書籍カテゴリー:腎・泌尿器科学|麻酔蘇生学

女性の泌尿器障害と骨盤底再建

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女性の泌尿器障害と骨盤底再建

1版

  • 聖路加国際病院泌尿器科顧問 福井 準之助 編
  • 防衛医大名誉教授・埼玉医大客員教授 永田 一郎 編

定価:12,960円(本体12,000円+税8%)

  • B5判 466頁
  • 2004年10月 発行
  • ISBN978-4-525-35531-9
  • ISBN4-525-35531-X

概要

女性の骨盤内臓器疾患の診断・治療を的確に行う"Female Urology"という新分野の概念のもとに,基礎理論,最新の診断手技,保存療法,薬物療法,低侵襲性手術,再建手術などの治療法に重点を置きました.
この分野に興味を持つ泌尿器科医,婦人科医,外科医,各レジデント,婦人泌尿器科学の専門医を目指す医師に系統的な専門書として必携の書です.

序文

―泌尿器科の立場から―
女性の尿路感染症を除き尿失禁や膀胱瘤を始めとする婦人科と泌尿器科に跨る境界疾患は,患者数が多いにも拘らず省みられてこなかった.わが国では1980年頃からこの領域の重要性が医療関係者に徐々に認識されるようになり,International Continence Society(ICS)やInternational Uro-gynecology Association(IUGA)の年次学会で発表する医師や看護師も増えてきた.このような我が国の時代背景を基に,この境界領域“Female Urology”を独立させる気運が盛んになってきたことは喜ばしい.
治療手技として一般に泌尿器科医は経腹的到達法が得意であるのに対し,婦人科医は経腟的到達法を好む.その上,女性の骨盤臓器の手術,特に再建術には消化器の知識と手術手技が必要である.また,排便は排尿に密接に関連しており,排便機能に関する知識も求められる.これらの各科で行われている独特の手技・手段を系統的に整理して得られた知識と技量を兼ね備えた専門医がFemale Urogynecologistと云える.
欧米に比べわが国ではFemale Urology領域の体制造りが遅れてはいるが,この領域での研究や臨床手技は決して劣っていない.本書が臨床の最先端を行く泌尿器科医,婦人科医,外科医,内科医の強力な執筆陣により最新の知識と情報を備えた成書となったことを編者の一人として誇りに思っている.本書がわが国のこの領域に大きな波紋を投げかけ,大きく発展する契機になることは疑いない.
―婦人科の立場から―
高齢化社会の到来とともに女性の性器脱,尿失禁は増加の一途を【辿】っている.性器脱では特に子宮摘出術後の腟脱の増加でその治療法が問題となっており,尿失禁ではTVT法の出現以来,腹圧性尿失禁の外科的治療を婦人科医も行うようになってきた.一方,泌尿器科でも膀胱瘤の手術はいうにおよばず,子宮摘出術後の腟脱の手術や子宮脱における腟式子宮全摘術を手がける医師が増えてきた.このような症例を扱う分野として婦人科にはurogynecology,泌尿器科にはfemale urologyという用語がある.同じ疾患でも取り扱う科によってその基盤の違いから得意,不得意があることは否めない.婦人科医は下部尿路の詳細な機能検査や尿道,膀胱の取り扱いには不慣れであり,泌尿器科医は腟式子宮全摘術を含む性器脱の手術は不得手であろう.
さて,urogynecologyは女性の泌尿器(特に尿失禁など下部尿路の機能不全)と生殖器(性器脱や腟の瘻孔など骨盤底の機能不全)の疾患を扱う領域であるが,適当な日本語の用語は未だない.
米国ではこの分野はUrogynecology and Pelvic Reconstructive SurgeryからFemale Pelvic Floor Medicine and Reconstructive Surgeryを経てFemale Pelvic Medicine and Reconstructive Surgery(FPMRS)という名称となり,近年産婦人科領域における専門医制度subspecialtyの4本目の柱として確立している. urogynecologyの国際的機関誌にはInternational Urogynecology Journal of Pelvic Floor Dysfunction(IUJPFD)があり,米国ではJournal of Pelvic Medicine & Surgery(JPMS)が刊行されている.
わが国の婦人科領域におけるurogynecology関係の学会をみてみると,かつて女性排尿障害研究会が存在したが2001年の第11回集会を最後に解消した.この会が発展しなかった理由の一つに,婦人科医だけの集りであったことが挙げられよう.
腹圧性尿失禁の手術としてtension free vaginal tape(TVT)法が登場し,技術的に容易で侵襲の少ない手術として婦人科医も好んでアプローチするようになった.こうして,婦人科においてこの方面の研究会の再開の気運が高まり,大阪では日本ウロギネコロジー研究会が,東京ではFemale LUTS(lower urinary tract syndrome)and Pelvic Floor研究会が発足した.両研究会とも婦人科医と泌尿器科医がほぼ同数ずつ参加して意欲的な報告,熱心な討論が繰り広げられている.
このようなわが国のurogynecologyの背景から,わが国の臨床環境に適したテキストブックの出現が待たれるようになってきた.
本書はこの方面に造詣が深い両科の先生方がそれぞれの得意分野を担当され,わが国独特のurogynecologyないしはfemale urologyの総合的テキストブックに仕上げられている.本書がこの道を志す若い学徒の入門書として,またこの分野を臨床の場に採り入れつつある実地医家の道しるべとしてご利用いただければ編集者の一人としてこれ以上の幸せはない.
最後に,本書の発刊にあたり,各執筆者との交渉,原稿整理,校正に多大の労を払われた南山堂編集部の吉村圭子氏に深謝したい.吉村氏の協力がなければ,本書の刊行は日の目を見なかったことを改めて強調したい.

2004年8月 福井準之助 永田 一郎

目次

I.序論
婦人泌尿器科学の歴史と将来展望

II.総論
A.解剖,生理,薬理学
 1.女性の下部尿路と女性性器の解剖・生理
  a. 解剖
  b.神経生理
 2.女性の下部尿路の薬理
  a. 末梢神経系および効果器官に影響を与える神経伝達物質および受容体
b. 脊髄求心路および遠進路心路に影響を与える薬物
c. 橋排尿中枢および脊髄より上位に影響を与える薬物
B.女性の生理変化(月経周期の内分泌学と骨盤臓器の加齢変化)
 1.女性泌尿生殖器に見られる月経周期による生理変化
  a. 視床下部
  b. 下垂体
  c. 卵巣
  d. 子宮内膜
  e. 子宮頸部
  f. 腟および外陰
  g. 尿道および膀胱
 2.女性のライフスパンからみた泌尿生殖器に見られる変化
―胎児から老年期まで―
  a. 胎児期
  b. 新生児・小児期
  c. 思春期
  d. 成人期(性成熟期)
  e. 更年期・老年期
C.女性尿失禁の疫学:欧米と日本の報告
 1. 女性尿失禁の保有率
  a. 尿失禁保有率の調査に関与する因子
  b. 女性尿失禁の年代によるパターン
  c. 女性尿失禁のタイプ
  d. 女性尿失禁の重症度,治療の必要性,受診率
 2.女性尿失禁の危険
  a. 加齢
  b. 妊娠・分娩
  c. 閉経
  d. 子宮摘除術
  e. 肥満
  f. 尿路感染症,下部尿路症状
  g. 人種差
  h. 遺伝
  i. その他
D.女性の排尿(蓄尿・排出)障害の分類
 1. 排尿障害の分類
 2. 尿排出路の低活動
 3. 膀胱(膀胱排尿筋)の過活動;過活動膀胱
4. 膀胱(排尿筋)の底活動と尿排出路の過活動
5. 知覚障害
 6. 薬剤性排尿障害
E.QOLと婦人泌尿器疾患:特に尿失禁について
 1. 尿失禁におけるQOL評価の背景
 2. 尿失禁のQOLに対する影響
 3. QOLの評価法
 4. QOL質問表の条件
 5. 推奨されるQOL質問票
 6. 国際尿失禁会議によるQOL評価に関する推奨事項
 7. 尿失禁患者でQOL評価の実際
F.検査
 1. 尿流動態検査
  a. 下部尿路機能障害の分類と尿流動体検査
  b. 尿流動態検査の種類と適応
  c. 尿流動態検査所見に関する新しいICS用語基準
  d. 蓄尿期の下部尿路機能評価のための尿流動態検査
  e. 尿排出期の下部尿路機能評価のための尿流動体検査
  f. ビデオ尿流動態検査
  g. 経刺激検査
 2. 画像診断
  a. 超音波検査法
  b. 経静脈性尿路造影
  c. 膀胱尿道造影
  d. 骨盤部MRI
 3. 内視鏡検査

III.各論
A.失禁
 1. 尿失禁
  a. 分類
  b. 病歴聴取と診察所見
  c. 診断法
  d. 治療
    1. 保存的療法
     a. 行動療法(バイオフィードバックを含む)(腹圧性/切迫性)
     b. 理学療法(腹圧性/切迫性)
     c. 薬物療法
      1)内服療法
      2)薬物膀胱内注入療法
     d. カテーテル排尿法(留置カテーテル法,間欠導尿法)
     e. リング(ペッサリ―,BNSP)などの器具
    ―泌尿器科医の立場から―
    ―産婦人科医の立場から―
    2. 手術的療法
     a. 術前準備
     b. 尿道粘膜下注入療法(コラーゲン,脂肪など)
     c. 膀胱頸部〜中枢側挙上術
      1)Stamey手術(針膣前壁挙上術)
      2)経腹的到達手技(Burch法・MMK法)―尿道膀胱移行部懸吊術(膣挙上術:colposuspension)法―
      3)経腟的到達手技
      4)腹腔鏡下尿失禁手術
     d. 尿道スリング手術:TVT手術―手術操作と治療成績―
     e. 人工括約筋手術
     f. 膀胱拡大術
    3. 環境の変容 ―トイレの改造,室内便器の使用,糞尿器具の使用,尿瓶,おまる,パッド&パンツ―
 2. 便失禁
  a. 消化管の運動と排便のメカニズム
  b. 禁制(コンチネンス)のメカニズム
  c. 便失禁の基礎
d. 便失禁の検査
  e. 治療
B. 骨盤臓器脱
 1. 骨盤臓器脱の概説と外来検査― 子宮脱評価法の歴史的変遷と今日の評価法 ―
  a. 子宮脱評価の歴史的変遷
  b. 子宮脱外来における評価法
  c. 解剖学的な見地による子宮脱の分類 ( DeLancey による分類)
  d. 膀胱瘤の発生メカニズム
  e. 尿道膀胱子宮造影法と手術適応
  f. 尿道の可動性に関する検査
  g. 性器脱および排尿障害における患者の自己評価
 2. 子宮脱
  a. 子宮脱の分類
  b. 症状および診察時の注意
  c. 検査
  d. 診断
  e. 治療
 3. 腟脱― 尿道瘤,膀胱瘤,直腸瘤,小腸瘤 ―
  I. 腟脱総論
   a. 尿道瘤,膀胱瘤,直腸瘤,小腸瘤
   b. 腟脱の症状
   c. 腟脱の診察法
   d. 腟の支持構造
   e. 腟脱の発生機序,病因
   f. 腟脱の修復法の原理
   g. 腟脱の手術適応
   h. 保存的治療法
   i. 腟脱の予防
  II. 腟脱各論
   a. 尿道瘤
   b. 膀胱瘤
   c. 直腸瘤
   d. 小腸瘤
C.単純子宮摘出手術
 1. 腟式子宮全摘術
 2.腹式単純子宮全摘術
 3. 腟上部切断術
D.女性の排出障害
 1. 女性の排出障害の原因と分類
  a. 下部尿路閉塞
  b. 排尿筋収縮力低下
 2. 診断
  a. 問診
  b. 診察
  c. 検査
 3. 女性における pressure-flouw study
  a. ノモグラム
  b. 下部尿路の閉塞の判定
  c. 排尿筋収縮力の評価
  d. 尿失禁術後の排尿困難の予測について
  e. 女性におけるpressure-flouw study の問題点
 4. 代表的病態
  a. 尿道の通過障害
  b. 膀胱頸部の閉塞
  c. 排尿筋収縮力の低下
d. 間質性膀胱炎
e. 原因不明の尿閉
5. 治療
  a. 保存的治療
  b. 手術的治療
E.下部尿路・女性性器の炎症
 1. 尿路系
  a. 分類および病因
  b. 病歴
  c. 検査
  d. 診断
  e. 治療
 2. 女性性器系
  I. 女性性器の炎症
   a. 女性のライフサイクルと感染防御
   b. 女性性器の炎症の特徴
  II. 各論
   a. 外陰・膣炎
   b. 子宮頸管炎
   c. 子宮内膜炎
   d. 骨盤内炎症性疾患
   e. 卵管・卵巣腫瘍 (tuboovarian abscess:TOA)
   f. クラミジア感染症
   g. 淋菌感染症
   h. 性器ヘルペス感染症
   i. 梅毒
   j. 軟性下疳
F.頻尿・尿意切迫症候群(間質性膀胱炎を含む)
 a. 分類
 b. 病歴
 c. 検査所見
 d. 診断
 e. 治療
G.性機能障害
 1. 女性の性反応
 2. 女性の性機能障害
 3. 性機能障害の診断と治療
 4. 性機能障害各論
  a. 性欲障害
  b. 性欲興奮障害
  c. オルガズム障害
  d. ワギニスムス(腟痙攣)
  e. 性交疼痛症
  f. noncoital sexual pain および外陰痛
  g. 骨盤内手術と性機能障害
H.心因性の泌尿器系障害
 1. 心因性の泌尿器系障害
   −心療内科からー
  a. 症状・所見
  b. 種類
  c. 診断
  d. 治療
  e. 看護
  f. リハビリテーション
  g. 各種の臨床例
 2. 心因性排尿障害
   −泌尿器科からー
  a. 定義,分類
  b. 臨床所見の特性
  c. 診断と治療
  d. 心因性頻尿・尿意切迫症候群の病因,診断と治療
  e. 心因性尿へ胃の診断と治療
I.その他
 1. 尿路・性器瘻
  a. 膀胱腟瘻
  b. 尿管腟瘻
  c. 尿道腟瘻
  d. 膀胱・腸・腟瘻
 2. 直腸脱
  a. 発生率
  b. 病態
  c. 症状
  d. 兆候
  e. 検査
  f. 治療