニタリングしていくことの重要性が専門医を中心に広く認識されてきたことからではないかと考えられる(その後2011年には再び増加に転じたが,これは今後の課題となろう).
 しかしながら,まだ多くの糖尿病患者が腎不全や心血管疾患,糖尿病合併症などにより生命予後の改善にまで至っていないという現状がある.これをふまえて,2012年春より保険診療において糖尿病透析予防指導管理料が導入された.そうしたバックアップもうけて,今後,増えていく糖尿病患者,CKD患者に向けて,これから,さらに多くの方々の力を借りなければならないのではないかと考えた次第である.
 そこで糖尿病や腎臓病が専門ではない一般医師・かかりつけ医の先生方,さらに看護師,薬剤師,管理栄養士などのコメディカルスタッフが,糖尿病あるいは糖尿病性腎症の患者の,実際の治療や管理について学ぶことができるテキストを刊行したいと考えた.日常診療に近いものとするために,具体的な症例を提示し,実際の処方例や検査や治療の根拠となるエビデンスなどを紹介し,わかりやすく解説するQ&A形式にした.
 幸い当科には糖尿病内科と腎臓内科とがあり,当科の教室員に分担執筆をお願いした.なお,網膜症,神経障害,循環器,認知症,栄養指導に関しては,平素の診療でたいへんお世話になっている岡山大学病院の他科の先生方にご尽力いただいた.また,本書刊行まで南山堂編集部の伊東尚美氏,谷邊美早紀氏にご助力いただいた.ここに心より謝意を表する.
 本書により,糖尿病ならびに糖尿病性腎症に対する理解が,さらに深まり,糖尿病患者の腎症合併と腎症患者の腎不全への進展阻止につながれば幸いである.

2012年9月
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
腎・免疫・内分泌代謝内科学
槇野 博史

目次

はじめに 糖尿病とCKDの関係     槇野博史 


Ⅰ.臨床検査値でみる

1.尿検査の意義 ─微量アルブミン尿─      四方賢一 
2.尿検査の意義 ─蛋白尿─    和田 淳 
3.尿検査の意義 ─血尿─ 喜多村真治 
4.腎機能検査 ─クレアチニン,シスタチンC,eGFR─   梶谷展生 
5.HbA1cを血糖コントロール指標としてみる場合の注意点 江口 潤 
6.血糖コントロールの指標としてグリコアルブミン(GA)の活用 中司敦子 
7.中性脂肪(TG)と糖尿病 片岡仁美 
8.貧血と糖尿病 ─ヘモグロビン,フェリチン,エリスロポエチン─ 神崎資子 
9.糖尿病診療における画像検査 ─超音波検査,腹部CT検査など─ 菊本陽子 
10.腎生検の適応と禁忌 小川大輔 


Ⅱ.さまざまな病期別の治療方針と薬剤

11.第1期:腎症前期のケーススタディ 橘 洋美 
12.第2期:早期腎症期のケーススタディ ─微量アルブミン尿─ 勅使川原早苗 
13.第3期:顕性腎症期のケーススタディ ─蛋白尿─ 堀口千景 
14.第4期:腎不全期のケーススタディ ─治療薬の選択─ 赤木 滋 
15.第4〜5期:透析療法期のケーススタディ ─血液透析,腹膜透析,腎移植─ 杉山 斉 
16.第5期:透析療法期のケーススタディ 森永裕士 


Ⅲ.糖尿病性腎症の急性合併症のケーススタディ

17.糖尿病ケトアシドーシスの症状と対応 片山晶博 
18.乳酸アシドーシスの症状と対応 廣田大昌 
19.低血糖性昏睡の症状と対応 村上和敏 
20.急性感染症とインスリン治療 井上謙太郎 
21.シックデイの症状と対応 寺見隆宏 


Ⅳ.糖尿病性腎症の合併症と併存疾患

22.降圧薬の使いかた 山崎浩子 
23.浮腫・溢水に対する利尿薬の使いかた 瀧上慶一 
24.尿毒症とは 堀元直哉 
25.代謝性アシドーシスとは 雛元紀和 
26.高尿酸血症とは 辻 憲二 
27.腎性貧血とは 山成俊夫 
28.骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)とは 寺見直人 


Ⅴ.腎症以外の糖尿病合併症のケーススタディ

29.糖尿病網膜症のケーススタディ 古瀬 尚 
30.糖尿病性神経障害のケーススタディ 阿部康二 
31.大血管障害のケーススタディ ─脳血管障害─ 北川正史 
32.大血管障害のケーススタディ ─冠状動脈疾患─ 橋本克史 伊藤 浩 


Ⅵ.チーム医療の実践のケーススタディ

33.栄養指導のケーススタディ ─たんぱく制限─ 坂本八千代 
34.栄養指導のケーススタディ ─塩分,カリウム(K),リン(P)─ 井上淳子 
35.栄養指導のケーススタディ ─水分制限─ 中山和典 
36.尿排泄障害の管理と尿路感染症のケーススタディ 豊田智子 
37.フットケアのケーススタディ 高樽由美 
38.妊娠・出産と糖尿病性腎症のケーススタディ 平松祐司 
39.高齢者に関する問題のケーススタディ 綿谷博雪 
40.認知症を伴う糖尿病性腎症患者のケーススタディ 寺田整司 内富庸介 
41.糖尿病性腎症の病診連携のケーススタディ       前島洋平 


日本語索引
外国語索引


Column
糖尿病性腎症の早期診断におけるアルブミン尿の重要性と新規バイオマーカー 杉山 斉 
糖尿病性腎症の病期分類と慢性腎臓病のステージ分類の違いと問題点(KDIGOによるCKD新重症度分類) 前島洋平 
糖尿病性腎症に関する大規模臨床試験(血糖コントロールについてのエビデンス) 小寺 亮 
腎障害時における糖尿病治療薬の投与法 出石通博 
糖尿病性腎症に関する大規模臨床試験(脂質コントロールについてのエビデンス) 氏家はる代 
腎生検による組織像と臨床所見 小川愛由 
糖尿病性腎症の遺伝素因 和田 淳 
糖尿病性腎症の分子メカニズム 和田 淳 
今後期待される新しい治療法 小川大輔 
糖尿病性腎症に関する大規模臨床試験(血圧コントロールについてのエビデンス) 梅林亮子 
家庭血圧の有用性 内田治仁 
糖尿病透析予防指導管理料の意義と活用 小川大輔