カテゴリー: 神経学/脳神経外科学 | リハビリテーション医学
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神経疾患の緩和ケア
1版
荻野美恵子 編
小林庸子 編
早乙女貴子 編
中山優季 編
成田有吾 編
野田涼子 編
服部万里子 編
花井亜紀子 編
定価
4,620円(本体 4,200円 +税10%)
- B5判 364頁
- 2019年8月 発行
- ISBN 978-4-525-24201-5
神経疾患にかかわるすべての医療職の方に読んでほしい一冊
神経疾患の多くは完治が望めず,長期の闘病生活の間に様々な苦痛が生じるが,適切な対症療法を駆使することで,病状の安定,QOLの向上,苦痛の緩和を得ることができる.本書では,機能障害や苦痛に対する対処法,声かけの例など長年の実践で得たノウハウを,患者を支える関連多職種の視点で,項目ごとに具体的に解説する.
- 序文
- 目次
序文
日本における緩和ケアは「がん」を中心に発展し,がん以外の疾患における緩和ケアの対応が非常に立ち遅れている状況にある.すでに2002年にはWHO は「緩和ケアとは,生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して,痛みやその他の身体的問題, 心理社会的問題,スピリチュアルな問題を早期に発見し,的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって, 苦しみを予防し,和らげることで,クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである.(日本ホスピス緩和ケア協会訳)」と定義しており,がんでなくとも全ての死に直面した疾患が病初期から対象であること,疼痛のみでなくあらゆる苦痛の緩和を対象としQOLの向上が目的であることを明確にした.
実際に世界保健機関(WHO)と世界緩和ケア連合(WPCA)が共同で発表した“Global Atlas of Palliative Care at the End of Life 2014”によると,終末期に緩和ケアを必要とする成人(15歳以上)において主要12疾患に占めるがんの割合は34. 01%であり,全米ホスピス・緩和ケア協会(NHPCO)による2013年の集計(NHPCOs Facts and Figures Hospice Care in America 2014 Edition)でも,ホスピスケア受療者のうちがん患者は36. 5%で60%以上は非がん疾患が対象となっている.中でも脳卒中を含む循環器疾患,認知症,呼吸器疾患の割合が多く,神経疾患も多いことがわかる.また,数は少ないながら神経難病においても様々な苦痛症状をきたすため,治癒は望めなくとも,少しでもQOLの向上をめざして行う治療およびケアは緩和医療・緩和ケアと捉えることができる.
このように非がんの緩和ケアが非常に立ち遅れている現状を改善するためには,日本語で書かれた教科書が必要と考え,本書に取り組むことになった.すでに「心不全の緩和ケア」が2015年に南山堂から発刊となっており,「非がん性呼吸器疾患の緩和ケア(2017年)」,「認知症の緩和ケア(2019年)」が続いている.
神経疾患は特に身体障害をきたすことが多いため,多職種がかかわることでQOL の向上を目指すことができる.そのため本書はそれぞれの項目に深くかかわる各職種の視点から記載することを試みた.他の職種がどのような視点で対応しているのか,職種間で共有できるように配慮した.チーム医療の実践に生かしてもらえれば幸いである.また,重複を避けるために職種と症候,疾患を表として構成したことも本書の特徴である.
複雑な構成にご協力いただいた各執筆者の方々,多大な労力を割いていただいた南山堂編集部諸氏にこの場を借りて深謝いたします.
2019年6月
荻野美恵子
実際に世界保健機関(WHO)と世界緩和ケア連合(WPCA)が共同で発表した“Global Atlas of Palliative Care at the End of Life 2014”によると,終末期に緩和ケアを必要とする成人(15歳以上)において主要12疾患に占めるがんの割合は34. 01%であり,全米ホスピス・緩和ケア協会(NHPCO)による2013年の集計(NHPCOs Facts and Figures Hospice Care in America 2014 Edition)でも,ホスピスケア受療者のうちがん患者は36. 5%で60%以上は非がん疾患が対象となっている.中でも脳卒中を含む循環器疾患,認知症,呼吸器疾患の割合が多く,神経疾患も多いことがわかる.また,数は少ないながら神経難病においても様々な苦痛症状をきたすため,治癒は望めなくとも,少しでもQOLの向上をめざして行う治療およびケアは緩和医療・緩和ケアと捉えることができる.
このように非がんの緩和ケアが非常に立ち遅れている現状を改善するためには,日本語で書かれた教科書が必要と考え,本書に取り組むことになった.すでに「心不全の緩和ケア」が2015年に南山堂から発刊となっており,「非がん性呼吸器疾患の緩和ケア(2017年)」,「認知症の緩和ケア(2019年)」が続いている.
神経疾患は特に身体障害をきたすことが多いため,多職種がかかわることでQOL の向上を目指すことができる.そのため本書はそれぞれの項目に深くかかわる各職種の視点から記載することを試みた.他の職種がどのような視点で対応しているのか,職種間で共有できるように配慮した.チーム医療の実践に生かしてもらえれば幸いである.また,重複を避けるために職種と症候,疾患を表として構成したことも本書の特徴である.
複雑な構成にご協力いただいた各執筆者の方々,多大な労力を割いていただいた南山堂編集部諸氏にこの場を借りて深謝いたします.
2019年6月
荻野美恵子
目次
Part 1 症状ごとの緩和
1 四肢・体幹機能障害に伴う症状
A.筋力低下
1.上肢筋力低下
2.下肢筋力低下,体幹筋力低下
B.固縮・無動による機能低下
C.痙性による機能低下
D.運動失調・不随意運動
2 球麻痺に伴う症状
A.摂食・嚥下障害
B.構音障害
3 呼吸筋障害に伴う症状
A.呼吸筋筋力低下
B.呼吸器感染症
C.非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
D.気管切開による人工呼吸(TPPV)
4 自律神経系障害に伴う症状
5 各障害によって生じる苦痛症状
A.疼痛,感覚障害
B.呼吸苦・呼吸困難感
C.むせ込み,窒息
D.流 涎
E.排泄関連トラブル
F.皮膚関連トラブル
G.せん妄
H.精神的苦痛
I.スピリチュアルペイン
J.コミュニケーション障害
Part 2 その他緩和的視点をもつべき事項
6 遺伝性疾患
7 病名告知
8 協働意思決定
9 もの・ひと・お金 そして 生きる場所〜社会資源について
10 就労支援
11 連 携
12 看取りの場
13 ビリーブメントケア
14 医療者のこころのケア
15 災害への対応
Part 3 疾患各論
Ⅰ 筋萎縮性側索硬化症
Ⅱ パーキンソン病
Ⅲ 大脳皮質基底核変性症/進行性核上性麻痺
Ⅳ 多系統萎縮症
Ⅴ 脊髄小脳変性症
Ⅵ ハンチントン病
Ⅶ 多発性硬化症
Ⅷ 筋ジストロフィー
Ⅸ 認知症
Ⅹ 脳卒中
XI 神経感染症
XII その他の神経免疫疾患
索 引
1 四肢・体幹機能障害に伴う症状
A.筋力低下
1.上肢筋力低下
2.下肢筋力低下,体幹筋力低下
B.固縮・無動による機能低下
C.痙性による機能低下
D.運動失調・不随意運動
2 球麻痺に伴う症状
A.摂食・嚥下障害
B.構音障害
3 呼吸筋障害に伴う症状
A.呼吸筋筋力低下
B.呼吸器感染症
C.非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
D.気管切開による人工呼吸(TPPV)
4 自律神経系障害に伴う症状
5 各障害によって生じる苦痛症状
A.疼痛,感覚障害
B.呼吸苦・呼吸困難感
C.むせ込み,窒息
D.流 涎
E.排泄関連トラブル
F.皮膚関連トラブル
G.せん妄
H.精神的苦痛
I.スピリチュアルペイン
J.コミュニケーション障害
Part 2 その他緩和的視点をもつべき事項
6 遺伝性疾患
7 病名告知
8 協働意思決定
9 もの・ひと・お金 そして 生きる場所〜社会資源について
10 就労支援
11 連 携
12 看取りの場
13 ビリーブメントケア
14 医療者のこころのケア
15 災害への対応
Part 3 疾患各論
Ⅰ 筋萎縮性側索硬化症
Ⅱ パーキンソン病
Ⅲ 大脳皮質基底核変性症/進行性核上性麻痺
Ⅳ 多系統萎縮症
Ⅴ 脊髄小脳変性症
Ⅵ ハンチントン病
Ⅶ 多発性硬化症
Ⅷ 筋ジストロフィー
Ⅸ 認知症
Ⅹ 脳卒中
XI 神経感染症
XII その他の神経免疫疾患
索 引