南山堂

カートを見る

カテゴリー: 腎・泌尿器科学  |  内分泌・代謝学

立ち読み
注文数:

在庫あり

電子書籍はこちら

電子書籍はこちら

きどにゃんシリーズ

きどにゃんとゆく!酸塩基平衡を学ぶ旅

腎生理がわかれば、酸塩基平衡もわかる!

1版

滋賀医科大学総合内科学講座 教授/
国立病院機構 東近江総合医療センター 内科診療部長 
杉本俊郎 著

定価

3,080(本体 2,800円 +税10%)


  • A5判  237頁
  • 2021年6月 発行
  • ISBN 978-4-525-25031-7

酸塩基平衡がわからない?それならやっぱり腎生理を学ぼう!

酸塩基平衡を理解する秘訣は,腎臓の進化を学ぶことだった!? 腎臓に詳しい猫「きどにゃん」と一緒に腎臓の進化から腎生理を学ぶことで,酸塩基平衡がいつの間にかわかるようになるユニークな一冊.「きどにゃん」と一緒に,ヒトだけでなく魚やカエル,果ては恐竜にまで及ぶ壮大な腎臓の進化の旅に出かけましょう! もちろん,酸塩基平衡を理解するために必要な血液ガス検査の解釈方法や,具体的な症例の考え方についても詳しく解説.研修医や若手医師はもちろん,腎臓に興味があるすべての人におすすめできる一冊です.また,2018年発行の「きどにゃんとゆく!水・電解質を学ぶ旅 腎生理がわかれば、水・電解質異常がわかる!」と合わせて読むと,さらに理解が深まります.

  • 目次
  • 序文
目次
総 論

わかりやすい酸塩基平衡代謝・異常の考え方

第1話 酸塩基平衡の新しい考え方
1 酸塩基平衡異常の発症・維持機構の病態生理を知ろう
2 細胞内外の電解質の移動を考えろ

第2話 海中の魚の血液ガス,PaCO2 5 mmHgが意味することは?
1 哺乳類は呼吸性アシドーシス?
2 爬虫類,そして哺乳類へ

第3話 酸塩基平衡異常の臨床に最低限必要な化学の知識
1 体液の意味
2 電気的中性の法則
3 Hの重要性
4 H濃度の表示(pH)
5 酸と塩基
6 buffer,ルシャトリエの原理

第4話 酸塩基平衡異常の理解に役立つ呼吸生理
1 酸塩基平衡の臨床に最低限必要な呼吸生理
2 体内で最も多く産生される酸,それはCO2

第5話 飯を食うと酸塩基平衡が乱れる

第6話 酸塩基平衡における腎臓の働き
1 腎臓におけるHCO3-の再吸収
2  phosphate bufferを用いた腎臓でのH排泄機構とクエン酸の再吸収機構
3 腎臓でのHCO3-の産生,NH4の合成と尿中への排泄機構

第7話 代謝性アルカローシスの病態の理解には,腎臓の働きを理解することが必要
1 代謝性アルカローシスの成因
2 代謝性アルカローシスの維持因子

第8話 酸塩基平衡における肺・腎臓以外の臓器の役割
1 消化・吸収する消化管も酸塩基平衡の調節を行っている
2 代謝の中心の肝臓は当然,酸塩基平衡の調節にも重要である
3 骨格筋や骨組織も酸塩基平衡の調節に重要
4 脳・中枢神経組織も酸塩基平衡に非常に重要

検査とその解釈

酸塩基平衡異常における検査の基本とその解釈方法

第1話 血液ガスの機械のプリントアウトを読もう
1 血液ガスの機械のプリントアウト
2 血液ガスの機械の電解質検査は不正確?
3 血液ガス検査は,体温補正して表示すべきか?

第2話 酸塩基平衡異常の解釈方法について
1 酸塩基平衡異常の解釈における「生理学的解釈」の基本と問題点
2 酸塩基平衡異常の解釈における「BE法」の基本と問題点
3 酸塩基平衡異常の解釈における「Stewart法」の基本と問題点

第3話 アニオンギャップの計算をどうするか?

症 例

酸塩基平衡異常の病態からみた症例の解説

第1話 呼吸性アシドーシス:CO2ナルコーシスの一例

第2話 呼吸性アルカローシス:過換気症候群

第3話 代謝性アシドーシスの治療と症例
1 代謝性アシドーシスを起こす疾患・病態を把握しておこう
2 急性代謝性アシドーシスの治療
3 症例:循環不全による乳酸アシドーシスの対応について
4 症例:サリチル酸中毒,ミトコンドリア機能障害型

第4話 代謝性アシドーシス:尿細管性アシドーシスについて
1 症例:四肢麻痺をきたした一例
2 症例:アルコール摂取と酸塩基平衡異常
3 症例:尿細管性アシドーシスの一例

第5話 代謝性アルカローシス
1 症例:偽性アルドステロン症
2 症例:アルコール多飲,下痢,低カリウム血症の一例
3 症例:嘔吐による代謝性アルカローシス

第6 話 複雑な酸塩基平衡・電解質異常を呈した症例

Column
・酸塩基平衡に挑んだ人類の歴史
・炭酸 carbonic acid は,弱酸ではないのか?
・細胞の代謝からエネルギーを得ると酸塩基平衡が乱れる
・A-a DO2・PaO2 /FiO2より,Five Times Ruleを
・静脈血を用いた血液ガス測定に関して
・血中lactate濃度の測定に関して
・筆者が行っている血液ガスの結果・酸塩基平衡状態の解釈について~酸塩基平衡状態の解釈はザックリでいいんや~
・鎮痛薬・解熱薬によるもう一つの酸塩基平衡異常~アセトアミノフェンによる5-オキソプロリン蓄積性代謝性アシドーシス~
・慢性腎臓病と代謝性アシドーシス:補講
・SGLT2阻害薬とケトアシドーシス
・アシドーシス・acidemiaより,アルカローシス・alkalemiaに注意を
序文
 私が勤務する地域の中核病院では,朝8時から,内科医・救急医・研修医・医学生が集まる症例カンファレンスを,毎日行っています.この「朝カンファレンス」で,医学生・研修医の諸君に,私が尋ねる質問の一つに,「この血液ガス,どう読むんや」があります.血液ガスの結果の解釈は,検尿,CBC,心電図,胸部X線検査に並ぶ,すべての医師にとって必須の検査であることから,「医学生・研修医の諸君が血液ガスの結果を解釈できるように」という私の愛情から発する質問なのですが,医学生・研修医の諸君にとっては,「オッサン,朝から,また血液ガスを聞いてくる」という感じであり,血液ガスの結果の解釈に汲々となることで,血液ガスの結果の向こうにある呼吸状態の異常・酸塩基平衡異常の病態の解釈まで届かない状況になっています(私が,きどにゃんの中の人ということが広まりつつあるここ数年,この傾向が強くなっているように思います.腎生理が,医学生・研修医を脅迫しています).
 そこで,本書「きどにゃんとゆく! 酸塩基平衡を学ぶ旅 腎生理がわかれば,酸塩基平衡もわかる!」は,前著の「きどにゃんとゆく! 水・電解質を学ぶ旅 腎生理がわかれば,水・電解質異常がわかる!」ではあまり触れることができなかった血液ガスの結果の解釈の向こうにある酸塩基平衡異常の病態を腎生理(場合によっては呼吸生理)の知識を用いて解説することで,酸塩基平衡異常の症例への対応が容易になることを目的の一つとしました.私は,酸塩基平衡異常の病態の中で,最も重要なことは,生体内で一番多く産生される酸であるCO2と,CO2が水に溶解して生じる強酸である炭酸carbonic acid(H2CO3,1日に15 , 000 mmol産生される)の処理であると考えています.従来の酸塩基平衡の解説書では,CO2は,肺胞での換気が重要であるということで,呼吸性の要因として解説されることが多かったのですが,本書では,末梢組織における代謝からCO2が生じ,そして,赤血球・循環系を介して肺胞へ運搬され排泄されることから,CO2を単純に呼吸性の要因としては解説していません.これは,本書の特徴の一つであると考えています.つまり,酸塩基平衡の病態に関与しているのは,主に,肺(呼吸性),腎臓(代謝性)であるというHenderson-Hasselbalch式の解釈は,本式を単純に解釈しすぎているという考えに基づいて本書を記しました.
 血液ガスの結果・酸塩基平衡異常の病態の解釈の方法においては,その歴史的背景に基づく,流派の対立が存在するのが現状です.さらに,血液ガスの機械が汎用化されるようになった現在の臨床の現場においては,血液ガスの機械が何を測定しているのか知らない医学生・研修医が多いのも現状です.そこで,本書では,血液ガスの機械の開発や酸塩基平衡異常の解釈の歴史的背景を述べることから,血液ガスの機械が示す結果には,実測値と演算値があること(オキシメトリーがないと血液の酸素の運搬能が正確に評価できないこと),一次性酸塩基平衡異常に対する二次性変化の推測やanion gapの計算に限界があることを理解すること,症例に応じて,base excessやstrong ion differenceを用いること,Cl-は酸であると考えること,anion gapの計算は行うが,血中lactateやケトン体の実測も用いること,実測できない細胞内のpHを推測することなどが,令和時代の血液ガスの結果・酸塩基平衡異常の病態の解釈であることを理解することも目的としました.
 このような私のわがままな企画にもかかわらず,「きどにゃん」続編の執筆の機会を与えてくださり,本書の企画・編集に多大なるご尽力を賜りました南山堂の小池亜美氏,古賀倫太郎氏の両氏,そして,小生の質問に対して答えてくださることで,本書の内容に関するヒントを与えてくれた滋賀医科大学の学生・研修医,東近江総合医療センターの研修医の諸君に,心からの感謝の意を表します.

2021年3月
滋賀医科大学総合内科学講座 教授
国立病院機構東近江総合医療センター 内科診療部長
きどにゃん 中の人
杉本俊郎
カートに追加しました。
お買い物を続ける カートへ進む