書籍カテゴリー:免疫・アレルギー学|整形外科学

つまずき症例から学ぶ関節リウマチ診療
立ち読み

在庫状況:在庫あり

あなたのギモンを解決する!
つまずき症例から学ぶ関節リウマチ診療

1版

  • 浜松医科大学第三内科 講師 小川法良 編
  • 浜松医科大学第三内科 助教 鈴木 大介 編
  • 浜松医科大学第三内科 診療助教 下山 久美子 編

定価:4,860円(本体4,500円+税8%)

  • B5判 222頁
  • 2016年4月 発行
  • ISBN978-4-525-23851-3

概要

関節リウマチ診療の「困った!」を解決する思考プロセスが分かる!

関節リウマチ治療は格段に進歩したものの,正確に診断し,治療方針を立てるまでのプロセスで苦慮することは少なくない.本書は,関節リウマチ診療のエキスパートが,これまでに経験したさまざまな症例を切り口に「つまずきポイント」や「専門医に紹介するタイミング」を解説した.関節リウマチ治療に携わるすべての医療従事者におすすめの一冊!

序文

推薦の序

 関節リウマチの治療は近年劇的に進歩し,強力な抗リウマチ薬や生物学的製剤などの早期導入とタイトコントロールにより寛解を目指し,関節破壊を抑制して機能障害の出現を阻止すべきとの考えが既に定着している.今や関節リウマチの診療は決して専門医にのみ任されるべきものではなく,少なくともプライマリケアの段階では一般内科医や整形外科医の果たす役割は大きいが,リウマチ専門医への紹介のタイミングも重要である.
 関節リウマチにおいては国内外で診断(分類)基準やエビデンスに基づく診療ガイドラインが整備され,多くの患者はこれらの診断基準やガイドラインに則って診断と治療が行われるようになった.しかし,長期にわたって多くの患者を診療していると,当初の診断に問題があったり,規定のガイドラインが適用できなかったり,重大な合併症を併発したりする症例は決して少なくなく,日々さまざまな問題に遭遇している.
 関節リウマチの雑誌特集や成書は多いが,標準的な診断や治療のみならず,診断困難例・難治例・重篤合併症についてどのように対応すべきかについて,特に実際の症例をもとにして実践的に解説した書籍はこれまで少なかったように思われる.本書「あなたのギモンを解決する!つまずき症例から学ぶ関節リウマチ診療」は,実臨床で直面しうる種々の問題をかかえた症例を出発点として,豊富な経験と文献的考察をもとに現時点で考え得る対処法を提示する実践的なReference bookを目指したものと言える.
 本書では関節リウマチの診断と鑑別診断,テーラーメード薬物療法,治療薬の有害事象のテーマごとに,執筆者らが日常診療で実際に遭遇したピットフォール,すなわち「つまずき症例」を例示し,何が問題だったか,どのように対処したか,また問題を回避するにはどのような手段を講じるべきか,について詳細に解説している.医師が自らの臨床能力を向上させるためには,数多くの症例を診療する中で,本書で取り上げられているようなピットフォールに陥りやすい症例の経験を貴重な糧として,いかに適切に対処できるかの勘と技量を洗練していくことが重要である.実際に臨床現場で問題症例に遭遇した際に,本書に提示された類似の事例をもってシミュレーションすることができれば,あらかじめ適切な対応が可能となるかもしれない.
 内科系・外科系を問わず,リウマチ学を志す研修医やリウマチ専門医取得を目指す若手臨床医などに特に本書をお薦めしたい.

2016年3月
京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学 教授 三森 経世




 私が米国留学していた1990年代初頭,欧米では関節リウマチに対するインフリキシマブの治験が始まっていました.当時,自己免疫疾患におけるサイトカイン研究に従事していた私は,一つの分子の作用を阻害しただけで本当に関節リウマチが良くなるだろうかと懐疑的だったことを覚えています.予想に反してTNF阻害薬の効果は目覚ましく,今日の生物学的製剤やJAK阻害薬の隆盛に至っています.治療の急速な進歩に伴い,早期診断,早期治療の重要性が叫ばれ,中には寛解導入から維持に至り,関節病変の進行が停止する症例もあり,患者さんにとっては本当に良い時代になったと言えます.
 2010年のACR/EULAR分類基準を利用して早期リウマチの診断が可能になったとはいえ,中には本当に関節リウマチで良いのだろうか,メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤を投与して大丈夫だろうかと悩む症例に日々遭遇していることも事実です.若手医師や医学生は,時間と労力を要する病歴聴取や身体所見の取得を軽視し,検査成績や画像所見を重視する傾向があるように思われます.関節リウマチやその鑑別対象となる全身性自己免疫疾患は,多臓器を侵す傾向があり,全身症状や臓器症状が多彩に組み合わされて出現することがしばしばあります.病歴や身体所見に問題解決の糸口があることが多く,しっかりとした臨床的能力が求められる疾患群です.
 内科や整形外科の忙しい日常臨床の中で,多種多様な関節痛症例を的確に診断し,治療を行っていくことは難しいことです.関節の痛みは日常生活動作を種々の程度に障害するため,患者さんから疼痛コントロールの要求が大きく,確定診断に至る前に止むを得ずNSAIDsや副腎皮質ステロイドを投与して急場をしのぐというような対応をせざるを得ないこともあります.このような状況において,間違った診断を下したり,適切でない治療を行ってしまうという「つまずき」を経験されている場合が少なからずあると思われます.
 関節リウマチ専門医と一般医からなり,関節リウマチ診療の向上を目的とした医療従事者の集まりである「静岡リウマチネットワーク」では,症例検討会や研究会などの場において,参加施設からさまざまな興味深い症例の報告がなされています.この成果を日常診療に活かせる形にできないか考えた結果,本書が生まれることとなりました.日常診療で遭遇した「つまずき症例」をできる限りわかりやすく簡潔に提示し,「つまずきポイント」を挙げ,誤った判断を下すに至った経緯や原因などを丁寧に解説し,ピットフォールに陥らないための対策と専門医に紹介するタイミングが書かれています.関節リウマチ診療の初学者から専門医にも有用な内容になっており,多くの医療従事者に読んでいただきたいと考えています.

2016年3月
編者を代表して 小川 法良

目次

第1章 関節リウマチ治療総論
 ・概念と定義
 ・診断と検査
 ・治療(1) 薬物療法
 ・治療(2) 外科的治療など

第2章 つまずき症例から学ぶ関節リウマチの鑑別診断・治療戦略
 1 全身性エリテマトーデス 皮疹・胸膜炎・タンパク尿を伴う多発関節炎,何を考える?
 2 混合性結合組織病 初診時陰性だった抗CCP抗体が陽転化?!
 3 顕微鏡的多発血管炎 全身症状や臓器障害を伴う関節痛,診断は?
 4 皮膚筋炎,抗ARS抗体症候群 診断未確定だが関節炎が増悪,ステロイドを使用してよい?
 5 シェーグレン症候群 抗SS-A抗体陽性の多発関節炎,シェーグレン症候群ではない?
 6 リウマチ性多発筋痛症 結構難しい,関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症の鑑別
 7 伝染性単核球症,パルボウイルスB19感染症 慢性関節炎,ウイルス感染症を否定できる?
 8 関節症性乾癬 「CRPが陰性だから関節炎はコントロールされている」は間違い?!
 9 強直性脊椎炎 関節外症状は診断・鑑別のヒント
 10 結晶誘発性関節炎 繰り返す急性関節炎,何を考える?
 11 人工膝関節置換術後細菌性関節炎 関節リウマチ治療中の周術管理,注意点は?
 12 変形性手関節症 びらんに見えても関節リウマチではない?
 13 線維筋痛症 多数の愁訴を伴う多発関節痛,何を考える?

第3章 つまずき症例から学ぶ関節リウマチのテーラーメイド薬物療法
 1 悪性関節リウマチ bDMARDsの効果が得られない関節リウマチ?!
 2 治療抵抗性関節リウマチ 多剤抵抗性関節リウマチの治療戦略は?
 3 認知症 高齢関節リウマチは合併症・副作用との戦い
 4 若年性特発性関節炎 若年性特発性関節炎は将来のADLを考えて治療を選択
 5 挙児希望 妊娠計画中の関節リウマチ治療で気を付けることは?
 6 肺非結核性抗酸菌症 肺非結核性抗酸菌症を合併した関節リウマチ治療は要注意
 7 間質性肺炎 間質性肺炎を合併した関節リウマチはどこまで治療が可能?
 8 ニューモシスチス肺炎 発熱,呼吸器症状を来した関節リウマチの治療戦略
 9 関節リウマチ(HBVキャリア) B型肝炎ウイルスキャリアの関節リウマチ治療はどうする?
 10 腎機能低下 CKDでもあきらめない,関節リウマチ治療
 11 心筋梗塞 関節リウマチ活動性が関連?!虚血性心疾患
 12 悪性腫瘍(セミノーマ) 悪性腫瘍を併発,関節リウマチはどう治療する?

第4章 つまずき症例から学ぶ関節リウマチ治療薬の有害事象とその対応
 1 薬剤性肺障害 初期は軽症でも油断禁物,関節リウマチの感冒様症状
 2 肝線維症 密かに進行する非可逆性肝障害は要注意
 3 腎機能障害 関節リウマチ治療中,検尿と腎機能のチェックは必須
 4 リンパ増殖性疾患 疑わなければ診断できない,リンパ増殖性疾患
 5 薬剤熱,薬剤アレルギー 関節リウマチの発熱の影に薬剤熱の可能性あり
 6 薬剤性血球減少症 関節リウマチの血球減少,甘く見るべからず
 7 サイトメガロウイルス感染症 関節リウマチ治療中の血球減少と消化管障害,本当に薬剤性?

第5章 抗リウマチ薬における薬物相互作用
 ・薬物相互作用の種類とその影響

第6章 座談会
 ・関節リウマチ診療の地域連携とチーム医療

用語解説

索引