書籍カテゴリー:分子医学|内分泌・代謝学

糖尿病 病態の分子生物学

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The Frontiers in Medical Sciencesシリーズ
糖尿病 病態の分子生物学

1版

  • 東京大学大学院医学系研究科教授 門脇 孝 編

定価:4,752円(本体4,400円+税8%)

  • B5判 168頁
  • 2004年4月 発行
  • ISBN978-4-525-23751-6
  • ISBN4-525-23751-1

概要

ここ数年,糖尿病における病態生理の分子メカニズムが,急速に明らかにされてきている.最新の糖尿病の全体像を理解できるよう糖尿病の基礎研究各分野の第一人者によりわかりやすく解説.基礎研究の最新の成果が臨床の場に活用される医学の大きな転換期に,基礎研究に携わる人も臨床医も糖尿病を総合的に理解するために必読の書である.

序文

糖尿病は現在740万人の患者が存在し,さらに増加しつつある.失明や透析導入の最大の原因であるのみならず,わが国で癌と並んで最も主要な死因である心筋梗塞・脳梗塞など心血管病の最大のリスクファクターとなっている.間接的な医療費を含めると4兆円余りが糖尿病に投じられ,その伸びは癌や他の生活習慣病と比しても抜きんでている.
一方,糖尿病にかかわる研究は大きく展開している.この重大な疾患を克服すべく多くの優秀な研究者が日夜この問題に取り組んでいる.糖尿病の研究の進展に伴って“インスリン作用不足による高血糖”と一見単純な疾患であるかにみえる糖尿病の発症の分子機構はきわめて奥の深いことが明らかとなってきた.糖代謝には膵β細胞,骨格筋,肝臓という従来からの役者に加えて中枢神経,脂肪細胞,消化管,炎症細胞などが発症に深く関与しているという概念がこの数年間コンセンサスになってきた.インスリンに加えてアディポカイン,摂食調節ペプチド,消化管ホルモン,炎症性サイトカインの複雑かつ精妙な調節機構の存在が明らかにされ,また,このシステムの破綻としてインスリン作用不足から糖尿病が発症するというパラダイムが構築されつつある.糖尿病はまた,代表的な多因子病であり,遺伝素因と環境因子が両者共に発症にきわめて重要であり,上に挙げたような鍵となる臓器や分子が役者として,遺伝素因・環境因子相互作用を介してダイナミックに病態形成に関与している.
この重要で複雑な疾患の分子機構を解明する上での今後の研究のアプローチは,この疾患の奥の深さと幅の広さに対して,1)ナノテクノロジー,ゲノム解析,プロテオーム,メタボロームなどの多角的なアプローチ,2)細胞レベル,臓器レベル,個体レベル,集団(疫学)レベルまでの縦層的な多段階のアプローチ,3)ヒトでの情報とモデル動物での情報の統合,遺伝素因と環境因子の情報の統合など統合的アプローチが必須であろう.
本書は,「糖尿病 病態の分子生物学」と題して,2004年初頭の段階での糖尿病とその合併症に関する知見をまとめ,この分野での研究者・学生・大学院生や糖尿病に興味をもつ臨床医にわかりやすくかつ吟味された質の高い最新情報として提供することをねらいとして企画された.執筆は,すべてこの分野で国際的な業績を上げている第一級の研究者にお願いした.超多忙な研究・臨床の合間を縫って脱稿していただいた執筆者の方々に心よりお礼を申し上げたい.また,「糖尿病の研究の息吹を読者に伝えたい.」という本書の企画のもと出版に至るまでの実務において一方ならぬ役割を果たしていただいた南山堂編集部のスタッフにも心よりお礼を申し上げたい.
これからの数年から10年で糖尿病の分子機構の解明と根本的予防法・治療法の構築が期待される現在,本書が今後の研究のさらなる展開に向けたコンセプトや研究のアプローチに関する最新情報として活用されることを期待したい.

2004年2月 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 門脇 孝

目次

第1章  総論:糖尿病の分子機構  門脇 孝 原 一雄
  糖尿病の成因―遺伝因子と環境因子/糖尿病の病態―臓器相関/糖尿病の成因・病態解
  明のための統合的アプローチの重要性/糖尿病治療法の開発―オーダーメイド治療/21
  世紀の糖尿病医療
第2章  インスリン分泌の分子機構  相澤 徹
第3章  インスリン作用の分子機構  小川 渉 春日雅人
第4章  1型糖尿病の成因  今川彰久 花房俊昭
第5章  2型糖尿病の成因  長嶋 一昭 清野 裕
第6章  遺伝子異常による糖尿病  西 理宏 南條輝志男
第7章  レプチンと糖尿病
  糖尿病治療薬としてのレプチン:脂肪萎縮性糖尿病におけるレプチン展開医療の実践
                    中尾一和 益崎裕章 海老原 健 日下部 徹
第8章  アディポサイトカインと糖尿病  下村伊一郎
第9章 発生工学的手法を用いた糖尿病の解析  戸辺一之 窪田直人 寺内康夫 門脇 孝
第10章  細小血管症の分子機構  米倉秀人 渡辺琢夫 山本靖彦 櫻井 繁 山本 博
第11章  大血管症の分子機構  小林和人 山田信博
第12章 糖尿病治療薬の分子医学
    荒木栄一 榊田典治 豊永哲至 西田健朗 松本和也 西川武志 水流添 覚 河島淳司
第13章  糖尿病とゲノム医学  鈴木 進 岡 芳知
第14章  糖尿病と再生医学 山本恒彦 倭 英司 宮崎 純一