書籍カテゴリー:小児科学|臨床薬学

こども×くすりの盲点
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こども×くすりの盲点
小児医療現場で起こっている薬の危険

1版

  • 聖路加国際病院周術期センター 研究員 小嶋 純 編著

定価:1,944円(本体1,800円+税8%)

  • A5判 123頁
  • 2013年5月 発行
  • ISBN978-4-525-28041-3

概要

本書は,小児医療現場で“やむを得ず”行っていることにスポットを当てた.

たとえば,小児に投薬するための剤形がない場合,“やむを得ず”粉砕指示を出しているが,粉砕したものの含量,安定性,賦形剤を加えた場合の均一性はどの程度なのであろうか? このようなさまざまな問題点を網羅的かつ定量的に評価し,解決策を提案した.

序文

2010年6月〜 2011年5月まで,月刊誌「薬局」の誌面を借りて12回のシリーズで「小児医療現場で起こっている危険」と題して,小児医療現場にまつわるいろいろな問題点と解決策について報告する機会をいただいた.今回,このシリーズをまとめて出版していただけるとの株式会社南山堂 古川晶彦編集長のお言葉に甘えて,リニューアルしてみることとした.「薬局」の読者層は主に薬剤師であったが,今回のリニューアルに際し,処方する側の医師にもご覧いただけるよう再構した.
 社会的な問題として,小児科医が不足していることがあげられるが,ここでは,ほかに方法がなく「やむを得ず行っている」ということにスポットを当て,「やむを得ず行うことでどの程度目標(理想)からかけ離れているのか?」「やむを得ず行わなければならないのであれば,どのようにすればより目標をクリアできるのか?」を解決できるきっかけになればと考えている.
 たとえば,剤形の話であれば,小児に投薬するための剤形がない場合「やむを得ず粉砕指示を出している」ということになるが,では粉砕したものの含量,安定性,賦形剤を加えた場合の均一性はどの程度なのであろうか? 漠然と「この程度だろう」と考えられているかもしれない.それでは,本当に患者に適した量を投薬しているのかは疑問である.また,処方の際に,添付文書に小児の用法・用量が記載されていなくても,あるいは,「小児等への投与」の欄には使用経験がないと記載されていても,医師の裁量で「やむを得ず処方する」ことがある.はたして成人の体重と小児の体重とを換算した投与量が妥当であるのかは,臨床試験や治験の結果でしかわからない.
 日本では,小児に使用される医薬品のうち約70%が添付文書に小児の用法・用量が記載されていない(適応外使用).一昨年,小児治験ネットワーク加盟施設で患者に処方せんが出される前に,予め錠剤の粉砕やカプセル剤の脱カプセルを行っている「予製品」に関するアンケート調査を行ったところ,88品目に及ぶことがわかった(https://pctn-portal.ctdms.ncchd.go.jp/portal/html/main/top/top.htm).
 本書では,医師,薬剤師,看護師さらには患者の「やむを得ず」を集め,問題点をより網羅的に,かつ定量的に(信頼性のあるデータを基に)評価し,その問題解決の方法について報告する.ご覧いただいた方々に,実際の医療現場で少しでも役に立てていただければ幸いである.

2013年春
小嶋 純

目次

目 次

第1章 あなたの処方は安全か
 小児に適した剤形が少ないことから起こる問題
  錠剤を服用できる年齢は?
  処方データからみた年齢と剤形の関係
  服用年齢・剤形が及ぼすアドヒアランスへの影響
 本当はこどもに使えない薬の話
  小児医療現場で必要な医薬品情報とは
  薬がもつさまざまな「顔」の認知度
  本当はこどもに使えない薬を使えるように改善するヒント
 ヒューマンエラーと安全管理
  「カリウム製剤誤投与事故」を振り返る
  継続した注意喚起の必要性
  危険の認知から安全管理ははじまる

第2章 “やむを得ず”使っているクスリのリスク
 Pitfall 1 錠剤の粉砕
  製薬企業間で異なる錠剤粉砕後の安定性データ
  錠剤粉砕におけるピットフォールの検証
  エビデンスに基づくワルファリンカリウム錠の粉砕と品質管理
 Pitfall 2 脱カプセルとカプセル粉砕
  厚生労働省が認めている「脱カプセル」
  脱カプセル・カプセル粉砕におけるピットフォールの検証
  エビデンスに基づいた脱カプセル・カプセル粉砕の検討
  カプセル粉砕後の安定性
 Pitfall 3 希釈散・予製
  小児医療現場における“予製”の必要性と潜む危険
  散剤の希釈,予製の調製・保管時に潜む危険の検証
  予製を調製するうえでの留意点と製薬会社の意向
 Pitfall 4 薬の味
  良薬は口に苦し!?
  味が大切な理由
  小児用剤形の現状とこれから
  味覚センサーによる「苦味」の客観的評価
  アドヒアランス維持・向上へ向けた「薬の味」の課題
 Pitfall 5 薬の使用期限
  医薬品の安定性試験の現状
  米国薬局方における調製した薬剤の使用期限
  FDA ガイダンス Tablet Scoring:Nomenclature, Labeling, and Data for Evaluation
  国内における調製した薬剤の使用期限
 Pitfall 6 投与方法
  小児への薬物投与で実践されている「経管投与」と「簡易懸濁法」
  経管投与によるダントロレンの効果
  経管投与できる薬剤・できない薬剤
  簡易懸濁法は小児領域の調剤に活用できるか?
  小児領域の調剤における簡易懸濁法の実用性と問題点

第3章 小児医療現場に必要な薬を考える
 こどもに適した薬の形
  今日の「経口投与する製剤」とその分類
  こどもが服用しやすい薬の条件
 海外での小児用剤形への取り組み
  世界保健機関と欧州における小児用剤形への取り組み
  欧州における小児用剤形の現状と課題
  小児用剤形の整備へ向けた今後の展開
 小児用医薬品の開発はハードルが高い!?
  小児用医薬品を開発するケース
  医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議
  小児治験はハードルが高い?
  小児治験が難しい本当の理由
  もう1つの本当の難しい理由
  小児用製剤開発のススメ
 剤形変更の標準化へ向けた課題
  求められる剤形変更の標準化
  予製品調製の標準化とその課題
  粉砕・脱カプセルの標準化とその課題