書籍カテゴリー:小児科学|総合診療医学/プライマリ・ケア医学

医療的ケア児・者 在宅医療マニュアル
立ち読み

在庫状況:在庫あり(僅少・電子書籍版もございます)

電子書籍版はこちら

(医書.jpに移動します)

医療的ケア児・者 在宅医療マニュアル
実技動画つき

1版

  • 医療法人財団 はるたか会 前田浩利 著
  • 医療法人財団 はるたか会 戸谷 剛 著
  • 医療法人財団 はるたか会 石渡久子 著

定価:3,520円(本体3,200円+税10%)

  • B6判 217頁
  • 2020年10月 発行
  • ISBN978-4-525-28241-7

概要

手袋?素手?おうちでは,そういうことも病院とは違ってきます

高度な医療を受けながら自宅で生活する人が増えているが,そのような人を支える医療技術は気管カニューレ交換の頻度一つとっても確立された方法はない.本書は,医療的ケア児・者の在宅生活を支えてきた診療所の長年の実践をまとめたマニュアルである.具体的な手技の主だったものについては,動画でもあわせて解説している.

【実技動画ファイルはこちら】

序文

 医療的ケア児・者の在宅医療はNICUの満床問題から始まった,近年新たに登場してきた在宅医療である.NICUが満床のため入院できず36歳の妊婦が死亡した都立墨東病院事件で,「小児の急性期医療が持続できなくなるのではないか」という危機感を多くの人がもったが,医療的ケア児・者の在宅医療の普及で,「子どもは長期に入院させるより家に帰した方がよい」という認識が高度医療機関に勤める医療者にも地域にも定着し,少なくとも東京都については,NICU満床問題は解消したという公的見解が出された.以前は,医療的ケア児が退院するといってもどこに?ということすら不明だったが,「退院後は家に帰る」という基本的方針は定まり,そのためにどのように社会資源を整えていくのかに問題のフォーカスが移ってきた.
 医療的ケア児・者の退院後の生活を支えることは,小児医療だけで解決できる問題ではなく,日本が今後作っていくべき地域医療や医療システムと不可分である. 高度な医療を受けつつ日常を送る子どもたちは,医療の進歩に伴い比較的最近登場したが,彼らもやがて大人になっていく.だからこそわが国が現在進めている地域包括ケアに包含されなければならないし,プライマリ・ケアの一領域という視点も必要と考える.
 わが国は,医療的ケア児・者に代表される弱者と共に生きる社会を目指し,救命されたが生きるために医療が継続的に必要になった子どもたちを受け入れる社会を創るという道を選んでいると私は感じている.日本が今後,医療的ケア児・者のような様々な思念が必要な方も包含し,共に幸せに暮らせる社会を創ることができると示せれば,それは世界のモデルになりうると考える.在宅医療は,そのような社会を実現するための一つの実践体系である.
 医療的ケア児・者を自宅や地域で支える医療は,救命や集中治療という先進医療とは別の方向での先進医療といえる.多くの子どもたちに教えてもらいながら,筆者らはその方法を創意工夫してきた.現時点では経験に基づくものが主ではあるが,一つ一つが子どもたちに導かれながら見出してきた方法である.未成熟な部分も多いが,公開することで多くの方からの意見をいただき,よりよいものにしていくことができればと本マニュアルを執筆した.
 本書作成にあたって,動画や写真の撮影に快く協力してくださったはるたか会の患者とそのご家族に心より感謝申し上げたい.特に装丁のイラストを描いてくれたよもまりこ氏には,筆者らの思いを絵にしていただき大変感謝している.また,本マニュアルを構想して5年.筆の遅い私に忍耐強く付き合い,本書を大切に育んでくださった南山堂の伊藤美由紀氏,佃和雅子氏,稲葉大介氏,日々の臨床体験を言葉にするために,忙しい臨床の合間をぬって力を尽くしてくれた戸谷 剛先生,石渡久子先生をはじめ,はるたか会のすべてのスタッフ,特に裏方で現場を支えてくださった事務系スタッフに心より感謝申し上げたい.そして最後に,仕事優先,臨床優先で昼も夜もないような生活の私を黙って支え続けてくれた妻裕美子,小児在宅医療の道半ばでしばしば心折れそうになる私に,その後ろ姿で希望と勇気を与えてくださった人生の師,高橋佳子先生に心から感謝し,私たちの拙い歩みが多くの方の「まごころ」で支えられてきたたことを心に刻み,序とさせていただく.

2020年 秋
前田 浩利

目次

1 医療的ケア児・者と在宅医療
 A.重症心身障害児(者)
 B.超重症心身障害児(者)
 C.歩き話すことのできる気管切開,人工呼吸器装着児の登場
 D.医療的ケア児
 E.地域に医療をもちこみ,支えるということ
 F.医療的ケア判定スコア

2 地域連携と在宅移行 ―新患導入のプロセスと地域支援―
 A.対象と在宅医療導入のパターン
 B.関わる職種やサービス
 C.退院調整会議で決めること
 D.予後の限られた状況での退院支援

3 訪問時のマナー
 A.身だしなみ
 B.訪問の際の注意事項
 C.診察の際の注意事項

4 初回訪問時の病歴の取り方と診察
 A.初回訪問の流れ
 B.病歴の取り方
 C.今後の見通しと計画
 D.初診時のカルテ記載
 コラム1 子どもの抱き方

5 患者電話対応
 A.電話対応の基本姿勢
 B.患者からの電話に対する臨時往診の適用
 C.電話対応の診療報酬の位置づけとカルテ記載
 D.実際の電話対応
 E.フォローアップ

6 看取り
 A.子どもおよび若年者の看取りにおける「家」の意味
 B.在宅看取りに至るプロセス
 C.家での看取りにおいて重要なこと
 コラム2 成人の在宅緩和ケア
 コラム3 共に生きる時間の大切さ

7 感染症への対応
 A.新型コロナウイルス感染予防のための原則
 B.スタッフの体調管理
 C.COVID19疑い患者の診療

8 気管切開の管理
 A.気管切開術の種類とその特徴
 B.気管切開の合併症
 C.気管カニューレの種類と選択
 D.気管カニューレ管理の実際
 E.スピーキングバルブの使用
 F.カニューレの抜管,気管切開孔の閉塞

9.人工呼吸管理 総論
 A.医療的ケア児・者の在宅人工呼吸療法の対象となる病態
 B.NPPVかTPPVか?
 C.NPPVとTPPVの呼吸器の設定を包括的に理解する

10 NPPVの管理
 A.在宅NPPVの導入
 B.在宅NPPVの管理
 C.NPPVからの離脱

11 TPPVの管理
 A.在宅TPPVの導入
 B.在宅TPPVの管理
 C.トラブルへの対応 ―DOPE―
 D.TPPVからの離脱

12 排痰ケア
 A.機械による咳介助
 B.肺内パーカッションベンチレータ

13 疼痛管理の基本
 A.疼痛対応の基本戦略
 B.子どもの疼痛に関する誤謬
 C.疼痛の評価
 D.疼痛コントロールの基本戦略
 E.具体的な鎮痛薬の投与法
 F.オピオイドの副作用

14 激烈な疼痛および呼吸苦など種々の症状の緩和
 A.激烈な疼痛
 B.神経障害性疼痛あるいは神経因性疼痛
 C.呼吸苦
 D.心不全による苦痛
 E.腹部膨満
 F.せん妄
 G.吃逆(しゃっくり)
 H.掻痒感(痒み)
 I.パニック・死の恐怖
 J.喘鳴

15.麻薬管理
 A.麻薬管理者
 B.管理・保管
 C.廃棄
 D.麻薬の譲り受け
 E.事故・破損・紛失
 F.麻薬の持ち運び,施用,交付
 G.カルテの記載
 コラム4 麻薬の院内管理を導入する契機となった患者さん

16 胃瘻の管理
 A.胃瘻造設について保護者に相談されたら
 B.胃瘻カテーテルの種類
 C.胃瘻交換
 D.胃瘻関連トラブルとその対処方法
 E.胃瘻からの離脱

17 中心静脈(CV)カテーテルの管理
 A.CVカテーテルの目的と種類
 B.CVカテーテル管理が必要な児・者の退院
 C.CVカテーテルの日常管理
 D.CVカテーテル感染
 E.エタノールロック
 F.CVカテーテルの入れ替え時期

18 腹膜透析の管理
 A.腹膜透析の機器
 B.腹膜透析に関連する用語
 C.在宅管理の実際

19 その他の手技やデバイスの管理
 A.採血
 B.末梢静脈ラインの確保
 C.点滴
 D.経鼻胃管
 E.EDチューブ
 F.尿道カテーテル
 G.ストーマ

20 水分および栄養の管理
 A.経腸栄養
 B.経静脈栄養

21 筋緊張の管理
 A.筋緊張緩和へのアプローチの基本
 B.小児在宅医療でみる筋緊張の強い患者
 C.筋緊張と呼吸
 D.内服による治療
 E.内服以外の治療方法

22 トリソミー
 A.18トリソミー
 B.13トリソミー
 C.21トリソミー
 コラム5 トリソミーの子どもたち

23 予防接種
 A.在宅での予防接種
 B.予防接種の際に考慮すべき状態と治療
 C.ワクチンの種類と接種間隔
 D.予防接種の手順
 E.事故への対応

24 日常薬・感冒薬の使い方
 A.日常薬・感冒薬をあらかじめ処方しておく
 B.あらかじめ処方しておく薬の実際
 C.主介護者への指示後のフォロー

25 カルテの書き方
 A.カルテの意義
 B.初診時のカルテ記載
 C.日常カルテ記載
 D.保健診療の管理料請求で記載義務のある項目

26 訪問看護指示書の書き方
 A.訪問看護の制度と仕組み
 B.医療保険の訪問看護の制限と仕組み
 C.訪問看護指示書の書き方
 D.訪問リハビリテーションとその指示書の書き方
 コラム6 訪問看護の歴史

27 災害時の対応
 A.基本方針
 B.緊急時の対応
 C.その後の対応
 D.日ごろの備え

28 針刺し事故対応
 A.日中に針刺し事故が発生した場合
 B.夜間,休日の場合
 C.患者の血液検査の結果ごとの対応
 D.事故報告書の作成

29 薬局との連携
 A.薬局との連携について
 B.薬局に依頼できること

索引