書籍カテゴリー:産婦人科学

単純子宮全摘術から広汎性子宮全摘術をめざして

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単純子宮全摘術から広汎性子宮全摘術をめざして

1版

  • 名古屋大学医学部産婦人科教授 水谷 栄彦 編著
  • 名古屋大学医学部産婦人科助教授 吉川 史隆 著
  • 元名古屋大学医学部産婦人科助手 塚原 慎一郎  著
  • 名古屋大学医学部産婦人科助手 柴田 清住 著

定価:8,640円(本体8,000円+税8%)

  • AB判 96頁
  • 2003年5月 発行
  • ISBN978-4-525-33591-5
  • ISBN4-525-33591-2

概要

婦人科疾患において適応が広く,婦人科手術の中でも最も頻度が高い「単純子宮全摘術」から,最も侵襲が大きく,難易度の高い「広汎性子宮全摘術」の術式までをマスターするのに必読の1冊.多くの写真と共に,術式のポイントを簡潔に解説.これであなたも婦人科手術のスペシャリスト!

序文

私は1970年から1982年まで,教室の関連病院であった国立名古屋病院,静岡済生会病院,浜松医科大学県西部浜松医療センター,名古屋臨港病院に勤務しました.国立名古屋病院には1970年から4年間勤務しましたが,当時広汎性子宮全摘術は原則としてすべて故今泉静夫副院長が執刀され,我々は先生の多数例の手術の第2,第3助手を務めさせていただきました.私の広汎性子宮全摘術の基本は,今泉先生の手術の助手をさせていただく中で学ばせていただいたことを土台にしております.先生はいつも,手術は見ておればできるようになるのだと言っておられ,その言葉通り4年間で私が広汎性子宮全摘術を執刀する機会は1例もありませんでした.
しかしながら,その後静岡済生会病院で多数例の広汎性子宮全摘術を大過なく執刀できました.やはり今泉先生の言われたように,手術は先輩の手技を見て,体で覚える,すなわちいかに先輩の手術の優れたところを,うまく自分のものにするかが,その基本であることを実感しました.
ところで,今泉先生は当時国立大阪病院の故小倉知治先生と,お互いの手術術式への意見交換を含めた御親交がおありでした.いうまでもなく,小倉知治先生は,京都大学で岡林先生の多くの広汎性子宮全摘術で,第一助手を務められた方で手術の達人です.岡林術式の特徴は,膀胱子宮靱帯を前層,後層に分け,尿管の腟管からの遊離を完全に行うのがその重要なポイントです.この尿管操作に慣れる目的から,私は単純子宮全摘術でも,広間膜から尿管を軽く剥離する方式で行っています.
荻野先生は岡林術式を改良され,岡林─荻野術式を確立されました.荻野変法ではまず基靱帯の分離・切断から入り,仙骨子宮靱帯,膀胱子宮靱帯の順で,展開する方法のように,手術書には記載されていることが多いようです.しかしながら,荻野変法のオリジナルな術式は,基靱帯の処理の前にまず後方操作を行うこと.すなわち直腸腟間腔(本文中で度々言及します後腟側縁間腔)と直腸側腔とを合一させて,一大組織間腔を作ることにあるのです.これにより広い視野が確保され,その後,中部支帯(基靱帯)の操作が安全に行えるのです.
ところで,手術手技の上達は,自らの切磋琢磨,たゆまぬ向上心と努力の賜物です.自らの努力の結果が,手術の場で明らかになります.手術手技の上達は武道や茶道などの上達にも似ているのではないかと思います.より完成された手術は患者さんの予後に反映することになります.言うまでもなく,手術は絶対に失敗が許されない,真剣勝負なのです.このことを心に銘記していただきたいと思います.
本書が読者の先生方,特に若い産婦人科医の方々の手術手技の上達に少しでも,お役に立てば,これ以上の幸せはありません.
末筆になりましたが,私の手術手技や手術に対する考え方に対して,多大のご指導を賜りました友田豊名古屋大学名誉教授,故今泉静夫先生,元遠州総合病院副院長山本達海先生に深甚の謝意を表したいと思います.また多数例の私の手術を支えていただいた名古屋大学産婦人科教室員および関連病院の諸先生に感謝の意を表したいと思います.

2003年3月 水谷 栄彦

目次

Chapter1 開腹法と閉腹法
 1.正中縦切開法
  1 開腹法
  2 閉腹法
 2.下腹部横切開法
  1 開腹法
  2 閉腹法

Chapter2 腹式単純子宮全摘術
 1.適 応
 2.手術の実際
  1 子宮の把持と牽引
  2 円靱帯の処理と広間膜前葉の展開
  3 付属器の処理
  4 膀胱子宮窩腹膜の切開
  5 膀胱剥離
  6 尿管の走行確認と広間膜からの簡単な剥離
  7 子宮動静脈および基靱帯,膀胱子宮靱帯の処理
  8 仙骨子宮靱帯の処理
  9 腟管の切断
  10 腟管端の縫合
  11 止血処置
  12 骨盤腹膜の縫合

Chapter3 逆行性子宮全摘術(子宮頸部周囲靱帯無結紮法)
 1.適 応
 2.手術の実際
  1 後方の癒着が強度な場合
  2 前方の癒着が強度な場合

Chapter4 広汎性子宮全摘術
 1.適 応
 2.手術の実際
  1 腹膜切開から左側広間膜切開まで
  2 左側膀胱側腔の展開
  3 左側骨盤リンパ節廊清
  4 左側子宮動脈の分離,結紮,切断
  5 左側尿管のさらなる剥離と後腟側緑間腔侵入路の確認
  6 右側においても1〜5の操作を行う
7 直腸の剥離,直腸腟間隙の開放
8 左側直腸側腔の展開,後腟側緑間腔への貫通
  9 左側基靱帯の分離と切断,結紮
  10 右側においても8,9の操作を行う
  11 直腸の完全剥離
12 膀胱の剥離
13 右側膀胱子宮靱帯の分離,結紮,切断
  14 傍腟結合織の処理と腟管の切断
15 止血処置,骨盤腹膜縫合
3.術後合併症とその処置
  1 術後出血,ショック
  2 排尿障害
3 尿管腟瘻
  4 腸管麻酔(イレウス)
  5 リンパ嚢胞(lymphocyst)
  6 下肢浮腫

索 引