書籍カテゴリー:消化器学|外科学一般

肛門疾患
立ち読み

在庫状況:在庫あり

電子書籍版はこちら

(医書.jpに移動します)

肛門疾患
−解剖から手術まで−

1版

  • 所沢肛門病院名誉院長 金井忠男 監
  • 内田病院名誉院長 内田好司 著
  • 所沢肛門病院院長 栗原浩幸 著

定価:27,000円(本体25,000円+税8%)

  • A4判 210頁
  • 2014年8月 発行
  • ISBN978-4-525-31431-6

概要

肛門疾患の治療には,さまざまな手法が取り入れられているが,なかなか思うようにいかない.本書では,肛門疾患の外科的治療を連続写真やイラストを多用し,スタンダードな手術手技を詳解している.また,肛門科でよく遭遇する大腸疾患なども掲載.
前半の発生,解剖,生理の章では,肛門科医として知っておくべき肛門のしくみを解説.

序文

監修のことば
 臨床医にとって最も重要なことは,診断と治療である.優れた臨床医になるためには経験を重ねる必要がある.さらに,優秀な指導者の下で修練することが望まれる.肛門疾患領域の優れた指導者が,近年増えてはきたがまだ十分とは言えない.また,指導者がいないにも拘らず診断と治療を行わざるを得ない環境の医師もいる.このような時には内容の充実した医学書が唯一の助けであり,大きな力となる.
 正確な診断と適切な治療は,多くの経験から得ることが可能であるように見えるが,基礎医学の知識なしでは最適な治療を行うことはできない.これはあらゆる医療において言えることであり,医学教育のカリキュラムからも分かる.臨床の中で基礎は必要であり,基礎がなければより良い治療は出来ない.肛門科領域においては,解剖をはじめとした基礎が分かった上での治療こそが,機能を損なうことなく生理的状況での根治をもたらす.本書では,発生,解剖,生理など,臨床の場で知っていなければならない基礎医学,そして診断から治療まで記載されている.
 本書の発刊は多くの肛門科医が望んでいたものであり,実現したことは感慨深いが,発刊に向けての内田先生の情熱にはただただ敬服するばかりであった.膨大な資料の中から最も重要な点を見出し,多くの領域の専門学者に意見を求め,そして纏め上げた.これに要した時間はいかばかりか計り知れない.「肛門疾患アトラス」を埋没させてはならないという多くの肛門科医の意見をしばしば聞いてきた.そこで,再刊をお願いしたが,内田先生には大きな負担をお掛けしてしまい,今は心苦しく感じている.
 肛門疾患の標準的治療について,栗原先生とは長い間議論してきた.標準的治療を確立する必要性から,栗原先生は絶え間なく検討をし,標準的治療と自信をもって言えるようになってきた時に,内田先生から共著のお話を頂いたことは,栗原先生にとって幸運であったと思う.
 肛門疾患に関する専門書として欠く事の出来ない内容を枠内に収めることの難しさを乗り越え,治療法については現在多くの方法がある中で標準的かつ基本的治療法が記載されている.本書が肛門疾患を扱う医師にとっての必携の書となることを期待している.
 また,本書が肛門疾患診療の発展に役立つものと確信しており,肛門疾患の診療にあたる医師は,是非とも本書を参考にして頂きたい.

2014 年6 月
所沢肛門病院 名誉院長
医学博士 金井忠男




 「肛門疾患アトラス」が発刊されてから30 年以上経って,新しい装いと内容をもった「肛門疾患─解剖から手術まで─」が発刊されるようになった今,感無量の想いである.
 再刊の端緒は2012 年の第67 回日本大腸肛門病学会の会合の席で「肛門疾患アトラス」を埋没させるなという金井忠男博士の御発言であった.
 さらに,再刊を実現できるようにと多忙を極める所沢肛門病院長の栗原浩幸博士が共著者になってくれた.
 このような配慮がなければ本書の出版は実現できなかった.金井先生,栗原先生に深甚の謝意を表します.
 思えば最初のアトラス出版後,個人的な事情で約20 年間は学界への出席もままならないような状況が続いた.そのため再刊にあたって栗原博士と話し合って基礎的内容を内田が,臨床的内容を栗原が分担することになり随分と気分的には楽になったが30 年余のブランクは余りに大きいものであった.生命現象の多くが分子・原子のレベルで解明されるようになっていたことである.
 金井博士から肛門診療は30 年前とあまり変わっていないから,という慰労的な助言は頂いたものの何とか旧版とはちがう形にしたい,という思いで一般書も含めて色々な著書にあたってみた.分子生物学の進歩を取り入れることは不可能であったが,期間も限られた中で色々な方々に御指導御協力を頂き,どうにか脱稿にこぎつけることが出来た.
 特に第2 章の組織に関することは中里洋一名誉教授(群馬大学)の勤務先まで何回もお邪魔して組織学のイ・ロ・ハから教えて頂いた,またこれらの標本ブロックを御提供頂いた宇都宮高賢博士(山口県),発生の章では秋田恵一教授(東京医科歯科大学),遺体解剖の手配をはじめ,コラム欄の御教示も頂いた浅尾高行教授(群馬大学),皮膚疾患では石川治教授(群馬大学)に,ALTA 療法では鉢呂芳一博士(旭川市)にそれぞれお世話になった.
 栗原博士は第4 章以降の臨床的内容のほとんどを執筆してくれただけでなく,第2 章の解剖で要になる内・外括約筋,骨盤隔膜,会陰骨盤隙の部分もカバーしてくれた.
 金井・栗原の両先生が連綿として培ってきた「所沢肛門病院」の医療的所産を投入して本書が完成したと言っても過言ではない.
 多くの肛門科医の臨床指針となるだけでなく,肛門管に関わりをもつ外科医,病理医の方々にも参考にして頂けるのではないかと思う.
 また,今回の出版に際して南山堂編集部の中村久男氏と斎藤代助氏のご協力には心から感謝申し上げる.
 最後に金井忠男博士には監修者として様々な助言と共に「監修のことば」を頂いた,感謝の念と共に今後の日本の肛門病学のために一層の御尽力をお願いして筆を擱きたい.
  
2014 年6 月 夏至の日に
内田病院 名誉院長
医学博士 内田好司



あとがき
 1983 年に「肛門疾患アトラス」が出版されて約30 年となる2012 年の日本大腸肛門病学会中に行われたある会合で,「肛門疾患アトラス」を是非とも復活して欲しいとの話が出たのが,この「肛門疾患─解剖から手術まで─」の始まりである.
 初代「肛門疾患アトラス」は内田好司博士が単独で執筆されたものであるが,発生から生理,各疾患の病態から治療まで,ありとあらゆるものが網羅され,しかも多数の鮮明な写真と文献が掲載されており,現在の肛門診療にも十分に役立つ内容であった.私の恩師で本書の監修者である金井忠男博士から「肛門疾患アトラス」を勧められ,私もこの本で肛門の基礎を学ばせていただいた.
 改訂に参与するにあたり,初めは「肛門疾患アトラス」に追記すればよいだろうと楽観的に考えていたが,臨床編の大部分を担当することになり,私の施設で最良と考える診療・手術を入れたいという思いが強くなった.写真もデジタルのものをできるだけ用いるということになり,ほぼ全面改訂となった.本書は主に内田博士と私の二人で頻回に議論・検討の上で執筆したものであり一貫性がとれた内容になっていると自負している.
 本書で紹介した手術術式は特別な設備や器具は必要でなく,外科の基本ができていれば誰でもいかなる施設でも行うことのできるものである.肛門の手術は簡単に出来そうに見えてもなかなか思うようにいかないものであるが,本書で紹介した手術が行えるようになれば肛門疾患の手術の基本がマスターできるものと考える.
 近年いろいろな治療法が開発されては消えてゆく.残っていくものもあるがそれはわずかである.本書では特殊な治療や現在行われていないような治療については割愛した.本書によって肛門疾患を治療する基本を身につければ,新たな治療について,それが将来にわたって有効なものなのか,それとも一時的なものなのか,自らの経験から判断できるようになると思う.
 最後に,編集に際し数多くの助言や助力を頂いた南山堂編集部の中村久男氏,斎藤代助氏,励ましや労いの言葉を頂いた内田博士の御令室にこの場を借りて感謝申し上げたい.
 本書が肛門疾患を診療する医師にとって「座右の書」となることを期待する.
  
2014 年6 月
所沢肛門病院 院長
医学博士 栗原浩幸

目次

第1章 肛門の発生
 A.はじめに
 B.肛門の進化
 C.哺乳類の肛門発生
 D.尻尾の筋の変化
 E.ヒトの発生・肛門の発生
 F.発生の異常

第2章 肛門の解剖
 A.直腸と肛門の区分
 B.会 陰
 C.直腸と肛門の概観
 D.上皮組織
 E.腸管の層序
 F.肛門管の「部位」による区分と「上皮名」による区分
 G.歯状線近辺の詳細
 H.組織学的肛門管
 I .肛門腺管と肛門腺
 J.肛門管の筋装置と骨盤底を形成する諸筋
 K.直腸と肛門管の脈管
 L.直腸と肛門管の神経

第3章 肛門管の生理
 A.はじめに
 B.排 便
 C.排便障害
 D.排便障害のための検査

第4章 肛門疾患の診断
  肛門疾患診療の基本

第5章 痔 核
 A.外 痔 核
 B.内 痔 核


第6章 裂 肛
 A.一次性裂肛
 B.随伴裂肛

第7章 肛門周囲膿瘍と痔瘻
 A.成人の肛門周囲膿瘍と痔瘻
 B.痔 瘻 癌
 C.乳児の肛門周囲膿瘍と痔瘻

第8章 膿皮症と毛巣洞
 A.膿皮症(化膿性汗腺炎)
 B.毛 巣 洞

第9章直腸脱と直腸瘤
 A.直 腸 脱
 B.直 腸 瘤

第10章 肛門周囲の皮膚疾患
 A.皮膚の構造と主な発疹
 B.感 染 症
 C.腫 瘍
 D.その他の皮膚疾患

第11章 肛門瘙痒症
  肛門瘙痒症とは

第12章 肛門科でよく診る大腸疾患
 A.大 腸 癌
 B.虚血性大腸炎
 C.大腸憩室出血
 D.放射線性腸炎
 E.潰瘍性大腸炎
 F.Crohn 病の肛門病変