書籍カテゴリー:皮膚科学|臨床薬学

スキンケアの科学
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スキンケアの科学

1版

  • 東北大学名誉教授 田上八朗 著

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

  • A5判 166頁
  • 2015年6月 発行
  • ISBN978-4-525-34061-2

概要

科学的なデータを示しながら,美容から疾患に関わるスキンケアまでを解説した!
豊富な図やわかりやすい解説により,皮膚の構造からスキンケアの必要性まで,すんなり学べる実用書!!
本書を読めば,スキンケアの大切さがわかるようになる.

序文

 昔から,私たちの身体を包んでいる器官の皮膚については,年齢とともに,たるみやしわができる一方,触れると乾燥してカサカサして,たくさんのしみも目立ってくることは避け得ないこととされてきた.しかし,よく見てみると,炎天下で農業や漁業をしてきたお年寄りや,炎天下でスポーツをする人で,そのような症状が目立つ.時には,皮膚癌すらもできたりするが,全ては「歳だから」で済まされてきた.つまり,同じ年配者でも,その皮膚には人によって大きな差が見られ,屋外労働をしてきた人では,室内労働をしてきた人に比べ,明らかに露出部の皮膚の老化が目立つのである.
 色白の人では,それがさらに顕著となり,アメリカのフロリダやオーストラリアの熱帯地方で育った白人では,前癌状態の皮膚変化や皮膚癌も多発している.現在では,これら露出部の皮膚変化を「光老化」と呼び,原因として日光紫外線への長期曝露による傷害と看做されるようになった.
 さて,医学や生物学の進歩により,さまざまな内臓諸器官の病気の発症予防や治療の有効性も上がり,昔と比べて長寿社会の実現がなされつつあるが,皮膚に関してだけ言うと,まだまだ一般的な光老化の認識や,予防への取り組みは十分とは言えない.光老化防止に向けての紫外線カットのためには,サンスクリーン剤の使用が適してはいるが,もちろん日常のメイクアップ化粧すらも一役買ってくれる.
 さらに最近では,生活環境の改善で,かつての吹き抜けのような寒い日本家屋から,気密性の高い暖房の効いた住宅環境で暮らすようなってきたが,残念ながら,寒い季節に室内の湿度が極端に低下して,日常的な皮膚の悩みとしての「かゆい皮膚の乾燥」,医学的には乾皮症に悩む人も増えだした.特に幼少児,青少年では,これを基にしてアトピー性皮膚炎が増加し,高齢者でも貨幣状湿疹に悩む人が増えている.当然,このような皮膚の問題については皮膚科学的に発症機序が追求され,何よりも皮膚の手入れ,つまり適切なスキンケア(いわゆる,基礎化粧)の重要性が指摘されるようになった.具体的には,皮膚表面を覆う角層の水分含有量を常に保ち,滑らかに,柔らかくすることで,乾燥して環境アレルゲンの侵入部位となり得る「ひび割れ」や「ささくれ」ができないようにするのである.
 こうして,常に外界に曝されている皮膚に,適切な手入れ,すなわちスキンケアをいつも行うことにより,年齢よりも予想外に皮膚を若く保てることも分かってきた.つまり,これまで不可避の現象と考えられてきた乾燥や老化予防は,誰もが日常的に行えるのである.
 ということで,日常的な皮膚の変化や病気も,実は,私たちが生活するなかで,皮膚をきれいに,安全に保てるようにと注意を払いつつ手入れをし,環境からの刺激から皮膚を守りいたわること,つまりスキンケアを行っていくことで,多くが防げる.何よりも,かつては必然的老化現象とあきらめられてきたしわやそばかす,しみ,さらには皮膚癌の発症も,子どものころから,環境,特に日光紫外線から皮膚を守るという適切なスキンケアをすることで防げる.
 言うなれば,皮膚の老化予防には,最近の皮膚科学の進歩により分かってきたスキンケアで,日々の皮膚の手入れを行っていくことが重要で,中年以降からの皮膚の老化防止になるのである.
 私たちの生活環境の快適化は,一方では,皮膚に思わぬ新たな問題を起こす基にもなったが,誰にも起きてくる皮膚表面の乾燥(乾皮症)やかゆみ,さらには,それによるアトピー性皮膚炎や乾皮症性湿疹の発症は,こまめなスキンケアにより,ある程度は予防することができる.また,屋外活動での紫外線防止,さらに日焼けを防ぐことで,顔をはじめとする露出部の皮膚の若さが保てることもはっきりしてきた.本書でスキンケアの大切さを学んでいただければ幸いである.
 最後に,本書を執筆するにあたり,南山堂編集部の方々に強い励ましと,綿密かつ適切なご指摘や修正をいただき助けられたことを,心から感謝したい.

2015年5月

ハナミズキが満開な庭を眺めながら
田上八朗

目次

第1章 皮膚の構造とその働き
■解剖学実習で出会ったヒトの革袋
■革袋だけではない皮膚
■顕微鏡の観察で見える皮膚の構築 
■メラニン色素産生と分配をするメラノサイト
■ランゲルハンス細胞と真皮樹状細胞
■脈管と知覚神経
■皮膚の付属器
  1 毛 嚢
  2 皮脂腺
  3 汗 腺
  4 爪
■皮膚の知覚神経
■皮膚の炎症と免疫反応
  1 補?体complement 
  2 Toll様受容体(TLR)とサイトカイン
  3 ランゲルハンス細胞
■皮膚の創傷治癒
■スキンケア

第2章 生物進化の視点から見たヒト皮膚の構造と機能
■皮膚の進化のみちすじ
■脊椎動物の体表面の構造に見られる進化
■哺乳類の皮膚
■表皮細胞の分裂増殖に関係するサイトカイン
■微生物への自然免疫による備え

第3章 ライフステージから見たヒト皮膚の構造と機能
■皮膚の成長とそれに伴う変化
■日光紫外線の皮膚への影響
■光老化によるしわ形成

第4章 極薄の皮膚の防御膜,角層の機能的解析
■身体部位での角層構造の違い
■皮表角層の形態学的な評価 
■皮膚表面pH測定
■ダーモスコピーによる皮膚表面の観察
■さまざまな角層の動態
■角層のバリア機能の重要性
■ヒト角層の微細構造 
■角層の構成成分とその異常による病気
■角層のバリア機能の測定 
  1 In vitro角層バリア機能測定法
  2 生体皮膚での角層バリア機能の測定:経表皮水分喪失(TEWL)
■角層のバリア機能異常
■経皮吸収
■ステロイド外用剤の副作用
■閉鎖密封療法
■角層の水分保持機能

第5章 スキンケアの有効性における客観的評価法 ――生体角層の水分計測法の発見
■角層の水分含有量測定法の発見
■皮膚表面の水分保持機能
  1 角層内の水分結合物質
  2 生体での角層内部の水分含有量の計測法
  3 角層内水分分布状態の試験管内実験での証明
  4 角層水分含有量の部位,年齢,季節での違い
  5 外用剤塗布による保湿効果の評価
  6 角層水分含有量の重要性

第6章 スキンケアの実際 
■皮膚の存在意義から見たスキンケアの必要性 
■環境からの皮膚傷害 ―日光紫外線と光老化
■スキンケアの実際
  1 皮膚の性状を決める角層の保湿作用
  2 角層の保湿成分と保湿剤 
  3 さまざまな皮膚症状へのスキンケア
    ①保湿に働くスキンケア
    ②ケミカルピーリング
    ③光老化の治療
    ④肌の質感と保湿剤の連続塗布の効果
    ⑤スキンケア外用剤の保湿効果測定の実際
    ⑥乾皮症のかゆみへの効果
    ⑦角質溶解剤の効果
    ⑧ピーリング
    ⑨頭髪再生へのスキンケア
    ⑩皮脂分泌へのスキンケア
    ⑪フケと脂漏性皮膚炎
    ⑫発汗へのスキンケア
    ⑬爪へのスキンケア
    ⑭光老化へのスキンケア
    ⑮口唇のケア
■スキンケア製品,メイクアップ化粧品,香料による副作用問題
■おわりに

引用文献
参考文献
索 引