抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン
1版
平成27年度日本医療研究開発機構成育疾患克服等総合研究事業
「抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の治療及び予後に関する研究」研究班 編集
定価
2,200円(本体 2,000円 +税10%)
- B5判 76頁
- 2016年8月 発行
- ISBN 978-4-525-33181-8
患者さん一人が生児を授かることができない実害は絶大である
抗リン脂質抗体症候群(APS) 合併妊娠をきちんと診断し,治療しながら妊娠および出産をサポートできますか?
APS 合併妊娠の診断と治療方法が確立しているとは言い難い現状で,本書は産科,内科,小児科などの当該領域の専門家によって作成された,わが国初の診療ガイドラインです.ぜひ,臨床現場でご活用ください!
- 序文
- 目次
序文
本書は平成25〜26年度厚生労働科学研究費補助金(平成27年度日本医療研究開発機構)成育疾患克服等総合研究事業「抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の治療及び予後に関する研究」における研究成果の一つとして作成した『抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン』に加筆修正したものです.
抗リン脂質抗体症候群(APS)は動・静脈血栓症ならびに習慣流産,妊娠高血圧症候群などの産科合併症を臨床所見とし,抗リン脂質抗体が検出されることにより診断される疾患群です.臨床所見である産科合併症は妊娠初期の習慣流産から中期以降の流死産や,妊娠高血圧症候群を呈するものまで幅広い病態が含まれるうえに,診断に使用される抗体の標準化もできていないため,診断と治療方法が確立しているとは言い難いというのが現状です.このような状況の改善を目的として,産科,内科,小児科などの当該領域の専門家によって編成された本研究班では,APS 合併妊娠についてアンケートや多施設症例調査研究を行い,日本における診療の現状を知るとともに課題も明らかにしてきました.その中で,産科的APSの診療指針を作成してほしいとの要望を多くの医師からいただきました.その要望に応えるべく,研究班の成果も含めて現在入手可能なエビデンスをもとに,当該領域に造詣の深い多くの専門家が参加した会議や,患者や医療経済学の専門家も参加したデルファイ法によって,透明性の高いコンセンサス形成を重視しガイドラインを作成しました.そのガイドラインに多くの解説を加え,産科的APSに馴染みの薄い産科医や内科医,若手の医師にも使いやすいようにまとめたのが本書です.
本書は現時点での標準的な考え方を示すものであり,臨床現場での医師の裁量権を規制するものではありません.実際の臨床現場では,それぞれの病態や社会的背景を考慮しながら,患者さんの意向も含めて最善の診療方針が決められるものと考えますので,その際にご活用いただければ幸いです.
なお,本書には問い合わせ先一覧(p.viii 参照)を掲載しています.診療方針で迷われる症例がございましたら,お問い合わせください.今後,新たなエビデンスを取り入れた見直しが必要となります.
利用者の視点に立った改訂を目指していきますので,ご意見やご提案を含めて相互方向の情報交換ができることを願っています.
最後に,ご多忙のなか,ガイドラインの作成および本書の発刊にあたり,ご執筆などでご尽力くださいました方々,ガイドライン作成事務局として当初より多大なサポートをしてくれた高貝マリコ,後藤美賀子両氏に,この場を借りてお礼申し上げます.また,本書の発刊を快く引き受けていただき,書籍として立派なものにしてくださった南山堂編集部の方々にも深謝いたします.
2016年7月
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
周産期・母性診療センター
村島温子
抗リン脂質抗体症候群(APS)は動・静脈血栓症ならびに習慣流産,妊娠高血圧症候群などの産科合併症を臨床所見とし,抗リン脂質抗体が検出されることにより診断される疾患群です.臨床所見である産科合併症は妊娠初期の習慣流産から中期以降の流死産や,妊娠高血圧症候群を呈するものまで幅広い病態が含まれるうえに,診断に使用される抗体の標準化もできていないため,診断と治療方法が確立しているとは言い難いというのが現状です.このような状況の改善を目的として,産科,内科,小児科などの当該領域の専門家によって編成された本研究班では,APS 合併妊娠についてアンケートや多施設症例調査研究を行い,日本における診療の現状を知るとともに課題も明らかにしてきました.その中で,産科的APSの診療指針を作成してほしいとの要望を多くの医師からいただきました.その要望に応えるべく,研究班の成果も含めて現在入手可能なエビデンスをもとに,当該領域に造詣の深い多くの専門家が参加した会議や,患者や医療経済学の専門家も参加したデルファイ法によって,透明性の高いコンセンサス形成を重視しガイドラインを作成しました.そのガイドラインに多くの解説を加え,産科的APSに馴染みの薄い産科医や内科医,若手の医師にも使いやすいようにまとめたのが本書です.
本書は現時点での標準的な考え方を示すものであり,臨床現場での医師の裁量権を規制するものではありません.実際の臨床現場では,それぞれの病態や社会的背景を考慮しながら,患者さんの意向も含めて最善の診療方針が決められるものと考えますので,その際にご活用いただければ幸いです.
なお,本書には問い合わせ先一覧(p.viii 参照)を掲載しています.診療方針で迷われる症例がございましたら,お問い合わせください.今後,新たなエビデンスを取り入れた見直しが必要となります.
利用者の視点に立った改訂を目指していきますので,ご意見やご提案を含めて相互方向の情報交換ができることを願っています.
最後に,ご多忙のなか,ガイドラインの作成および本書の発刊にあたり,ご執筆などでご尽力くださいました方々,ガイドライン作成事務局として当初より多大なサポートをしてくれた高貝マリコ,後藤美賀子両氏に,この場を借りてお礼申し上げます.また,本書の発刊を快く引き受けていただき,書籍として立派なものにしてくださった南山堂編集部の方々にも深謝いたします.
2016年7月
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
周産期・母性診療センター
村島温子
目次
問い合わせ先一覧
略語一覧
用語解説
第1章 本ガイドライン作成の過程と活用方法
1 ガイドライン作成の過程
2 抗リン脂質抗体症候群の概要と本ガイドラインの使い方
第2章 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン
CQ1 どのような状況において抗リン脂質抗体(aPL)を測定するのか?
・aPL検査についてのQ&A
CQ2 産科的APSのリスクの評価方法は?
CQ3 産科的APSのリスクにあった治療方法は?
CQ4 産科的APS母体の産後のフォローはどうするか?
CQ5 APS母体から出生した児に対する特別な治療は必要か?
CQ6 APSの臨床所見がない抗リン脂質抗体陽性者における治療方針は?
CQ6-1 APSの臨床所見がない抗リン脂質抗体陽性例(全身性エリテマトーデスを有しない場合)の治療方針は?
CQ6-2 APSの臨床所見がない抗リン脂質抗体陽性例(全身性エリテマトーデスを有する場合)の治療方針は?
CQ7 原因不明の不育症に対する抗血小板療法・抗凝固療法の考え方は?
第3章 実際の臨床で役立つ知識 ─より深く理解するために─
1 日常診療のための抗リン脂質抗体検査
2 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の実際の管理とピットフォール
産科医が経験する実臨床─主に若手医師へ伝えたいこと─
内科(母性内科)医が経験する実臨床─主に若手医師へ伝えたいこと─
3 抗リン脂質抗体陽性不育症患者における低用量アスピリン療法,低用量アスピリン+ヘパリン療法,ならびにTender loving careの有効性
4 産科的抗リン脂質抗体症候群の問題点と解決方法
5 抗リン脂質抗体症候群における胎盤病理診断
略語一覧
用語解説
第1章 本ガイドライン作成の過程と活用方法
1 ガイドライン作成の過程
2 抗リン脂質抗体症候群の概要と本ガイドラインの使い方
第2章 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン
CQ1 どのような状況において抗リン脂質抗体(aPL)を測定するのか?
・aPL検査についてのQ&A
CQ2 産科的APSのリスクの評価方法は?
CQ3 産科的APSのリスクにあった治療方法は?
CQ4 産科的APS母体の産後のフォローはどうするか?
CQ5 APS母体から出生した児に対する特別な治療は必要か?
CQ6 APSの臨床所見がない抗リン脂質抗体陽性者における治療方針は?
CQ6-1 APSの臨床所見がない抗リン脂質抗体陽性例(全身性エリテマトーデスを有しない場合)の治療方針は?
CQ6-2 APSの臨床所見がない抗リン脂質抗体陽性例(全身性エリテマトーデスを有する場合)の治療方針は?
CQ7 原因不明の不育症に対する抗血小板療法・抗凝固療法の考え方は?
第3章 実際の臨床で役立つ知識 ─より深く理解するために─
1 日常診療のための抗リン脂質抗体検査
2 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の実際の管理とピットフォール
産科医が経験する実臨床─主に若手医師へ伝えたいこと─
内科(母性内科)医が経験する実臨床─主に若手医師へ伝えたいこと─
3 抗リン脂質抗体陽性不育症患者における低用量アスピリン療法,低用量アスピリン+ヘパリン療法,ならびにTender loving careの有効性
4 産科的抗リン脂質抗体症候群の問題点と解決方法
5 抗リン脂質抗体症候群における胎盤病理診断