書籍カテゴリー:麻酔蘇生学

難治性疼痛の薬物療法
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難治性疼痛の薬物療法

1版

  • 昭和大学病院緩和ケアセンター長 樋口 比登実 編

定価:4,860円(本体4,500円+税8%)

  • B5判 257頁
  • 2010年6月 発行
  • ISBN978-4-525-30871-1

概要

難治性疼痛に対する緩和医療は,スタンダードな治療法が確立されたとはいえず,多彩な症状を訴える患者に様々な試み(治療法)が行われている.本書はその中で薬物治療に焦点をあて疼痛緩和医薬品の適正使用を中心に薬物療法を分かりやすく解説した.

序文

 がん対策基本法の施行に伴いがん性疼痛が注目を集めているが,実際の臨床現場でがん性疼痛より我々を困らせている痛みがある.ゴールの見えない「慢性難治性疼痛」である.
 編者はペインクリニックに 30 年余り従事し,神経ブロック主体の診療に携わり,薬物療法の副作用のリスクを避けるため,できる限りブロックのみで対応するとの教育を受け,若い頃は内服より穿刺の方が安全と信じて過ごしてきた.ブロック至上主義とは言わないが,ブロック優先であったことは間違いない.
 しかし,近年医療の進歩などに伴い,人口の高齢化が進み,基礎疾患を持つ疼痛患者が増加し,さらに抗凝固薬使用中の患者も増え,穿刺を躊躇する症例が間違いなく増加している.ペインクリニシャンの武器は神経ブロックであるが,大きな穿刺のリスクを背負ってまで施行する価値があるか否か迷った時には,安全策をとらざるをえない.そのためには薬物療法などブロック以外の治療法も習得する必要がある.ブロックのトレーニングには時間がかかるが,薬物療法はコツさえ覚えてしまうと比較的容易に調整可能となる.
 薬物療法などには縁の薄かった,明けても暮れてもブロック三昧の編者が,2001 年 10 月緩和ケアチームに異動することになり,痛みの側面から診ていたがん患者を,正面から担当するようになった.当初は新患依頼を受けると,新人医師のように不安を隠せぬような面持ちで病棟へ出かけて行ったものである.幸いにも異動から半年間,埼玉がんセンター緩和ケア病棟を立ち上げた藤井勇一先生に緩和ケアおよび薬物療法をゼロからお教えいただき,半年後には何とか怖がらずに病棟に出かけられるようになった.結局痛みのアセスメントがきちんとできれば使用薬剤も決まり,さらに神経ブロックの適応を考慮しつつ治療を進めていくと症状管理が非常にスムースに施行できることを確信した.
 本書の特徴は全体の構成にある.冒頭に「痛みに使用できる薬剤一覧」を収載し,さらに前半部分に臨床現場のスペシャリスト達に臨床現場で難渋する疾患に対しての,薬物の効果的な使用法を実践的な症例を交えて記述していただいた.これは,読者にいわゆる「各論」である臨床現場を先に把握していただきたいという狙いである.もちろん,後半部分では痛みの考え方,鎮痛薬の作用機序,薬剤の相乗効果,使用禁忌などの薬物療法のいわゆる「総論」もわかりやすく解説している.
 薬物療法の不得意なペインクリニシャン,研修医の先生方,疼痛治療に携わっておられる多くの方々が,日々の臨床で患者さんを前に薬物療法で迷った時に,傍らに置いて便利に使用できるよう今回の企画となった.
 同じ薬剤でも処方する医師により効果の大小が出現することは,臨床でよく経験することである.痛みの原因や治療に用いる薬剤などに関し十分な説明を心がけると,より大きな効果が得られると感じている.本書により作用副作用をよく理解し,薬剤の適正使用を心がけ,少しでも日々の臨床で役立てていただきたいと願っている.
 企画を進めるにあたり,ご多忙の先生方が執筆を快諾してくださったことに対し,深く御礼申し上げたい.また,今日まで私を育んで下さった昭和大学病院ペインクリニックの先生方にも執筆はじめ多大なご協力をいただいたことを心より感謝している.最後に,企画後,紆余曲折非常に難産したが,何とか日の目をみることができたのは,南山堂 岩崎 剛氏の御尽力の賜である.厚く御礼申し上げる.

2010年5月
昭和大学病院緩和ケアセンター長
樋口 比登実

目次

目 次
(巻頭表)痛みに使用できる薬剤一覧

症例別薬剤処方例
 1 帯状疱疹→帯状疱疹後神経痛
 2 CRPS type Ⅰ,Ⅱ
 3 三叉神経痛
 4 緊張型頭痛
 5 片頭痛
 6 舌咽神経痛
 7 Tolosa-Hunt 症候群
 8 低髄液圧性頭痛
 9 頚肩腕症候群・胸郭出口症候群・肩こり
 10 肩関節周囲炎(五十肩)
 11 脊柱管狭窄症
 12 圧迫骨折
 13 膝関節痛
 14 腕神経叢引き抜き損傷
 15 脊髄損傷後疼痛
 16 failed back surgery syndrome
 17 開胸術後疼痛症候群
 18 幻肢痛
 19 視床痛
 20 有痛性糖尿病性神経障害
 21 閉塞性動脈硬化症・閉塞性血栓血管炎
 22 線維筋痛症
 23 掌蹠膿疱症に伴う疼痛
 24 骨転移痛
 25 放射線粘膜炎
 26 口内炎
 27 リンパ浮腫
 28 吃  逆

痛みの基礎知識
Ⅰ 慢性難治性疼痛との向き合い方
 1. 痛みの概念
 2. 疼痛のメカニズム
 3. 病態による痛みの分類
 4. 痛みと付き合う
 5. まとめ

Ⅱ 痛みの薬理学:痛みはどのようにして感じるか
 1. 生物にとって「痛み? pain ?」とは
 2. 慢性疼痛とは

Ⅲ 難治性疼痛への WHO ラダーの応用

Ⅳ 鎮痛薬を作用機序から考える
 1. NSAIDs
 2. オピオイド
 3. 鎮痛補助薬の作用機序
 4. 痛みの漢方療法
 5. 保険適応外の鎮痛薬
 6. 今後導入予定の鎮痛薬

Ⅴ 剤形の特徴
 1. 各オピオイドの薬物動態
 2. 症状変化に伴う投与経路の変更
 3. 製剤素材と薬剤の効果

Ⅵ 使用禁忌,注意の疾患
 1. 肝・腎機能障害時,血液疾患時に使用できる薬,できない薬
 2. 鎮痛薬の消化管への影響
 3. 妊婦・授乳中に使用できる薬,できない薬

Ⅶ 注意すべき薬剤の相互作用
 1. 薬物相互作用
 2. 食品・薬物の相互作用
 3. 副作用対策に使用する薬剤の注意点

Ⅷ 麻薬取り扱い
 1. 海外での麻薬事情も変化
 2. モルヒネを使用している患者が海外渡航する場合

索 引