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カテゴリー: 神経学/脳神経外科学

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脳卒中病態学のススメ

1版

岐阜大学大学院医学系研究科神経内科・老年学分野
教授 下畑享良 編

定価

7,700(本体 7,000円 +税10%)


  • B5判  354頁
  • 2018年2月 発行
  • ISBN 978-4-525-24851-2

脳卒中の病態・研究・創薬の全てがここにある!

本書は第一線の執筆陣により最新の知見や研究方法をまとめ,これから脳卒中研究を始める医師にとってバイブルとなる一冊となっている.さらに,病態を網羅していることにより,研究者だけではなく臨床家にも役立つハイブリッドな内容となっている.

  • 目次
  • 序文
目次
第Ⅰ部 脳卒中の治療開発のために何が必要か
 1 脳卒中研究のこれまでとこれから
 2 脳血管反応性に魅せられて
  1 脳血管の神経支配
  2 神経原性脳血管拡張現象
  3 片頭痛の病態研究への発展
  4 皮質拡延性抑制と神経疾患
  5 筆者の考え
 3 脳卒中基礎研究の楽しみ,将来性
  1 脳卒中基礎研究の経験
  2 目指してきたこと
  3 そこから学んだこと
  4 現状の問題点
  5 今後の課題・助言
 4 他分野の研究者との交流を生かす
  1 治療戦略を立てるための脳虚血病態の理解
  2 脳梗塞急性期の治療法
  3 脳梗塞亜急性期の治療法
  4 脳梗塞慢性期の治療法
  5 医薬品開発の課題
 5 細胞治療の実臨床体験から
  1 先駆け審査指定制度の対象品目として指定
  2 脳梗塞の再生医療に向けての基礎研究
  3 臨床研究
  4 脊髄損傷への適応拡大
 6 神経回路修復医学の創成
  1 神経回路の可塑性に関する研究
  2 代償性神経回路の形成を制御するメカニズム解明と治療開発

第Ⅱ部 総 論
 創薬を目指したトランスレーショナル・リサーチ
  1 TRのステージ
  2 TRの成功のために考慮すること
  3 筆者の考え

第Ⅲ部 各 論
 1 局所脳虚血の病態
  1 虚血中心とペナンブラ
  2 アポトーシスとネクローシス
  3 オートファジー
  4 虚血・再灌流障害
  5 炎症・免疫
  6 血液脳関門とneurovascular unit
  7 脳内マクロファージとミクログリア
  8 虚血耐性現象
  9 代謝異常
  10 神経再生と機能回復
 2 全脳虚血
  1 全脳虚血の概念と病態
  2 全脳虚血の基礎研究・臨床での評価法
  3 治療上の意義,治療研究と今後の課題
  4 筆者の考え
 3 慢性脳低灌流・血管性認知症の病態
  1 VaDの臨床診断,分類
  2 VaDの病態
  3 VaDの予防と治療
  4 筆者の考え
 4 遺伝性疾患からみた脳血管障害の病態
  1 代表的な遺伝性脳小血管病の病型と分子病態
  2 今後の展望
  3 筆者の考え
 5 口腔内環境による脳血管障害への影響の解析
  1 口腔内環境の評価
  2 口腔内細菌
  3 脳卒中急性期における誤嚥性肺炎の影響
  4 筆者の考え
 6 現行の治療のメカニズムと問題点
  1 血栓溶解療法
  2 血管内治療
  3 抗血小板薬
  4 抗凝固療法
  5 筆者の考え
 7 in vitroの虚血モデル
  1 脳虚血研究におけるin vitroモデルの位置づけ
  2 細胞培養
  3 スライス培養
  4 筆者の考え
 8 動物実験の基本と倫理
  1 動物実験と動物福祉
  2 動物実験の3R倫理原則
  3 わが国の動物実験の関連法令と指針
  4 動物実験計画書の立案と審査の実際
  5 自己点検評価と外部検証
  6 筆者の考え
 9 急性期脳梗塞モデル
  1 動物モデル(げっ歯類)
  2 動物モデル(非げっ歯類)
  3 評価の方法(運動機能評価)
  4 評価の方法(顕微鏡画像)
  5 MRIによる小動物生体イメージング
 10 慢性脳低灌流モデル
  1 慢性脳虚血とは何か
  2 慢性脳虚血と白質病変
  3 慢性脳低灌流モデル
  4 慢性脳虚血と変性疾患研究
  5 筆者の考え
 11 脳出血モデル
  1 脳出血モデル作成について
  2 脳出血モデルの評価項目
  3 くも膜下出血モデル
  4 筆者の考え
 12 神経細胞保護療法
  1 神経保護薬
  2 低体温療法
  3 遺伝子治療
  4 免疫的アプローチ
 13 血管保護療法
  1 t-PA療法における血管保護の必要性
  2 t-PA投与に伴う出血合併症の機序
  3 t-PA投与による血管不安定化と血管リモデリング
  4 リモデリング因子を標的とした血管保護療法
  5 多面的な脳保護作用を示す治療薬の探索
  6 臨床応用,臨床試験の状況
  7 筆者の考え
 14 脳血管障害のバイオマーカー
  1 バイオマーカーとは
  2 脳血管障害にとって期待されるバイオマーカーとは?
  3 脳血管障害の病態からみたバイオマーカーの分類
  4 バイオマーカーの臨床応用
  5 脳卒中バイオマーカーの現状と課題
  6 脳梗塞バイオマーカー探索研究
  7 筆者の考え
 15 脳梗塞に対する細胞治療の将来
  1 わが国の開発ガイドラインとRAINBOW研究
  2 医療経済学的問題
  3 倫理学的問題
  4 筆者の考え
 16 脳卒中リハビリテーション
  1 脳卒中後の機能回復予測
  2 脳卒中後の機能改善
  3 脳卒中後のsensitive periodにおける神経可塑性
  4 脳卒中後のsensitive periodを超えた脳の可塑性
  5 脳卒中発症後の機能改善を目指したリハビリテーションとは:併用療法の有効性
  6 筆者の考え
 17 知的財産の基礎知識,創薬に向けて注意すべき点
  1 特許出願から権利化までの手続き
  2 特許を受けるための要件
  3 外国への特許出願
  4 共同研究における注意点
  5 筆者の考え
 18 臨床試験・産学官連携の実際と注意すべき点
  1 新しい治療法の開発 ─ 研究仮説とエンドポイント
  2 臨床試験デザインと統計的原則
  3 臨床試験体制
  4 HAL医療用下肢タイプの治験の実際
 19 製薬企業が望む産学連携
  1 医療と製薬産業を取り巻く最近の状況
  2 アカデミアの創薬研究とオープンイノベーション
  3 開発研究ステージへ移行するために必要な要素:SPARK,OiDEの例
  4 産学連携の重要性:筆者の考え
 20 創薬の実際
  1 魔の川・死の谷・ダーウィンの海
  2 研究開発の壁:神経再生の実例
  3 開発を円滑に進めるためのポイント
  4 開発のスピード感,差別化データ
  5 筆者の考え
 21 研究者主導臨床試験
  1 臨床試験の基礎
  2 臨床試験を始める前に
  3 臨床試験の企画・運営
 22 レギュラトリーサイエンス
  1 医薬品,医療機器開発の概要
  2 脳卒中に関する医薬品・医療機器開発とレギュラトリーサイエンス
  3 問題点
  4 筆者の考え

索 引
序文
 高血圧や心房細動などの脳卒中の危険因子に対する治療により,脳卒中による死亡者数は大きく減少した.しかし脳卒中は後遺症が生じることが多く,寝たきりの原因の第1位,医療費の1割を使用している状況である.しかも高齢化が進行し,日本人の2人に1人が脳卒中を罹患する時代に突入した.すなわち,脳卒中の治療薬開発は喫緊の課題であり,事実,他の神経疾患と比べても多くの臨床試験が行われてきた.その背景の一つとして,脳梗塞では,他の神経疾患,例えば病態機序のわからない神経変性疾患などと比較して動物モデルが作製しやすく,in vivo での実験を行うことができたことがあげられる.実際に,多くの脳虚血に対する神経保護薬候補が動物実験により見いだされたが,ほとんどの薬剤は臨床試験においてその効果を見いだすことができなかった.その原因は動物モデルとヒトの臨床との相違に関する理解不足や,動物モデルが厳密なデザインのもと行われなかったことが考えられる.さらに,臨床への応用を目指したトランスレーショナル・リサーチに関する知識や経験も圧倒的に不足していた.創薬を実現するためには,治療標的分子の適切な決定,ヒトの臨床を反映する動物モデルの確立,知的財産の獲得,産学連携の実現,臨床試験の成功,レギュラトリーサイエンスの理解といった多くのハードルを乗り越える必要がある.つまり,創薬は基礎研究者や臨床医のみでは実現不可能で,さまざまな領域の多くの専門家を巻き込み,みんなで目標に向かって取り組みを進めるという「チームとしてのつながり」が必要となる.そしてそれぞれのチームによる成功例や失敗例から得たノウハウを共有し,さらにそれを糧にして,新たな創薬にチャレンジし,次の世代に引き継いでいく必要がある.
 このたび,脳卒中の病態と創薬に関する最新の情報を網羅し,さらに経験やノウハウを共有することを目的とした書籍を企画した.脳卒中の病態を学びたいと考えている臨床医は私の知る限りとても多いことから,分かりやすい記載を各著者にお願いした.脳卒中病態学の知識は,日々の臨床においても有益であり,その意味で,ぜひ臨床医の先生方にお読みいただきたいと思う.さらに本書は,基礎医学からトランスレーショナル・リサーチに至るまで広範囲の内容を網羅しており,若手研究者から専門家に至るまで活用できる内容になっている.また,脳卒中での創薬の取り組みは,その他の領域の創薬研究の絶好の参考となるため,創薬を志す他の領域の研究者にもお読みいただき,意見を交換したいと考えている.
 編者は若輩であり,本書の企画に際して力不足を感じたが,将来の脳卒中治療をわが国から発信するために,全力でより良い書籍を作ることに取り組んだ.ご協力をいただいた著者としては,本領域を牽引してきたエキスパートの先生方に加え,2013 年より脳循環代謝学会や脳卒中学会の学術総会において,「若手脳循環代謝研究者の会」と称して会合を行い,熱い議論を戦わせてきた同志のメンバーにご執筆いただいた.本書の趣旨に賛同し,熱のこもったお原稿をご執筆くださった著者の先生方,そしてより良い書籍にするために熱心に支援してくださった南山堂の古賀倫太郎氏,小池亜美氏に感謝申し上げたい.

2018 年 1月
下畑享良
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