書籍カテゴリー:外科学一般|消化器学

消化器 単孔式腹腔鏡下手術
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消化器 単孔式腹腔鏡下手術

1版

  • 大分大学第一外科教授 北野正剛 編集
  • 富士宮市立病院院長 木村泰三 編集

定価:10,260円(本体9,500円+税8%)

  • B5判 137頁
  • 2010年10月 発行
  • ISBN978-4-525-31351-7

概要

腹腔鏡下手術は,消化器外科領域においてもはや標準的な術式である.その中で,単孔式腹腔鏡下手術は,術創が1つのみで行うことができ,傷跡もほとんど目立たないという整容性も備えた,現在臨床で実践されている中で最新の術式である.本書は日本初の単孔式腹腔鏡下手術の解説書であり,正しい理解・実践への第一歩となるものである.

序文

 1990年にわが国に導入された腹腔鏡下手術はその低侵襲性からこの20年間で急速に普及してきた.腹部外科領域では年間6万例に行われるようになり,全領域をあわせると2009年までに100万例以上に施行されている.適応も良性から悪性疾患まで拡がり,今や腹腔鏡下手術は標準術式の一つとなっている.
 腹腔鏡下手術が一般化されていく中で,さらなる低侵襲手術手技の確立を目指して,体壁に創をつくらない手術NOTES(経管腔的内視鏡手術)の研究・開発が始まり,胆嚢摘出術や虫垂切除術などに応用されている.現時点では技術的な面で解決すべき課題が多々あるが,新しい手術器具の開発も進んでおり,将来の低侵襲手術として期待される.
 NOTESの出現により創の数・大きさを減らすことが求められるようになり,2008年頃から単孔式腹腔鏡下手術(Single Port Surgery: SPS)が注目されるようになった.単孔式腹腔鏡下手術は,2~3cmの小切開創から腹腔鏡と2~3本の操作鉗子を挿入して行う手術である.NOTESに比べると技術的なハードルは低く,現在使用可能な器具で手術を完遂できるため,日を追って施行する施設が増加している.日本内視鏡外科学会の第10回アンケートでは単孔式腹腔鏡下手術についても調査しており,本書が発刊される頃にはわが国の現状が明らかになる.
 このような状況下で安全に本術式を導入していく一助とするための初めての手術書として本書を企画した.単孔式腹腔鏡下手術のエントリー書として,開発の経緯や機器開発などをまとめた総論と実際の手術手技からなる各論の二部構成とした.この分野の先駆者の先生方に,基本手技や術式の工夫をわかりやすい図と簡潔な文章で記載していただき,手術のコツと注意点を表にまとめた.
 本書を通じて,多くの内視鏡外科医が安全な単孔式腹腔鏡下手術を習得し,内視鏡外科手術の更なる発展に貢献することを期待している.

2010年9月
大分大学医学部第一外科教授
北野正剛

刊行にあたって

 整容性の向上は,適応の拡大とともに腹腔鏡下手術の大きなテーマであり,孔の細径化や数を減らす試み(reduced-port surgery)は今に始まったことではない.1997年から2002年頃,ポートを細くした腹腔鏡下手術(needlescopic, mini-laparoscopic, あるいは細径鉗子)や,ポートの数を減らした腹腔鏡下手術の報告が相次いだ.しかし,このような手技は,一時的に,あるいは一部施設で行われたにすぎず,普及するには至らなかった.その理由は,手技の難度が増すにもかかわらず,整容性以外に利点が少ないと考えられたためであろう.
 整容性の向上が新たな興味をひくようになったのは,NOTESがきっかけであった.そして,2008年頃から,腹壁の孔を一つにして腹腔鏡下手術を行う単孔式腹腔鏡下手術がにわかに脚光を浴びた.単孔式手術では,一つの孔を臍部におき,創の修復を美容的に行うことで,手術痕をほとんど見えなくする工夫がされた.米国で始められた単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術は,創の見えない手術として多くの患者の支持を得ることになった.すぐにわが国にも導入され,たちまちにして多くの施設で単孔式腹腔鏡下手術が行われるようになった.適応も胆嚢摘出術や虫垂切除のみならず,肥満手術,脾臓摘出術,大腸切除術,Nissen手術にも広げられつつある.
 整容性を求める患者の要望が大きな促進要因となっている単孔式腹腔鏡下手術であるが,ポートの細径化と減数の試みにあったのと同じ利点と欠点を,より強調した形で持っている.すなわち,単孔式腹腔鏡下手術は従来法に比べ整容性の点では明らかに優れるものの,より低侵襲とはいいがたい.にもかかわらず,単孔式は従来法より難しく,手術の質はいかにしても従来法に勝ることができない.なぜなら,単孔式は腹腔鏡下手術のポート設置の基本原則(triangular formation)に違反しており,そのため,良い視野が得にくく,器具と器具がぶつかりやすく,また適切な方向から操作を行いにくいからである.
 整容性の向上は患者のみならず外科医にとっても大きな夢である.しかし,整容性を向上させる手術は,安全性を確保して初めて意義ある手術となるのはいうまでもない.本書のなかでも各執筆者は,どのような器具器械を用い,どのように手技を工夫したら,複数孔の従来法の手技に匹敵する手術の質と安全性を単孔式でも確保できるかを述べている.整容性は患者が手術に求める大きな要望の一つであるので,外科医は単孔式に積極的に取り組むべきと思うが,腹腔鏡下手術の豊富な経験のある外科医が,本書のような教科書を読み,動物実験で基礎訓練をした後に,臨床にのぞんでほしい.

2010年9月
富士宮市立病院名誉院長
木村泰三

目次

総 論
1 単孔式腹腔鏡下手術の開発の経緯と現状
 単孔式腹腔鏡下手術の開発の経緯
 単孔式腹腔鏡下手術の現状

2 利点と欠点,適応疾患
 腹腔鏡下手術の特性・単孔式腹腔鏡下手術の特性
 機器・手技の工夫
 利点
 欠点

3 アクセス方法と機器開発
 アクセス法とアクセスポート
 単孔式腹腔鏡下手術用機器の開発

各 論
4 胆嚢 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術①
 1.術前
 2.手術手技
 3.手術のコツと注意点
 4.術後管理
 5.手術成績

 手技の工夫 一口メモ①
 針状把持鉗子併用による単孔式腹腔鏡下手術 ~POP~

5 胆? 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術②
 1.術前
 2.手術手技
 3.手術のコツと注意点
 4.術後管理

6 胆? 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術③
 1.術前
 2.手術手技
 3.術後管理

 手技の工夫 一口メモ②
 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術――アクセス法の工夫

7 肝臓 単孔式腹腔鏡下肝切除術,アブレーション,天蓋切除術
 1.術前
 2.手術手技
 3.手術のコツと注意点
 4.術後管理

8 脾臓 単孔式腹腔鏡下脾臓摘出術
 1.術前
 2.手術手技
 3.手術のコツと注意点
 4.術後管理

 手技の工夫 一口メモ③
 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術におけるフック鉗子を用いた胆嚢頸部の剥離法

9 食道・胃 GERDに対する単孔式腹腔鏡下Nissen手術
 1.術前
 2.手術手技
 3.手術のコツと注意点
 4.術後管理
  虫垂 単孔式腹腔鏡下虫垂切除術
   1.術前
   2.手術手技
   3.手術のコツと注意点
   4.術後管理
  大腸 大腸癌に対する単孔式腹腔鏡下手術
   1.術前
   2.手術手技
   3.手術のコツと注意点
   4.術後管理

索引