書籍カテゴリー:循環器学|総合診療医学/プライマリ・ケア医学

心不全の緩和ケア
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心不全の緩和ケア
心不全患者の人生に寄り添う医療

1版

  • 兵庫県立姫路循環器病センター 大石醒悟 編
  • 国立循環器病研究センター 高田弥寿子 編
  • 兵庫県立姫路循環器病センター 竹原 歩 編
  • 梶原診療所在宅サポートセンター 平原佐斗司 編

定価:4,104円(本体3,800円+税8%)

  • B5判 232頁
  • 2014年6月 発行
  • ISBN978-4-525-24161-2

概要

突然死の可能性も回復の可能性も最期まで残る心不全は,がんと比べ予後予測も終末期の見極めも困難である.しかしその患者の苦痛は大きく,緩和的なケアのニーズは非常に高い.本書では,今後その重要性が一層増していく在宅医療までを視野に,症状緩和,支持療法,家族・医療者へのケアなどを解説.緩和ケア実践への道しるべとなる一冊である.

書評

草場鉄周 先生 (北海道家庭医療学センター 理事長)
在宅患者の心不全を考えるとき,いつも一人の患者を思い出す.その方は,神社の神主のご家族で80代の女性.弁膜症による高度心不全... [ 続きを読む ]

序文

 本書は本邦初の“心不全の緩和ケア”に特化したテキストである.“心不全の緩和ケア”という言葉を耳にすると,多くの方々は違和感を覚えるに違いない.事実,循環器領域では,移植医療や補助人工心臓などの先進医療により,これまで致死的であった重症症例が救命可能となり,今後も新たな治療の推進が求められている.一方で心不全は心血管疾患の末期像とされ,医療者,患者,家族を含めた周囲の人々は,その増悪,寛解を繰り返す経過に翻弄され,刀折れ矢尽きるまで闘い,患者は苦痛とともに人生を終え,医療者,家族にも精神的苦痛が残ることも多い.
 このような現状の中で,本書の主旨は副題である“心不全患者の人生に寄り添う医療”のあり方を提言することである.緩和ケアとは,生命を脅かす疾患に直面している患者とその家族に対して,疾患の早期より全人的苦痛(身体的苦痛,精神的苦痛,社会的苦痛,スピリチュアルな苦痛)に対処し,QOLを改善するためのアプローチであると定義されており,がん患者のみならず心不全患者にも享受されるべき医療である.
 前述の通り,心不全は増悪,寛解を繰り返す経過を辿るため正確な予後予測は困難であるが,適切な治療を行うとともに,医療者,患者,家族を含めた周囲の人々で経過を共有し,見直しを繰り返しながら末期に至るまで患者の意思決定を支え,全人的苦痛に対処することは可能であり,その過程が“心不全の緩和ケア”である.
 そのような観点から,1章で心不全における緩和ケアのニーズを,2章で適切な治療を提供するうえで知っておくべき病態,治療,予後についての既知を,3〜6章までに心不全患者の人生に寄り添うための具体的な方策を,7,9章では実臨床での取り組みを,8章は多職種連携の実践について,10章では医療者の精神的苦痛へのケアを,11章では倫理的問題についてそれぞれ取り上げた.さらに,心不全診療には在宅から病院まで連続した医療の提供が必須であるとの観点から,在宅から病院関係者まで各領域の専門家の先生方に執筆いただいた.他書に類をみない内容であり,忙しい中ご尽力いただいた諸先生方への感謝の念に堪えない.
 本書は臨床での実践知を含んでいる一方で,我々が正しいであろうと考えているが十分にコンセンサスの得られていない内容も含まれており,未完成で今後修正が必要であることは論を待たない.今後,本書が多くの方々に利用され,批判されることにより,版を重ねるとともにさらに充実した実践書となることを期待したい.
 最後に,本書の発行に際し,南山堂編集部橘理恵氏,佃和雅子氏には貴重な機会をいただき,さらに辛抱強く編集いただいたことを心から感謝申し上げる.

 2014年5月
大石 醒悟
高田弥寿子
竹原  歩
平原佐斗司


■刊行によせて■
心不全の緩和医療における本書への期待

 難治性心不全に対する治療の進歩は目覚ましい.移植医療や人工心臓をはじめとする補助循環の導入で,これまで致命的であった症例が救命可能となり,さらには植え込み型の補助人工心臓が使用可能となり,移植適応症例が植え込み後に在宅で待機できるようになった.その装置を移植適応でない末期心不全例に使用するdestination治療が欧米で実施され,今後本邦でも対応が求められることが予想される.また,高齢化に伴い手術不能の大動脈弁狭窄が増加しているが,そのような症例に経カテーテル大動脈弁植え込み術が実施されている.そして,このような新しい治療法の適用について,エビデンスの紹介やガイドラインにおける勧告がなされている.しかし,これらの治療法が適応とならない末期患者への対応や,あるいは治療を開始したが効果が期待できない状態となった場合の中断条件などについては,ほとんど検討がなされず,適切な解説書もないのが現状である.
 心不全は慢性に経過し,増悪と緩解により入退院を繰り返すようになる.専門医による治療と同時に,高度医療の適応も含めた今後の治療手段の適応決定の方法や限界,今後の見通し,治療にもかかわらず必ず迎える終末期のことを説明できるタイミングを見極める必要がある.そのためにはチーム医療によるサポーティブケア(支持療法)が必要であり,がんの緩和ケアとは異なる対応が必要である.これらは決して終末期のみの対応ではなく,心不全の早期から開始し,症状への対応や精神的支援,治療方法の選択支援などに関するチーム医療での取り組みが必要とされる.しかし,このタイミングを見極め,終末期の対応も含め伝えることは,医療者に熟練と精神的な強さが求められる.それには,支持療法が可能となるチームを作り上げることが必要となる.
 このチームには,薬物療法,自己管理の方法,支援体制の利用を促すために,多面的な職種が必要である.日本循環器学会ガイドラインで,「循環器疾患における末期医療の提言」(2010)において緩和ケアの必要性が提言され,それを受けて急性心不全治療ガイドラインの最終章では,緩和ケアが初めて取り上げられた.2013年のAHA心不全ガイドラインでは,心不全の入院患者と外来患者の診療手順を,初回評価から緩和ケアに至るまで包括し,セルフケアを含めた患者家族への教育,運動療法,うつ状態の評価を含めた社会心理学的な取り組み,長期ケアのための診療チームの構成,社会的・経済的な支援体制,緩和ケアなど患者本位のアウトカムについて,いっそう焦点が当てられている.
 本書は,心不全診療に対する支持療法の実践書であり,理解すべき病態や薬物,高度治療にも触れられ,さらには心不全に対する緩和医療の具体的な取り組み,コミュニケーションの方法,精神的なケア,地域における心不全ケアでの病院と在宅医療との連携,必要とされる生命倫理の解説も含まれ,心不全の全人的な対応を求める医療者への道標になるものと期待される.
 循環器領域では,末期医療における患者家族を含めたチーム医療の必要性は高齢化とともに今後ますます高まっていく.課題の解決に向けて本書が役立つことを願っている.

静岡県立総合病院
野々木 宏


■刊行によせて■
 本書は,心不全の緩和ケアについて体系的に扱った本邦初の成書であり,その内容は緩和ケアの概念,倫理,心不全の病態と治療の基本,身体的苦痛と心理精神的苦痛の緩和,エンド・オブ・ライフケア,在宅ケア,家族ケアと多岐にわたり,緩和ケアに必要な知識と態度について広くカバーするものである.短期間に本書の編集・執筆にあたられた大石,高田,竹原,平原氏をはじめ諸先生方にまずは敬意を表したい.
 緩和ケアは,生命の危機に直面した患者と家族に対して,疾患と病期を問わず,苦痛の緩和とQOLの向上を目指して行われる.その主たる提供者は,緩和ケア専門家ではなく,心不全の緩和ケアについては,循環器内科医を中心とした内科医,診療所医師,そして看護師,薬剤師,ソーシャルワーカー,栄養士,リハビリテーションスタッフなどの一般医療福祉従事者が実践すべきものである.緩和ケアにおける専門性は,苦悩Sufferingへの対処と終末期ケアDeath and Dyingであるといわれており,生と死を見つめ,死にゆく人の生活をどう支えるかであると言い換えることもできよう.
 近年の政策により,がんの緩和ケアにおけるこの10年間の発展には目覚ましいものがあるが,がん以外の領域では大きな進歩は得られていないのが現状である.しかし,いま,まさにこれからが非がんの緩和ケアを考える10年であることを,私は確信している.本書が,その黎明になることを心から願うものである.

神戸大学大学院医学研究科内科系講座
先端緩和医療学分野特命教授
木澤 義之

目次

第1章 心不全における緩和ケアのニーズ

 A.循環器内科医の視点から  横山広行
  1.本邦の心不全末期患者の現状と問題点─症例から─
  2.心不全の末期状態 
  3.心不全の緩和ケアを導入するにあたり医療従事者が考慮すべきこと
  4.心不全の緩和ケアにおける生命倫理的検討
  5.末期医療における心不全緩和ケアと積極的診療の関係
 B.緩和ケア全体および在宅医療の視点から  平原佐斗司
  1.緩和ケアの概念
  2.非がん疾患の緩和ケアの世界的な動向
  3.本邦の死亡統計からみた心疾患
  4.在宅医療と心不全
  5.非がん疾患の終末期の軌跡と心不全の軌跡の特徴
  6.苦痛,症状からみた特徴
  7.終末期の軌跡学と意思決定支援
 C.心不全の病みの軌跡 illness trajectoryと緩和ケアニーズ  大石 愛
  1. Illness trajectory 病みの軌跡とは
  2.心不全の病みの軌跡
  3.その他の患者のニーズとギャップ

第2章 心不全症候群の病態・治療・経過と予後

 A.病 態  佐藤幸人
  1.心不全の原因と悪化因子
  2.心不全の疫学
  3.心不全のステージ分類と早期からの投薬の必要性
  4.収縮機能障害と拡張機能障害
  5.神経体液因子説
  6.心筋リモデリング
  7.心不全の症状
  8.末期心不全に認められる低栄養
 B.慢性心不全の治療  佐藤幸人
  1.左室収縮機能低下に対する治療
  2.うっ血に対する治療
  3.合併する冠動脈疾患に対する治療
  4.合併する心房細動に対する治療
  5.リスク管理
  6.心不全疾病管理プログラム
  7.その他
 C.経過と予後  大石醒悟
  1.経 過
  2.予 後
  3.予後予測因子
  4.予後予測スコア
  5.予後予測のタイミングと意義

第3章 末期心不全の症状緩和

 A.症状評価  大石醒悟/高田弥寿子
  1.症状評価総論
  2.症状評価各論
 B.非薬物療法  高田弥寿子
  1.呼吸困難時の非薬物療法
  2.疼痛時の非薬物療法
  3.和温療法
 C.薬物療法  大石醒悟
  1.薬物療法の留意点
  2.症状緩和のための治療選択肢

第4章 末期心不全における支持療法(サポーティブケア)  竹原 歩/伊藤弘人

 A.支持療法(サポーティブケア)とは
 B.全人的苦痛(トータルペイン)
 C.精神的苦痛
  1.精神的苦痛と精神・心理的支援
  2.不 眠
  3.せん妄
  4.認知症
  5.抑うつ
  6.循環器医療と精神科医療の地域連携
 D.社会的苦痛(ソーシャルペイン)
  1.心不全患者の社会的苦痛と相談窓口
  2.心不全患者が利用できる制度
  3.ピアサポートとしての患者会
 E.霊的苦痛(スピリチュアルペイン)
  1.霊的苦痛とは
  2.霊的ケア

第5章 心不全診療におけるコミュニケーション  能芝範子

 A.心不全における病期の共有の必要性と意義
  1.心不全のステージ分類
  2.病期の共有の必要性と包括的ケアの考え方
  3.二項対立Hope for the best and prepare for the worst
 B.アドバンス・ケア・プランニングの概念
  1.アドバンス・ケア・プランニングとは
  2.心不全患者にとってのアドバンス・ケア・プランニング
 C.心不全の包括ケアで必要となるコミュニケーション技術
  1. ask-tell-ask アプローチ
  2.悪い知らせの伝え方とタイミング
  3.意思決定支援の形Shared Decision Making
 D.重要な局面における意思決定支援のあり方
  1.年一回の心不全レビュー
  2.病態の変化に対応した話し合い
  3.エンド・オブ・ライフケア・プランニング

第6章 心不全で死にゆく患者・家族のケア  高田弥寿子

 A.死にゆく心不全患者の苦痛緩和
  1.苦痛緩和と包括的アプローチの意義
  2.終末期患者の症状評価と症状マネージメントのアプローチのあり方
  3.終末期の主要症状のマネージメント
 B.心不全末期・終末期における意思決定支援
  1.意思決定の観点からみた心不全
  2.心不全における意思決定の望ましいあり方
  3.心不全末期・終末期における選択肢と意思決定支援の留意点
  4.意思決定支援のポイント
 C.死にゆく患者・家族に対するグリーフケア
  1.グリーフケアとは
  2.悲嘆のプロセス
  3.終末期におけるグリーフケア
  4.臨終時のグリーフケア
  5.死別後のグリーフケア
 D.看取りのパス Liverpool Care Pathway(LCP)
  1.死期の診断(LCP使用基準)
  2.鍵となる3つのセクションの概要

第7章 在宅における心不全緩和ケア

 A.総 論  平原佐斗司
  1.在宅療養者における心不全の頻度
  2.在宅療養者の心不全の特徴
  3.在宅末期心不全の緩和ケアの特徴
  4.在宅における末期心不全患者の合併症と死因
  5.在宅末期心不全患者の終末期の軌跡
  6.在宅における心不全の評価
  7.在宅末期心不全患者の苦痛
  8.在宅における末期心不全の治療と緩和ケア
 B.看護の立場から  藤田 愛
  1.心不全患者の経過と各期における看護の視点
  2.心不全患者の緩和ケアにおける訪問看護師の役割
  3.訪問看護アセスメント・計画シートの作成と試行
  4.心不全患者の緩和ケアの実際
 C.循環器専門医の立場から─重症心不全患者の在宅管理─  弓野 大
  1.心不全在宅管理の役割
  2.心不全在宅管理を行うにあたり
  3.在宅医療での症状緩和
  4.重症心不全の在宅管理の実際
  5.今後の課題

第8章 心不全診療における多職種連携  佐藤幸人

 A.心不全の多職種連携とは
 B.多職種連携に必要な準備
  1.手帳作成
  2.多職種カンファレンス
  3.簡単な症状指標の設定
  4.簡単な検査項目の設定
 C.多職種連携で行うこと
  1.ガイドライン推奨治療法の徹底
  2.基本的な日常生活指導,塩分,水分制限
  3.心臓リハビリ
  4.入退院回避の工夫
  5.低栄養への注意
  6.終末期医療
 D.多職種連携の実践
  1.入院中と退院後をつなぐ院内連携
  2.院外連携の強化

第9章 症例から学ぶ緩和ケア実践の流れ  仲村直子

 A.緩和ケアを難しくする心不全診療の問題
 B.症例紹介
  1.エンド・オブ・ライフ・ケアのディスカッションの導入(心不全入院6回/年頃)
  2.最大限の心不全治療(僧帽弁形成術)の検討
  3.最期の場の検討(手術から6か月後)
  4.本当の意味でのQOLを再検討(持続点滴をした在宅での生活の光と影)
  5.緩和ケアのタイミングの検討(最期の看取り)
 C.最大限の心不全管理の中で行なう緩和ケア

第10章 緩和ケアに携わる医療者のこころのケア  山部さおり 

 A.医療者のストレス
  1.患者との関わり
  2.家族との関わり
  3.看取り
  4.医師と看護師の関わり
  5.看護師間の関わり
  6.他職種との関わり
  7.ケアの環境
  8.看護師自身の問題
 B.バーンアウト
  1.症 状
  2.生じる問題点
 C.バーンアウトの対策
 D.援助者の支え

第11章 緩和ケアに関連する倫理的問題  浅井 篤

 A.疾患の悪性・非悪性で倫理的アプローチは変わらない
 B.終末期における意思決定を困難にしている要因と混乱
 C.医療倫理総論
 D.終末期と日本文化
 E.緩和的鎮静の倫理原則とまとめ

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