書籍カテゴリー:眼科学

トーリック眼内レンズ
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トーリック眼内レンズ

1版

  • 東京歯科大学水道橋病院眼科教授 ビッセン宮島弘子 編著

定価:10,260円(本体9,500円+税8%)

  • B5判 203頁
  • 2010年11月 発行
  • ISBN978-4-525-36061-0

概要

通常の眼内レンズでは角膜乱視がある症例に対し白内障術後に乱視が残り,眼鏡等で矯正を行う必要があった.しかし,保険適用の中で手術と乱視矯正を同時にできる「トーリック眼内レンズ」が誕生したことにより,その不便は解消された.本書は同レンズの日本初の解説書である.患者の満足度を追求したい眼科医に向け,最新の情報を提供する.

序文

 “トーリック眼内レンズはおもしろい”という声を聞く.これは,実際にトーリック眼内レンズを挿入した眼科医,そしてトーリック眼内レンズ挿入を受けた患者が,今まで経験したことのない術後成績を実感しているからではないだろうか? 例えば,角膜乱視が2Dある症例で,正視目標の眼内レンズを挿入したとして,術後に裸眼視力1.2や1.5が得られるとは誰も予想しない.しかし,トーリック眼内レンズを使うことで,このようなことが可能な時代になった.白内障手術時に乱視矯正を同時にできるトーリック眼内レンズが承認され,しかも今までどおり保険適応という,眼科医と患者の両者にとって非常によい環境が整った.日本は,清水公也先生らが世界で最初のトーリック眼内レンズを開発し,最初に臨床使用した,いわばトーリック眼内レンズ発祥の地である.しかし,残念なことに,海外に比べて日本の眼科医の乱視矯正およびトーリック眼内レンズへの関心度は低いようである.なぜ低いかを議論するのではなく,ぜひ乱視矯正の時代に入ったこと,それを可能にする眼内レンズが開発されたことを認識していただけたらと思う.
 そこで,日本においてトーリック眼内レンズが正しく理解され普及することを願って,乱視の基礎知識からトーリック眼内レンズの適応,実際の挿入までをまとめた本を企画した.2000年にLASIK,2008年に多焦点眼内レンズをそれぞれ単著として書きあげたが,今回は乱視矯正のトーリック眼内レンズということで,この分野でご高名な6名の先生にご協力いただき,短期間で1冊の教科書的な本を仕上げることができた.また,著者以外に12名の先生にコラムをご執筆いただき,本文に加え,さらに広い知識が得られることと思う.
 乱視のことは十分わかっているつもりでも,乱視についてさらに学ぼうとすると,その奥の深さに驚くことと思う.これは,編者のみならず,今回執筆の労をとってくださった先生方全員が感じている.したがって,トーリック眼内レンズの実力を十分生かそうとすると,それなりの知識と工夫が必要である.これらの点については本文に加え,著者座談会を企画し,実際に挿入している先生方の生の声を入れたので,ぜひ参考にしていただきたい.
 時代はどんどん進化し,トーリック機能のついた多焦点眼内レンズが開発され,単焦点眼内レンズ挿入眼へのピギーバックとしての使用も始まっている.得られる範囲の最新情報を入れ,数多くのトーリック眼内レンズを挿入している米国のStephen S. Lane 先生,シンガポールのRonald Yeoh 先生,ドイツのThomas Kohnen 先生には,日本でこれから普及するであろうトーリック眼内レンズに関する本を編集することをご説明し,臨床面でのアドバイスについてご執筆いただいた.先生方のニュアンスが伝わりやすいよう,あえて邦訳せずにそのままの英語とさせていただいた.
 今まで,乱視のある症例には,白内障手術後に円柱度数を入れた眼鏡を処方するのが当たり前のようであったが,トーリック眼内レンズが適応となる症例では,ぜひ通常の単焦点眼内レンズの挿入では味わえない良好な視力を患者とともに実感していただき,“トーリック眼内レンズはおもしろい”という感覚を共有していただければと思う.

2010年9月
東京歯科大学水道橋病院眼科 教授
ビッセン宮島弘子

目次

第1章 乱視の種類
 1 乱視の理解
  a. 乱視とは
  b. 角膜乱視と屈折乱視の違い
  c. トーリック眼内レンズと乱視
  d. 乱視の検査法
  e. トーリック眼内レンズによる乱視矯正の考え方
  f. 白内障症例の角膜乱視
 2 直乱視,倒乱視,斜乱視
  a. 主経線の軸方向による分類
  b. 年齢による変化
  c. 見え方のシミュレーション
  d. 瞳孔径の影響
 3 正乱視と不正乱視
 コラム1 乱視と網膜像,視力の関係

第2章 必要な乱視検査
 1 ケラトメーター
  a. 原理
  b. 装置と使用方法
  c. 結果の解釈
 2 フォトケラトスコープ
  a. 原理
  b. 装置と使用方法
  c. 結果の解釈
 3 プラチド式角膜形状解析装置
  a. 原理
  b. 装置と使用方法
  c. 結果の解釈
 4 スリットスキャン式角膜形状解析装置
  a. 原理
  b. 装置と使用方法
  c. 結果の解釈
 5 前眼部光干渉断層計(前眼部OCT)
  a. 原理
  b. 装置と使用方法
  c. 結果の解釈
 6 波面収差解析装置
  a. 原理
  b. 装置と使用方法
  c. 結果の解釈
 コラム2 開業医に導入しやすい乱視測定装置

第3章 トーリック眼内レンズの種類
 1 トーリック眼内レンズによる乱視矯正の原理
  a. 眼内レンズの位置と矯正効果
  b. 眼内レンズの乱視軸による影響
 2 日本で使われたトーリック眼内レンズ
  a. NT98B(Nidek)
  b. AA4203TF/AA4203TL(STAAR)
 3 小切開用トーリック眼内レンズ
  a. アクリソフ トーリック(Alcon)
  b. TC2(HOYA)
 4 海外で使用可能なトーリック眼内レンズ
  a. AA4203TF/AA4203TL(STAAR)
  b. T-flex 623T(Rayner)
  c. Torica-s(HumanOptics)
  d. Acri. Comfort 646TLC(Zeiss)
 コラム3 1980年代のトーリック眼内レンズ挿入

第4章 手術による惹起乱視
 1 切開幅と惹起乱視
  a. 縫合が必要だった時代の乱視変化
  b. 無縫合白内障手術の効果
  c. 極小切開と乱視
 2 惹起乱視の評価方法
  a. Jaffe 法
  b. Cravy 法
  c. Alpins 法
  d. パワーベクトル法
  e. トーリック眼内レンズに必要な惹起乱視の評価
 3 トーリック眼内レンズと惹起乱視
  a. 惹起乱視確認の必要性
  b. 惹起乱視確認の計算
  c. 切開位置による乱視への影響
 コラム4 白内障術者の乱視への関心度

第5章 術前検査と適応
 1 検査項目と注意点
  a. 問診
  b. オートケラトメーター
  c. 視力検査
  d. 細隙灯顕微鏡検査
  e. 角膜形状解析
  f. 眼底検査
  g. 眼内レンズ度数検査
 2 適応判断
  a. 正乱視か不正乱視か
  b. 付属ソフトウエアの利用
  c. 注意すべき症例
 コラム5 患者説明のコツ

第6章 度数およびモデル決定
 1 度数およびモデル決定までの流れ
 2 必要な検査と眼内レンズ決定法
  a. 角膜屈折力
  b. 眼軸長測定
  c. 眼内レンズ度数計算
  d. トーリックカリキュレーターに必要項目入力
 3 眼内レンズモデル決定における注意点
  a. 球面度数の重要性
  b. SIA の考え方
  c. トーリックカリキュレーターの理解
  d. 術者によるモデル調整
 4 症例呈示
  a. 倒乱視例
  b. 直乱視例
 コラム6 眼鏡・コンタクトレンズによる乱視矯正

第7章 乱視軸マーキング
 1 乱視軸マーキングの必要性
  a. 1D 以上の角膜乱視例の実態
  b. 軸ずれによる矯正効果の低下
  c. 軸ずれによる斜乱視化
  d. 眼内レンズによる乱視矯正の限界
  e. 乱視測定時の軸ずれ
  f. 術前マーキングの位置ずれ
  g. 座位から仰臥位における眼球回旋
 2 乱視軸マーキング以外の確認法
  a. 結膜血管
  b. 虹彩紋理
 3 実際の乱視軸マーキング法
  a. 水平/垂直位置のマーキング
  b. 下方6 時のマーキング
  c. これらの方法の問題点
 4 角膜形状データを用いたaxis registration
  a. Axis registrationとは
  b. Axis registrationの手順
  c. LRI におけるaxis registration の効果
 5 前眼部光干渉断層計を用いた方法
 コラム7 マーキングに使うインクの限界

第8章 実際の挿入
 1 挿入前の準備
  a. 眼内レンズのモデル選択
  b. 角膜乱視軸と基準点
  c. 通常の白内障手術に加えて用意するもの
 2 術式
  a. 切開
  b. 前嚢切開
  c. 水晶体超音波乳化吸引術
  d. 強主経線マーキング
  e. 眼内レンズ挿入準備
  f. 眼内レンズ挿入
  g. 眼内レンズ軸調整
  h. 粘弾性物質吸引除去
  i . 最終位置の確認
 コラム8 トーリック眼内レンズの成功法

第9章 術後検査
 1 基本検査
  a. オートレフラクトメーター,オートケラトメーター
  b. 視力検査と屈折
  c. 細隙灯顕微鏡検査
 2 トーリック機能をさらに詳しく知るための検査
  a. コントラスト感度
  b. 角膜形状解析
  c. 波面収差解析
 3 軸ずれの確認
  a. 臨床成績から推察される軸ずれ
  b. 軸ずれ測定法の評価
  c. 軸ずれの乱視矯正効果への影響
 コラム9 付加価値のついた眼内レンズ挿入眼の眼底検査

第10章 臨床成績
 1 挿入成績の実際
  a. 海外の臨床成績
  b. 日本における承認後の臨床成績
 2 軸ずれ
  a. 検査方法
  b. 臨床報告
  c. 波面収差解析を用いた評価
 3 症例検討(術前から術後までの流れ)
  a. 術前
  b. 手術
  c. 術後
  d. 倒乱視例(61 歳男性)
  e. 直乱視例(57歳女性)
 コラム10 トーリック眼内レンズ挿入後の満足度

第11章 注意すべき症例
 1 角膜不正乱視
  a. 残存する不正乱視の影響
  b. 不正乱視と正乱視が混在している場合の正乱視の軸と量
 2 術中に安定した眼内レンズ固定が困難な症例 ・
 3 瞳孔異常
 4 その他の注意すべき症例
  a. 術後に眼内レンズが回転する可能性が高い症例
  b. 術前に眼鏡を装用していない症例
  c. 過度な期待を持つ症例
  d. 比較的若年の直乱視
  e. 硝子体手術が必要な症例
 コラム11 嚢内固定された眼内レンズの摘出

第12章 乱視矯正不良例と対処法
 1 矯正不良の原因
  a. 術前
  b. 術中
  c. 術後
 2 検査方法
  a. 眼内レンズの位置
  b. 不正乱視の影響
 3 軸ずれの対処法
  a. 再手術の時期
  b. 軸ずれ補正の手順
 4 実際の症例
  a. 眼内レンズ挿入後の経過
  b. 乱視矯正不良の原因
  c. 手術ビデオの確認
  d. 実際の手術
  e. 術後経過
 5 その他の矯正不良例
  a. 軸ずれ以外の原因による低矯正
  b. 予定以上の矯正効果
 コラム12 トーリック有水晶体眼内レンズから学んだこと

第13章 他の乱視矯正法との比較
 1 角膜輪部減張切開術(LRI)
  a. 適応
  b. 術式
  c. トーリック眼内レンズとの比較
 2 エキシマレーザー乱視矯正
  a. 術式
  b. 臨床成績
 コラム13 乱視はどこまで治すべきか? 乱視と焦点深度との関係

第14章 今後の展開
 1 ピギーバックレンズ
  a. 単焦点眼内レンズ挿入眼
  b. 2枚のトーリック眼内レンズ挿入
 2 特殊例へのトーリック眼内レンズ挿入
  a. 虹彩把持型眼内レンズ挿入例のレンズ交換
  b. トーリック眼内レンズの毛様溝縫着
 3 多焦点眼内レンズへのトーリック機能付加
  a. 屈折型多焦点+トーリック機能
  b. 回折型多焦点+トーリック機能
  c. アクリソフ?多焦点とトーリックの組み合わせ

第15章 海外におけるトーリック眼内レンズ
 1 Preoperative marking and intraoperative placement of thetoric IOL
 2 Toric IOLs
 3 Complications of toric IOL and their management

著者座談会 トーリック眼内レンズの印象と今後の予想

参考文献
あとがき

索引