書籍カテゴリー:神経学/脳神経外科学

知っていますか?食事性低血圧

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知っていますか?食事性低血圧
新たな血圧異常の臨床

1版

  • 名古屋大学名誉教授 高橋 昭 監修
  • 名古屋第二赤十字病院部長 長谷川 康博 編集
  • 名古屋大学教授 古池 保雄 編集

定価:4,860円(本体4,500円+税8%)

  • B5判 264頁
  • 2004年5月 発行
  • ISBN978-4-525-24351-7
  • ISBN4-525-24351-1

概要

食事性低血圧は,起立性低血圧と同様,自律神経障害,高血圧,加齢などと深く関わってきている血圧異常症候である.本書は,日常よく観察される現象でありながら,つい最近まであまり顧みられなかったこの現象の病態や治療について,多くの業績を積んできた専門家グループが,より正確な理解と知識の普及を目標に,また広く臨床の場において役立つよう順序だてて平易に解説したものある.

序文

「治療の対象になるような低血圧はあるのですか?」
これは,ノルアドレナリンの前駆物質として低血圧の治療薬としてdroxidopa(ドプス)が市販された時に循環器内科の先生が私に言われた言葉です.
「人は血管とともに老いる」といわれるように,現在では動脈硬化や高血圧などは生活習慣病として一般の人々にとっても大きな関心事でありますが,低血圧についてはこれまであまり注目されてきませんでした.私たちの受けた医学教育を振り返りましても,低血圧の病態,診断基準などについては何一つ教わった記憶がありませんし,まして治療に関しての知識はまことに浅薄なものでした.
たまたま,隣の診察室で診察していた医師が患者さんに「心臓のペースメーカーも順調に作動していますし,心電図も血圧も問題がないのに,どうしてこんなに失神が起きるのでしょうかね?」と問いかけたことがありました.この患者さんでは,立位での血圧が慎重に測定されたことがなく,著しい起立性低血圧が発見されずにいました.
低血圧には,「起立性」のほかに「食事性」のものがあることを文献で知った時は,眼から鱗が落ちる思いでした.それは,昼食時まで普通に会話していたある患者さんが,食事を終わった後,付き添いの奥様が食事をしておられる間に忽然と亡くなられていたことを思い出したからであります.この文献と私の経験を教室の皆さんにお話しし,早速過去の診療記録を調査し,食後に他界された数例を見出しました.またこれと並行して,ブドウ糖負荷による血圧変動を調べ始めました.このようにして食事性低血圧の発現機序や治療についても新しい知見を得ることができました.食事性低血圧に着目し,これを系統的に検査し,その結果を報告したのは,おそらく日本で私たちが最初ではないかと思っております.
この書物は,こうした研究成果を踏まえ,多くの医家に食事性低血圧を中心に低血圧全般について理解をいただくように企画され,共同研究者が一丸となって執筆したものであります.
日常心療の一助となることを願ってやみません.

2004年2月 監修者 高橋 昭


目次

1 低血圧を理解するために
 1.血圧調節のメカニズム
  a.血圧の定義
  b.ヒトの正常血圧
  c.血圧調節
   1)血圧の時間経過による分類
   2)神経性調節
    a)末梢交感神経活動
    b)圧受容器反射
     (1) 動脈圧受容器反射
     (2) 心肺圧受容器反射
    c)圧受容器反射機能検査
    d)化学受容器反射
   3)液性調節
    a)カテコールアミン系
    b)バソプレシン系
    c)レニン・アンジオテンシン血管収縮系
    d)レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
   4)長期的循環調節
 2.血圧の検査法と評価
  a.血圧とは
  b.血圧測定の歴史
  c.血圧・血流・血管抵抗
  d.動脈圧
  e.ヒトの血圧測定法
   1)直接法
   2)間接法
    a)聴診法
    b)触診法
    c)マイクロホン法とオシロメトリック法
    d)フィナプレス法
    e)トノメトリー法
    f)携帯式血圧測定法
  f.測定条件と血圧の評価
  g.血圧値による血圧の分類
 3.低血圧とはどんな病態か
  a.低血圧の定義
  b.低血圧の病態とその発症因子
   1)心拍数
   2)左室収縮能
   3)循環血漿量
   4)血管運動性交感神経活動
  c.低血圧の頻度
  d.低血圧と関連した訴え
   1)めまい・立ちくらみ・失神
   2)不眠
   3)頭痛・だるさ・疲れ・肩こり・疲れ眼
   4)朝起き不良
   5)消化器症状(食欲不振・胃のもたれ感・吐き気・下痢・便秘・腹痛)
   6)循環器症状(脈の乱れ・動悸・息切れ)
   7)発汗・冷え
  e.低血圧は長寿か
  f.低血圧症は治療すべきか
 4.低血圧の症候
  a.脳の血流低下と低血圧の症候
  b.血圧低下に対する代償性反応
  c.非特異的症状
  d.低血圧のもたらす二次的な病態
  e.低血圧の症候と診断
 5.低血圧の功罪
 6.低血圧にもいろいろある
  a.本態性低血圧
   1)症状
   2)原因
   3)治療
    a)生活改善
    b)食事療法
    c)運動療法
    d)薬物治療
  b.症候性低血圧
   1)急性症候性低血圧
   2)慢性症候性低血圧
   3)症候性低血圧の治療
  c.薬物性低血圧
  d.起立性調節障害
   1)起立性調節障害
   2)起立性頻脈症候群
  e.起立性低血圧
   1)症状
   2)起立性低血圧の発現機構(病態生理)
   3)診断基準
   4)原因疾患
   5)鑑別診断に必要な手順
   6)治療
    a)物理・理学(運動)療法
    b)食事療法
    c)薬物治療
  f.入浴時低血圧
   1)日本式入浴
   2)日本人の入浴の歴史
   3)入浴の効果とリスク
   4)入浴とはどういう生理学的負荷か
   5)入浴時低血圧
    a)入浴中の変化
    b)入浴後の変化
   6)疾患と入浴時低血圧
   7)入浴時低血圧の予防
  g.運動時低血圧
   1)高血圧患者での運動による降圧効果
   2)アスリートの運動後低血圧
   3)自律神経障害患者の運動中および運動後低血圧
  h.睡眠時低血圧
   1)血圧の日内変動
   2)夜間血圧
    a)正常群
    b)シャイ・ドレーガー症候群
   3)睡眠中の低血圧を呈するシャイ・ドレーガー症候群
    a)症例
    b)睡眠時失神
   4)血圧変動の不安定化
    a)圧受容器反射不全
    b)孤束核病変
  i.失神と低血圧
   1)失神の原因
   2)低血圧性失神
    a)神経調節性失神
    b)ベツォルト・ヤーリッシュ反射
    c)ベツォルト・ヤーリッシュ反射を誘発する要因と病態
    d)血管迷走神経性失神が誘発される病態
    e)神経調節性失神に含まれるその他の失神
    f)起立性失神
    g)ティルト試験
   3)不整脈性失神
   4)心原性失神
   5)神経原性失神
   6)心因性疾患
   7)失神の診断
   8)治療
    a)理学療法
    b)薬物治療
    c)その他の失神に対する治療
 7.食事性低血圧と起立性低血圧との違い
   1)循環動態の差異
    a)食事性低血圧の検討
    b)起立性低血圧の検討
   2)生体の反応
    a)起立による反応
    b)食事に伴う循環の生理的変化
   3)ノルアドレナリンの反応
   4)食事性低血圧発現へのインスリンの関与の有無
   5)食事性低血圧と起立性低血圧の関連性

2 食事性低血圧の概念(定義・判定基準)
  a.食事性低血圧の判定基準
  b.食事性低血圧の臨床的意義

3 食事性低血圧の病態生理
 1.血行動態から見た発現機序
  a.自律神経不全における食事性低血圧の発現機序
   1)インスリンの影響
   2)腹部血流・心拍出量・末梢血管抵抗
   3)静脈コンプライアンス
  b.末梢性自律神経障害における食事性低血圧の発現機序
  c.脳血流
 2. 液性因子から見た発現機序
  a.液性因子説の歴史
   1)液性因子説の登場の背景
   2)起立性低血圧との関係
  b.食物栄養成分
   1)食事性低血圧の必要条件
   2)食物栄養成分と血圧低下効果
  c.消化管運動・食物浸透圧効果の役割
   1)ダンピング症候群
   2)ダンピング症候群との異同
  d.血糖・インスリン
   1)血糖
   2)インスリン
  e.消化管ホルモン
   1)種類・性質・作用
    a)消化管ホルモンとは
    b)食事性低血圧と関係の深い主な消化管ホルモン
   2)消化管ホルモンと食事性低血圧
    a)ニューロテンシン
    b)ソマトスタチン
    c)血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)
    d)カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)
    e)その他消化管ホルモン
  f.カテコールアミン
   1)アドレナリン
   2)ドパミン
   3)ノルアドレナリン
  g.その他の因子
   1)レニン
   2)血清電解質
   3)バソプレシン
   4)心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
   5)セロトニン
   6)ブラジキニン
   7)エンドセリン
  h.消化管ホルモン説の問題点
 3.電気生理学から見た発現機序
  a.交感神経活動の直接記録
  b.心電図パワースペクトラム解析

4 食事性低血圧の検査法

5 食事性低血圧の臨床
 1.神経疾患
  a.自律神経不全
   1)多系統萎縮症
    a)疾患概念
    b)多系統萎縮症の3型
     (1) オリーブ橋小脳萎縮症
     (2) シャイ・ドレーガー症候群
     (3) 線条体黒質変性症
    c)神経系の病変部位
    d)病因・病態
    e)多系統萎縮症に関する合同声明
    f)日本における多系統萎縮症の研究
   2)パーキンソン病を伴う自律神経不全
    a)疾患概念
    b)臨床所見
     (1) 自律神経症候
     (2) パーキンソニズム
     (3) 痴呆・精神症候
    c)検査所見
     (1) 起立負荷試験
     (2) ノルアドレナリン負荷試験
     (3) 経口ブドウ糖負荷試験
     (4) 脳波
     (5) 聴性脳幹反応
    d)画像所見
     (1) FDG PET
     (2) MIBG心筋シンチグラフィ
    e)神経病理学的検討
   3)純粋自律神経機能不全
    a)疾患概念
    b)臨床・経過
    c)病理像
    d)画像所見
    e)食事性低血圧
  b.パーキンソン病・類似疾患
   1)パーキンソン病
    a)疾患概念
    b)自律神経障害
    c)食事性低血圧
     (1) 歴史
     (2) 疫学
     (3) 症候
     (4) 病態
     (5) 治療
   2)レヴィ小体型痴呆/びまん性
     レヴィ小体病
    a)疾患概念
    b)自律神経障害
    c)食事性低血圧
  c.痴呆性変性疾患
   1)アルツハイマー病
    a)疾患概念
    b)自律神経障害
    c)食事性低血圧
   2)前頭側頭型痴呆
    a)疾患概念
    b)自律神経障害
    c)食事性低血圧
   3)進行性核上性麻痺
    a)疾患概念
    b)自律神経障害
    c)食事性低血圧
  d.脳血管障害
   1)脳血管障害と食事性低血圧
   2)食事性低血圧が誘因となった脳血管障害
  e.脊椎・脊髄疾患
   1)脊椎疾患
   2)脊髄疾患
    a)脊髄損傷(脊損)
    b)脊髄癆
    c)亜急性連合性脊髄変性症
  f.ニューロパチー
   1)自律神経系の障害を受けやすい末梢神経疾患の種類と分類
   2)末梢神経障害と食事性低血圧
    a)家族性アミロイドポリニューロパチー
    b)糖尿病性ニューロパチー
 2.高血圧
 3.糖尿病
 4.血液透析
 5.高齢者
   1)食事性低血圧の頻度
   2)食事性低血圧の症候・合併症
   3)食事性低血圧の病態
   4)食事性低血圧の治療

6 食事性低血圧の治療
 1.治療法の原則
 2.食事療法
   1)食事の量
   2)食事の温度
   3)食事の成分
   4)経腸栄養剤
   5)生活と食事の工夫
 3.理学療法
 4.薬物治療
   1)血漿増量薬
    a)フルドロコルチゾン
    b)バソプレシン
   2)交感神経刺激薬
    a)ジヒドロエルゴタミン
    b)ミドドリン
    c)アメジニウム
    d)ドロキシドパ
   3)消化管ホルモン分泌抑制薬
    a)ソマトスタチン
    b)オクトレオチド
   4)その他
    a)インドメタシン
    b)カフェイン
    c)プロチレリン
    d)αグルコシダ−ゼ阻害薬

7 見えない病気を探す
 ケース1 特異な持続性低血圧・徐脈発作を示した1例
 ケース2 外傷性頸髄損傷
 ケース3 シャイ・ドレーガー症候群
 ケース4 パーキンソン病
 ケース5 食事後の失神でわかった低血圧 ―起立性低血圧に先行した高度の食事性低血圧―