書籍カテゴリー:耳鼻咽喉科学|小児科学

2つの顔を持つ臓器 扁桃とその病気

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2つの顔を持つ臓器 扁桃とその病気

1版

  • 札幌医科大学名誉教授 形浦 昭克 著

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

  • A5判 174頁
  • 2005年9月 発行
  • ISBN978-4-525-37621-5
  • ISBN4-525-37621-X

概要

扁桃は免疫能を持っており外敵である細菌やウイルスを防御する役割を果たすとともに,自らが感染巣でもある不思議な臓器です.
扁桃炎,扁桃肥大に代表される直接的な疾患もありますが,最近,扁桃病巣感染症(二次疾患)とよばれ,扁桃から離れた個所-皮膚,腎臓,骨関節などに症状が出る病気が話題となっています.これらは扁摘により軽減することで立証されています.
本書は,多くの診療科に跨り種々な影響を及ぼす扁桃なるものを正しく理解し,診療に役立てていただくための入門書です.扁桃を甘く見ていた貴方(女)に.是非ご一読をお奨めします.

序文

扁桃とその病気について,これまでに多く専門書と共に論文は数多く存在するが,専門的すぎるきらいがある.そこで本書は,境界領域の医師,看護師を含めたコメディカルの方々に,この扁桃に関わる疾患を中心にその機能,病態および治療法などを理解していただくことを目標に出版することにした.口腔内の両側に存在するアーモンド状の扁桃がどんな働きを持つ臓器か,また,この扁桃は,外界と直接に出くわす個性豊かな臓器として特徴づけられ,その機能として感染と免疫の両方を持っている,生体の中でもただ一つの臓器であることを知っていただきたい.
特に20世紀に入り,多くの学者により扁桃問題が取り上げられる様になり,なかでも病巣感染に関して,1900年代初頭Hunter(1900)に始まり,Passler(1909)およびBillings(1912)などの業績がドイツで病巣感染症学会が中心として論じられる様になり,わが国においても馬杉(1939),岡林(1939),堂野前(1960)らにより実験的病巣感染と共に,その成立機序に関して多くの業績が発表されてきた.こうした病巣感染の概念は上気道感染防御としての問題であり,リンパ組織であることから扁桃の持つ魅力には計り知れないものがある.上述のとおり人間において感染と免疫(すなわち防御)という相反する機能を持っている非常にユニークな臓器であるといえる.
扁桃は,いわば“両刃の剣”であり,探れば探るほど個性豊かな臓器であり,ここに広くその人の病態の一つとして考える場であるのが扁桃である.本書をひもとくことにより解剖,機能,病態,そうして疾患の本態を知り,どのようなとき扁桃を摘出するのかを考えていただければ望外のよろこびである.扁桃に関わる幅広い諸家の研究から,その一つ一つを知っていただき,そうして病める患者の福音となると共にささやかな光明をみつけることが出来ればと思っている.

2005年6月 形浦昭克


目次

1 扁桃の基礎
 扁桃の持つ免疫および感染臓器としての二面性
 A.名称の由来
 B.扁桃の解剖
 C.扁桃の構造
 D.血管と神経
 E.扁桃の細菌
 F.扁桃の免疫学的特性
 G.扁桃の免疫機能
  1)扁桃と虫垂は似たもの同士なのか?
  2)扁桃の二面性
  3)扁桃の免疫機能はどこまでわかったか
2 扁桃炎とは何か
 扁桃の素顔は生理的炎症臓器
3 扁桃の臨床(各論)
 扁桃炎にはどんなものがあるか
 A.急性扁桃炎
  1)臨床分類
  2)臨床症状
  3)急性咽頭・扁桃炎の鑑別
  4)急性扁桃炎の重症度分類
  5)急性扁桃炎の治療選択
 B.クラミジア扁桃炎
 C.梅毒による扁桃炎
 D.他のウイルスによる扁桃炎
 E.潰瘍偽膜性扁桃炎
 F.壊疽性扁桃炎
 G.無顆粒細胞性扁桃炎
 H.扁桃放線菌症
 I.扁桃真菌症
 J.急性咽頭側索炎
 K.扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍
4 伝染性単核球症
 “Kissing disease”は本当にあるの?
5 慢性扁桃炎
 思いがけない二次疾患の原病巣
6 習慣性扁桃炎
 なぜ反復する?扁摘の適応規準は?
7 扁桃肥大
 小児疾患に及ぼす影響
8 扁桃の検査には,どんなものがあるか
   局所病巣診断法に焦点を!
 A.扁桃誘発試験
  1)扁桃マッサージ法
  2)超短波直接法
 B.扁桃打消試験
9 扁桃と全身疾患
 扁桃性病巣感染症の臨床
 A.扁桃性病巣感染症とは?
  1)病巣感染症との出会い
  2)病巣感染の定義
  3)扁桃との関係が指摘されてきた代表的疾患
 B.皮膚疾患
  1)掌蹠膿疱症
  2)尋常性乾癬
  3)アナフィラクトイド紫斑病
  4)多形滲出性紅斑
  5)ベーチェット病
  6)ジューリング疱疹状皮膚炎
 C.骨,関節疾患
  1)関節リウマチ
  2)胸肋鎖骨過形成症
 D.IgA腎症
 E.その他
  1)喘息
  2)ぶどう膜炎
  3)微熱
 F.病巣感染症の免疫学的研究
  1)サイトカイン
  2)細胞接着分子
  3)細菌との関わり
  4)抗ケラチン,抗コラーゲン抗体価
 G.最近の病巣感染の発症機序
10 扁摘を考える
 扁摘の適応は正しく
 A.扁桃摘出術(扁摘)
  1)手技
  2)出血
  3)術後合併症
  4)禁忌
 B.免疫臓器としての扁桃摘出について
 C.扁摘の周辺臓器への影響
 D.扁摘による効果
 E.扁摘適応をめぐって
 F.小児,ことに幼児における扁摘
11 アデノイド
 アデノイド切除術が少なくなった理由
 A.咽頭扁桃(アデノイド)の基礎
 B.診断
 C.アデノイド切除
 D.手技
  1)Beckmann輪状刀による方法
  2)La Force式輪状刀による方法
  3)術後合併症とその危険度
  4)術後管理
12 いびきと睡眠時無呼吸症候群
   小児および成人にとって大きな問題点
 A.いびきとは?閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とは?
 B.睡眠時無呼吸症候群(SAS)の定義
 C.OSASと病態生理
 D.SASの症状
 E.SASの診断
 F.SASの―治療
 G.扁桃と小児のいびき,SAS
  1)原因
  2)症状
  3)Brodskyらによる扁桃および口腔の計測
  4)OSASの顔面形態―セファロメトリー
  5)アデノイドおよび扁桃の大きさの小括
  6)小児OSASの治療
  7)小児OSASの特徴
   (1)小児OSASの難治例
   (2)小児OSASと肥満および心肥大
   (3)小児OSASと胸郭変形
   (4)小児睡眠時無呼吸症候群の最近の話題
13 扁桃腫瘍
 扁桃は腫瘍の宝庫
 A.良性腫瘍
 B.中咽頭癌
 C.悪性リンパ腫
14 日常外来診療における他科,境界領域における対応
   境界疾患においては扁桃の位置を十分に考慮する
 A.扁桃と咽喉頭異常感
 B.神経痛としての咽頭痛“のどの痛みはオリンピック会場と同じである”
 C.咽頭痛と心臓疾患
 D.舌根扁桃肥大
 E.Tornwaldt病
 F.扁桃とStill病
 G.Minimum Equirementとしての扁桃の見方と扁桃炎予防をどうするか
 H.扁桃と学校保健
 I.扁摘により蕁麻疹に効果があるか?
 J.扁桃炎診療変遷の今昔物語
15 扁桃に関するトピックス
 扁桃研究の進展
 A.小児における扁桃問題
 B.扁桃病巣感染症の将来展望
 C.日本扁桃研究会から日本口腔・咽頭科学会への発展
 D.扁桃研究の国際舞台への進歩
おわりに
文  献
索  引