書籍カテゴリー:免疫・アレルギー学|整形外科学

リウマチ医のための関節超音波検査
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リウマチ医のための関節超音波検査

1版

  • 横浜市立大学大学院医学研究科病態免疫制御内科教授 石ヶ坪 良明 監修
  • 横浜市立大学附属市民総合医療センターリウマチ膠原病センター准教授 大野 滋 著

定価:2,808円(本体2,600円+税8%)

  • B5判 92頁
  • 2010年5月 発行
  • ISBN978-4-525-23831-5

概要

関節リウマチの早期診断や治療の評価に,関節超音波検査は非常に有用で,欧米では「リウマチ医の聴診器」とも言われている.しかし,日本での実施率はまだまだ低い.関心はあっても学ぶ機会がないのが実情である.随所に配された“ポイント”“よくある質問”など,関節超音波検査の手技が誰にでも習得できるようツボをおさえた入門書である.

序文

百聞は一見に如かず

ACR/EULAR の新しい診断基準における関節エコー検査の有用性
 2009 年,フィラデルフィアで開催された米国リウマチ学会(ACR)年次総会にて,ACR およびヨーロッパリウマチ学会(EULAR)合同の関節リウマチ(RA)の新しい診断基準が発表されました.それによると,他の疾患が否定され,一か所以上の腫脹関節と骨びらんがあれば RA と診断できます.その背景には,画期的な関節リウマチの治療薬の登場により,早期に治療すれば RA のみならず生命予後も改善されることが明らかになってきたことが挙げられます.早期に治療するためには,早期に診断することが必要です.したがって,新しい診断基準は,早期診断・治療を目的に作られたものですが,この新しい診断基準については,日本リウマチ学会をはじめ,過剰な診断・治療を危惧する意見も聞かれます.個人的にもこの新しい診断基準をそのまま受け入れることには,現状では多少の危惧を覚えます.
 しかし,ACR で発表されたスライドには,その診断ツールとして関節エコー(US)や MRI が挙げられていたように,US や MRI が適切に使用されれば早期診断・治療を目指した新しい診断基準は非常に有用と考えます.
 実際に,US の教育を十分に受けている EULAR に属する多くのリウマチ専門医は炎症性滑膜炎と骨びらんを US で評価することを比較的抵抗なく受け入れると思われます.
 問題は,診断基準そのものではなく,US を実際の臨床に応用している施設およびリウマチ専門医が少ない日本の現状にあると思います.
当教室における関節エコ-検査の導入
 2003 年の ACR 年次総会のトピックスの報告を出版社から依頼され画像診断の重要性を取り上げました.日本で最初に生物製剤が保険収載されたのは 2003 年ですが,同年の ACR 年次総会のプログラムには 1849 の総演題数のうち,22 題の US 関連の演題が発表されていましたが,当時の日本での演題は 1~2 題程度でした.そこで,大野君,今は亡き辻君,北大出身の山本君を佐川クリニックに派遣し US の初歩の手ほどきを受け RA の診療に US 検査を取り入れることにしました.
 3 年後の 2006 年の長崎で開催された日本リウマチ学会でも,US 関連の演題は依然として私どもの演題を含めわずか 3 題のみでした.ちなみに同年の ACR の年次総会には 33 題の US 関連の演題が報告されています.すなわち,2006 年においても日本での US 関連の報告は ACR の 10 分の 1 以下でした.
リウマチ画像診断研究会による関節エコー検査の普及の試み
 日本での US の報告が少ないことを憂慮していましたが,長崎の学会で前福島県立医科大学教授の粕川先生から US の普及に努めるようにと激励された帰り,空港で筑波大学教授の住田先生と一緒になり,待ち時間の間にクジラをつまみに飲みながら画像診断について話し合いました.私どもは US に,住田先生は MRI に興味を示され,それでは関節リウマチの画像診断の普及に役立つような研究会を立ち上げようということになり,2007 年に私どもが事務局となり第 1 回のリウマチ画像診断研究会を開催しました.
日本における関節エコー検査の実態とリウマチ専門医の高い習得意識
 3 年前に,リウマチ領域での US 検査の実態と技術の習得に関するリウマチ専門医の意識を調査するために,リウマチ専門医にアンケートによる調査を依頼しました.対象は,全国のリウマチ専門医から無作為に抽出した医師と第 1 回リウマチ画像診断研究会に参加した医師それぞれ 100 名,計 200 名です.回収率は 69.5%(139 名/200 名中:研究会参加者 74 人,無作為抽出リウマチ専門医 65 人)で,あらためて US に対する関心が高いことが理解されました.結果の一部を示すと,US を知っていると答えた人 74.6%,そのうち有用と答えた人 83.1%(大変有用 12.3%,まあ有用 38.5%,どちらかと言うと有用 32.3%)でしたが,実際に臨床応用している人は 10.8%でした.実施しない理由として,67%の人が,技術が学べないことを挙げていました.すなわち,US への関心は高いが,習得上の問題が浮き彫りになったわけです.
関節エコー検査の標準化の試み
 これまで,4 回のリウマチ画像診断研究会を開催しました.研究会の翌日には各施設の US 検査実務担当者で構成される US ワーキンググループのメンバーに横浜市立大学の外来にお越しいただき,実際の患者さんを対象として US 実施上の問題点の抽出と標準化を検討してきました.その結果,US の欠点とされている検者間,施設間の差は余りないことも証明され,参加者の多くが RA の診断補助ツールとして US の有用性を改めて認識するようになりました.
本書の刊行の目的
 この間,当教室には多くの施設の方が US 検査の見学のために来院されています.その際,必ず初心者のための関節エコーの本の紹介を依頼されます.本書は,このような経験を踏まえ,特にこれから US を始めようとする方を対象として執筆されたものです.老婆心ながら,US の有用性を確認するには,まず自身で試してみることが重要です.
 私は内科医ですので初診の患者さんには必ず聴診器を当てますが,同時に,最近では,関節所見のある患者さんには必ずプローブを当てています.一度,本書を傍らにリウマチ医の聴診器ともいわれる US のプローブを患者さんの関節に当ててみてはいかがでしょうか.
 「教授でもできる US」といわれているぐらいですので難しいものではありません.本書が,US 検査をやってみようかと思う方の背中を押す一助になれば幸いです.
患者さんの目から見た日常臨床における関節エコー検査の意義
 US 検査が RA の診断・治療経過の補助ツールとして有用であることは前述のとおりですが,一方で,患者さんへの説明と同意(IC)の視覚による補助ツールとしても非常に有用です.患者さんの同意を得るには病態を理解していただくことが必要ですが,百回聞くよりも一回見る方が理解しやすいことは昔からの故事の通りです.
 私どもは,強皮症で指趾潰瘍の患者さんに毛細血管顕微鏡に映る毛細血管の血液の流れが悪いことを自身の目で直接確認してもらうことにしていますが,皆さんが自身の血液の流れを見るだけでも満足されます.
 関節リウマチの腫れや痛みを説明するには,骨びらん,滑膜の肥厚,血流の増加を関節超音波の画像を通して患者さんの目で直接見てもらうことが最も効果的です.
 外来の診察室で,リアルタイムで患者さんに病態を説明できる関節エコーの威力を自身で一度確かめられてはいかがでしょうか.


2010年3月
石ヶ坪 良明



目次

1章 はじめに

2章 関節リウマチにおける関節超音波検査の有用性
 1 早期診断の補助
 2 疾患活動性の評価
 3 寛解と予後予測
 4 MRI との比較
 5 関節超音波を用いたグローバルスコア

3章 関節超音波の基礎

4章 装置と設定

5章 画像評価─グレースケールとパワードプラ

6章 健常人の関節超音波所見
 1 検査の実際
 2 まずは自分の身体にプローブを当ててみましょう

7章 関節リウマチの超音波所見
 1 手指の観察
 2 手の観察
 3 肘の観察
 4 膝の観察
 5 足・足趾の観察
 6 肩の観察
 7 股関節の観察

8章 その他のリウマチ性疾患の超音波所見

9章 超音波ガイド下手技

10章 今後の課題

付 標準的な観察部位と健常人の超音波画像アトラス

 FAQ1 どれくらいのリウマチ医が関節超音波を実施していますか?
 FAQ2 関節超音波の講習会を受講したいのですが?
 FAQ3 関節の異常所見は触診で十分わかるのではないですか?
 FAQ4 超音波検査は検者によって評価にばらつきがあるので信頼できないと聞きますが?
 FAQ5 関節超音波で RA の診断ができますか?
 FAQ6 何関節を検査するのがいいのですか? 28 関節すべて検査しないといけませんか?
 FAQ7 背側と掌側のどちらを検査すればいいのでしょうか?
 FAQ8 グレースケールとパワードプラのどちらがより臨床的に重要でしょうか?
 FAQ9 MRI のほうが手軽なのではないでしょうか?
 FAQ10 関節超音波には時間がかかるのではないでしょうか?
 FAQ11 関節超音波の所見をもとに治療方針を変更する必要があるのでしょうか?
 FAQ12 関節超音波検査は技師にまかせてもいいのでしょうか?