書籍カテゴリー:小児科学|保健/福祉/介護

乳幼児の発達医療と生育支援
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乳幼児の発達医療と生育支援

1版

  • 愛知県心身障害者コロニー中央病院 院長 沖 高司 編
  • 名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター 教授 本城 秀次 編
  • 岡崎女子短期大学人間福祉学科 教授 山中 勗 編
  • 愛知県心身障害者コロニー県立春日台養護学校教諭 土橋 圭子 編

定価:5,400円(本体5,000円+税8%)

  • B5判 254頁
  • 2007年7月 発行
  • ISBN978-4-525-28211-0

概要

現在行われている3か月,1歳,1歳半,3歳の乳幼児健診では疾患や障害を持つ児の早期発見は現実的にはなかなか困難である.本書では乳幼児期の疾患や障害の治療,療育に精通する専門家が,問題の見方や解決法を,乳幼児医療・療育に携わる読者に提供する.発達上の困難な問題を母子共に心安らかに乗り越えていくための指針として活用していただきたい.

序文

近年,医療,特に遺伝子解析を始め診断技術の進歩により小児疾患の多くは早期,即ち乳幼児期に的確な診断が可能となりました.乳幼児期は心身の成長と同時に種々の機能が確立されねばならない重要な時期で,乳幼児の診断に当たっては成長と機能の獲得即ち発達を十分に理解して適切に対応することが必要であります.そこで今回,それぞれの領域でご活躍の先生方のご協力を頂き,皆様の診療に少しでも役立てればと本書を編集致しました.
運動面では,新生児期の不随意的運動に始まり,首のすわりから坐位保持と体幹の支持性の獲得,ついで這い這いからつかまり立ちと三次元での移動に進み,通常1年3カ月までに独り歩きが可能となります.その後,走行,階段昇降などが可能となり,戸外での移動能力が確立されます.精神面では,母子関係の確立に始まり,家族の認知から他人との関係に移りますが,この段階で人見知りと同時に他人の観察による識別を学び,徐々に他人との関係が形成されます.その後,保育園などでの集団生活を通して自己表現を身に付けます.また他人への意思の伝達がジェスチャーから言葉へ徐々に移り,意思疎通の手段が確立されます.日常生活面でも食事摂取から始まり,衣服の着脱,排泄処理の自立へ進み,就学に向けての準備となります.
身体の異常即ち疾病についても,原因は遺伝的なものから胎生期および周産期の障害によるものまで範囲が広く,表面に出る徴候は手足の奇形のような形態的異常と手足の動きのみならず飲み込めないなどの内臓を含めた機能的異常があります.新生児期から幼児期にかけて種々の機能獲得の段階で遅いとかできないということで徴候がはっきりしてくる筋病など神経筋疾患とか自閉症など発達障害が認められます.またそれぞれの診療科において幼児期即ち成長期特有の疾病があります.
治療については早期に対応しなければ障害として残るものから,障害として受け止め,できるだけ軽減するように,また障害に付随しての二次的なものが起こらないように努めるものまであります.また成長により病像が変化することもあるので注意を要します.以上より乳幼児期においては的確な診断により適切な処置が望まれ,かつ心身の発達への配慮が欠かせないものであります.診断については乳幼児の最も大きな特徴として自覚的な要素が欠けるか不確かであるため,視診を始めとして如何に情報を集めるかが重要で,問診が非常に大切となります.
本書は各領域において乳幼児期に起こりうる疾病がほとんど網羅され,診断上,治療上,療育上注意すべきポイントがうまくまとめられています.日常診療の傍らに見て頂くとか,何か気になる所見があったときに調べて頂くのに最適の書として座右に置いていただければ,編者一同これに勝る喜びはありません.

2007年5月
編集者を代表して 沖 高司


目次

総説 発達医療と生育支援のめざすもの
  ■発達と発達障害
  ■発達医療とは
  ■発達医療と生育支援のめざすもの

I.発達医療における一般小児科医の役割−異常の早期発見−
 1.効果的な乳幼児健診とその限界
  ■実施方法
  ■評価内容
  1 身体発育評価
  2 精神・神経発達の評価
  3 視聴覚の評価
  4 養育環境
  5 一般診察
  6 その他のポイント
  7 総合判定
  ■key monthを中心とした各月齢・年齢における健診のポイント
  ■key monthを中心とした集団健診のピットフォールとその対策

 2.日常診療での早期発見
  ■心身障害を早期発見するポイント
  1 問診(病歴聴取)のポイント
  2 診察所見のポイント
  3 検査のポイント−早期発見のためにどのような検査をオーダーするか
  ■心身障害の早期発見の目的と小児科医の役割

II.発達医療から見た乳幼児期における問題点
 1.周産期医療
  ■胎児,新生児,乳児の身体発育
  ■低出生体重児
  ■頭蓋内出血,脳室周囲白質軟化症
  ■呼吸窮迫症候群
  ■先天性・新生児感染症
  ■新生児仮死

 2.小児内科の問題−障害を持つ子どもの早期診療と支援
  ■発達医療における診察
  ■身体計測値の正常発達の理解
  ■身体的特徴の診断と評価
  ■主な疾患
  1 染色体異常
  2 奇形症候群
  3 先天代謝異常
  4 成長障害
  5 嚥下障害
  6 小児虐待
  ■親への対応と遺伝カウンセリング
  ■子どもと接する時の心構え

 3.小児神経科−神経疾患の見分け方と診断アプローチの方法
  ■問 診
  ■最初によく観察するところ
  1 顔貌
  2 表情と視線
  3 筋緊張
  4 問診への協力
  ■神経疾患の診察法の基本
  ■基本的スクリーニングと特殊検査
  ■フロッピィーインファントの原因と分類
  ■脳性麻痺の定義と分類・治療
  ■てんかんの種類と治療
  ■神経筋疾患
  1 筋ジストロフィー
  2 脊髄性筋萎縮症(SMA)
  3 先天性ミオパチー
  4 皮膚筋炎
  5 重症筋無力症(MG)
  ■その他の最近注目されている乳幼児期の神経疾患・症候群
  1 レット症候群
  2 Mowat-Wilson症候群
  3 発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ
  4 Niemann-Pick病C型
  5 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症
  6 Marinesco-Sj#gren症候群

 4.小児の循環器の発達
  ■出生前後の循環動態の変化
  ■先天性心疾患
  1 先天性心疾患の頻度
  2 先天性心疾患の発生原因
  3 先天性心疾患の症状
  4 主な先天性心疾患
  ■後天性心疾患
  1 心筋症
  2 川崎病による心合併症
  ■小児期の心電図変化
  1 小児の心電図の特徴
  2 小児心電図波形の発達による変化
  ■不整脈
  1 小児の不整脈の特徴
  2 各種不整脈
  ■血圧

 5.児童精神科−社会性の発達と情緒や行動の問題への対応
  ■正常発達
  1 愛着形成の始まり
  2 情緒,気質や社会的反応の分化
  3 標準的な発達経過と関連する疾患など
  ■「症状」各論
   反応が乏しい / 迷子になる / 言葉が遅い / 落ち着きがない
   偏食が多い / 眠らない / 湿疹(を養育者が過剰に気にする)
   日中おむつが取れない・おむつに戻った / 友人ができない
   他害行為(かみつく,髪を引っ張るなどの暴力を振るう)
   登園しぶり / 絵の色が暗い
  ■疾患各論
   精神遅滞 / 自閉傾向 / 広汎性発達障害 / 自閉性障害
   折れ線型の自閉症 / レット障害 / アスペルガー障害
   依存抑うつ / 反応性愛着障害 / 神経性習癖 / 注意欠陥/
   多動性障害 / いわゆる「軽度発達障害」/ 不安障害
   気分障害 / 虐待 / 特殊な環境への反応:重篤な身体的疾患の体験

 6.乳幼児健診でみつかる小児外科疾患の実際
  ■消化管の正常発育
  ■停留精巣・遊走精巣
  ■鼠径ヘルニア・陰嚢水腫
  ■便秘症・遺糞症
  ■包 茎
  ■胃食道逆流症

 7.主訴から見た乳幼児整形外科−運動発達に視点をおいて
  ■乳児における運動発達
  ■診察方法
  ■主訴別に見た診断および治療方針
  1 疼痛
  2 脊柱および上下肢の形態異常
  3 姿勢異常
  4 運動障害
  ■運動発達に障害となる3大疾患
  1 二分脊椎
  2 筋ジストロフィー
  3 脳性麻痺

 8.先天奇形の診断と治療を主体とした小児脳神経外科
  ■二分脊椎症
  1 脊髄髄膜瘤
  2 潜在性二分脊椎
  3 嚢胞性二分脊椎
  ■脳の奇形
  1 脳 瘤
  2 小脳,延髄の奇形
  3 キアリ奇形
  ■頭蓋骨縫合早期癒合症
  1 クルーゾン症候群
  2 アペール症候群
  3 クローバー葉頭蓋
  ■水頭症

 9.視反応のチェック−眼でのコミュニケーションの確立から視覚の発達までをより
   正常に導くまで
  ■正常の視覚発達
  ■視覚の仕組み
  ■視覚の発達とは
  ■視反応の異常の早期発見

 10.乳幼児健診で小児科医に望む耳鼻咽喉科への対応 −耳疾患を中心に−
  ■聴覚の発達
  1 中枢聴覚伝導路の発生
  2 聴性行動の発達的変化
  3 乳幼児の聴力評価
  ■聴覚障害
  ■耳の奇形
  ■鼻の奇形
  ■口の奇形

 11.乳幼児期の口腔機能の発達と疾患
  ■口腔の形態成長と機能の発達
  ■乳幼児期の味覚の発達
  ■歯牙の萌出の順序
  ■乳幼児期にみられる口腔の疾患や問題
  1 先天性歯
  2 上皮真珠
  3 萌出嚢胞
  4 上唇小帯・舌小帯の異常
  5 歯牙の先天欠如,過剰歯
  6 エナメル質形成不全
  7 過剰歯
  8 口唇裂・口蓋裂
  9 よだれ
  10 指しゃぶり
  11 う蝕と口腔ケア
  ■発達障害児に見られる口腔の特徴と主な疾患

 12.周術期のケア
  ■意識の発達
  ■痛覚の発達
  ■手術時の麻酔
  ■術後の疼痛対策ならびに鎮静
  ■手術前の鎮静(バランス鎮静)
  ■検査の鎮静
  ■緩和医療

 III.家庭における発達医療
  ■医療機関との関わり方−かかりつけ医と専門医へのかかり方
  ■療育機関との関わり方
  ■発達に何らかの問題を持つ乳幼児によくみられる症状と治療
  1 感染症−風邪をすぐひく・胃腸の調子を崩しやすい
  2 呼吸の問題−顔色が悪い・呼吸が苦しそう
  3 摂食・嚥下の問題−むせやすい・かまない・一人でたべられない
  4 栄養の問題−体重が増えない・太りすぎ
  5 消化器系の問題―吐きやすい・便秘
  6 運動・姿勢の問題−体が硬い・体が柔らかい
  7 体温調整の問題−発熱しやすい・体温低下しやすい
  8 睡眠の問題−寝ない・寝てばかり
  9 てんかん−痙攣への対応
  ■重症心身障害児

 IV.保育現場における発達医療
  ■乳幼児の保育施設について
  ■保育所・幼稚園における医療従事者
  ■園医(嘱託医)の職務内容
  ■専門医療機関・療育機関との連携
  ■行政機関との連携
  ■家庭との連携
  ■保育現場における発達医療の実際
  1 ダウン症
  2 自閉症
  3 Prader-Willi症候群
  4 脳性麻痺
  ■保育現場における医療的ケアについて

 V.乳幼児の生育支援
 1.生育支援のポイント
  ■乳幼児期の生育支援の役割
  ■聴覚障害乳幼児の生育支援
  ■言語障害乳幼児の生育支援
  ■視覚障害乳幼児の生育支援
  ■肢体不自由乳幼児の生育支援
  ■病弱・身体虚弱乳幼児の生育支援
  ■自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)乳幼児の生育支援
  ■注意欠陥多動性障害,学習障害幼児の生育支援
  ■わが国の生育支援システム

 2.保育指導のあり方
  ■指導者にとっての子ども理解と指導・援助の方針
  ■保育目標の設定と指導・援助の注意
  ■保育の実際−知的障害児童通園施設での自閉症の偏食の指導・援助の場合
  ■保育の実際−重症心身障害児へのサーキット運動
  ■保育の実際−肢体不自由通園施設での脳性麻痺児への感覚遊び
  ■保育の実際−知的障害児通園施設での問題行動への対応の中で
  ■専門性の発揮−障害児保育内容の基本構造と療育をめぐって

 VI.母親・家族へのメンタルヘルス
  ■妊娠期の母親・家族のメンタルへルス
  1 妊娠期における母親の課題とメンタルへルス
  2 妊娠期のメンタルへルス
  3 妊娠期のメンタルへルスに関連する要因
  4 妊娠期のメンタルへルスが子どもの発達に与える影響
  5 妊娠中の胎児の喪失とメンタルへルス
  6 胎児虐待
  7 妊娠中のメンタルへルスへの対応
  ■産褥期のメンタルへルスとその要因
  1 マタニティーブルー
  2 産褥うつ病
  3 産褥精神病
  4 産褥期の抑うつが子どもに与える影響

 VII.発達医療のための支援システム
  ■わが国の母子・小児保健施策の歩み
  1 戦前の母子・小児保健
  2 戦後の母子・小児保健
  3 母子保健法の制定
  4 母子保健法の改正
  5 近年の母子・小児保健に関する基本施策
  ■わが国の乳幼児保健システム
  ■わが国の母子・小児保健施策の今後の展望
  ■障害児に関する統計調査
  ■障害児に対する保健・医療施策障害児に対する福祉施策
  ■発達障害児・者への支援施策の充実
  ■海外の発達障害者支援システム