書籍カテゴリー:産婦人科学|麻酔蘇生学

硬膜外無痛分娩
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硬膜外無痛分娩
安全に行うために

第3版

  • 埼玉医科大学総合医療センター麻酔科名誉教授 埼玉医科大学かわごえクリニック名誉院長 川添太郎 監
  • 順天堂大学医学部産婦人科学教室前主任教授 日本産婦人科医会会長 木下勝之 監
  • 埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科診療部長・教授 照井克生 著

定価:4,320円(本体4,000円+税8%)

  • B5判 123頁
  • 2015年12月 発行
  • ISBN978-4-525-30863-6

概要

妊婦の望みに応える!よりよい無痛分娩を行うために

分娩に伴う疼痛をコントロールし,痛みだけを取り除き,正常の経腟分娩と変わらない安全なお産へと導く.そのために必要な妊婦へのインフォームドコンセント,無痛分娩の流れとそのポイント,トラブルの際の対処法などを麻酔科医と産科医とでまとめた日本初の「硬膜外無痛分娩」の実践書が,よりくわしく新しい知見を盛り込んで改訂!

序文

2006年に本書の第2版を出版してはや9年が経過しました.改訂が必要だと感じた理由と,改訂が遅れた理由を少し記します.
「川越周産期麻酔フェロー」として研修に来てくれている若い麻酔科医と硬膜外無痛分娩を担当したときに,本書は当然,予備知識として理解した上で診療していると思ったのですが,「その本はどこにありますか?」との答えでした.医局の本棚に本書が見当たらず,アマゾンでも在庫切れで入手できないと言うのです.そして私たちの診療の内容も,投与する局所麻酔薬がより低濃度となったり,海外の活発な研究を参考に新しい投与方法を試みたりと変化してきました.国内の産科や出産の診療ガイドラインも整備され,アメリカの産科麻酔ガイドラインも改訂目前です.今回の改訂では,それらの最新の方法の現時点での私の感触を紹介しつつ,シンプルで実施しやすい持続硬膜外注入法の解説を中心にしています.
改訂が遅れた理由は,産科からの問題提起があったためです.産科診療ガイドラインによりオキシトシン投与量が規定され,硬膜外無痛分娩での分娩第2期にあと少しオキシトシンを増やしたくても増やせないため鉗子で引かざるを得ず,重度の裂傷を生じてしまうことがありました.産婦にとっては,無痛分娩による器械分娩率増加は十分説明を受けた上で,それでも無痛を希望しているとはいえ,鉗子を引き,裂傷を生じてしまい,時間をかけて縫合する産科医の苦労は大変なものでしょう.また,指導的立場の新生児科医からも,「薬物を用いる硬膜外無痛分娩には反対だ」と言われたこともあります.日頃から尊敬している方々から,「硬膜外無痛分娩が普及すれば分娩フロアに麻酔科医が常駐しやすくなり,緊急帝王切開や妊婦の急変に麻酔科医が即応する体制が作れる」との私の考えに対して,「無痛分娩を他の目的のためのだしにしないでほしい」や「出産という,女性をエンパワーするための貴重な機会を麻酔分娩によって奪わないでほしい」と言われたことがありました.とても大切なご指摘と深く胸に刻みました.その上で,それらの問題提起を私なりに咀嚼し,今の私の考えを本書に記すために時間が必要でした.
本書を出版したおかげで,読者の先生から硬膜外無痛分娩の具体的な質問をメールや手紙でいただくようになりました.効果的な産痛緩和を提供しようと現場で苦労されているご様子がよくわかりました.講演の際に産科や麻酔科の先生から,本書を日々活用しているというお言葉も何度も頂戴しました.韓国語版を手にされた麻酔科医から,本書の具体的な記述を取り上げ,共感したと言われたこともありました.硬膜外腔同定の箇所です.そのような交流で得た,実際的な悩みや工夫も,本書に盛り込むよう努めました.
今回の改訂では,写真やイラストが増えて新しくなっていることに気づかれると思います.そのほとんどが,当科の松田祐典助教が撮影したり作成してくれたものです.この場を借りて感謝いたします.初版から続けて編集して下さった南山堂の高見沢恵さんには,今回もご心配と大変なご苦労をおかけしました.改訂スケジュールを遅らせたいと私がお願いしたときに,ご自身の出産を経験された高見沢さんが涙を目に浮かべながら,私の悩みを聞いて下さったことが忘れられません.高見沢さんと本書を世に送り出し,育んでこられたことに,心より感謝申し上げます.
最後に,第3版を見ずして亡くなった私の父は生前,「家を建てること,木を植えること,本を書くこと」を私たちに願っていました.最初の二つは実現していませんが,最後の願いは果たすことができました.本書が,母児共に幸せなお産に少しでも貢献できますように.

2015年11月3日,日本国憲法が公布された日に
照井 克生

目次

Ⅰ 硬膜外無痛分娩とは何か
無痛分娩の歴史

Ⅱ 硬膜外無痛分娩の実践
1.適切な産婦選択
a. 適している産婦
b. 適していない産婦
2.無痛分娩前の診察と検査
a. 産科的問題点を把握する
b. 麻酔科的問題点がないか評価する
c. 気道を中心に診察する
d. 必要な検査
3.インフォームドコンセント
4.準備するもの
a. 部屋の環境と設備
b. 輸 液
c. 薬 物
d. その他準備するもの
5.経口摂取制限
6.無痛分娩を開始する時期
a. どの時点で開始するか
b. 麻酔開始を遅らせない
7.硬膜外麻酔トレー
8.手 技
a. 輸液と開始前確認事項
b. 体 位
c. 消 毒
d. 硬膜外麻酔トレーの準備
e. 穿 刺
f. カテーテル挿入
9.開始直後の観察
a. 血圧測定間隔
b. 低血圧の対処
c. 胎児心拍数と子宮収縮の変化
d. 麻酔範囲の評価
10.持続硬膜外注入
a. 持続注入の内容
b. 持続注入速度の決め方
c. 持続注入中の体位
d. 血圧測定間隔
e. 導 尿
f. 持続注入中の観察事項
g. 持続注入中の血管内誤注入
h. 持続注入中のくも膜下誤注入
11.分娩第2期
a. 痛みの特徴
b. 無感覚のために努責できない場合
12.娩出時の対応
13.分娩後の処置
a. カテーテル抜去のタイミング
b. 麻酔後訪問
14.トラブルシューティング
a. 痛 み
b. 胎児心拍数異常
c. くも膜下誤注入
d. 血管内誤注入
e. 硬膜穿破の対処と硬膜穿刺後頭痛の治療
f. お腹の張りがわからない
g. 努責したい感じがない
h. 下肢が動かない
i. 分娩停止
j. 下肢がしびれる
k. 分娩後の神経障害
l. 腰痛・背部痛

Ⅲ 硬膜外無痛分娩が分娩経過に与える影響
1.帝王切開率
2.鉗子分娩率

Ⅳ 硬膜外無痛分娩が児に及ぼす影響
1.直接的影響
2.間接的影響

Ⅴ 硬膜外無痛分娩産婦での産科ケア,助産ケア

Ⅵ 基 礎 編
1.分娩出産の痛みと伝達経路
2.硬膜外腔の解剖
3.局所麻酔薬の特徴と使用量
a. 物理化学的性質と臨床的特徴
b. 無痛分娩に適した局所麻酔薬
4.他の鎮痛方法との比較
5.昇圧薬と子宮胎盤血流

Ⅶ 応 用 編
1.CSE
a. 利 点
b. 欠 点
c. 方 法
d. CSEと胎児徐脈
e. CSEと帝王切開率
f. CSEと麻酔合併症
g. CSEと硬膜外無痛分娩の使いわけ
2.PCAとPCEA
a. 患者管理による鎮痛法
b. PCEAの設定
c. PCEAの利点
d. PCEAの問題点
3.特殊な状況での硬膜外無痛分娩
a. 妊娠高血圧症候群
b. 双 胎
c. 子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)
d. 骨盤位
e. 帝王切開術後の経腟分娩
f. 心疾患
g. 腰椎椎間板ヘルニア・側弯症
h. 病的肥満

付  録

参考文献

索  引

Column
1.アメリカの無痛分娩におけるインフォームドコンセントの実際
2.Mendelson症候群
3.分娩誘発での硬膜外無痛分娩の開始時期
4.Jacoby線かTuffier線か?
5.日本人妊婦における皮膚から硬膜外腔までの距離
6.どの手技がベストか?
7.局所麻酔薬中毒の実例
8.硬膜外無痛分娩が胎児心拍数に及ぼす影響
9.アナペイン?®かマーカイン?®か?
10.硬膜外腔に投与されたフェンタニル?®はどこに作用して鎮痛効果をもたらしているのか
11.持続硬膜外注入中の放散痛
12.当センターにおける硬膜外無痛分娩不成功例とその対処
13.硬膜外無痛分娩は産後神経障害を増やすか?
14.硬膜外血腫
15.硬膜外無痛分娩と母体の発熱
16.programmed intermittent epidural bolus(PIEB)への期待