書籍カテゴリー:小児科学|精神医学/心身医学

小児心身症クリニック

在庫状況:絶版

小児心身症クリニック
症例から学ぶ子どものこころ

1版

  • 慶應義塾大学小児科講師 渡辺 久子 編

定価:3,456円(本体3,200円+税8%)

  • B5判 240頁
  • 2003年4月 発行
  • ISBN978-4-525-28371-1
  • ISBN4-525-28371-8

概要

子どもたちのストレスが増加し,不幸な事件が多発する中,小児のメンタルケアは一層重要になってきている.本書では子どもとその周囲に生じるこころの問題と対処法を症例を挙げて具体的に提示しメンタルケアの実際を詳説している.小児に関わる専門家(小児科医,看護婦,教師,保母など)に広く読んでいただきたい一冊.

序文

社会がめまぐるしく変化し,虐待,いじめ,拒食,非行など,胸痛む子どもたちの問題が多発しています.子どものメンタルケアに小児科医の果たす役割が,今ほど叫ばれる時代はないでしょう.悩む親子がまず相談しやすいのは小児科医です.小児科で心の悩みのプライマリケアと初期治療が受けられ,必要な時には精神保健の専門医やカウンセラーに紹介してもらえる体制があればどんなにいいでしょう.それには子どものメンタルケアの実践力をもつ小児科医の養成が必要です.
そこで慶應義塾大学小児科学教室は松尾宣武教授の下で,1993年夏より小児科医の初期研修に,常勤の小児精神保健専門医による,小児精神保健治療プログラムを取り入れました.これは世界でもユニ−クな,小児科教室全体でとりくんだプロジェクトで,たとえば,飢餓状態の拒食症児の救命から始まり,身体治療,摂食行動の改善,心の育てなおし,家族支援,学校復帰などの包括的治療を,営々と積み重ねていく内容で,今年で10年目を迎えました.この間治療をうけた子どもは他にも被虐待児,不登校児など多岐にわたりますが,ほとんどの子どもと家族が,若い小児科医の真心のこもった粘り強いケアに着実に心を開いていきました.入院患者の数は100例を超え,治療に取り組んだ小児科医の数はスタッフもいれれば180名をのぼります.最近では,心身症を早期発見し,初期治療を施し,重症例をみぬいて精神科医につなげることが定着し,精神科医も危機管理に加わって下さいます.子どもを全人的に支援する輪が拡がっていることはうれしいことです.
このたび南山堂さんから,小児科での実践に基づく,わかりやすい心身症の本を出版してはとのお勧めがありました.そこで本研修プログラムの体験から,特に印象に残ったケースを選び出し,心身症症例集としてまとめました.ほとんどの症例は,何人かの小児科医でリレーのように分担したり,チームワークで診療しましたが,今回は最初の5年間の症例を中心に,その中のお一人に代表して執筆していただきました.症例はすべてプライバシー保護のため修飾を加えました.挿絵は小児科腎臓班の粟津緑先生が描いてくださいました.南山堂の中島真由美さん,佃和雅子さんを始めとするスタッフが忍耐強く編集の労をとってくださいました.ご協力くださったすべての方がたに深く感謝申し上げます.
最後に,この本を本研修プログラムを支えてくださった松尾宣武先生と,治療を通して多くのことを教えてくださった子どもたちと家族に捧げます.

平成15年1月 渡辺久子

目次

1.小児科医によるメンタルケア

2.専門外来でのメンタルケア
A.外来小児科
B.腎臓疾患
C.血液腫瘍疾患
D.心臓疾患
E.内分泌代謝疾患
F.周産期医療
 コラム カンガルーケア
G.産科ハイリスク
H.呼吸器疾患
I.神経疾患
J.先天異常
 コラム ambiguous genitaliaへのメンタルケア
K.感染・免疫疾患
L.精神保健

3.周産期・乳児期
Prenatal Visitの意義
障害をもつ子の手術をしない道を選んだ両親へのケア
子どもを亡くした家族への援助
産後抑うつ病と世代間伝達
周産期に神経性食欲不振症を再発した母親と乳児への援助
神経性食欲不振症の既往をもつお母さんの育児困難
乳児“突然死”症候群

4.幼児期
夜驚 ―回避型愛着の世代間伝達
 コラム 愛着理論
乳幼児の無表情 ―子どもからの静かなSOS
 コラム 分離―個体化理論と再接近期
落ち葉が怖くて外を歩けない
おちんちんが小さい ―ミクロペニスの男児
簡単に“自閉症”といわないで

5.学童期
夜尿・不登校 ―愛され直して生まれ変わる
 コラム 治療構造の大切さ
遺糞,慢性便秘,巨大結腸 ―腹ふくるる思い
不登校と肥満 ―100枚の絵を黙々と描き続けた男児
不登校 ―父の影
不登校 ―まずゆっくりしよう
問題児と決めつけないで
ひきこもり,家庭内暴力 ―お母さんに見捨てられたうらみ
学校の黒板が見えない
子どもからのSOSとしての家庭内暴力

6.思春期
がんじがらめの3世代家族と腹痛
大人になりたくない ―恥毛を鋏で切りそろえる子
48キログラム症候群
 コラム 発育期のやせのこわさ
砂ねずみに生きる不登校女児
先天性心疾患の成人女性にみられた過食症
クラスぐるみのいじめ ―小児科医の対応

7.特殊なケア
A.子どものターミナルケア
子どもの死が小児科医に問いかけてくるもの
思春期の子どもどうしの助け合い
最後の爪切り ―白血病患者のターミナルケアと研修医
死と向きあう ―医師自身の心のエネルギー
B.被虐待児の発見・診断・治療
被虐待児の解離症状にとりくむ
低身長で来院した愛情遮断症候群
両足やけどの男の子と父親の家庭内暴力
学校での虐待
C.トラウマと対象喪失
トラウマの後おくれて出現した頭痛
母と弟を失った子が心の中にお墓を建てるまで
母の死の悲しみを押し殺していた子の身体症状
ママと一緒にいたい
D.小児科外来リエゾン
脳腫瘍をみおとされた不登校児
生まれてから一度も家に帰ったことがない子
お母さんの笑顔を求めて生きてきた糖尿病児
 コラム 育て直し療法
脳性麻痺児の思春期危機
E.神経性食欲不振症
小児循環器医のアプローチ ―心臓から心へ
回復期の運動療法
病院スタッフによる親ごころの長期リレー
治療の3本柱をたてるまで
大学と地元病院との長期連携治療
両親の離婚と神経性食欲不振症
認めてもらいたくて頑張りすぎる
「食事介助」が重い神経性食欲不振症患者を救う
回復期における家庭復帰の練習
父の闘病を背景にもつ神経性食欲不振症女児
帰国子女のストレス
低身長から拒食へ ―5歳から出ていたSOS
地方病院でがんばる
身体を治して心につなげる ―児童精神科との連携

資料

索引