書籍カテゴリー:形成外科学

TEXT形成外科学

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TEXTシリーズ
TEXT形成外科学

第2版

  • 杏林大学教授 波利井 清紀 監

定価:6,480円(本体6,000円+税8%)

  • 四六倍判 422頁
  • 2004年3月 発行
  • ISBN978-4-525-31832-1
  • ISBN4-525-31832-5

概要

初版発行から7年ぶりに全面大改訂!医学部学生や研修医が覚えておく必要のある最低限の知識をベースに,さらに新しい形成外科の発展を,多くのイラスト,写真を用い,ビジュアルにまとめました.各大項目の冒頭には,「Key word」や「重要事項」を掲出し,予習・復習の際に大いに役立つものとしました.

序文

形成外科は「形を造る(回復させる)外科」として外科学の中では特異な領域を築いてきている.医学の歴史において,失われた身体の形状を回復しようとする外科手術は,古く紀元前のインドで行われていたという造鼻術(インド法として名高い)や中世のイタリアで行われた造鼻術(イタリア法)などにそのルーツを辿れる.これらは体表の手術であったため,麻酔の技術もなく,侵襲の大きな内臓器の手術などが不可能であった古い時代においても行い得たものであろう.しかし,顔面の中央に位置する「鼻」というヒトの尊厳にかかわる部位の形態を作り出す外科手術が,古代より熱心に行われていたのは驚きの一語に尽きるものである.
古代インドや中世イタリアの造鼻術に見られるような鼻の再建は,まさに形成外科のルーツといえるものであるが,近代形成外科は第一次世界大戦における戦傷者の治療を中心に欧米において飛躍的発展を遂げた.日本においても明治維新以後,西洋医学の流入に伴い外科学が急速に進歩したが,外傷の治療,疾患部や腫瘍の切除などが中心であり,形態を対象とする外科は全く研究の対象にはならなかった.わずかに,軍関係者の医師や耳鼻科医などにより散発的に顔面の形成手術が行われていただけである.
日本において形成外科が初めて大きな話題になったのは,第二次世界大戦後しばらくして「原爆乙女の植皮治療」が米国において行われた時である.しかし,残念なことに形成外科の本来の目的である機能と形態の再建外科は,戦後間もなく盛んになった商業主義的な美容整形と混同され,なかなか保守的な医学会に受け入れられず,大学のような医育機関における形成外科学講座や診療科の設置は困難を極めた.
このような状況を打破し,形態と機能を重視した正式な医療としての形成外科学を発展させるため,1960年東京大学において三木威勇治整形外科教授のもと,当時皮膚科に所属されていた大森清一博士(後の東京大学形成外科初代教授)を主任に,国立大学で初めて形成外科の診療科が創設された.また,これより少し前,日本形成外科学会も創立され,昭和大学や慶應義塾大学など私立大学においても次々と形成外科の講座や診療科が設立された.
現在,日本の形成外科は日本医学会に属する社団法人で会員約4,000人を要している.また,厚生労働省専門医の認定学会,医師国家試験出題にも参加するなど,他の外科系各科と肩を並べられるまでに発展している.学問的にもマイクロサージャリーは常に世界の指導的立場にあり,また,小耳症などの先天異常症の治療をはじめ,クラニオフェイシャルサージャリー,手術シミュレーションの開発,組織培養・再生医療などの基礎研究も欧米にひけをとらないレベルにまで発展している.
しかし,このように急速に発展した形成外科の弱点として,学生の教育の不十分さが挙げられる.特に,学生が気軽に手にとって学べる教科書が他の科に比べて圧倒的に少ない.本書は,医師国家試験を含めた学生の基礎教育に重点をおいて編纂した.したがって,執筆者は大学で日頃より学生教育に従事しておられ,また,学会などでもっとも活躍しておられる方々を中心にお願いした.各著者には,標準的な治療法を主体にできるだけやさしく形成外科を紹介していただくとともに,医師国家試験に出題されるような重要事項を各章の冒頭に挙げていただいた.
学生の卒前教育,および卒後研修医教育の現場で役立つ教科書の完成を目指したが,形成外科専門医試験にも役立つ知識も網羅したので,座右の書として利用して頂ければ幸いである.
なお,本書の出版にあたって,編集に多大なご努力を頂いた南山堂高見沢恵氏に深謝する.

2004年1月 波利井 清紀

目次

総論 I 基本知識
I.形成外科の概念
  1.定義
  2.名称
  3.歴史
  4.対象疾患
II.診察法と術前の準備
  1.問診
  2.診断と治療法の決定
  3.形成外科におけるインフォームド・コンセント
  4.術前の準備
III.精神医学的知識
  1.なぜ精神医学的素養が求められるのか
  2.こころの理解のために
  3.こころの構えの歪みから形の修正を求める場合-醜形恐怖症について-
  4.こころの性と身体的性の不一致からくる障害-性同一性障害
  おわりに
IV.形態発生学の基礎知識
  1.受精と器官発生
  2.鰓弓と顔面の発生
  3.外生殖器・四肢の発生
V.先天異常症の概念
  1.定義
  2.発生パターンと分類
VI.創傷治癒
  1.皮膚の構造と生理
  2.創傷治癒のメカニズム
  3.創傷治癒にかかわる因子
  4.創傷治癒の阻害因子
VII.瘢痕とケロイド
  1. 瘢痕と肥厚性瘢痕
  2.ケロイド

総論 II 治療手技
I.基本手技
  1.形成外科的手術手技の特徴
  2.皮膚切開・切除と縫合
  3. Z形成術とW形成術
  4.術前・術後管理
II.皮膚表面外科
  1.目的と種類
  2.削皮術
  3.電気外科治療
  4.凍結療法
  5.皮膚レーザー療法
  6.ケミカルピーリング
III.植皮術
  1.植皮術の基本的知識
  2.遊離植皮術
  3.皮弁
IV.骨移植と軟骨移植
  1.骨移植
  2.軟骨移植
V.その他の組織移植
  1.粘膜移植
  2.脂肪移植
  3.真皮脂肪移植
  4.筋肉移植
  5.筋膜,腱移植
  6.神経移植
  7.血管移植
  8.硬毛移植
  9.爪移植
 10.遊離複合移植
 11.形成外科と再生医療
VI.微小外科(マイクロサージャリー)
  1.定義
  2.歴史
  3.基本手技
  4.切断組織の再接着
  5.血管柄付き遊離組織移植術
VII.ティッシュエキスパンション法 (組織拡張法)
  1.原理と歴史
  2.エキスパンダーの構造と種類
  3.適応と症例の選択
  4.手技
  5.合併症と対策
VIII.クラニオフェイシャルサージャリー(頭蓋顔面外科)
  1.定義と歴史
  2.適応疾患
  3.基本手術手技
  4.術後管理と合併症
  5.手術シミュレーション
IX.仮骨延長法
  1.原理と目的
  2.形成外科における適応
  3.手術手技
  4.合併症と対策
X.内視鏡下手術
  1.手技と目的
  2.手術機器
  3.形成外科における適応
  4.代表的手術法
XI.医用材料
  1.人工補填材
  2.創傷被覆材

各論 I 先天性疾患
I.頭頸部
  1.頭蓋・顔面骨の先天異常
  2.顔面裂
  3.口唇裂,顎裂
  4.眼瞼の先天異常症
  5.外鼻
  6.耳介
  7.顎顔面・口腔
  8.頸部
II.躯幹
  1.躯幹の発生
  2.胸壁・乳房の先天異常症
  3.腹部・背部の先天異常症
III.陰部・会陰部の先天異常
  1.泌尿・生殖器の発生
  2.女性尿・生殖器の先天異常症
  3.男性尿・生殖器の先天異常症
  4.性分化異常
IV.四肢
  1.四肢の発生
  2.四肢先天異常と遺伝
  3.四肢先天異常の分類
  4.手の発生からみた列
  5.手足先天異常の治療
V.母斑・母斑症
  1.定義
  2.分類
  3.母斑症

各論 II 後天性疾患
I.外傷
  1.初期治療と新鮮創の処置
  2.外傷創の処置とデブリードマン
  3.陳旧創の処置
  4.身体各部の外傷
II.顔面神経麻痺
  1.顔面神経の解剖
  2.表情筋と顔面神経
  3.診断
  4.原因
  5.治療
III.熱傷
  1.熱傷の原因と分類
  2.熱傷の病態生理
  3.熱傷の診断
  4.救急処置
5.全身的治療
  6.局所療法
  7.特殊部位の熱傷
  8.熱傷の後遺症
IV.特殊な損傷
  1.化学熱傷
  2.放射線皮膚傷害と潰瘍
  3.電撃傷
  4.低温損傷
V.褥瘡
  1.定義
  2.褥瘡の疫学
  3.発症
  4.予防
  5.診断
  6.治療
VI.難治性潰瘍
  1.定義
  2.原因と治療
  3.難治性潰瘍治療の全般について
VII.リンパ浮腫
  1.リンパ浮腫の定義と分類
  2.発生機序
  3.発生部位と臨床症状
  4.治療
VIII.腫瘍
  1.腫瘍の定義と種類
  2.皮膚腫瘍
  3.皮膚良性腫瘍
  4.皮膚悪性腫瘍
  5.皮膚以外の良性腫瘍と腫瘍性病変
IX.腫瘍切除後の再建
  1.目的
  2.再建法の種類と選択
  3.頭頸部再建(含む頭蓋底再建)
  4.乳房胸壁の再建
  5.腹壁再建
  6.会陰・殿部の再建
  7.腫瘍切除後の四肢の再建
X.変性疾患・膠原病と再建
  1.変性疾患・膠原病と体表変形
  2.ロンバーグ病
  3.強皮症
  4.その他の皮膚形成異常と萎縮症
XI.美容外科
  1.定義
  2.概念
  3.歴史
  4.身体計測法と美の基準
  5.患者の心理的側面
  6.インフォームド・コンセント
  7.身体各部の代表的治療法