書籍カテゴリー:分子医学|内分泌・代謝学

糖尿病治療薬のサイエンス
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The Frontiers in Medical Sciencesシリーズ
糖尿病治療薬のサイエンス
From Bench to Bedside

1版

  • 京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科 教授 稲垣暢也 編

定価:5,184円(本体4,800円+税8%)

  • B5判 204頁
  • 2012年6月 発行
  • ISBN978-4-525-23791-2

概要

インクレチン関連薬は2009年の登場を皮切りにその後選択肢が増え,糖尿病治療を一変させた.本書では糖尿病治療薬の基礎研究と臨床研究をあわせて,これまでの流れから最新の研究成果までを整理し,糖尿病治療薬の作用機序から糖尿病の病態からみた治療薬選択,具体的な投与法と注意点に至るまでをわかりやすく第一線の医師が解説した.

序文

 2009年末に最初のインクレチン関連薬が登場してから2年あまりが過ぎた.インクレチンはインスリン分泌作用を有する消化管ホルモンであるが,インクレチン関連薬のDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬は,これまでの糖尿病治療薬とまったく異なる作用メカニズムをもつ新しい薬剤である.
 わが国においては10年ぶりの新しい糖尿病治療薬の登場となり,これまでの予想を上まわる勢いで多く処方され,実際の手ごたえを耳にすることも多い.当初予期されなかったSU薬にDPP-4阻害薬を併用した場合による重症低血糖についても,その後,迅速な対応がなされ,頻度が著減した.また結果としてSU薬とインクレチンの作用機序に対する理解が深まり,インスリン分泌においても新たな研究の展開がみられている.
 このたび,本書を編集したのは,インクレチン関連薬の登場により大きく様変わりした糖尿病治療において,さまざまな作用機構をもつ糖尿病治療薬の基礎研究と大規模臨床試験も含めた臨床研究をあわせて,これまでの流れから最新の研究成果までを整理することにより,今後の糖尿病治療への新たな視座が得られるのではないかと考えたからである.
 本書の特徴は,6種類の経口糖尿病治療薬と,インスリンならびにGLP-1受容体作動薬の2種類の注射薬の,すべての糖尿病治療薬について,その作用機序について基礎的な側面から,そしてそれぞれの薬剤の臨床的データについて,最新の知見をまじえながら,わが国を代表する先生がたにご執筆いただいた点にある.さらに今後7剤目,あるいは8剤目と新規に登場する可能性のある,現在,開発中の薬剤についても解説いただいた.本書があれば,すべての糖尿病治療薬の作用機序から,病態からみた選択,具体的な投与法と注意点に至るまでがわかるように書かれている.まさに糖尿病治療薬のベンチからベッドサイドまでのサイエンスが凝集した一冊である.
 ご執筆いただいた先生がたに厚く御礼申し上げるとともに,読者の明日からの糖尿病診療のお役に立てば,この上ない喜びである.

2012年3月
京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科学
稲垣暢也

目次

第Ⅰ部 序 論
序 論  稲垣暢也

第Ⅱ部 総 論
第1章 糖尿病治療薬の種類と使い分け  藤本新平
 1-1 糖尿病治療薬の種類と作用機序
 1-2 糖尿病の病態・病状と治療選択
   1.インスリン治療の適応
   2.内因性インスリン分泌の低下と治療選択
   3.肥満を伴う場合の治療選択
   4.効果の面からの薬剤選択
   5.コンプライアンスの面からの薬剤選択
   6.大血管障害抑制の面からの薬剤選択
   7.膵β細胞保護の観点からの薬剤選択
 1-3 安全性の面からの治療薬の選択
   1.高度の腎障害・肝障害を伴う場合の治療
   2.SU薬における重症低血糖
   3.経口薬使用時のハイリスク患者のみきわめ

第Ⅲ部 糖尿病治療薬の基礎
第2章 α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)─開発の経緯,薬剤のそれぞれの特徴と作用─  横溝 久  園田紀之  井口登與志
 2-1 炭水化物の消化と吸収
 2-2 α-GIの開発経緯と薬剤の特徴
   1.α-アミラーゼ阻害物質(スターチブロッカー)
   2.α-グルコシダーゼ阻害物質の発見
   3.α-GIの酵素活性に対する阻害作用
   4.α-GIの薬物動態
   5.α-GIの副作用
 2-3 α-GIの食後高血糖改善作用と臓器保護作用─動物モデル─
 2-4 α-GIの多面的作用
   1.食後高血糖と血管壁酸化ストレス
   2.食後高血糖と膵β細胞酸化ストレス
   3.食後高血糖とレニン・アンジオテンシン系(RA系)
 2-5 α-GIとインクレチン効果

第3章 SU薬と速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)─薬剤構造から薬理特性および薬効を考える─ 長嶋一昭 稲垣暢也
 3-1 SU薬および速効型インスリン分泌促進薬によるインスリン分泌機序
 3-2 KATPチャネル
 3-3 SU薬による新たなインスリン分泌機序
 3-4 SU薬および速効型インスリン分泌促進薬の薬剤構造
 3-5 SU薬と速効型インスリン分泌促進薬の特性
 3-6 膵外作用
   1.虚血心筋保護作用の抑制
   2.抗酸化作用
   3.血小板凝集抑制作用
   4.速効型インスリン分泌促進薬における膵外作用
 3-7 インスリン分泌促進薬の新たな展開(新生児糖尿病に対する治療薬としての可能性)
   1.Kir6.2の遺伝子異常による新生児糖尿病
   2.SUR1の遺伝子異常による新生児糖尿病
   3.新生児糖尿病症例に対する治療薬

第4章 ビグアナイド薬の分子医学  小川 渉
 4-1 ビグアナイド薬の臨床薬理的作用
 4-2 AMPキナーゼとビグアナイド薬
 4-3 糖新生制御のメカニズム
 4-4 ホルモンによる糖新生系酵素遺伝子の発現制御機構
 4-5 メトホルミンと糖新生系酵素遺伝子の発現抑制
 4-6 アミノ酸異化系酵素とメトホルミンの糖新生抑制作用
 4-7 AMPキナーゼと糖取り込み制御
 4-8 メトホルミンの脂質代謝への作用とAMPキナーゼ
 4-9 メトホルミンの細胞増殖抑制作用
 4-10 AMPキナーゼ非依存性のメトホルミン作用

第5章 チアゾリジン薬 ─核内受容体型転写因子であるPPARγ活性化薬としての意義─  山内敏正 門脇 孝
 5-1 チアゾリジン薬の特性
 5-2 チアゾリジン薬の糖尿病治療薬としての作用機序
 5-3 チアゾリジン薬の心血管疾患に対する直接作用
 5-4 チアゾリジン薬の副作用,禁忌,注意点
 5-5 チアゾリジン薬と膀胱がん
 5-6 健康な人と変わらない寿命の確保のためには,糖尿病におけるがんのリスクを低減させることも重要

第6章 DPP-4阻害薬 ─インクレチン効果を介する血糖降下作用─ 原田範雄 稲垣暢也
 6-1 インクレチンとDPP-4
 6-2 DPP-4阻害薬の血糖に対する影響
 6-3 DPP-4阻害薬の特徴
   1.血糖依存性の血糖降下作用
   2.グルカゴン分泌の抑制作用
   3.体重への影響
   4.膵β細胞に対する保護効果

第7章 GLP-1受容体作動薬の多彩な作用 森井 宰 山田祐一郎
 7-1 GLP-1受容体作動薬の開発
   1.リラグルチド
   2.エキセナチド
 7-2 GLP-1受容体作動薬を用いた基礎研究
   1.リラグルチド投与による血管内皮機能障害および血管の細胞接着分子の発現の抑制効果
   2.リラグルチドによる酸化ストレスおよび小胞体ストレス抑制を介した膵β細胞保護作用
   3.アルツハイマー病に対するリラグルチドの進行抑制効果

第8章 インスリン─作用機構とインスリン製剤の特徴─ 阪口雅司 荒木栄一
 8-1 インスリンの生合成
 8-2 インスリンの分泌機構
 8-3 インスリンの作用機構
  1.インスリン受容体の構造と機能
  2.インスリン受容体基質
  3.インスリン細胞内シグナル伝達
  4.インスリンの生理作用
 8-4 インスリン製剤の構造と特徴
  1.インスリン製剤の種類
  2.インスリンアナログ製剤の開発


第Ⅳ部 糖尿病治療薬の臨床
第9章 α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)─2型糖尿病と心血管イベントの予防効果─  河盛隆造
 9-1 早期動脈硬化症の定量的指標としてのBモードエコー法による頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)
 9-2 軽度の食後高血糖が動脈硬化の引き金になるか?
 9-3 2型糖尿病の本態:食後高血糖の悪循環を好循環に変える
 9-4 α-グルコシダーゼ阻害薬による2型糖尿病の発症予防,心血管イベントの発生予防
   1.STOP-NIDDM
   2.わが国におけるα-グルコシダーゼ阻害薬ボグリボースを用いた無作為化臨床試験
 9-5 2型糖尿病に対するα-グルコシダーゼ阻害薬による心血管イベントの発生抑制効果

第10章 グリニド薬 ─臨床効果と併用療法から膵外作用まで─  横田美紀 吉岡成人
 10-1 グリニド薬の適応と臨床効果
   1.グリニド薬の作用機序
   2.グリニド薬の種類
   3.グリニド薬の適応と効果
 10-2 グリニド薬に関する大規模臨床試験
   1.NAVIGATOR試験の目的と方法
   2.NAVIGATOR試験の結果
 10-3 グリニド薬の併用療法
   1.メトホルミンとの併用療法
   2.チアゾリジン薬との併用療法
   3.α-グルコシダーゼ阻害薬との併用療法
   4.インスリンとの併用療法
 10-4 グリニド薬の膵外作用
   1.脂質への作用
   2.抗動脈硬化作用
   3.肝臓への作用
   4.インクレチンへの作用

第11章 SU薬 ─臨床の実際と最近の話題(心血管系への影響)─  勝田秀紀 石田 均
 11-1 SU薬の登場
 11-2 SU薬の位置づけと選択
 11-3 SU薬の投与の実際
 11-4 SU薬の非適応
 11-5 SU薬使用による低血糖
 11-6 SU薬の二次無効
 11-7 SU薬の心血管系への影響

第12章 ビグアナイド薬 ─メトホルミン高用量の話題と多面的作用─  太田明雄 田中 逸
 12-1 ビグアナイド薬は有用か ─大規模臨床試験から得られたこと─
 12-2 メトホルミン高用量の効果
 12-3 ビグアナイド薬の作用
   1.糖新生抑制と脂肪肝の改善効果
   2.骨格筋でのインスリン感受性亢進
   3.血中GLP-1増加作用
   4.AGEの産生抑制
   5.抗腫瘍効果

第13章 チアゾリジン薬 ─大規模臨床試験の結果を読み解く─  俵本和仁 加来浩平
 13-1 チアゾリジン薬とは
   1.血糖降下作用
   2.脂質改善作用
   3.肝機能改善作用
   4.水分貯留作用
 13-2 チアゾリジン薬の大規模臨床試験
   1.血糖値コントロール改善作用
   2.糖尿病発症予防作用
   3.動脈硬化改善作用
 13-3 チアゾリジン薬の問題点
   1.心不全
   2.膀胱がん
   3.骨折
   4.肝障害

第14章 DPP-4阻害薬 ─経口糖尿病薬におけるパラダイムシフト─  難波光義 村井一樹 徳田八大 勝野朋幸 宮川潤一郎
 14-1 DPP-4の発見とインクレチン治療
 14-2 DPP-4阻害薬の阻害活性
 14-3 酵素阻害の選択性および安全性
 14-4 DPP-4阻害薬の薬効
 14-5 DPP-4阻害薬の不活性化と体外排泄
 14-6 DPP-4阻害薬の今後

第15章 GLP-1受容体作動薬の臨床 ─有効性と安全性に関する成績と今後の開発展開─  矢部大介 清野 裕
 解 説 インスリンからの切り替えに対する注意
 15-1 リラグルチド
   1.わが国の臨床試験から示される有効性と安全性
   2.LEAD試験
 15-2 エキセナチド
   1.わが国の臨床試験から示される有効性と安全性
   2.エキセナチドの有効性と安全性に関する海外の試験
 15-3 GLP-1受容体作動薬の使い分け
 15-4 GLP-1受容体作動薬の開発動向
 15-5 GLP-1受容体作動薬の多面的な作用への期待

第16章 インスリン ─開発の歴史から適応,治療目標,製剤選択まで─  田嶼尚子
 16-1 インスリン治療の歴史
   1.インスリンの発見
   2.インスリン製剤の開発
   3.インスリン注射の周辺機器の進歩と医療環境の整備
 16-2 インスリン療法は,誰にいつから開始するか
   1.絶対的適応と相対的適応
   2.相対的適応症例におけるインスリン導入の基準と治療アルゴリズム
 16-3 インスリン治療の目標と到達度
   1.インスリン治療の目標
   2.インスリン治療による血糖管理のエビデンス
 16-4インスリン注射のレベルアップ
   1.1型糖尿病 ─インスリン強化療法─
   2.2型糖尿病 ─多様な選択肢からどのインスリン処方を選択するか─

第Ⅴ部 新薬の開発に向けて
第17章 SGLT2阻害薬への期待 竹田孔明 谷澤幸生
 17-1 糖輸送におけるSGLTとは
 17-2 腎尿細管における糖輸送
 17-3 SGLT2阻害薬の開発の経過
 17-4 開発中のSGLT2阻害薬
   1.カナグリフロジン
   2.ダパグリフロジン
   3.イプラグリフロジン
   4.ルセオグリフロジン

第18章 新規2型糖尿病治療薬としてのGPR40作動薬およびGPR119作動薬  武内浩二
 18-1 GPR40およびGPR119の機能
   1.脂肪酸をリガンドとするGPCRの同定
   2.GPR40
   3.GPR119
   4.GPR40およびGPR119を標的とした新規糖尿病治療薬の可能性
 18-2 GPR40作動薬の薬理作用
 18-3 GPR119作動薬の薬理作用

第19章 グルコキナーゼ活性化薬(GKA)─膵β保護作用から臨床効果と副作用まで─ 白川 純 寺内康夫
 19-1 グルコキナーゼと糖代謝
   1.グルコキナーゼの発現と機能
  2.グルコキナーゼの糖代謝における役割
 19-2 グルコキナーゼ活性化薬(GKA)による血糖低下作用
   1.グルコキナーゼ活性化薬(GKA)の開発
   2.グルコキナーゼ活性化薬(GKA)の膵β細胞への作用
   3.グルコキナーゼ活性化薬(GKA)の肝細胞への作用
 19-3 グルコキナーゼ活性化薬(GKA)の膵β細胞の増加作用と保護作用
   1.膵β細胞増殖作用
   2.膵β細胞保護作用
 19-4 グルコキナーゼ活性化薬(GKA)のヒトにおける臨床効果と副作用

和文索引
欧文索引