書籍カテゴリー:循環器学|内分泌・代謝学

降圧薬俺流処方
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心血管内分泌検査から読み解く
降圧薬俺流処方

1版

  • 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 教授 伊藤 裕 編

定価:3,888円(本体3,600円+税8%)

  • B5判 160頁
  • 2011年11月 発行
  • ISBN978-4-525-24531-3

概要

これまで画一的に取り扱われてきた本態性高血圧の治療を心血管系内分泌系の臨床検査値などにより病態に応じてグループ分けし,高血圧治療のエキスパートがJSH2009から一歩踏み込み,臨床経験上妥当と考え実践で選択している降圧薬の「俺流」処方をそれぞれの専門分野の立場から,エビデンスならびに自身の考え方を含めて解説.

序文

 EBM(evidence-based medicine)の重要性が叫ばれて久しい.その結果,現在,医療の現場においては,ガイドラインが百家争鳴のごとく示されている.個々の医師の “ささやかな” 努力,“まちまちの” 経験に基づいた “いい加減な” 医療では,患者さんの有する,だれもが妥当な医療を受ける権利が損われるという精神に基づくこのムーブメントは,もちろん十分に一理はある.だれでも,どこでも,間違っていない医療が受けられるためにはガイドラインはぜひ必要である.しかし,どこか,一時期もてはやされた経済界におけるグローバリゼーションの波に似通っている.一人の患者さんのかかる病は,教科書に記載されている最大公約数的な疾患とは,絶対に一致しない.またEBMで,ある治療法が別の治療法に比べ,死亡率を20%有意に減少させたとしても,ある一人の患者さんが不幸にも合併症が発症して死んでしまうことになれば,そのことは,その患者さんにとって,100%のイベントである.
 われわれ医師は,日々個々の患者さんとともに,その方の陥った “個別の” 病と格闘している.統計的解析のために供せられるひとつのデータを生み出すために,淡々と仕事をこなしているわけではない.個々の医師の努力は有限であるが,それでも誠実な努力から生み出された経験則こそが,「最低限の医療」の保障を超えて,その患者さんに合ったベストの医療を供するための鍵となると信じている.
 世阿弥は,「風姿花伝」の中で能という芸のレベルの維持と伝承において「秘すれば花なり,秘せずば花なるべからず」と15世紀初頭の室町時代に書いている.統計学的に妥当であると証明されていないことをヒトに伝えることに,誰もが慎重になる.自分の経験を過信する慢心は厳に慎まなければいけない.しかし,「一子相伝すべし」として埋もれさせてしまうにはあまりにも惜しい,貴重な医療プラクティス上の奥義やノウハウがたくさんある.
 本書では,主に大学において,最先端の情報を収集し,また自ら基礎的臨床的研究を実践しつつ,常に最高の医療を目指して,高血圧医療を真摯に行っておられるわが国のトップランナーの先生がたに,自らの経験に基づく高血圧診療の「極意」を,あえて自らの言葉で吐露していただくことをお願いした.本書を手にした先生方が,目の前にいる患者さんにとっての “極上の” 高血圧診療を施されることになることを願って止まない.

2011年9月
伊藤 裕
慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科

目次

I 総論:高血圧を内分泌学的にみる 伊藤 裕

A 高血圧症:milieu interieur破綻の病──今日の立ち位置
B 高血圧のテーラーメイド医療への内分泌学的アプローチ
C 高血圧患者における循環調節ホルモン血中濃度測定とその評価
D 循環調節ホルモン血中濃度の高血圧治療への応用


II レニン-アンジオテンシン系とメタボリックドミノ

1 高血圧におけるインスリン抵抗性と臓器障害浦 信行
A IR/高インスリン血症の昇圧/臓器障害の機序
1.IR/高インスリン血症は血圧を上昇させる
2.IR/高インスリン血症は動脈硬化を促進する
B IR/高インスリン血症は実際に臓器障害を増加させる
C IR改善薬は臓器障害を抑制する
D RA系抑制薬はIRやMetSの降圧薬として最適
E ARBは糖尿病の新規発症を抑制する

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
インスリン抵抗性を判断するとき
腎性インスリン抵抗性症候群とは?

2 高血圧におけるレニン・プロレニン濃度(直接的レニン阻害薬) 市原淳弘
A レニンの意味するもの
B プロレニンの意味するもの
C レニン・プロレニン濃度による病態分類
D 直接的レニン阻害薬と(プロ)レニン受容体
1.直接的レニン阻害薬とは?
2.直接的レニン阻害薬の有用性
3.(プロ)レニン受容体とは?
4.直接的レニン阻害薬による(プロ)レニン受容体への影響
E 血漿レニン・プロレニン濃度による降圧薬の使い分け

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
直接的レニン阻害薬の居場所

3 腎保護機能を持つレニン・アンジオテンシン・アルドステロン阻害薬の使い方 佐藤敦久
A ACE阻害薬とARB
1.腎保護のエビデンスの中心はRA系阻害薬:腎保護には「降圧」と「RA系抑制」の両方が重要
2.ACE阻害薬とARBの相違:クラスとしての効果と薬剤間の違いを認識する.すべてのRA系阻害薬は同じではない
3.RA系阻害薬の服用時間:就寝前投与の方が効果は大きい
4.RA系阻害薬の用量調整:耐えうる最大用量まで増量する
5.併用療法の考え方:ACE阻害薬とARBの併用のメリットは明確ではない.アルドステロンブロックが必要
B アルドステロン拮抗薬
1.アルドステロンブレイクスルーの抑制:RA系抑制に少量のアルドステロン拮抗薬追加が必要
2.アルドステロン拮抗薬の使い分け:DM腎症ではエプレレノンは使用できない

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
アルドステロンブレイクスルーとミネラルコルチコイド受容体関連高血圧症を探る


III 肥満メタボリックシンドロームと食塩感受性

4 肥満高血圧における脂肪組織由来各種ホルモンの意義とその治療 益崎裕章
A 肥満合併高血圧症のとらえ方
1.肥満症の中核を占める高血圧症
2.睡眠時無呼吸症候群(SAS)と肥満合併高血圧症
3.アルドステロンと肥満合併高血圧症
B 肥満合併高血圧症における脂肪細胞由来のホルモン・生理活性物質の役割
1.全身の代謝調節における脂肪組織の役割
2.肥満合併高血圧症におけるレプチンの病態的意義
3.肥満合併高血圧症における脂肪組織アンジオテンシノーゲンの病態的意義
4.肥満合併高血圧症におけるアディポネクチンの病態的意義

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
肥満高血圧症の治療に工夫を

5 食塩感受性の診断と降圧薬の選択 下澤達雄
A 食塩感受性に影響する因子
B 食塩感受性はインプリントされるか?
C 食塩感受性の診断
D 薬物療法

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
hANP濃度を測る!


IV 二次性高血圧の診断と治療

6 原発性アルドステロン症とアルドステロン関連高血圧・ミネラルコルチコイド受容体関連高血圧 柴田洋孝
A 原発性アルドステロン症(PA)
1.はじめに:臓器合併症が進みやすいcommonな二次性高血圧
2.PAの概念:PAでは必ずしも低K血症を示さない
3.PAの頻度:アルドステロン/レニン比が診断のすべて!
4.PAの診断
5.「俺流」PA診断アルゴリズム:アラカルトかフルコースか?
6.PAの治療:スピロノラクトンかエプレレノンか?
B アルドステロン関連高血圧:低レニン,高アルドステロン血症はPA以外にも存在する
C MR関連高血圧:正常アルドステロン血症でMR拮抗薬しか効かない高血圧症もある

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
レニン,アルドステロンの絶対値──変わらぬ価値
アルドステロン測定値から腫瘍径はわかる?
アルドステロン分泌と肥満の蜜月関係?
エプレレノン,直接的レニン阻害薬の立ち位置

7 交感神経活動の評価法と中枢性交感神経抑制薬 熊谷裕生
A 交感神経系の仕組み:交感神経亢進が血圧を上昇させる
B 臨床における交感神経活動定量法
1.スペクトル解析
2.ノルエピネフリンスピルオーバー
3.筋肉交感神経活動
C 中枢性交感神経抑制薬の実際
1.クロニジン
2.グアナベンズ(ワイテンス?):これが一番使いやすい
3.α-メチルドパ(アルドメット?):妊婦に使用できるが,立ちくらみに注意
4.モキソニジンとリルメニジン

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
中枢性交換神経抑制薬の真価を問う

8 褐色細胞腫・傍神経節細胞腫とカテコラミン濃度(α遮断薬,β遮断薬) 田辺晶代
A 褐色細胞腫の疫学
B 褐色細胞腫の診断
1.臨床症状:自覚症状がなく本態性高血圧として治療され,偶発腫瘍で発見される例もある
2.一般検査所見:特異的異常所見なし
3.ホルモン検査所見:スクリーニングには随時尿中M,NM(尿中クレアチニン補正値)を用いる
4.画像検査
C 診断アルゴリズム
D 褐色細胞腫の治療:β受容体遮断薬単独投与は禁忌,術前には十分量のα遮断薬を

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
褐色細胞腫を疑うとき

9 妊娠高血圧症 鈴木洋通
A 妊娠高血圧症候群とは
B 血圧値はどのように決定されるか
C 妊娠中の血圧の変動について
D 妊娠高血圧症候群の成因は
1.胎盤の虚血低酸素状態
2.内皮機能障害に関与している因子
E 浮腫は重要でないのか
F 二次性高血圧は隠れていないか
G 妊娠高血圧症候群への対応は
1.どんな人が妊娠高血圧症候群になりやすいか
2.妊娠高血圧症候群は予知可能か
3.薬物治療は
H 授乳中の降圧治療に関して


V CKDを伴った高血圧症

10 微量アルブミン尿の評価と降圧薬の選び方 柏原直樹
A アルブミン尿と蛋白尿
1.微量アルブミン尿:微量アルブミン尿は,「微量」ではない
2.アルブミン尿出現と心血管病の連関メカニズム:内皮障害を共通基盤とする病態である
3.アルブミン尿出現のメカニズム:糸球体高血圧と内皮障害を反映する
4.高血圧治療におけるアルブミン尿,蛋白尿の意義:治療最適化の指標となる
B CKDを伴った高血圧患者の血圧管理
1.厳格な降圧が重要:the lower, the better
2.降圧薬の選択:レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬が第一選択薬である
3.CKDにおけるRA系阻害薬の使用法:早期から十分量を長期間継続する
C 第二選択薬:少量利尿薬あるいはCa拮抗薬を併用する

私ならこうする!俺流の処方

11 CKDステージとCa拮抗薬の使い分け 林 晃一
A Ca拮抗薬のサブクラス:複数のCaチャネルサブクラスを抑制するCa拮抗薬がある
B 腎微小血管におけるCaチャネル:サブクラスにより局在が異なる
C Ca拮抗薬による糸球体内圧への作用:Ca拮抗薬サブクラスにより反応が異なる
D CKDにおけるCa拮抗薬の位置づけ:CKDステージと顕性蛋白尿の有無が鍵
E CKDにおけるCa拮抗薬サブクラスの役割:T型Ca拮抗薬がベター

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
カルシウム・オン・カルシウムということ

12 CKD/高血圧へのANPの治療応用 向山政志
A ANP,BNPと高血圧:高血圧では血中ANP,BNP濃度は上昇している
B ANP,BNPの作用:ANP,BNPは内因性のACE阻害薬,ARB,抗MR薬である
C 高血圧・心不全におけるANPの治療応用
1.ANPの適用:高血圧緊急症や急性心不全では強力な作用を発揮!
2.ANPの処方:まずは少量から開始し,必要に応じて徐々に増量
3.ANP治療への反応性:BNP高値例ほどNa利尿ペプチド抵抗性が存在し,その解除が大切
4.ループ利尿薬や硝酸薬との使い分け:体液量とGFR,心機能,冠動脈疾患の有無をチェック
DCKDとANP治療:ANPは降圧を超えた腎保護作用を有する

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
ANP製剤を新たな臨床応用へ


VI 心血管障害と高血圧

13 血圧変動と臓器障害,ABPMからみた降圧薬の選び方  苅尾七臣
A 初診で血圧レベルが180mmHg以上:長時間作用型カルシウム拮抗薬(CCB)を
B 心血管ハイリスク高血圧:まずはレニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬
C ABPMでわかる臨床情報:血圧サーカディアンリズムとモーニングサージをチェックする
D 血圧変動・血管硬化型ハイリスク高血圧:RA系阻害薬・CCB併用を検討
E 夜間高血圧・体液貯留型ハイリスク高血圧:RA系阻害薬・少量利尿薬併用
F 治療抵抗性高血圧:3剤併用でも降圧不十分なら,基礎疾患を再検討した上で,アルドステロン拮抗薬
G サーカディアン降圧療法:早朝高血圧には降圧薬を就寝前に投与

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note
24時間にわたる血圧管理を

14 高血圧における血管不全の診断と降圧薬の選び方 野出孝一
A Ca拮抗薬の心血管不全抑制効果:Ca拮抗薬は血管平滑筋不全に有効
B RA系阻害薬:RA系阻害薬はインスリン抵抗性など血管代謝不全にも有効
C β遮断薬の心血管不全抑制効果:カルベジロールには酸化ストレス抑制作用あり
D 併用療法のポイント:血管不全にはCa拮抗薬とARB併用が基本
1.血管不全予防のためのRA系阻害薬
2.薬剤の組み合わせを考える参考になる試験:心血管イベント発生率は,CCB/ACE阻害薬併用例で低い
E 高血圧における血管不全の検査と治療:IMT,PWV,AI,FMDが有用
1.頸動脈エコー
2.PWV(pulse wave velocity,脈波伝播速度)
3.baPWV(brachial-ankle pulse wave velocity)
4.AI(augmentation index)
5.FMD(flow mediated dilation,血流依存性血管拡張反応検査)

私ならこうする!俺流の処方

15 心不全治療におけるACE阻害薬とARBの使い分け 吉村道博
A 心不全におけるホルモンバランス
B ACE阻害薬の必要量について
C ACE阻害薬の使い方とARBやβ遮断薬の使い方との違い
D 心不全におけるACE阻害薬の投与例
E 副作用のはずの「咳」も有用?
F ACE阻害薬の弱点
G 「心不全にACE阻害薬が優れている理由」のまとめ
H 今後,議論すべき課題
1.疾患の差による投与量の問題
2.ACE以外の酵素に対する作用
3.アルドステロン拮抗薬の併用
4.心不全の「治療」と「予防」の違い

私ならこうする!俺流の処方

Editor’s Note 134
レニン-アンジオテンシン系の最大のブロックには?


VII 新しい高血圧治療への展望

16 高血圧遺伝子から見た降圧薬選択は可能か? テーラーメイド医療への展望 勝谷友宏
A 疾患関連遺伝子解析の進歩と現況
B 関連遺伝子の選択と創薬のための着眼点
C 高血圧の疾患感受性遺伝子解析の意義
D 降圧薬治療と遺伝子

私ならこうする!俺流の処方

17 prehypertension(正常高値血圧)の治療はどのようにすべきか? RA系阻害薬による高血圧の発症予防と退行の可能性 篠村裕之  伊藤 裕
A RA系阻害薬による高血圧の発症予防:動物実験成績
B RA系阻害薬による高血圧の発症予防:臨床試験からのエビデンス
C RA系阻害薬による高血圧の退行:動物実験成績
D RA系阻害薬による高血圧の退行:臨床試験からのエビデンス
E prehypertension(正常高値血圧)はどのようにすべきか?
1.糖尿病やCKDを合併しているprehypertensionの場合
2.メタボリックシンドロームを伴うprehypertensionの場合
3.その他のprehypertensionの場合

Editor’s Note 153
カルディオメタボリックメモリーとは?

和文索引
欧文索引