1版
定価:9,720円(本体9,000円+税8%)
概要
呼吸器疾患の臨床を専門とする医師にとって気管支鏡は今や不可欠な検査となっている.本書は初学者向けでなく専門診療のための呼吸器内視鏡による診断とし,臨床で遭遇する多くの疾患に,どう対応するかを概説した.コモンな非腫瘍性疾患についてもビジュアルに厚く記述している.病理の側面をも含めた総合的な診断を可能にする一冊.
呼吸器疾患の診療において近年,大きな進展が見られています.分子生物学の進歩による疾病分類の再検討や分子標的治療の実現,high-resolution CT や PETなど画像診断の進歩,胸腔鏡を用いた胸膜病変診断技術の開発やびまん性肺疾患生検の普及,EBUSなどの技術開発による縦隔をはじめとする内視鏡的生検範囲の拡大など,新技術や新概念が目白押しであります.このような変化がありますと,多方面に影響し,今までの臨床上の常識を考え直す必要がでて参ります.例をあげれば,新しい分子や抗体の同定,画像上の進歩により,今まで診断のために開胸生検を必要とした疾病が,内視鏡下生検と分子検査や新画像所見とを合わせることで確定診断にせまることができる事例も生まれ,また,分子標的治療の実現のため,分子診断の重要性も格段に高まっています.
一方で,生検技術の進歩も診断法選択の変化をもたらしています.本書刊行の目的の一つは,そのような進歩により変化すべき呼吸器内視鏡の常識を認識していただく一方,その上での限界を明確にすることであります.その点について,それぞれの領域における専門家の見解を紹介していただいています.
今までの気管支鏡に関する多くの成書は,この検査の「入門から実践」に至る教科書であり,テクニックや明らかな所見のある中枢性病変に重点を置いたものが中心でした.今回の企画は,初学者向けではなく,一歩踏み込んだ専門診療のための呼吸器内視鏡による診断を特徴とした書籍を目指しました.呼吸器疾患を専門に診療する医師が日常臨床で遭遇する多くの疾患に焦点を当てるとともに,上記に述べた気管支鏡検査の限界を考慮し,「その限界を踏まえ,どう対応するか」を概説した専門的な内容にすることを念頭に置きました.したがって,気管支鏡を用いて得られた試料をもとにどのように診断を下せばよいのかを,得られた試料からビジュアルに詳述するとともに,内視鏡の限界を乗り越えるために開発されている種々の新技術紹介も試みています.
お書きいただいた原稿を拝見し想像を越えた力作の数々に,執筆者の方々には,ただ感謝するばかりであります.その結果,幅広い読者の皆様にご活用いただき,皆様の「専門診療の実践」にお役に立てる内容の一冊になったと確信しております.
2011年9月 編著者を代表して
弦間昭彦
池田徳彦
第1章 呼吸器内視鏡診断総論
呼吸器内視鏡検査による標本採取方法
標本採取部位の選択
標本採取方法の選択
呼吸器内視鏡検査標本の評価と検査法の限界
フォーカス
・特発性間質性肺炎(IIPs)の診断における気管支鏡検査の役割
・呼吸器感染症における診断のアプローチと検体採取
第2章 呼吸器疾患と呼吸器内視鏡検査
A 非腫瘍疾患
・特発性間質性肺炎
・膠原病
・肉芽腫性肺疾患
サルコイドーシス
過敏性肺炎
肺好酸球性肉芽腫症(肺ランゲルハンス細胞組織球症)
・血管炎
・塵肺症
・感染性疾患
市中肺炎・院内肺炎
肺真菌感染症・免疫不全患者の肺炎
抗酸菌症
肺ノカルジア症
・その他の疾患
好酸球性肺炎
薬剤性肺障害
肺胞蛋白症
リンパ脈管筋腫症
気管・気管支アミロイドーシス
気管気管支軟化症
肺胞微石症
B 腫 瘍
・病変の質的評価と最新検査法の応用
浸潤範囲・深達度(壁内・壁外)の評価
末梢病変に対するアプローチ
リンパ節に対するアプローチ
・悪性腫瘍
原発性肺癌
扁平上皮癌
腺 癌
肺小細胞癌
肺大細胞癌
気管支腺由来の腫瘍
カルチノイド腫瘍
転移性肺腫瘍
中皮腫
リンパ網内系腫瘍(中枢気管支および末梢肺に病変を認めたMALTリンパ腫)
その他の悪性腫瘍(癌肉腫,多形癌,肺芽腫,類基底細胞癌)
・気管・気管支の良性腫瘍
・治療による修飾と評価
レーザー治療
化学療法・放射線治療
第3章 胸腔鏡検査
・全身麻酔下胸腔鏡検査の実際
・覚醒時胸腔鏡検査の実際
第4章 呼吸器内視鏡検査時の検体処理方法
・組織検体処理法
・細胞検体処理法
・核酸検体処理法
・培養検体処理法
第5章 内視鏡時分子生物学的検査の実際と将来